【本編完結】ロックバンドにハマったという一人暮らしの息子を訪ねたら「おしゃけしゅきぃ~っ」と寝言を呟く酒カス美女とベッドで眠っていた。   作:SUN'S

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ようやく四人揃ったので「結束バンド始動!」と彼女たちは姦しく笑う。そして、ミツルは頭のおかしいクマ吉になったのでした

その子を見たときだった。

 

俺の脳裏に知らない記憶(・・・・・・)が流れてきた。

 

数百、数千、もしかしたらもっといるかもしれない観客がいる武道館の真ん中で彼女はギターを弾き、激しくドラムを叩く虹夏ちゃん、静かながらも芯に響く重低音を奏でる山田、きらびやかに笑顔を浮かべて楽しそうに歌い、彼女と一緒にギターを弾く喜多ちゃん、そんな光景を俺は見ている。

 

「ミツルくんどうしたの!?」

 

「お兄さん、ガチ泣きだ。ウケる」

 

「ど、どうしたんですか羽佐間さん?」

 

「…ゥッ…オヒッ…だ、だびじょぶ?…」

 

わらわらと俺のそばに集まってきた彼女たちを見下ろしながら目じりを押さえる。ああ、そうか。この感覚は、俺がきくりさんと出会ったときに感じたやつと似てるんだ。

 

「どうやら俺は結束バンド(きみたち)のファンのようだ」

 

「まだデビューしてないよ!?」

 

「ファン1号、いや0号ゲットだぜ」

 

「さすがです!リョウさん!」

 

「(わ、わたしに?でも、なんでこの人はガチ泣きしてるんだろ?えっ、そんなに私のギター下手だったかな?いや、それだとファンになるわけないし、うっ?うぅっ?うううぅっ?)」

 

俺の近くにきた虹夏ちゃんたちの後ろで代わる代わるに脳内妄想を拡大させる後藤ちゃんを見つめたら伊地知店長に睨まれた。

 

いや、俺はきくりさん一筋ですからね?とアイコンタクトを送っているつもりでウインクしたら顔を真っ赤にしてカウンターの奥に行ってしまった。

 

あ、きくりさんの言ってたやつか。

 

こういうところを直さないといけないらしいが。いまいち、俺のどこをどうやってどのように直せばいいのかがまったく分からない。

 

「お兄さん、そういえばさ」

 

そんなことを考えていると山田が話し掛けてきた。どこか真面目な顔付きだ。いつも、これくらい真面目な顔をしていればいいものを。

 

「お弁当まだ?」

 

「……俺のカバンの中だ」

 

「ん。あと式場パンフももらっとく」

 

いや、それは持っていくなよ。

 

そう山田に言おうとしたら虹夏ちゃんと伊地知店長に睨まれた。いや、そんな顔をされても俺にはきくりさんがいるし。

 

浮気や不倫をするつもりはない。あと再婚もしなければ離婚もしない。もしも、そうなったら俺は潔くきくりさんに泣きつく。

 

「虹夏先輩、羽佐間さんて面白いですよね」

 

「えっ。うーん、まあ?」

 

ふぉふふぁふぇ(そりゃあね)

 

「ちゃんと噛みなよリョウ…」

 

「(私もあれくらいやれば?い、いや、でも、あんなことしたくないし。みんなとバンドできれば、それで私は満足できる、うっ、やっぱり売れて高校やめたいかも…けど、喜多ちゃんに会えなくなる)」

 

どうしよう。さっきから後藤ちゃんが俺を見たまま、ぴくりとも動かないんだけど。えぇ、なんか変なところあるかな?

 

 




〈結束バンド〉

ガールズバンド。

伊地知虹夏、山田リョウ、喜多ちゃん、後藤ひとり、この四人で構成されたバンドである。ミツルは謎の光景を見てしまったためファン0号となった。ちなみにバンドとしての上手さは「中の中」と伊地知店長は判定している。

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