【本編完結】ロックバンドにハマったという一人暮らしの息子を訪ねたら「おしゃけしゅきぃ~っ」と寝言を呟く酒カス美女とベッドで眠っていた。 作:SUN'S
私の後輩は既婚者だ。
しかも私の惚れた男と結婚しているうえに「えへへっ、できちゃった♥うぷっ、うぉろげえぇっ」なんて幸せそうに報告してきやがった。私の近くで吐くなよ!?と叫びそうになるのを我慢しながらお腹を触らせてもらう。
…………よくわからん。
「んっ、くすぐったい…」
「お、おう、悪いな」
「赤ちゃん、うらやましいですねえ」
ほんっとそれな?
PAの呟きに私は賛同しながら悪阻のせいで苦しそうに唸っているきくりの背中を擦りつつ、どうすればいいんだ?ときくりに聞けば「一緒にいてくらしゃいいぁ…」と言うばかりだ。
ウ~ン。こういうことなら医学もちょっとだけ勉強しておけば良かったか?なんて思っていると「やっぱり、こういうときって酸味ですよね?」と言いながらレモンを丸ごと持ってきたPAに私ときくりは静かにドン引きする。
うそだろ、お前。まずは身体を冷やさないように毛布だったり、悪阻のときでも大丈夫な飲み物を持ってくるとかだろ。
「これだからズボラは…」
「いや、店長だってズボラでしょう!?」
「私は料理ができないだけだ!」
それ以外はしっかりと虹夏と分担してるし。なんなら虹夏より主婦力は高いぞ?と言い返したら「そんな、あ、ありえない!あの店長が、洗濯物を?」なんてブツブツと言っている。
こいつ、失礼すぎるだろ。
「しぇ、しぇんぱい、へるぷぅ…」
「うおっ、やめろ!?私の服に吐こうとするな!?トイレにいけ、トイレに!!」
ふらふらとトイレに向かっていく。いや、ひとりで行かせるのは良くないな。きくりの背中と肩に手を添えて、転んだりしないように手伝ってやる。いちおう、私の恋敵なんだが。
こういうときは仕方ないのだ。
「ところで店長」
「なんだ?」
「レモン攻め、どうですか?」
「お前、うそだろ」
私の腕の中できくりは「やりゃにゃいでぇ」や「たしゅけてちえぇっ」と泣きじゃくっている。そして、あいつは満面の笑みだ。
こいつ、やっぱりSだな。
「ウフフフ。かわいいですね」
「やめてやれよ」
「むう、おもしろいのに」
「うぅ、はくぅ…」
まったく羽佐間はいつ帰ってくるんだ?こういうときこそ傍にいてやるものだろうと文句を言いつつ、きくりの背中を優しく撫でる。
こいつも断酒のおかけで健康的といえる色ツヤを取り戻してきてるが。やっぱり、どうしても酒癖の悪さは残っているようだ。
「がんばれよ、きくり」
なにがとは言わんけれども。
「うぶえぇっ」
とりあえず、今日は泊まっていこう。
〈おめでた〉
おめでとう、あかちゃん。
わりと重めの悪阻に悪戦苦闘するきくりさんを見て、やっぱり星歌さんは心配なので自分の恋路より後輩を優先してしまった。ただしPAさんはいつもどおりに楽しそうに笑っている。