涼宮の弟on the 自転車(稀)   作:覚め

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第29話

はっきり言おう。乗り気じゃない。俺の願いが「みんな平和にな〜れ☆」だったら、今のこの状況は全然その願いとは別々である。少し、落胆というか。なんというか、その…嫌なことである。時間を超え、標的を見つける。長門有希である。大遅刻をかました時よりも大きな、心臓の鳴り方が半端ない。

 

「…世界の改変が終了しました」

 

「しちゃったか…」

 

「キョン君。次は私たちです」

 

「…薄々わかってたんだよなぁ」

 

「なんで?」

 

「いや、あの…涼宮ハルヒ以外で俺の知ってる人物だと、ねぇ?」

 

「あー…」

 

「んはは。いやあ、愉快愉快。3年前の長門有希さんではわからんでしょうね」

 

「?」

 

「所謂恋心のような、そんなものは」

 

「…え!?」

 

あー、うーん…反動みたいなもんだなぁ。恐ろしや、恐ろしや。恋愛合戦とは、世界改変レベルになるとすんごーい怖い。それに比べると未来人は…力不足が過ぎる。超能力者と付き合ってなさい。いや、今の大人版を見ると、そうではないか。いやーしかし、なんか戸惑っているのか、話し合っているのか、わからんなぁ…

 

「…あれ、あの人、長門さんになんか言わせようとしてない?」

 

「え、嘘」

 

「ダンボールソリ」ズルズル

 

「え?」

 

「キョンさん。無駄じゃよ。今のあの人はただの人間。我と共にエンドレスエイトを歩んだ長門有希ではないんだ」

 

「…っ」ジャキンッ

 

「キョン君!」

 

「あぶねえ!」ドンッ

 

「んっ!?」グサッ

 

「…長門さんを傷つけることは、許さない。外しちゃった」

 

またお前が!!また!!お前!!か!!自転車持って来てねえんだぞ今日!!ダンボールだけだぞ!!テメェが!!てめぇが!おい、おい!クソ痛い!!

 

「ぉっぁっ」ズッ

 

「おい、大丈夫か!?」

 

「わ゛ぁ゛ぁ…!」

 

「ひっ…朝倉さん…!?」

 

「そうよ長門さん。私はちゃんとここにいるのよ」

 

「死ねこの!」グサッ

 

一矢報いる。窮鼠猫を噛む。急死に一生…これは違うか。火事場の馬鹿力。どれを取っても今の状況に合う言葉があるだろうか。意外なラスボスに、意外な方法で対抗するのだ。実は…エンターキーを押す少し前。マイナスドライバーを持っていたのだ。でかい奴。だが、刺さったのは無情にも地面であった。わ、コンクリ柔らかい

 

「あら危ない…長門さん、貴女を脅かすものは私が排除する。そのために、私はここにいるのだから」

 

「っ…!」

 

「ふふ、だって、貴女がそう望んだんじゃない…でしょ?」

 

「ぬぅ…」ズルズル

 

「あら、いけない。脇腹を刺せても、それが貴方じゃなきゃ意味ないわ…退いてもらえる?」

 

「ごめっ…むっ…」

 

「じゃあ、貴方ごと…死ねば良い。あんたは長門さんを苦しめる」グサッ

 

「ぐっ」

 

「痛い?ゆっくりと味わうが良いわ。それがこんな奴を庇った、貴方の最期だから」スッ

 

あー終わった。もー終わった。走馬灯みたいなの見えた。今。やばいな、うん。これもう死んだわ。こんなんなら最初から走んなきゃ良かった。歩いても朝比奈さんは待ってたし、あの長門有希も待ってた。なんで走ったんだろう。

 

「おい、大丈夫か!?おい!」

 

「〜…」

 

「おい!!」

 

意識が途切れた。いや、途切れたと言うより死んだ方が正しいな?いや、今考えてる時点で死んではないか。こりゃ失敬。覚えてる限りだと、脇腹刺されたし肩刺されてたし。おまけとは言わんばかりに太ももを2箇所ぐらい刺されてたし。うーん、泣きそう…そう思ったんだがなぁ。泣けないなあ。

 

「やっと目覚めたか」

 

「おはようございます。いえ、こんにちは、ですかね?夕方ですし」

 

「本日は〜…12月〜…?」

 

「22日だ」

 

「良かった〜」

 

「おや、良かったんですか?」

 

「四日も眠ってたんだがな」

 

「貴方は三日でしたし…ねぇ」

 

「五十歩百歩だろそんなの。何?俺は刺されたの?ぶっ倒れたの?ドロップキックを姉から喰らわされたの?」

 

「…貴方は、彼の事故に巻き込まれたのですよ。そりゃあもう、盛大に」

 

「俺が階段でコケて、前にいたお前に向かってドン、らしい」

 

「わあひどい」

 

