【本編完結】ロックバンドにハマったという一人暮らしの息子を訪ねたら「おしゃけしゅきぃ~っ」と寝言を呟く酒カス美女とベッドで眠っていた。 作:SUN'S
小腹が空いたな。
ちょうど午後23時30分を過ぎた頃。
私はくぅぅっと空腹を訴えるお腹を擦りながらギターを抱えたまま眠ってしまった郁代にタオルケットを被せ、キッチンへと向かう。
ちなみにお兄さんときくりママはデートに行っているので私たちが二人のお家にいるのはお留守番も兼ねていたりする。
確かお兄さんが「夜食は作ってるから」と言っていたし。それなりに期待できる。いや、それなりなんて評価はお兄さんの手料理に失礼だ。
がちゃり。大きい音を立てて郁代を起こさないように注意しながらサランラップに掛かった大皿、ちょうど良いサイズに整えられたおにぎりの乗った正方形のお皿を取り出す。
おかずはなんだろうか。
おお、これは紛れもなく。
「からあげ…!」
それも塩麹を使ってるやつだ。
半日ほど醤油や生姜、塩麹で味付けをした後、篩にかけて均一にされた片栗粉もしくは小麦粉でささっと衣を形成し、高温の油で一気に揚げる…………ってお兄さんが説明していたような気がする。
からあげだから電子レンジで温めたいけど。
ぐっすりと眠っている郁代を起こすわけにもいかない。まあ、お兄さんのからあげは冷めてても美味しいし、べつにいいかな?
なんて考えつつ。私はサランラップを外し、こんなこともあろうかと持参しておいた割り箸でからあげを摘まみ、ゆっくりと口許に運ぶ。
ジュワアァッ…とはしないけど。まだ衣はサクサクで程よい塩加減だ。うん、美味しい。こういうのが一番の楽しみと言える。
ふと私の脳裏に虹夏の「もう、そんなに食べてると太っちゃうよ?」という言葉が響いた。ふ、ふとったかな?太りたくないけど。
まだ私は50kg台だし。
お兄さんだって「山田、もっと食べろよ。まだまだ成長期なのに40kgとか30kgとか維持しようとするな、たくさん食べたらその分だけ運動すれば良いんだ」と言ってくれた。
しかし、しかしだ。いくら雑草や野草を食べているとはいえ私も女の子である。太ったりするのは少しだけ、ほんとに少しだけ怖い。
よし、ダイエットしよう!
「明後日から」
そう私は決意して郁代の分と思わしきからあげとおにぎりを頬張り、なぜか断酒し始めたきくりママの愛飲しているカフェオレを拝借し、ずずずっと私専用のマグカップで飲む。
………よくよく考えると私がふくよかになってきたのはお兄さんのせいだからお兄さんに食べながら痩せる手料理を作ってもらうのもありだ。
そんなことを考えながらリビングと廊下を繋ぐドアを開けて、じーーーっと私を見つめている郁代にどうやって弁明しようかと悩む。
〈山田のグルメ〉
山田リョウの食生活。
最近の悩みはお腹回りにほんのちょっとだけお肉がついちゃったこと。だが、それはそれとして今日も元気に彼女はごはんを食べる。ちなみに喜多ちゃんは体型維持しながら美味しくごはんを食べている。