一般通過古参シャーレ生徒と銀鏡イオリガチ恋先生   作:何もかんもダルい

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短編でざっくり終わらせようという試み。


問.ガチ恋が及ぼす経済・政治的被害について答えよ。(1/3)

「女子高生にガチで恋する成人男性ってどう思う?」

「自供っすか、潔いっすね」

 

 こんにちは、あるいはこんばんは皆様。私の名は伊庭ススキ、ちょっと事情があってトリニティからゲヘナ、そしてミレニアムからの無所属と転校を繰り返した16歳女子です。

 私の目の前で性犯罪疑惑を自供した眼鏡の男は連邦生徒会直属部活「シャーレ」の顧問、通称「先生」。

 

「まだ私と決まった訳じゃないだろ」

「褐色銀髪ツインテールが性癖とガチレズ相手に自供した男は誰でしたっけ」

 

 私はシャーレの所属の中でもいわゆる古参、先生とは発足当初になんとしても取り入って食い扶持稼ごうと門戸を叩き土下座を敢行した仲でございます。

 当時は食う物着る物寝る場所全部に困っておりまして、この機を逃してなるものかと気炎昂らせプライドをその辺に捨てたもんです。

 

「相手がそうと決まった訳じゃない」

「いやもうピンポイントすぎて心当たりが一人しかいねぇんですよ」

 

 矜持もったまま死ぬか泥水啜って生きるか選ばされたら何の躊躇いもなく矜持捨てる女なので夜伽くらいはまあしゃーなしくらいに思っていたのですが、衣食住完備時給800円(残業代あり)で悠々自適に部室の設備を使わせて頂いております。まっこと、先生には感謝の念が絶えぬというもの。

 ですがまあ、ねえ?

 

「ロリコンはちょっと擁護できんっすわ」

「イオリはロリじゃないだろ良い加減にしろ」

「今言ったなぁ全部なァ!?」

 

 花の女子高生に本気で懸想する成人男性はちょっと勘弁なんですわ。あと私恋愛対象は女なので野郎はね?

 

 

 唐突ですが、先生は大変おモテになります。それはもう会う生徒会う生徒みーんなポッポポッポと鳩ぽっぽみたいに擬音出るくらいおモテになりやがるんです。その女少し下さいよ

 失礼、性欲が漏れました。最近女日照りなもんで。

 

 まあとにかく。そんな女なんざより取り見取りの先生だって現代の倫理観で生きる一人の男、学生はダメとか一途とか色々ある訳です。

 そんな中で現れた一人の少女、名前を銀鏡イオリ。褐色銀髪ツインテールな悪魔っ娘、それでいて規律を重んじる真面目な性格……と。

 

 もうめんどくさくなったんで言いますとガワも中身も先生の好みドストライク一直線だった訳でございました。

 私? 私は野郎より女の派閥ですので。ナギサ様の初恋奪ったのは許してねぇからなこの野郎。あの思い詰めすぎて不安定なとこが良いんだろうが。

 

とっとと告れこのヘタレが眼鏡割って手のひらブッ刺すぞと言いたい所なんですが問題があります」

「今の罵詈雑言以上の問題なんてある??」

「めちゃくちゃいっぱいあります」

「めちゃくちゃいっぱい」

 

 この野郎自覚ないんかい。

 

「今アンタが本命カミングアウトしたらキヴォトス乙ります」

「そんなこたぁないでしょ」

「想定される事象列挙してやろうじゃねぇかこの野郎」

 

 この野郎自覚ねぇわ(再確認)

 ということでホワイトボードを持ってきて各校の名前を書いていき、次いでその下に各校の代表生徒(この場合はシャーレに所属している生徒たちですね)を羅列していきます。こう見るとやっぱり多いし実力者ぞろいですね。より取り見取りかよ興奮してきたな?

 おっと失礼。また欲望が漏れました。ちょっと近いうちに合法的に発散しないとマズくなってきましたかね、最近抑えが利かないんですよね。はぁナギサ様の羽に包まれて眠りてぇ。

 

 

「まずは彼女の所属であるゲヘナから行きましょうか」

「……あんまり納得はいってないけど――――」

「まずゲヘナの行政機能が死にます」

「初手終末」

「ただしテロリストも沈黙するのでゲヘナがゴーストタウン化します」

「ゲヘナ轟沈!?」

「ゲヘナ轟沈です」

 

 まあ2大テロリストと風紀委員のトップ、そして生徒会である万魔殿(パンデモニウム・ソサエティ)がシャーレに所属してる時点でお察しってやつですね。事実上のトップであるマコトさんは書類を読み込む程度の頭はあるんですがいかんせん悪だくみがアホすぎて役立たずかと。

