理子ちゃん(ストロベリー風味)   作:呪術使えない

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理子ちゃん(ストロベリー風味)

「あなたは天元様となり、呪術師界の礎になるんだ」

 

「てんげんさま……?」

 

 物心ついたばかりの時、私はそう言われた。

 そんな私は転生者だった。天元様とその単語を聞いて、まるで桶の底が抜けたかのように、閉じ込められた記憶が流れ込んできた。

 

 呪術廻戦、大人気漫画……今世はなんと、私はその過去編に登場するヒロインだった。

 

 私の名前は、天内理子。星漿体……つまりは天元様がスカルグレイモンにならないように、コロモンからやり直すための生贄だ。私の体に乗り移ることで、コロモンになれる感じだろう。

 

 そんな悲痛な運命を背負った彼女だが、いろいろあって、なんと殺されてしまう。

 つまり、私は死ぬのだ。たったの十四歳くらいで。

 

 ただ、今の私は年端もいかない幼女だ。十年も先のことを考えてもしかたない。

 

 私は未来を知る者としてのアドバンテージを発揮させてもらうとする。

 

「くろいー!」

 

「なんでしょう、理子様」

 

「にんてんどーのかぶかうのー! ありったけー!」

 

「へ……?」

 

 ふ、これが未来を知る者のアドバンテージだ。

 

 

 

 ***

 

 

 

 黒井とマリカーをして過ごしていたら、あっという間に十四歳になってしまった。

 今の時代はゲームキューブ。DSは発売され、Wiiはもうすぐ発売だった。

 黒井に買わせた任天堂の株はそんなに上がっていない。なぜだろう。これがバタフライエフェクト……。

 

 それはともかく、特に呪術廻戦っぽいイベントもなく今まできた。外出は必要最低限、私は存在を秘匿されて過ごしていた。学校には行くけど、コロナの新しい生活様式ばりに外出しなかった。黒井とマリカーをして過ごしていた。

 

 星漿体……つまりは私が生贄になってしまう件だけど、まぁ、漫画の理子ちゃんが十四歳で死んだから、私もそれ以上生きる気分にはなれなかった。

 

 私は、憑依転生だろうか。呪術廻戦で言えば、受肉のようなものかもしれない。だったら、もともとの理子ちゃんの魂は沈んでいると考えるのが妥当だろう。

 

 あぁ、原作では理子ちゃんは最後、天元様のコロモンになることではなく、天内理子として生きることを望んでいた。

 友達ともっと一緒にいたかっただろうし、黒井とももっと家族でいたかっただろう。あとWiiでマリカーもしたかったはずだ。

 

 そんな理子ちゃんをさしおいて、私が長生きをするつもりにはなれなかった。

 だからこそ、私のやるべき使命は一つ。

 

「理子様……理子様が星漿体だという情報が、外部に流出しました」

 

「それは大変じゃな」

 

 これから呪術高専から護衛に来る……五条悟、さらには夏油傑。この二人の任務を未来を知る私が成功に導いてやることだ。さらには、夏油傑の高専からの離反を防ぐ布石を打つ。

 

 そうすれば、この先に待ち構える悲劇の数々を未然に防ぐことになるだろう。大仕事だ。

 ま、百年後、二百年後は知らないけど、それはそのときの人間がどうにかすればいい話だ。

 

 やることは決まっている。あとは時間が来るのを待つだけだ。

 

 

 

 

 私の暮らしていたマンションが爆発した。すごい爆発だった。これは、死んだかも。

 

 

 

 ***

 

 

 目が覚める。

 私は爆発で気を失ってしまっていた。

 

「あ、起きた」

 

 ……!?

 グラサンの白髪男だった。顔が近い。これは……お姫様抱っこ……?

 

「うわぁあああ!!」

 

 暴れて、脱出する。

 地面に放り出されて、転がった。痛い。爆発で受けた痛みも響いてくる。

 

 地面をのたうちまわりながら、男に向き直る。二人組だった。

 

「白髪グラサンに、変な前髪……明らかにカタギのものではないのじゃ!」

 

「…………」

 

「…………」

 

 囲まれた!?

