「金が欲しい」
冒険者ギルドで、カズマはそう呟いてしまう。
先日の魔王軍幹部との戦いにおいて、活躍したパーティのリーダーから出た言葉とは思えない言葉。
だが、それはアクアが作った借金返済の為であった。
カズマ達の金欠はさらに切羽詰まっていた。
まつ毛も凍る冬の馬小屋生活から脱出しようとする。
「というよりもめぐみんは寒くないのかよ」
「いやぁ、ブレーザーさんがいつも炎を簡単に起こしてくれますし、こういうサバイバル技術がかなり高いので」
「・・・マジでアクアと交換してくれないかな」
そうしている中で、金を稼ぐ為に仕方なく雪精討伐というクエストを受け、雪山に向かう一行。
おとなしい雪精は逃げ回るばかりでクエストは案外楽勝で終わるかと思ったそのとき、雪精の主である冬将軍が現れた。
「冬将軍!?」
「雪精という雪玉の様なモンスターの主とされ、高額賞金がかけられている、特別指定モンスターの一体よ、こいつがいるから、雪精のクエストを受けないのよ」
「それを早く言え!!」
そのカズマの叫びと同時に、彼らを守るように、ブレーザーが前に出る。
「ブレーザーさん!」
それと同時に冬将軍は、カズマを始めとしたメンバーを無視し、その視線は、真っ直ぐとブレーザーへと目を向けていた。
それは、ブレーザーもまた同じだった。
真っ直ぐと、冬将軍を見つめながら、構えていた。
「これはっ」
それと共にカズマは思わず息を呑む。
このろくでもない異世界生活は多く過ごしてきた。
だが、その最中での異世界ならではのバトル。
それが、まさに、今、行われようとしていた。
「「・・・・・・・」」
しばらくの無言。
それと同時に、冬将軍は、何も言わずに刀を仕舞う。
それはブレーザーも同じく戦う為の構えを解く。
それを合図に冬将軍は、そのまま去って行く。
周囲には、雪精を引き連れて、そのまま去って行く。
「去って行ったな」
戦闘になると思い警戒していたカズマだったが、少し安堵してしまった。
「ジュワジュワジュワ」
「ふむふむ、なるほど、確かにその通りですね」
「ブレーザーさんはなんて?」
「冬将軍は人類に対して牙を向けた訳でもない。さらには倒しても得はない。
何よりも冬将軍は、この地に住む雪精を守る為に戦っている以上、それを倒すのはいけないとブレーザーさんは言っています」
「ブレーザーさん」
普段は、蛮族染みた戦いばかりをしているが、その思想はとても立派だった。
「ジュワ」
「あぁ!」
「あと、さすがに見逃してくれた冬将軍に悪いので、雪精は解放するべきだと」
「えぇ、良いじゃない!冬将軍は去って行ったんだから」
「・・・」
同時に、アクアの行動に対して、カズマは思わず呆れてしまう。
「ジュワジュワ」
「何よりも、季節の変化を無理矢理変えてはいけない。
それはやがて、取り返しのつかない事に繋がるから」
「そうかもな、けどさすがにこの寒さはこたえるぜ」
「ジュワ」
「それと」
「んっ?」
そうしていると、めぐみんはブレーザーから聞いた情報に対して、えっと驚いた顔をしていた。
「どうしたんだ?」
「先程、冬将軍から、春の訪れを早めたせいで、雪が解けてしまって、なっ雪崩が起き始めていると聞いたらしいです」
「「「・・・」」」
その言葉と同時にカズマ達は冬将軍達が去って行った方を見る。
それは、まるで山の怒りを買ったように、勢い良く雪崩が起きていた。
「撤退!!」
その叫びと同時に、全員が一斉に走り出した。
「カズマさん!カズマさん!どうしましょう!」
「良いから、逃げろ!死にたくなかったら、逃げろ!!!」
「ふむ、こんな寒い雪崩の中で閉じ込められるのはっ」
「お前は、この時も平常運転かよ!!」
まさしく、死神が後ろから迫っている。
カズマはなんとか周りを見る。
涙を流しながら逃げているアクア。
何かを興奮しているように頬を赤くしているダクネス。
思いっきり空を飛んで、その場から離れているブレーザーと、その背中に乗っているめぐみん。
「とぅ!」
「あぁ、何をするんですか!」
そんなブレーザーの脚を掴むカズマ。
対して、めぐみんは思わず叫ぶ。
「何、2人だけ助かろうとしているんだ!俺も乗せていけ!!」
「何を言っているんですか!この背中は私専用です!良いから、さっさと離して下さい!」
「いやだぁ!!離したら死ぬ!絶対に死ぬ!!」
「私も嫌よぉ!」
それと共にカズマが掴んでいる脚とは反対方向にはアクアが掴んだ。
それによって、バランスが崩れたブレーザーは、そのまま地上へと落ち、そのまま転げる。
「「「ぎゃああぁぁぁぁぁぁ!!」」」
そのまま、4人は雪の塊になって、転がり落ちる。
「あぁ、狡い!私もぉ!」
そんな様子を見ていた、ダクネスも、そのまま自分から巻き込まれる形で入っていく。
雪の大玉になりながら、雪崩からなんとか逃げると共に地上にある樹に激突する。
「げふぅ!?」
激突と同時だった。
カズマの頭は打ち所が悪く、そのまま死んでしまう。
その後、カズマがエリスと出会ったのは、ここでは語られない話。