【本編完結】ロックバンドにハマったという一人暮らしの息子を訪ねたら「おしゃけしゅきぃ~っ」と寝言を呟く酒カス美女とベッドで眠っていた。 作:SUN'S
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ひとりちゃんはスゴかった。
俺はきくりさんと一緒にお呼ばれしてもらった文化祭の目玉といって差し支えない結束バンドのライブを後ろのほうで見る。
あーっ、なんだったか?
きくりさんにくっついてた山田がドヤりながら「後ろに陣取って見守る。そう、それはさながら『俺ってアイツのこと何でも知ってるんだぜ?』みたいなスタンスを後方彼氏面という」とかなんとか言っていたような気がする。
しかし、あの未来の光景をまた幻視してしまうほど四人のパフォーマンスは高く。きくりさんや伊地知店長も「いつの間に上手くなったんだ?」と呟いているのを俺は確かに聞いた。
「うおおぉおぉっ!!ひとりちゃん!喜多ちゃん!虹夏ちゃん!山田ァ!!うおおぉぉぉっ!!こっち見てくれええ!!」
「うおぉぉぉおっ!!ひとりいぃぃぃっ!!こっちだ!こっちを見てくれえぇぇっ!!ひとりいぃぃぁっ!!うおおぉぉぉっ!!」
この日のためにひとりちゃんのお父さんと練習してきたオタ芸を披露する。俺の熱気に負けじとひとりちゃんのお父さんもサイリウムを振るう。くっ、さすがに年季が違うかッ!!!
俺とお父さんの熱気を浴びて、だんだんとオタ芸の動きは侵食していく。くそ、まずいなっ、このままだとひとりちゃんたちに気付いてもらえらいかもしれないぞ。
「うちの人がごめんなさいねぇ」
「あっ、いや、こっちもみっくんが」
きくりさんとひとりちゃんのお母さんと仲良くなれているようだ。しかし、くそ、流石に二本ずつサイリウムを振り回すのはキツい。
それにしてもひとりちゃんのお父さんも中々にハードな動きを繰り返しているのに。どうして、あそこまで平然としていられるんだ。
いったい、俺と何が違うんだ。
そんなことを考えながらひとりちゃんたちを俺はお父さんと一緒に応援する。…………とはいえ。ひとりちゃんたちも楽しそうに演奏しているし、学校のみんなもはしゃいでいる。
ほんとに楽しそうで、良かった。
「あっ」
「うわあぁっ、ダイブしちゃったあ……」
「ひっ、ひとりいぃぃぃぃっ!!!」
きくりさんと伊地知店長の呟きにひとりちゃんのお父さんが駆け出し、なんとか落ちる寸前に受け止めることができた。
さすがはお父さんだ。
「きくりさんきくりさん」
「ん?なぁにぃ?」
「あれ、すごくないですか?」
そう言って俺はひとりちゃんのお父さんを指差す。ひとりちゃんを受け止めた瞬間、どうやら腰を痛めてしまったらしく。彼は中腰で両の腕を突き出したまま固まっているのだ。
いわゆる名誉の負傷だ。
「んぇ、そう?」
「ああ、かっこいいぜ」
俺もあんな父親になりたいものだ。
〈ワンチャン・ダイブ〉
後藤ひとりの伝説。
文化祭ライブではっちゃけた彼女は飛んだ。危うく怪我するところだったが、彼女のお父さんが受け止めたため大事に至ることはなかったものの。彼女のお父さんは保健室へと運ばれていった。