 両手を前髪男に、両足を白髪グラサンに引っ張られる。宙に浮く。

 

「いぎゃあああ」

 

 裂けちゃう。腕、引っこ抜ける。拷問じゃぁああ。

 

「お二人とも、おやめください!!」

 

「く、くろいー!!」

 

 救世主だった。

 私は涙目になって、黒井に助けを求めた。

 黒井は変なのに乗っていた。

 

「お嬢様、そのお二方は味方です!」

 

「なんじゃと……!? くぎゃ」

 

 手を離した二人に、私はそのまま地面に落とされる。酷い。

 

 二人をよく見る。白髪グラサン……これが五条悟で、変な前髪……これが夏油傑だ。なんてことだ。

 爆発で混乱していたのもある。それに現実と漫画の違いだ。記憶にある漫画と、実物の二人を比べてとっさに特定するのはちょっと難しかった。言われてみれば、特徴はその通りだ。

 

「なま五条悟じゃ。なま五条悟。初めて見るのじゃ」

 

 起き上がって、五条悟をまじまじと見つめる。

 この男が呪術界最強の五条悟だ。グラサンかけててもわかるくらいに端正な顔立ちしてる。

 

「俺のこと、知ってる感じ?」

 

「そうじゃそうじゃ……六眼の持ち主は、星漿体と天元様の同化に立ち会うと、因果でそう決まっておる」

 

「因果……?」

 

 五条悟は首を傾げた。

 そういえば、これは言っていい話だっただろうか。まぁ、いいや。大して問題はないだろう。

 

「縛りのようなものじゃないかい? どうしてそうなっているかは、天元様に聞いてみないとわからないだろうけど」

 

 夏油傑は、すぐに自分なりの見解を加える。

 私にもそれはわからないし、たぶん、天元様もわかっていないんじゃないかな。

 

「そういうものだから、そういうものなのじゃ。ゆえに悟よ。妾を守ることが悟の生きる意味なのじゃ」

 

「は? じゃあ、お前は、そういうものだからって、黙って同化するってことか?」

 

 五条悟は不快感をあらわにして私に問い投げかけた。

 まぁ、だれだって自分の生きる意味を誰かに勝手に決められたら、不快にもなるだろう。

 

「悟……!」

 

 私の生き方を察してだろうか、夏油傑はすぐにそれを諌めていた。そんな夏油傑の気遣いを、私は手で制す。

 

「あぁ、そうじゃな。悟よ。妾はそうである。であるが、そうではないとも言える」

 

 含みを持たせて私は答えた。

 私が天内理子でなかったら、なんてことは考えてもしかたのない話だろう。

 

「は……っ。同化でおセンチになってると思ってたが、とんだ勘違いだったのじゃな」

 

 そうやって、五条悟は私の口調を真似して言った。

 

「快く送り出せるのじゃ」

 

 夏油傑も便乗していた。

 

 私、キレた。

 

「のじゃのじゃのじゃのじゃ」

 

「お嬢様……!?」

 

 私は五条悟につかみかかる。しかし、届かない。

 ……これが噂の無限ってやつなのじゃな……。

 

「ばたんきゅー」

 

 私は倒れる。

 

「杏仁とーふ」

 

「たいやきうどん」

 

 なぜか追い討ちをかけられてしまう。

 こいつら、仲よすぎじゃろ……ぐは……。仲良しパワーに私はやられた。

 

 黒井の乗っていた変な生き物が倒れている私に近づいて、ペロペロしてくる。おのれ……。

 

「じゃ、そろそろ……高専に戻ろうか」

 

 むくりと私は起き上がる。

 

「すまぬが、それはできぬ」

 

「あ……?」

 

 このまま、高専に行くのが、確かに最善だろう。けれども、かねてから私は心に決めていたことがあった。

 

「妾は呪術師の働きぶりを上覧するのじゃ」

 

「は……?」

 

「やはり、理子様……危険すぎるのでは……」

 

「うるさい黒井……。見ると言ったら、見るのじゃ!!」

 

 このまま天元様と同化するのであれば、私は呪術っぽいところを一度も見ることができずに消滅することになる。

 せっかく呪術廻戦の世界なのだ。呪術廻戦なところを見てみたいと思うのが、人の情というもの。

 

「ガキの遊びじゃないんだぞ?」

 

「任務じゃ、任務! 妾のゆーことには絶対服従なのじゃ!」

 

 そう。天元様の命令により、この二人は、私の要望を叶えなければならない。

 

「傑……どうする?」

 

「とりあえず、夜蛾先生に電話をしてみようか……」

 

 携帯電話を取り出す。二つ折りのガラケーだ。

 まあ、この頃はまだガラケーとは言わないけど。

 

「どうして、呪術師の仕事なんて見たいんだよ? 面白いもんじゃないぞ?」

 

「うむ、妾の心が変わらぬように、呪霊による災いをこの目に焼き付けておきたいのじゃ」

 

 夏油傑は、少し考えるように顎に手をそえる。

 

「だったら、少し人選を間違えたかもしれないね……」

 

 だって、そうだ……、

 

「私たちは――」

 

「俺たちは――」

 

 二人は、口を揃える。

 

「――最強だからね」

 

「――最強だろ」

 

 

 

 ***

 

 

 

「天元様のご命令だ。天内理子の要望には全て応えよと」

 

