一般通過古参シャーレ生徒と銀鏡イオリガチ恋先生 作:何もかんもダルい
お盆までの辛抱だ……多分…………
――――今思えば、たった1年半の間に尖りに尖りまくってたと思う。
3ヶ月で短気を拗らせて追放、また3ヶ月で問題を起こして出奔、そして最後の3ヶ月は比較的大人しくはしていたけれど反りが合わなくて自主退学。残りの6ヶ月で荒れに荒れまくった。
キレている間は楽だった。目に映るものを片っ端から壊していれば勝手に向こうからビビって逃げるし、それで懲りないなら懲りるまで殴り飛ばしてやればいい。
怒って怒って怒り続けて……結局、それが何より無駄で無意味で無価値だと気づくまでに掛かった時間が1年半だった。
無意味な過去に気付いた頃には衣食住全部失っていたのは我ながらお笑い草だ。何せ半年近くホームレスやってたことになるんだから。
シャーレ専任になるまでの経緯はそんなものだ。他の誰よりも薄っぺらい自信すらある。
だから、それでおしまい。これでいいのだ。
「これまで」が空っぽだから、「これから」で埋めようとするちっぽけな人間。それが私なのだ。
◇
「はァナギサ様に膝枕されながら息を引き取りてェ~~~~~」
「おかえりの代わりに拗らせた性癖ぶちまけるのやめて欲しかったな」
先生の執務机に突っ伏しながら妄言を垂れていると本来の持ち主がご登場されました。
時刻は午後22時。書類をほんの10分前に捌き終えた私ことススキはもう疲労困憊です。ナギサ様の羽で作った羽ペンで感触を指先に刻み込みながら書類作業して私の手垢を刻み込みてぇ。
おっと欲望が。
「で? 今日は何人食ってきたんです?」
「一人たりともやってないけど!?」
「嘘吐かなくていいんですよ? 押し倒されたら抵抗できないでしょうし」
からかうとマジ顔で否定してくるのが面白いのなんの。ぶっちゃけ一人くらい食ってても不可抗力扱いできそうな気もしますけど、バレると連邦捜査部が連邦不純交遊部になってしまうのでね。自宅で知人の喘ぎ声は聞きたかねぇんだ。
「ということで営みは各校の使われてない部屋とかでお願いしますね、ハイこれ先生の決済必要な分です」
「既に複数人食ってる前提で話すの止めてくれないかな」
「何を今更……えっ?」
「え?」
唖然です。
まさか、まさかとは思いますが。
「未だ……童貞……ッ!?」
「いやキヴォトスの外にいた時に初体験は済んでるよ」
「よぅし今日はピザ頼んで宴会ですよ。先生のビールも解禁です」
「動機が最低すぎてまっっっったく喜べないんだけど」
道理であんだけより取り見取りのナイスバディ達に猛アピールされても靡かない訳です。
……おや? しかしそうなると解消された疑問と裏腹に、浮かんでくる疑問もあります。
「お相手とはどうなったんです?」
「残念ながら破局。って言っても私が高校の頃の話だし、もう踏ん切りは付いてるんだけどね」
「あーらら、それはまた」
御愁傷様といえばいいのかどうなのか。まあとにかく初めては名前も知らぬ誰かにゲットされていたということで――――
「…………?」
「どうしたの?」
「ああいえ、単なるモモトークの通知です。ご心配な――――」
モモイ:先生に元カノ居たって本当!?
「先生」
「ど、どうしたの急に真面目な顔して」
「今すぐアビドスへ高跳びしますよ、巡航ミサイルがシャーレに降ってくる前に」
「本当に今この数秒で何が起きたの!?」
何も起きてないから高跳びするんですよ。
はえーんだよ噂広がるのがさぁ!?
