【本編完結】ロックバンドにハマったという一人暮らしの息子を訪ねたら「おしゃけしゅきぃ~っ」と寝言を呟く酒カス美女とベッドで眠っていた。 作:SUN'S
今日もきくりさんは可愛い。
最近はお酒を飲む回数は減っているし、俺と規則正しい生活を送っている。それでも時々は浴びるようにお酒を飲んで帰ってきたり、ベースを忘れて帰ってくることもある。
「羽佐間、これ頼めるか?」
そう言って伊地知店長は音楽の機材らしきものをポンポンと叩いて指示してくる。なんだこれ?と思いながら伊地知店長に言われるがまま機材を持ち上げ、舞台の上に設置する。
ちょっと重いな。
こりゃあ伊地知店長やPAさんじゃ持ち上げられないか。そんなことを考えていると「STARRY」の入室口にも何個かあるそうで、さすがに重たい荷物を持たせるのはあれなので俺がやることにした。
ふと右足に違和感を感じて見下ろすと青髪の可愛いより美人やかっこいい感じの女の子が倒れていた。えぇ、なにこれ?なんでここに?と思いながらも抱き上げるとか細い声で「…ぁあ…うそ、男に……たしゅけて…」なんて言いやがる。
お前みたいな子供に欲情するわけないだろ。
俺は新婚でめっっっちゃくちゃに可愛いお嫁さんがいるんだよ。そう言って女の子を「STARRY」に連れて入ると伊地知店長に「…それは戻してこい」と呆れたように言われた。
とりあえず、椅子に座らせておこう。
「……店長、まって……ごはんを…」
「うちは定食屋じゃねえよ」
じゃあ、俺のお弁当食べるか?
そう言って女の子に三段ボックスのおかずとお米だけのドカベンを渡したら「ありがと、お兄さん…」と泣かれた。伊地知店長は「そいつ、甘やかすと付け上がるぞ」と教えてくれた。
どうやら知り合いのようだ。
けど、まだ子供なんだからしっかりと食べないと大きくなれないぞ?なんて女の子に言いながらドリンクのひとつを差し出す。俺のマネーなのでプラマイはないから安心していいぞ。
「……そういうところ治せよ、お前」
はあ……っ。と、なぜか溜め息を吐いて仕事の準備に戻ってろうとする伊地知店長の運ぼうとしていた段ボールも代わりに運びますと伝える。
「ふう、ごちそうさまでした。お兄さん、ありがと…美味しかった」
そうか?そう言ってもらえると嬉しいよ。
ほとんど俺一人で掃除や洗濯、料理もしてるからな。こういう人の感想を聞けるのはわりと助かる。そんなことを女の子と話しているとは伊地知店長がソワソワしながら俺と女の子をチラ見してくる。
どうしたんだろうか。そう思っていると女の子が「よかったじゃん、優良物件だよ」と伊地知店長に言ったらゴムボールが飛んできた。
ところで、君の名前は?
「私は山田リョウ。よろしくね、お兄さん」
まあ、よろしくな。
こいつ、ほんとに大丈夫なのか?と考えながら俺は山田に食べさせて空っぽになったお弁当箱を受け取ってカバンに詰め直す。
なにか言いたそうな伊地知店長も気になる。
いや、どこかで女の子をあんまり詮索するのはよくないと聞いたような気がする。たぶん、きくりさんだな。彼女はかなり繊細だから優しくしてあげたい。うん、やっぱり俺のきくりさんはかわいい。
〈山田リョウ〉
ベーシスト。
美人系あるいはかっこいい系の美少女。よく野草を食べていたりお腹を空かせている。最近はミツルという寄生先(ご飯をくれるお兄さん)ができた。ちなみに伊地知星歌の化粧や香水の変化に気づいている。しかし、余計なことは言わない。