ハナっから映像ありきでセリフと場面設計と配置を作ってるので、めちゃくちゃなことになっていることでしょう
なんやかんやで三話です
日本の夏は湿気の夏だ!
日差しの夏...とは中々言わないが、今年は事情が違った
なかなか雨が降らないのだ
夕立のひとつも見ることがなく、7月が終わるまで指折り数えて数日となった
「雨の一つか二つも降れば、少しはマシかもしれんな」
「雨粒が日差しで温水になったら面白いかもね」
「茹で上がるよ」
「シャワーだね」
冗談じゃない。外に内の代わりが務まるか
日差しが辛い。太陽が本気で殺しをしようとしているんだ
僕らは地上のノミだったのだ
「こうも暑いと...人間文明の終わりが200年以内というのも納得だな」
「悲観主義者の遼太郎からすればそうかもしれないけど、私は人間ならなんとかしちゃうと思うけどなあ」
「世界のあちこちで火種を抱えて、世界人口も少子化傾向にあり、アメリカですら移民という輸血で若さを保っている現在世界を見て尚のことそう言えるなら、どんなレッテルでも僕は受け入れるよ」
「根っからって感じだね」
地球も人間も限界に近いのかもしれない
加減を知らない浪費の果ての破滅とは、外から見る分には面白く映るのだろうな
「私、時間だから行くね。お父さんの畑手伝いに行かなきゃいけないから」
「畑って...喜羽に畑なんて立派なものがあるかい!」
「家庭菜園だよ、裏山のとこ」
家庭菜園ほどが出来るほどの平地なんて裏山にあったように記憶してないが...?
「僕も行く。見てみたい」
「期待してるようなものじゃないよ?行ったってつまんないと思うけど」
「だから行く」
裏山は昔、鶏小屋があった
4匹ほど鶏を飼っていて、毎朝そこから卵をとって朝ごはんにしていた
目玉焼き卵かけ、茹で卵、卵焼き...
最後に訪れた時にも、鶏の数こそ2羽に減りこそすれ飼育を続けていたが、そういえば今回の訪問で鶏を見ていないのだ
⭐︎⭐︎⭐︎
なんとなく察してはいたが、鶏はやめたそうだ
維持管理が大変で一年前に潰したそうな
「ナス育ててるんだ」
丸々と太ったナスだ
ちょっと痛んでるけど
「向こうで大葉、ミニトマト、キュウリ、オクラ、カボチャ。来て!」
畑の外れの方へ行くと、地面からぼこぼことなにかよくわからない物が生えていた
完全に不明な物体であった
「なにこれ...」
「ミョウガだよ。甘酢漬けにしても美味しいし、そうめんの薬味にも美味しいよ」
「これがミョウガ!?もっとこう、とうもろこしみたいな感じで、茎から生えてるものだと...」
「根っこなんだよね」
「つくしみたい...」
「全然違うからね?」
まじまじと見入ってしまった
なんだか面白い植物だなと思った
裏山は少し見ないうちに少し整備されたようで、掘立て小屋が建造されていた
おそらくは農業のための枝切りハサミなどを保管するための小屋として使われているのだろう
「ミホ!こっち!」
「行こ」
あれは啓治さんだ
「あれっ、そこのは...」
「暇だから付いてきたんだ」
「わざわざ畑なんて若い子が見たって面白くないでしょ」
「ミョウガは面白かったよ」
「え、ああ...あんなものいくらでも持って行ってもらって構わんけれど...ミホ、ミニトマトをボール一杯とカボチャ1球、キュウリを5本取っておいて。ピクルスと炊きカボチャにしよう」
「お母さんのカボチャ美味しいもんね」
「カボチャでカレーにしても美味しいなあ」
「じゃあ...」
ハサミを取りに行ったのだろう掘立て小屋へ向かって行った背中を見送ると、啓治さんは日陰に座ってペットボトルの水を一気に腹へ流し込んだ
側へ座るように促されたので座った
「暑いな」
「湿気もすごいね」
「そうだなあ、確かにあるかもなあ」
誤魔化しのように聞こえるが、湿気がないわけではない
「少年、久しいな」
「そこまででもないんじゃない?」
「ミホは日中どこをほっつき歩いているのかわからなかったが、君のところとはねえ。中々ヤるじゃないか」
「婿殿俺の酒がか?感心しないな」
開けられていないペットボトルを差し出してくる手を拒むと一言
「つれないねえ...」
「どんな下世話なことを想像してるのか知らないけど、あの子の幸せを親として願うなら今ここで僕を殺した方がためかもよ?」
「お宅、やっぱり...」
「いつまでも隠せるとは思ってなかったけど、いや、言うつもりもなかったよ?わかったんなら白状するしかないよね」
「いや、みなまで聞かんよ。そんなこと俺に言ったって意味がないなら言う必要なんてないだろう」
「大人の特権ですか」
「立派なものであるものか。特権にしがみつくのに必死で諦めた人間なんかにしょうがないよ」
彼にも理がたいことがあったのだろうなと思った
「どうしてそういう風に...いや、やめておこう。こんなこと聞いたってしょうがない」
「その方がいいよ。俺の勝手にあの子を巻き込んだんだ...可哀想なことをした」
「わかるの?」
「大人の、親だからね」
「子供のためにって言いながら、自分は真正面から子供に向き合っていないじゃないか。どんなに苦しんだか、一度話した方がいいよ。つまんない意地だ」
「世界はそんなに教的でないんだ...誰もが理的に生きられるわけじゃない。君も同じだ...」
今更響かないよ
そんなこと言ったって...
