【本編完結】ロックバンドにハマったという一人暮らしの息子を訪ねたら「おしゃけしゅきぃ~っ」と寝言を呟く酒カス美女とベッドで眠っていた。 作:SUN'S
最近、よく視線を感じる。
私は喜多ちゃん以外と話す度胸もないし。
どうして、こんなに視線を感じるようになったのかまったく分からないけど。その視線は異物を見るものじゃなくて、喜多ちゃんや虹夏ちゃん、リョウさんの視線に似てる。
お友だちに向ける視線だ、たぶん。今までお友だちがいなかったから分からないけど。なんか喜多ちゃんと話しているとき、みんな微笑んでいるように見えたりする。
あっ、はい、幻覚ですねこれ。
「後藤さん、おはよう!」
「あ、ぉあっ、はい…」
「今日も決まってるわね」
「そ、そうですか?えへっ、ふひひっ」
この前なぜかリョウさんに呼び出されたときに教えてもらった
喜多ちゃんも褒めてくれるし。ようやく私に時代が追い付いてきたのだろうか?なんて思っていると喜多ちゃんが目の前にいた。
ちょ、近い、かわいっ、いや、でも近すぎっ、あっ良い匂いする、だめだめ、わあぁっ、くりんっとしたお目目がすごくかわいい。
そんなことを考えていると喜多ちゃんは私の頭を抱き締めて、なぜかつむじの辺りを「スウゥゥゥーーーーッ」と思いっきり吸い始めた。
これがねこ吸い?
「はあぁぁっ♥やっぱり後藤さんも素敵な匂いをしてるわ、リョウさんと後藤さんの匂いで香水を作れば絶対売れるわ!!」
「ムッ、ムムムムムムムゥ!?むりっ、むりですぅ!?(そんな私の防虫剤とか洗剤の混ざった香水なんて売れるわけ、喜多ちゃんや虹夏ちゃん、リョウさんのやつなら売れるかもだけど…私のは絶対にむりぃっ!)」
ブンブンブンッ…と頭を振って喜多ちゃんの言葉を否定する。いくらお友だちの言葉でも無理なものは無理だし。私みたいな陰キャに需要なんてあるわけないですから!
よく虹夏ちゃんや店長さんに「ぼっちちゃんは謙虚すぎるよ」とか言われてるけど。ほんとはビビってるだけなんです。
私の汗の臭いなんて売るわけには…!せめて乙女としての尊厳だけは守りたいんです。あっ、はい。押し入れに引きこもってるやつが乙女とか生意気言っていませんでした。
「ふふっ、後藤さんは面白いわね。私の冗談にも真剣に悩んでくれるなんて、ほんっとに優しくて素敵なお友だちだわ」
「そ、そそそそそうでしょうか?私な「もう『私なんて』っていうのはだめよ?」あうっ、はい。で、でも、私が、その、いいんですかね?」
「……どういうことかな?」
「えと、喜多ちゃんとお友だちで……」
「…………後藤さん。いえ、ひとりちゃんは自分を肯定する強さを持つべきよ。それはもうリョウさんのようにマイペースに生きていけるくらい自分を認めるべきだわ!!」
よ、よくわからないけど。
えと、その、が、がんばるましゅ!!
〈私の大切なお友だち〉
後藤ひとりの気持ち。
はじめてのお友だちとの接し方に困っている彼女を後押ししてくれるのはお友だちで、しっかりと受け止めてくれるのもお友だち。私はあなたと出会えて、ほんとに良かった…。