 

「……いや、悪だくみがアホなだけで普通に行政させたら割とマトモなのか……?」

「ススキ?」

「ああすみません、思考が逸れました。とにかく、シャーレ所属メンバーはほぼ全員アンタにお熱と思ってもらって良いです。つまるところ何の策もなしに行った場合、ゲヘナは生徒会長たるマコトとその直属、そして数少ないシンパだけがまともに稼働できる状態になるので実質スラム化ですね、おめでとうございます」

「前提条件がだいぶ狂ってる気がするんだけど」

「狂って無いです、現実を直視してください。続けますね。恐らくその1週間後程でしょうか。暴動が起きます

「シンプルにヤバイ」

「シンプルにヤバいです。こうなってしまったらもうアンタはゲヘナ行かない方が良いですね。簀巻きにされて一生どっかに監禁されるかやつれた顔の生徒に今にも泣きそうな笑顔で祝福されて心が死にますよ」

 

 無言で呆然としてますね。そりゃそうですよ、釣った魚水槽に入れたと思ったら餌あげるだけあげて放置とか大惨事確定です。むしろシャーレに来てから色々な学校の生徒と関わるようになった聖園さんの方がメンタルしっかりしてきてますよ。トリニティの外を知るってだけでもあの人にはかなりの特効薬だったようです。自由奔放と見せかけて変なところでクソ真面目なんだからメンタル病むんですよ。自分に対する理想ばっかりでっかくなりすぎて現実と均衡取れなくなってるんですあの人。

 

 やけに入れ込むなって? 親友をいつものイタズラのつもりで殺したなんて誰だって頭おかしくなりますよ。結果的に偽装工作だから良かったものの、あれで本当に死んでたら再起不能になってますよ彼女。

 頭こそおかしくならなかったものの、「悪い子」「悪い事」はもう彼女の中でPTSDクラスになってるんです。ほんの些細なことでも自分が悪いという事実に心が耐えられないんですよ。()()()()()()()()()()としてはそりゃあ気に掛けずにはいられないってもんです。

 

 ……話が逸れましたね。今は彼女の事は良いでしょう。むしろ最優先で頼るべき相手ですので。

 

「……ま、ともかくゲヘナが復旧するには暴動を経て……だいたい1か月ってとこッスね。混乱期に入るまでの1週間で何ができるかが早期収束の要です」

「大惨事過ぎて頭が痛いんだけど」

「この規模があと2つ残ってるんすよ、気張ってくださいね」

 

 そうなんです。何が問題かってこの規模の問題があと2つは最低でも起きるんですよ。ああいや、運が良ければ1つで済むかもしれませんが……うん、期待しない方が良いですね。

 続いてトリニティへと移りましょうか。ぶっちゃけ此処が一番ドでかい問題点なので。単純に所属する生徒数の多さもありますが、生徒数の多さが機能マヒに繋がり得る組織の多さに繋がるのがシャーレの痛い所。

 

「次にトリニティですが、ゲヘナよりは問題は表出しないでしょうね――――表向きは」

「うん、それは何となく分かるよ。何より普段の平静を保とうとするだろうね」

「ご存じなようで何より。まあ表が平静であることと裏側は関係ないんですけど」

 

 肩を竦めて、ティーパーティーの文字列に赤で線を引きます。

 

「まず相手がゲヘナなのでトリニティ首脳のナギサ様がエデン条約頃の疑心暗鬼モードに陥ります」

「もう駄目そうなんだけど今すぐナギサの所行っていいかな?」

「カウンセリングは後にしてください。どうせどこも似たような事になるんで」

 

 悲しいけどこうなるんですよね。ゲヘナが相手になると正義実現委員会とかいう最大の武闘派がまったくクソの役にも立たないので。今のうちにハナコさんをけしかけて……やり過ぎるので駄目ですね。彼女、ああ見えて一度「やる」と決めたら徹底的にボロボロにする苛烈さがあるんで「やり過ぎる」事態に陥りかねません。むしろミネ団長やサクラコ様あたりを押し付けて鎮静する方が良いです。正義実現委員会は委員長のツルギさんが実力者の暴走を軒並み抑えてくれるハズなのであんまり心配は要りません。ゲヘナ嫌いが故に頼ることも難しいですが。

 

