俺は一週間の間、ひたすらオルコットの試合映像と織斑先生の試合映像をひたすら見続けた。
たとえ見るだけでは意味がなくても、何度も何度も見続けた。自分が思いつかないようなことを少しでも知るために、自分ができることを少しでも増やすために。
それと同時に、織斑先生に剣術の指南もしてもらっていた。初めて使うであろう武器を上手く扱うために。
そんなこんなで一週間が経ち試合の日が訪れた。
「一夏、調子はどうだ?」
「ばっちりだ、そっちは?」
「調子はいい、勝てるかどうかは別としてな。」
俺たちは試合前に少し話をしていた。どんな練習をしたか、どんな対策をしたか等、最近は放課後に話すことが少なかったから割と話すことが多かった。
「それにしても、一夏の専用機はまだ届かないのか?」
一夏のISが来ないことに疑問を持ち、口に出したのとほぼ同時に織斑先生が入ってきた。
「フリューゲル、出れるか?織斑のISがかなり遅れている、アリーナの使用時間も限られているから出てくれ。」
「大丈夫です、もう出れます。」
俺が先か、一夏に少しでも相手の手札を見せなきゃだな、この様子だと試合映像なんてみてないだろうし。
「ぜってぇ勝てよ!」
「当たり前だ。」
俺は自分のISを展開し、ピットからアリーナへと出ていった。
制限有りだったとはいえ織斑先生と互角にやりあえたんだ。勝てるはずだ。
いや、慢心するな。あのときはたまたま織斑先生の行動を知ってたからだ、圧倒的に俺有利な条件だったからだ。
一夏にああは言ったものの不安の気持ちを抑えることだけはできず、自分に何度も何度も言い聞かせていた
「あら、貴方からですの?」
「一夏のISがなかなか届かなくてな。悪いが俺が先だ。」
俺は事実を簡潔に伝え、試合開始の合図を武器の展開もせずに待っていた。
「最後のチャンスを差し上げますわ。」
「いらねぇよ。」
「人の話は最後まで聞いたほうがいいのではなくて?」
俺はオルコットがなんて言おうが無視したほうがいいと改めて感じた。こんなやつの話を聞いても無駄だと悟ったから。軍で有象無象の奴らを殺してたときのように淡々と殺ったほうがいいみたいだ。
「わたくしの奏でるワルツで踊りなさい!」
オルコットのそのセリフが合図と同時に聞こえ俺たちは即座に動き出した。
オルコットが構える銃や周りを飛んでいるビットから縦横無尽の射撃攻撃が飛んでくるが、単純な飛行技術で躱し続けていた。
武器の展開は行わずに、まるで一夏や観客に魅せつけるように空を舞っていた。
侮っていた野郎がこんな芸当をするとは思っていなかったのか、観客席はシーンと静まり返っていた。
左右上下のあらゆる方向から放たれるレーザーをまるで戦闘機でアクロバット飛行をするかのように避け続け、15分が経過していた。
「避けるだけでは勝てませんわ!」
そろそろいいか、もう十分観ただろ。そう思って俺は自分のISに積んであったアサルトライフル「レーゲン」と両肩にレールカノンを展開していた。
「そろそろ飽きてきたし、反撃させてもらうぞ。」
「な、手加減してたとでも言うんですの!?」
実弾の銃しか積んでない俺はオルコットと違って偏差射撃で弾をばら撒いていき、退路を立つとほぼ同時に右のレールカノンが火を噴いた。
「きゃあああ!!」
俺の放ったレールカノンの弾丸はオルコットの胴体を正確に射貫いた。
「ど、どうしてですの…」
「仮にも軍属だぞ、それも織斑先生に鍛えてもらったんだ、強くて当たり前だろ。」
俺はオルコットが放つ射撃に当たることなく、避けながらも正確な射撃を行っていた。
オルコットのような正確無比な、まるでAIが放つような射撃ではなく、荒くも相手の行動を制限し確実に当てるような射撃を。