 そう電話ごしに聞こえたのち、通話が切断される。

 

「チッ、ゆとり極まれりだな」

 

「適当に、今、抱えている案件がないとでも言っておけばよかっただろうにね」

 

 行方不明者の発生する廃校の調査の任務が告げられていた。

 

「理子様は、自分の護衛に貴重な呪術師の人員が割かれていることを心苦しく思われていらっしゃるんです」

 

「あいつがね。ご立派なことで……」

 

 それで危険な真似をして、天元様との同化までに死んでしまったら、元も子もないのではないかと思う。

 そんな理子は、傑の操る呪霊に乗って、はしゃいで駆け回っていた。

 

「理子様は、使命のために己を捧げて今まで生きてきました。幼いころに親を交通事故で亡くして……それからは、私がお世話をして参りましたが……理子様は学校では友達も作らずに過ごしていて……」

 

「同化でいなくなるんだから、未練になるような繋がりはなるべく作らないようにってことかな。少し寂しいね」

 

「あんな喋り方じゃ、友達もできないだろ」

 

「悟。理子ちゃんに刺々しいみたいだけど」

 

 すぐに傑は、機嫌に気がつき尋ねてくる。

 

「俺たちが救えるのは、他人に救われる準備のあるやつだけだ」

 

「……そうだね」

 

 理子に会う前のやり取りを思い出したからだろう、傑は察したように同意をした。

 

「こやつ、愛いやつじゃのう!」

 

 能天気な声が聞こえてくる。

 傑の出した呪霊を乗り回していた理子は、呪霊に命令を出して、こちらに戻ってきていた。

 

「満足いただけたかい?」

 

「うむ。傑はポケモントレーナーなのじゃな!」

 

「ポケモン……呪霊だけど、ポケモンが好きなのかい?」

 

「ちょっと、待っておれ……」

 

 理子は服のポケットをまさぐると、その中から取り出した。

 

「DS Liteだね」

 

「うむ。この下のがポケモンのエメラルドじゃ。図鑑コンプしたんじゃよ? すごいじゃろ? 妾はポケモンマスターなのじゃ! それで、この上のがマリカーじゃな。黒井とよく遊ぶのじゃ」

 

 そうやって自慢をする姿は、年相応の子どもだった。それだけに、胸くそ悪い。

 

「そういえば、ポケモンだろ? 新しいのがもうすぐ発売だったよな」

 

「悟……!」

 

 傑は血相を変えて咎めてくる。黒井さんは表情が引き攣ってしまっていた。

 

「あぁ、ダイヤモンドにパールじゃの? 時間ができたら、やってみるがよい。面白いに違いないからな……妾が保証しよう」

 

 理子は屈託なく笑って、そうすすめてくる。

 

「俺はデジモン派だからな」

 

「それは残念じゃ」

 

 

 

 ***

 

 

 

 私は傑の操るポケモンに乗ってみんなについて行っていた。

 行方不明の多発する廃校の呪霊を祓う任務だった。

 

「なんと、モンスターボールみたいじゃ! それにしても、あっさりじゃったな」

 

 夏油傑が野生の呪霊に近づくと、呪霊が球状になって、夏油傑の手の中におさまる。

 

「あぁ、階級が二個以上離れていれば、無条件で取り込めるんだ」

 

「マスターボールじゃな……」

 

 私の漫画の知識と擦り合わせても、相違はなかった。

 私の記憶はどこまで信用できるかわからない。それを頼りに、現実が見えていない状態になるなんてことは、あってはならないことだろう。

 

「…………」

 

 夏油傑が、モンスターボールを黙って飲み込む。それを私はじっと見つめる。

 

「どんな味なのじゃ? それは」

 

「ん? いいもんじゃ、ないよ。すごくまずい」

 

「それ、まずかったのか?」

 

 五条悟が興味を示した。

 

「あぁ、すごくまずいよ。なんというか、吐瀉物にひたした雑巾みたいな感じかな。とにかくまずいね」

 

「うわ……よく、そんなの飲み込めるな」

 

「まあね。弱きを守るためさ。そのために私の力を高める必要があるわけだろう? だから、このくらいは我慢できる」

 

「気がしれないね。そこまで身を削る必要があるかよ」

 

「悟、今度こそ話をつけないといけないみたいだね」

 

「そういう正論、嫌いなんだよね俺」

 

 そうして二人は言い争いを始めてしまった。

 なんというか、夏油傑は難儀な男だと思った。そうやって、我慢を続けていった結果が原作のあれだ。五条悟はアレで根本が優しい男だから、その言い分は夏油傑を慮ったものでもあるのだろう。

 

 いいコンビだと私は思う。

 

「ときに、悟、傑。なぜ呪霊が生まれるかわかっておるか?」

 