「総じて言えるのは、表向きが普段通りなだけに抑え込んだものが爆発すると手に負えない可能性が高いってことです。まあ間違いなく此処も近寄らないが吉ですね。もしどうしても誰も頼れないなら補習授業部か自警団あたりに秘匿回線でも何でも使ってコンタクト取ってください。彼女達なら何とかしてくれるでしょうし、自警団ならおまけでスイーツ部も動かせるかもしれません」

「スイーツ部……? ああ、レイサか!」

「そういうことですね」

 

 レイサさんが大真面目な顔で動き始めたとあれば、あの元キャスパリーグことカズサさんも動いてくれる可能性が高いです。あの人も大概感情重いですが、少なくともレイサさんが孤軍となる可能性が高いなら味方に回ってくれる確率も高くなります。

 

「総じて言えるのは政治的な、それこそ謀略やゲヘナへのヘイト感情による攻撃に晒される確率が高く、そして一個人として信用していればいるほど裏切りに遭う可能性も高いので前述の2団体へのコンタクトをオススメします。各組織のトップは自身の部下を抑えるために動けなくなる確率が高く、表面上の安寧が終わればゲヘナとの全面抗争に入る可能性も捨てきれませんので」

「……分かったよ。あとは……」

「ええ。あまりお勧めは出来ませんが……」

 

 聖園ミカさん。キヴォトスの個としての最高戦力の一角であり、おそらく大半の生徒相手に一方的な破壊を繰り広げられるだろう決戦存在。

 ティーパーティーではあるものの個人として先生に入れ込んでいる彼女であれば、「先生の幸せ」のためなら所属を越えて協力してくれるかもしれませんが……

 

「個人的には反対ですね。これ以上あの人に人間の汚さはぶつけたくない」

「……そう、だね」

 

 彼女はお姫様が夢だといいますし、実際彼女自身お姫様みたいな人です。ですが、それは裏を返せば「自分はそんな理想にはなれない」ということを誰よりも理解していることに他なりません。ぶっちゃけもうちょっとくらい理想に生きてもいいんじゃとは思いますが、そうやって生きるには理想に生きる人の苦しみや醜さを見すぎたんでしょうね。

 ……ああ、駄目ですね。こう言うことを考えるとイライラしてしょうがないです。ちょっとした拍子に全員ボロカスにして膝をつかせたくなります。

 

 ふと時計を見ると、先生の予定が入っている時刻まであと30分ほど。

 

「……と、まあ途中ではありますが切り上げましょうか。これからアビドスに向かうんでしょう?」

「え、あ、本当だ」

「移動手段がヘリとはいえ、あんまりギリギリに向かうのも迷惑なんでさっさと行っちゃってください。アンタの決済必要なもん以外はこっちで捌いとくんで」

「うん、ありがとう。行ってくるよ」

 

 上着を羽織り、「皆の先生」としての顔になったことを見届けてから先生の代わりにデスクへ腰掛け、書類に目を通していきます。

 デジタル化が進んだキヴォトスだからこそ、重要な書類というのはだいたいアナログで管理されているんです。紙ならハッキングとか関係ないですし、最悪ドラム缶にでも詰めて火を放てば抹消できるので。

 

 ……シャーレ発足からこっち、ずーっとここに入り浸っている私ですが。先生の女たらしっぷりには参りますよ。

 キヴォトスという巨大な学園都市は、学業が先鋭化し過ぎているんです。形としての学校や授業はありますが、だいたいはオンラインや記録媒体での自習に近い形で済んでいます。それは逆に言えば、行ける人はどこまでも行けるし、躓いた人は誰も助けてくれないということ。

 教師という職業はほぼ形骸化し、生徒へ寄り添う事は滅多にありません。此処で良い職に就いてる大人が大概ゲスでカスなのはそういうことですね。自分のやりたいことに専念できるし、ソレで蹴落とすのはいつだって自分より立場の弱い子供達。そりゃあ道徳なんて培われず腐っていくというもの。

 そんな中に自分に親身になって、そしてちゃんと問題を解決してくれる大人が現れたのなら――――まあ、悔しい話ですけどホの字も仕方ないって話です。おまけに顔が良くて性格も良くて仕事もそこそこできて頼りがいがあるくせにふとした拍子に弱みを見せて……なんだお前女を堕とす為に生まれてきたのか?