「似たもの同士だよ...僕らはそっくりなんだ」
「おじさんにそっくりなんて自嘲のつもりならやめておくんだね」
啓治さんも並々ならぬことを経験したのだろう...
或いは浪費か...?
どっちにせよ、彼もまたおかしな人なんだ
おかしい...かな
「暑いね」
「ああ、そうだな」
二人の間に言葉は要らなかった
そこには深傷を負った二匹の哀れな狼がいた
離れず接せず、そこに存在するだけで、二人は満足な奇妙な間柄だったのだ
互いが負った傷を見て、哀れだなあと互いを思うが、自分も相当に無茶をしていると気がついていないのだ...
この日は熊谷を僅差で抜き、喜羽は日本で一番暑かった
⭐︎⭐︎⭐︎
畑から帰って来て一服すると啓治さんは仕事へ行った
あの暑い中動いた後で仕事をしようなんて思えるのが不思議だ
「なんの話してたの?」
「世間話だよ...あと、宿題サボってないかって」
「ひーん...夏
「半ば同意かもしれない。休みなら休ませて欲しいな。これじゃなんのために休みだと言ってるんだか...」
「手慣れたからわかるぞ!遼太郎よ。次に君は『資本家社長にとって理想の従業員は高い教養を持って安い給料で文句を言わない労働者が理想だものな。そういう人間を作る制度を国が学校教育を通して整備しているんだ。国家ぐるみの奴隷工場だよ』と言いたいんだろう!」
「...」
「面白くない...?物言いとか口調とか結構頑張ったんだよ?必死に考えたんだよ?」
「面白いかもな。僕は笑わないが」
「面白かったなら笑えー!」
面白くないから笑ってないのだけれど...
まあ、いいか
⭐︎⭐︎⭐︎
夕方、朝からいなかったばあちゃんが花束を抱えて帰って来た
「明日、墓参りに...」
「あ...そうだね」
「無理せんでええぞ?行きたくなかろう」
「いや行く。行かねば死ぬぞ臆せば恥と心得る」
とは言ったもののストレスと吐き気で結局朝まで寝れずに徹夜してしまった
朝方八時ごろに墓参りに参った
盆前に墓参りをするのはこの日が祖父の命日だからだ
なんだかんだ不思議なもので、墓を見ると気が楽になった
恐れていたものはあんまり大したことではなかったかのようだ
暑くなる前に掃除を終わらせてしまい、五供を供えた
「終わらせてみれば、なんだか晴れやかな気持ちになったような気がする」
「いつでも見守ってくれてるよ」
「看取れなかったのに?」
「そこまで小さな器で逝けるものか」
そうかもしれないなあ
生的なしがらみから解放されると菩薩のようになるのかもしれない
「僕もそうなれるかなあ。境遇は同じだったと思うけど...」
「さあ帰るべ。キュウリの浅漬けと糠漬けを手伝ってくれるかね」
⭐︎⭐︎⭐︎
浅漬けと糠漬けを手伝ってから部屋へ戻って、課題を進めようとしても身体がちっとも動かなかった
動きたくなかった
なんだかポッカリしてしまった
すべきことは山積みなのにどうにも手につかない
仕方ないから午前中から昼寝をしようと目を閉じたがどうにも眠れない
夜は寝ていないから眠れるはずなのに眠れない
「苦しい...」
息が苦しい
「聞こえないフリをみんなしてするんだ...僕を本来的に理解しようとしないんだ...大人なんだ...」
いつかはやらなきゃいけないことで、その責任をいつ取るかだけだったのに、なぜこうもスッキリしないのか
呪うなら徹底的に呪い殺して欲しかった
殺される気だったのに死ねなかった
生殺しの気分だった
おや、あれはミホさんではないか...