「貴方だけでも顔面蒼白だった涼宮さんが、弟である貴方が下敷きになったのを見て、それはそれは…」

 

「わ、全然なんも覚えてない。」

 

「涼宮さんは…誰かが貴方達を突き落とした、と言ってるんですよ。正確には彼だけですがね。しかし肝心の被害者は覚えていませんでした。最後の希望で、貴方だったんですがねぇ」

 

「…うーむ、その女、殺しておくべきか」

 

「驚きですね、女性だなんて何一つ言ってないわけですが」

 

「あれ?」

 

「更に言えば貴方だけ刺し傷がありましてね…こっちは、それはもう機密情報ばりに隠されましたよ。おそらく涼宮さんにも伝わってないでしょうね」

 

「…交代制か?それじゃあ…そうだなぁ、古泉君がキョンさんと会話してた時に言ったであろう言葉でも当てようか」

 

「は?」

 

「おや?」

 

「…羨ましいですね」

 

「当たってますね…」

 

「何が何やら」

 

「そっちは覚えてなさそうだし。姉はいなさそうだしなぁ」

 

「いや、いるぞ」

 

「へ?」

 

「良く見てみろ」

 

「…うわ、ミノムシ?」

 

「失礼すぎるなお前」

 

「まあ、医者からは…キョンさん以上に死ぬ可能性が高いと言われていましたからね。その時の動揺っぷりは」

 

「驚きだ。あんな姉に弟を想う気持ちがあったとは」

 

「失礼ね。心配したのに」ズッ

 

「んー、触ったところ傷は俺の知ってる場所だしなぁ…」

 

「ちょ、傷口が開いたらどうすんのよ!?」

 

「文芸部に入る」

 

「…?あんた、もう文芸部に入ってるでしょ?」

 

あー、神様、女神様、仏様、涼宮ハルヒ様。お願いです。世界を超えても俺の身体やらなんやらが影響を受けないのは都合の良い時だけにしてください。お願いします。なんで、なんで僕は傷口そのままにここに帰って来てるんですか。ぐすん。泣いちゃいます。

 

「そうだな。お前も辛そうだったしな」

 

「…そ。あーあ!ちっくしょうが」

 

「何急にキレてるのよ」

 

「あー、最悪の気分だ。大将、見舞いのりんご二つ」

 

「わかりました」

 

「初の病院食がりんごだなんて」ガツガツ

 

「元気そうね…あ、みくるちゃん」

 

「すいません…お葬式は…」

 

「今すぐこの傷口開こうか!?ん!?開きますかぁ!?」

 

「すみません!!」

 

こうして、俺の葬式(仮)は無事行われなかった。あの人ナチュラルに俺を殺そうとしてたよな。うん、そうだよな。絶対そうだ。うん、怖い怖い…ん?葬式?あ、この人なら知ってるかもしれないのか。あー…目覚めるタイミング間違えた。くそっ。18(夜抜き)÷3(姉とキョン氏抜き)で…大体一人六時間か?

 

「何言ってんだ、お前は」

 

「歩いても傷口開かないよねこれ…大丈夫だよねこれ…?」タッ

 

「安心しろ。謎パワーで治っている」

 

「…有希ちゃんには…」コソッ

 

「長門か?それがどうした?」

 

「あー…いや、違うか。もう違うか。すまんね」

 

「?」

 

「じゃあいざ日常にもどろー」

 

「あんた、もう1日入院するわよ」

 

「えっ」

 

クリスマスパーティ。SOS団。痛々しい包帯を肩に腹に後は太ももに巻いたりして突入する。これで良いの?と長門さんに聞いたら、私から貴方にできることはこれが限度と言われた。良いのか、これ。全く良くねえわ、これ。

 

「…」ズズッ

 

「美味いな…」

 

「これは…」

 

「病み上がりにはちゃんとした鍋よ。私たちはこっちで美味しい鍋食べるから!」

 

…俺と、キョンさんは。特に羨ましくもない変な鍋を見ながら自称普通の鍋を食った。美味しく、おっちゃんからもらったフィルターに埃のついた暖房よりも身に染みる暖かさであった。美味い…

 

「覚えてる?」

 

「…あんときは、ありがとな」

 

「今思えばあんたが刺されときゃ良かったかなって思ってるよ」

 

「物騒な」

 

「俺が刺されたら戻っても刺されたまま、あんたが刺されても戻ったら刺し傷なし。長門さんでも俺にはあんま力通じないっぽいし」

 

「影響受けない体はつらいな」

 

「…姉ちゃん、おかわり」

 

「病み上がりのくせによく食べるわね…」




わ…ぁ…刺されちゃっ…た…!(復帰した後長門さんにより不自然にならないくらいの治癒)
閉鎖空間だろうがなんだろうがお構いなしに突っ込むし、能力の効果あんま受けないしで…ね…長門さんでもそんな力使っても意味なさそうだし…
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