◇
「つまるところ、ヴェリタスに偶然遊びに来ていたモモイがコタマの盗聴音声(音漏れ)聞いちゃって勢いでススキにメッセ送ったと」
「聞いたのがセミナーじゃなくてよかったッスね。もしそうだったら今頃鬼電来てますよ」
「ススキ、その携帯」
「ああ発作起こしちゃいましたかフンッ!!!」
一気に力を込めつつ壁に叩き付けることでスマホ破壊を代償に震える手へ衝撃。これで痙攣も収まるでしょう。
「すいませんね、若年性アル中なんで手が震えて。今はもう大丈夫です」
「言い訳の字面が酷すぎる……」
ミレニアムの生徒も大概感情重いんですよね。ユウカさんとか見てくださいよ、私と秒を争う速度でシャーレに来てそのまま先生の財布握りましたからね。しかもその後芋蔓式にセミナーからのC&Cからのゲーム部からのヴェリタスからのゴタゴタですよ。ぷ◯ぷよだったら1連鎖見た瞬間詰みを確信する感じのアレです。
「そういえばこの間の話だけど……」
「ああセミナーなら1週間くらい行政全部止まるんで先生が過労死するだけです」
「一番問題だよ」
実際ドデカい地雷ではあるんですよ。多分自治区で権限握ってる大半が病むか暴走するんで。でもまあ政治的問題かって言われると首を傾げざるを得ないといいますか。
というか20にもなってない子供に政治させるとかキヴォトスぶっ壊してやろうかとか先生以外ロクな大人いねぇじゃねぇか全員手首捻るぞとか思わんでもないんですけど。お前らに言ってんだぞカイザーおよびゲマトリア共。一番忙しい時にもっと忙しくなる真似ばっかしやがって三下がよ。次見つけたら爪先から1枚1枚スライスして生ハムの山にしてやるからな妖怪赤肌ババアが。
「いつも思うけどススキって子供っぽさあんまり無いよね」
「そうですか? 私ほど我儘な女はそう居ないと思ってるんですけど」
「いや、いい意味で大人びてるというか」
そんなもんなんですかね。いろんなもの見て聞いて考えてりゃ大抵気づくと思うんですけど。
まあそんなこたぁいいんですよ。チラッと見えたシッテムの箱の画面でアロナちゃんがパンッパンの鬼電通知抑え込んでギャン泣き1秒前でしたけど対処するのは先生なので今は問題なしです。
「で、なんで私達アビドスに避難してるんだっけ」
「鬼電からの詰問と尋問を避けるためですね」
「詰問と尋問」
「多分根掘り葉掘り聞かれますよ、マジで」
その場にいた私もついででな。
「これはどう伝わったかによるんですけど、最悪私が先生の元カノ扱いされます」
「飛躍しすぎじゃない???」
「恋は盲目って上手い言葉だと思いません?」
ここで「踏ん切りは付いてる」までしっかり伝わってるなら良いんです。先生の高校時代っていうと少なくとも私もまだクソガキなんで。
問題は「初体験は済んでいる」で終わってる、およびそこだけ切り抜かれて噂になってる場合です。
誰と?→そういう仲なら距離感は近いはず→一番先生に近いのは?→伊庭ススキ。こうなろうもんなら――なってたまるかとキレたいんですけど恋は盲目なんですよね――とんでもない目に遭うのは確定なので、比較的各校から距離があり陸の孤島であるアビドスへ一目散です。どの道詰められますけど人数少ない分まだマシです。
◇
「で、先生とはどうだった?」
「だから元カノ私じゃねーっつてんすよ
「嘘はよくない」
「なんで嘘つく必要あるんすか先生の先生の使用履歴に」
「そ、その、そういうのって痛いって聞くけど……」
「私ゃ処女だっつーの」
「――――幾ら必要ですか」
「カード出すんじゃありません」
はい。
めんどくせーなぁ!!!
Tips
・固有武器「誰かからの鎖」
ミレニアムの素材開発の部活によって造られた特殊合金を両端に錘のついた長い鎖へ加工した迎撃兵器兼捕縛兵器。ススキが扱うとまさしく蛇のような挙動で縦横無尽に、かつ弾丸と遜色ない速度で錘が襲来する。
閉所では扱いづらいかと思いきや空間全域を鎖が占める状態になり、逆に回避困難になる。
戦闘時、攻撃威力常時+20%、攻撃1回ごとに射線上に1本、フィールド上にランダムに1本「鎖」が設置され、当たった相手は10秒行動不能になる。これは敵の投擲系攻撃(爆弾、ミサイルなど)にも適用される。
・伊庭ススキの戦闘
ゲーム的にはアリスが近い。1発ごとに間隔が開く一方で他の生徒を圧倒する高火力を叩き込み、スキルによって一撃で粉砕する。
描写であれば振り回して投擲された鎖があちこちバウンドしたり柱とかに引っかかって急激な方向転換しながら蛇のように襲い掛かってくる。下手に引っ張って制御を奪おうとすると本人がその勢いを利用して突っ込んで飛び蹴りしてくる。