開けっぱなしの縁側から声をかけてきた
「遼太郎!」
「なんだよ...」
「日差しキツいね!」
「...それで?」
「それだけ!」
能天気でいられたらと思うけれど、彼女も能天気に見えるだけだ...
「今日はさ?暑いから川へ涼みに行こうよ」
「暑さで干上がってるんじゃないの?もしくはお湯になってたりして」
「さっき見たら流れてたよ。あと冷たかった」
「一人で行ってくれるかな。今日は閉店日なんだ」
「暇そうにしてるのに?」
ざわざわとした声だった
ワード自体に暴力性はないが、特異な形で刺さる時には本気で刺さるワードだった
「暇そうで悪いか?」
「『君の言うように夏
ニマニマしている
「最近僕のことからかいすぎじゃない?」
「暑いのに涼まなくていいの?あんまり暑いと本当にやばいよ?この暑さでケロッとしてる人相手に言うのも変かもだけど...」
「行きたいなら一人で行けよな。僕は構うほど暇してるわけじゃ...」
「小川でも一人だと色々怖いんだよ?万一溺れて死にかけたら遼太郎の責任です。あーあ」
「あの小川でも溺れるなんて...水に浮くのがやっとの虫じゃあるまいし大丈夫だろ?」
「ねえ、なんか今日機嫌悪くない?」
「君のせいでな」
「来る前からだったでしょ。普段は来たら課題やってるのに今日に限っては寝てるし不貞腐れてるじゃない。おキヨさんと喧嘩した?」
「なんでそうなるんだよ」
「行こうよ、小川」
生まれて初めて人を本気で殴りたいと思った
「僕はサンダルがないんだぞ。靴だぞ靴。サンダルならいざ知らず靴だぞ。一人だけ川で涼んでいるのを側から見てろなんて嫌だ」
「サンダル貸してあげよっか。お父さんのだけど」
「いらないって言っても持ってくるんでしょ」
「持って
「手筈はいいのにどうして効率的に課題を進めていかないの?ねえ...ちょっと、これ...」
まあ俗にいう、便所スリッパだ
こんなものを使ってるのか?
「そういうと思って」
「当てつけェ?」
また手の込んだ嫌がらせを...
「お父さんのなのは本当」
そんなこと聞いてないしどうでもいい
「うえー...」
「行こう、暑いよ」
⭐︎⭐︎⭐︎
この喜羽という地域には足首までしかないような、「これで溺れるってどんだけ」という小川がある
ちょっと深いところで膝下程度でそこが最深
本当にしょうがない川である
一応一級河川に流れ込む川ではあるが、喜羽はだいぶ上流なので、「一級河川の一員か?」疑いたくなる
「まあ、確かに足首まで浸けると涼しく感じるね」
「来てよかったでしょ」
かどうかは怪しい
「うーん」
「腕も冷やすと涼しいよ」
「首筋を冷やすといいんだよ、熱中症でもそうするといいと聞く」
「そう?でも髪が濡れるからやめておく」
涼しいとはいえ、少しクラクラする
川辺に座った
「遼太郎は誘えばちゃんと来るんだね、勉強になったよ」
「そんな余計なこと覚えなくていいからちゃんと勉強なさい」
「いちいち先生みたいなこと言うね、【規制】説教おじさんっぽい」
「悪かったな、おじさんで」
「でも、そういうのいいと思うよ。義正の心があるんだ」
褒めてるのか貶してるのか、本気なのか冗談なのか、よくわからないテンションで話をするからあまり本気で向き合ってはいけないんじゃないかって...
「暑さがここまでキツいとは...意識しなければよかった」
「日差しのせいでもあるよ?直射日光を浴びると暑く感じるからね。普段日光浴びないでしょ、だからあの暑さでケロッとしてるんだ」
「そうだね、それもあるかもね」
暑くて涼しかった
矛盾していてもいい、だって事実だったから
「遼太郎は面白いね。そういうところ、結構気に入ってるよ」
「そう、そうかい」
ちょっと頭痛がするのは、日射病だからだと言い聞かせた
もっと外に出て、歩いてみなくちゃいけないなあ
あとがき
一個だけ答え合わせをしましょう
つくしはシダ植物門トクサ科でミョウガはショウガ科なので実際には全く関係のない植物です
もっといえばつくしは胞子嚢でミョウガの可食部は蕾です
ここまで書けば、なにを言いたいか。もっといえばなにをやりたいかがわかると思います
答え合わせは終盤に明らかになるでしょう(フフフ