 

 まあ、そんなこんなで神みたいなあの人だってちゃんと一人の人間であるわけで。

 

「なんで、宜しくお願いしますね、ワカモさん」

「……気付いていらっしゃったのですね」

「そりゃあ、まあ。シャーレでもお互い結構な古参ですし」

 

 いつの間にか背後に居た狐面に、いつもよりちょっとだけ真面目な顔でお願いをします。彼女がシャーレに来た日は流石の私もビビり散らかしたもんですが、その理由はといえばなんとまあ一目惚れ。以来紆余曲折あって、彼女は先生の幸せのためならばと自らの意思で滅私奉公している次第です。……まあ、方法があまりにも破壊に寄りすぎて頼れる場面が少ないのが玉に瑕なのですが。基本はブレーキ役の先生とセット運用です。単騎ダメ絶対。

 

「『鬼大蛇(おにおろち)』とまで呼ばれた貴方が随分と丸くなったものです」

「人ってのは幾らでも変わるもんですよ、『災厄の狐』さん」

 

 ワカモさんの声は棘があります。大方何かが気に食わないのでしょうが、まあそんなことは知ったこっちゃないです。それにしてもいい太ももですよね。スカート丈とスリットも相まって素晴らしく煽情的というかもういっそダメ元で押し倒したくなるというか――――

 

「撃ちますよ?」

「すんません」

 

 また煩悩が溢れてしまいました。いい加減ヤバいですね。どうにか発散したいのですが、シャーレ古参の私が女に溺れるというのはとても外聞が悪いので抑えざるを得ません。お金は有り余ってるのでレッドウィンターの同人誌でも買い漁りましょうか。

 そんなことを考えていると、何やら神妙な視線。仮面越しの金眼が此方を射抜いていました。

 

「何か?」

「……貴女は、どうしてそこまで先生に尽くすのですか?」

「どうしてって、そりゃあ家を守るのは当然でしょうに」

「――――ま、まあそうですわね、此処に住んでいるのですものね……ってそうではなく!」

「何だっつーんですか。言っときますけど私の恋愛対象女なんで先生はアウトオブ眼中ですけど」

「よぉーく存じております! だからそうではなく!」

 

 やたらと興奮した声でまくしたてるワカモさん。何なんでしょうかね。そこまで怒らせること言いましたかね。

 そう思っていると、不意に仮面を外しました。その下から現れたのは至極真面目で、剣呑な表情。お綺麗な顔ですが、こういう顔をされると私も真面目にならざるを得ません。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()貴女が、どうしてその真逆の行いに手を貸すのです?」

「……」

 

 ちょっとびっくりしました。そんな事を()()聞かれるとは思っておらず。

 そうやって呆けた後に、しっかりと彼女の目を見つめます。こればっかりはきちんと答えないといけないので。

 

「それが、何より無意味だからですよ」

「――――」

「怒りのままに暴れるのって、とっても虚しいんですよ。そして、何にも浮かばなくなるんです。空っぽになっていくんです。……それは、駄目な事でしょう?」

 

 ――――ワカモさんは、呆けた顔をしていました。




Tips
伊庭ススキ
 所属学園無し、シャーレ専任生徒。この世界においてはユウカやワカモを差し置いて最古参。過去にいざこざがありトリニティ、ゲヘナ、ミレニアムと転校を繰り返した経歴がある。
 使用する武器は基本その場で拾っており、「弾が出ればそれでいい」というキヴォトスにあるまじき思想の持ち主。

・戦車の履帯に素手で爆弾を捻じ込んで擱座させ、そのままバールでハッチをこじ開けて蹂躙
・装甲車の衝突に合わせて取り付き、搭乗口のロックを対物弾の暴発で破壊、そのまま内側から再起不能にする
・電磁力発生装置を電子機器に押し付けて中から破壊
・銃器の駆動部に金属片を差し込んで暴発、ジャムなどを引き起こす

 ……など、とにかく機械類や複雑な構造のある道具の破壊に長けている。
 黒のメッシュが入った長い茶髪と焦げ茶色のマフラーがたなびくシルエットから「鬼大蛇」の異名があった。
 時間があると思考を巡らせる癖があり、それ故に考え方が転校してきた各校の在り方とそぐわないことも多い。
 あとガチレズ。桐藤ナギサをそういう目で見ている。

先生
 銀鏡イオリに本気で恋する一般成人男性。事案。
 それはそれとして生徒を平等に見る良識も持ち合わせているため、本来の世界線の先生と変わらない八面六臂の活躍を見せている。
 片手にトラブル避けのための指輪をしているが、それがフェイクであることはシャーレ所属生徒全員にバレている。何でだろうね。

ワカモ
 先生ガチ恋勢。チャンスがあるなら当然狙うが、「でも幸せならOKです」を地で行くシャーレの破壊神。
 鬼大蛇と呼ばれていた頃のススキを知っているため、彼女の目には今のススキがかつてとはまったく真逆の性格に見えている。
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