いや〜困った。まじまじに困った。文芸部にパソコンがある時点で変だったが、それを起動して見せたくないファイルをあーだこーだしている長門さんを見ると、なんだか…ほんとーに別人なんだなぁって。ゲームやってた時のあの人のタイピングの擬音と全く違う。
「…ヒントは見つかった?」
「ああ…一つだけな」
「どんなヒントなんだろうな〜…ぁ…?」
「お前、このパソコンで何した?」
「あ、あ〜、なるへそ。なるなるへそへそ。うん、俺の作った奴が残ってんだわ」
「なんだと」
「じゃあ折り紙バージョンのモールも…」ゴソッ
「あった…」
「ヒントにはならんなぁ」
「期待出来ないか…邪魔したな、長門」
「もう良いの?」
「期待したのはなかった」
「帰るか〜」
「待って」
「お、入部届?」
「良かったら、持って行って」
「…あれ、俺文芸部だっけ」
「うん」
「あ、いや、そっか」
「…」
帰り道。少し面倒だが、姉には少し遅れると電子メールで送っておこう。少し遅れます。すいません…っと。さてどうするかなぁ…キョンさんも困ってるっぽいし。別に良いんだけどね。この世界でも。誰が望んだか知らねえけどね!!…知らないけどね!!
「俺と弟であるお前を放って、どこに行ったんだか」
「さあどこでしょう」
「だが、俺は一人じゃない。まだマシだ」
「エンドレスでもないし」
「終わりはあるか」
「後は…猫とか?」
「猫…あいつか」
「この世界は常識が常識やってんだよ。猫は喋らない。と思う」
「んー…だろうな」
12月19日。短縮授業が始まると同時に風邪が蔓延し続けている。ただまぁ、朝倉涼子がいるのには変わりなく。向き合うしかないのかぁとため息をついていると話しかけられた。朝倉涼子本人から。と言っても自転車で突入した時じゃないから何もされないと思うけど
「ねえ、君…キョン君に何かあったかわかる?」
「知らん」
「知らんって…昨日、二年生に掴みかかったりしてたの聞いて…それで、貴方と一緒に文芸部の部屋に入ったのを見たから…」
「知らないのは知らないでーす。私はキョン君の理解ある友になるのでーす」
「…?」
「何言ってんだお前」
「おはよ」
「おはよー」
「今日は目が覚めてる?」
「まあな」
「でもね、目が開いてるだけでは覚醒してることにはならないのよ。目に映るものしっかり把握して、それで初めて理解の助けに」
「あーやだやだ。そんな話聞きたくない」
「難解だったかしら?」
「朝倉」
「?」
「…いや、なんでもない」
「ね、おかしいでしょ?」コソコソ
「うむ、側から見るとおかしい。でも、それは側から見た場合に限る」
「事情があるの?」
「…例えば、近くの高校にいるとある女子に気が狂う程の恋をしてしまったとか」
「そうなの?」
「んなわけなかろう」
「それに。その恋したままで良いのかどうかはキョンさんの決めることだし」
「でも、狂っているのなら病院に行った方がいいわよ。紹介…ううん、調べてあげよっか」
「丁重にお断りする」
「んで、このままで良いの?」
そろそろ決めてもらわねばなるまい。まあ二日間しかなかったけどね。ハルヒがおらず、普通の男子高校生として生きまくるか、やべー奴らの一端となって生きるか。うーん、どっちでも良い。どっちでも良いと言うよりどうでも良いかな。
「…そう言う質問は初日にやるもんだろ」
「そーだった」
文芸部までの道のりは長い。道中で誰にでも出会うような距離な気がする。と言うわけは、昨日トラウマを植え付けてたであろう植え付けホヤホヤの朝比奈さんとも出会うわけで。
「あっ」
「ふぁっ」
「おっと」
「みくる〜!」
「…帰りにラーメンでも奢ってやろうか」
「いや、良い」
「むむっ!今度は二人!」
「いやいや、私はこの方を文芸部まで連れて行くだけの人間でして、決して、この方のようなことはしません」
「嘘だろ!?」
「んでも、キョンがやらかしたのならば仕方あるまい…近くのケーキ屋の…割引券あげる!」
「え、良いの?」
「どうやら被害を被らせたのはこっちっぽいですし。あ、え、キョン!?俺を置いて行くのかよ!?」
「おー、さむさむ」
そんなこともあるわけです。オラ文芸部の時間と部室だぁ!!早く開けろ!!親御さんが悲しんでいるぞ!!
「どーん」
「長門、来て良かったか?」
「…」コク
「そうか」
「ここの本は全部読み終えたしなぁ」
「いつのまに読んでたんだお前」
「すごい」
「えっへんよ、えっへん」
「…そういえば、ここの本は全部お前のか?」
「違う。これは…」
「?」
「これは、借りたもの。私立図書館から…」
「そうか。」
「ここストーブとかないんだったな…」
「うん」
「今日の帰りにでも、余ってるストーブ貰ってくるか」
「明日持ってくるのか」
「あたぼうよ、て言うわけで俺は退散する」タッタッタッ
「なんて元気な奴だ」
…ストーブ。電気街。思い出されるのは、長門さんと二人きりになった日くらいか。今の長門さんは長門さんより有希ちゃんの方が似合ってるだろうか。有希さん?其方?うーむわからん。まあ良いやそんなこと。ストーブストーブ…
「おっちゃん」
「ん?」
「処分し忘れた売れ残りの電気ストーブとかってない?」
「あ〜…残念だが…」
「ないか…」
「あるにはある。けど、結構前だから動くかわかんないけど、それで良い?」
「あるならそう言ってくださいよおっちゃん!どんな粗悪品でもないよりマシだからさ!」
「粗悪品って…まあ良いや」
と言うわけで。翌日、文芸部室に設置されたストーブが、キョンさんのマフラーを剥ぎ取るだろうな。電気ストーブ、最高。座布団も一緒に持ってくれば良かったかな。俺の座るところがない。文芸部員らしく本を読もうにも座る場所がなければどうすることもできない。
「…早かったな、帰ってくるの」
「流石に電気ストーブ持ってくるのは疲れる」
「で、どうだった?」
「今日はこいつの埃を取ったりするって。火事でも起きたら最悪だから仕方ないけど…ふーっ」
「そうか…長門、小説とかって書いたりしないのか?」
「…」チラチラ
「?」
「読むだけ」
「長門さん、そう言うわかりやすい反応はやめた方がいいよ」
「そうか…あっ」ガタッ
「うおびっくりしたぁ」
「くっ…ふんぬっ…」ググッ
「あれ、コンセント…あった。電源ポチー」ポチッ
「お…あっ!」
「…やっぱり古いと効きが悪いのかな…」
「ぁ…な、長門」
「!?」
「これは…お前が書いたのか?」
「…私の字に似ている、でも書いた覚えがない」
「そうか‥いや、そうだろうな。知ってたらこっちが困ってたところだ…」
「温度設定が16度になってやがる」
長門さんの書く小説クッソ気になる。マジで気になる。
そんでもって、ストーブの温度設定を16度にする意味ってあるんですかね。温風しか来ないんですけど