「なんで当たりませんの!」
「お前の射撃は正確すぎるから避けやすいだけだ。」
試合開始から約25分、ノーダメージの俺に対し、オルコットはレールカノンの直撃とレーゲンが数発と、シールド残量にかなりの差が開いていた。
「す、すげえ…」
俺の目の前では黒いISと青いISが飛び回り、銃撃戦の嵐となっていて、まるで鳥が空で舞を踊っているかのような光景に釘付けとなっていた。
「俺も、俺もあんなふうに…」
友達として認識するつもりだった人が、時間が立つごとに俺の中では千冬姉に次ぐ尊敬し目標とする人物になっていった。
ルイの試合を観ていると、早く、早く俺も戦いたいと、あの空を飛びたいと血が騒ぎ出す。
「どうしたんだ一夏」
「俺も、ルイみたいに戦いたいって思ってな。」
「ふっ、そうか。」
俺は左手に、一般的に観たら日本刀と呼ばれるような刀をコールした。呼び出された刀はどこまでも黒く、妖しく妖美に輝く。
「さあ、俺と踊ろうや!!」
そう叫びながら瞬時加速でオルコットに向かって一直線に向かっていった。それも《第二世代》の機体とは思えぬ速度で。
「ビットはもう2つありましてよ!」
ギャリン!!!
そんなセリフを気にすることなくその刀を横へと振り抜き、オルコットのことをふっとばした。
どうやら絶対防御が発動しても衝撃だけは消えなかったらしく、苦しそうな顔をしたオルコットの姿が目に入った。
「ごめんよ、俺は負けるわけには行かねえんだ。」
「まだ、まだですわ…まだ終わってなど。」
「いいや、次で終わりだ。もうシールドエネルギーもそんなにないだろ。」
俺はオルコットの得意な距離で戦うために納刀し、先程まで使ってたレールカノンとレーゲンをコールした。
俺がひたすら弾丸をばら撒く中、オルコットはなんとしても当たらないようにひたすら回避行動を続けた。俺が最初やってたように、こちらを観察して隙を伺いながら、せめて一発でも当てようとしていた。
こいつ、いつまで回避行動を続けてやがる…?
そろそろレーゲンの弾丸も切れるが、リロードの隙でも狙ってるのか?
そう思った俺は、レーゲンのリロードをするフリをした。その瞬間、瞬時加速を使ってオルコットが接近してきていた。
「この時を待ってましたわ!」
そう叫びながらオルコットはミサイルビットだと思わしきものを放ってきた。この距離じゃ回避できない、誰しもがそう思った。
「残念だったな、次がんばんな。」
ルイはオルコットの後ろに居た、あの刀を持って。これから斬首による処刑だとでも言わんばかりに、先程と違い両手で持っていた。
そのまま、オルコットの首がある位置へと、まっすぐ振り抜いた。
「えっ……???」
誰もが首を斬られた、そう思うほどに洗練された動き、殺気を持って振り抜いていた。
だが実際にはその刀は首に当たることなく、寸でのところで止められていた。
「これは試合だぞ。仮に首を斬れなくとも、殺す可能性があることはしねえよ。」
他の誰でもない、刀を振り抜こうとしていたルイ自身の意志で。
『勝者、ルイ・フリューゲル!!!』
俺が勝ちだというアナウンスが聞こえてきた。どうやら寸でのところで止めたつもりだったが刀を当てただけでも絶対防御が発動していたらしい。
「ほれ、次の試合が控えてんだろ。さっさと戻って補給してこい。」
そう声をかけて、俺は自分も補給をするために自分の出てきたピットの方へと飛んでいった。
「え、あ、はい!」
返事が聞こえた気がしたが、俺は振り向くことなく戻っていった。
戦闘描写だけじゃなくて全部の描写書くの苦手です…。
あと就職活動のため投稿がかなり遅れました、申し訳ないです