 だから、私は今、爆弾解除をすることにする。

 

「それは、人間の負の感情で生まれるんじゃないのかい?」

 

「そうじゃが、そうではない。人間の負の感情で漏れ出した呪力によって呪霊は生まれる……じゃが、術師は呪力をコントロールできているわけじゃ。漏れ出さぬ。つまり、呪霊を形づくる呪力は、非術師によって発せられたものなのじゃよ」

 

 今、二人はこのことを知らない。

 だからこそ、二人は少し呆気に取られたような顔をする。

 

「じゃあ、呪術の使えないやつらを皆殺しにすれば、呪霊は生まれないってことか?」

 

「悟……!」

 

「むろん術師が死後呪霊に転じたときを除いてじゃが、そうじゃよ? じゃが、それは困る。そしたら、マリカーもポケモンもできない世の中になってしまうじゃろ? デジモンもじゃ? 困らぬか?」

 

「それは、困るな」

 

 術師は絶対的な人口が足りないから、インフラが維持できなくなるのは簡単に予想がつく。

 さすがに、原始人生活はしたくないだろう。夏油傑は、五条悟の様子を見て、ホッとしていた。

 

「じゃから、そうじゃな……。ただの人間を術師に変えられる方法があるとよいのじゃが……」

 

「そんな方法があるのかい? あったら、呪術師も万年人手不足ではなくなりそうなものだけど」

 

「ない、今のところは……であるがその鍵は、夏油傑、お主の呪霊操術にあると妾は睨んでおる」

 

「というと……?」

 

 未来に現れるかもしれない特級呪霊の話は今してもしかたがないだろう。

 だから、私はそれよりも現実的な話をする。

 

「生得術式……だれがどんな術式を持って生まれるのか、わからぬ。あるていどは遺伝はあるようじゃが、不確定。非術師を術師に変える生得術式の誕生を待つことはできぬじゃろう……一万年先かもしれぬし……」

 

 気の遠くなるような話だ。

 五条悟は私の話にあくびをしていた。

 

「そりゃあ、そうだろうね。でも、どうして私の呪霊操術が、鍵だって言うんだい?」

 

「――仮想怨霊」

 

「――!?」

 

「人の噂や伝承により共通のイメージとして現れるそれじゃよ。噂や伝承に近しい生得術式を持っておる」

 

「それは……そうだね」

 

「ならば、その噂を妾たちが作ってやればどうじゃろう? 不確定さはあるにはあるが、何千年といたずらに待つよりは、まだマシだとは思わぬか?」

 

「その呪霊を呪霊操術によって操る、ということか」

 

「うむ、そうじゃな。傑は、悟に負けず劣らず、いい術式を持っておる」

 

 まぁ、机上の空論だ。実際には、十数年後にそういう特級呪霊が現れるから、そんな必要はないのだけれど、私のプレゼンが、夏油傑の心に響いてくれればそれでいい。

 

 ふと、夏油傑の表情が変わる。

 

「悟……」

 

「あ?」

 

「見張りの呪霊が、二体祓われた」

 

 

 

 ***

 

 

 

「相手もポケモン使いじゃったの。ダブルバトルかと思ったら、なんかもう一体でてきて、最後はトレーナー同士で殴り合ったのじゃ」

 

 遠目に私は夏油傑の戦いっぷりを観戦していた。

 

「じゃあ、こっちも終わらせることにしよう」

 

 紙袋を被った同じ格好のたくさんの男に、囲まれていた。こやつの口ぶりから、妾に懸賞金がかけられている感じじゃ。

 たぶん、五つ子とか、六つ子とか、そういうのじゃない。術式だろう。式神かなにかだ。

 

 五条悟に一斉に殴りかかった男の形の式神は、当たる直前にぴたりとその拳を止める。

 

「んだコレ……!?」

 

「無限だよ。アキレスと亀」

 

 五条悟には近づくにつれて遅くなる。術式により作られた無限の防御により、無限の時間が経つまで、五条悟には触れられないというわけだ。

 

 似たような現象を、私は知っている。

 

「ブラックホールのイベントホライゾンみたいなものじゃな。外から見た時、近づくにつれて、時間が遅れて、永遠にたどり着けないように見える」

 

「え?」

 

「え?」

 

 いや、だって、ブラックホールだ。漫画の解説はあんまり覚えていないけど、私の前世の知識がそう言っている。

 

「ま、じゃあ、それでいいや」

 

 術式順転――『蒼』。

 

 強化された無下限術式により生まれた引力に引っ張られ、敵の式神の大半が破壊される。引力、やっぱりブラックホールだ。

 なぜか壊れた式神が消えない。

 

「く……っ」

 

「どれが本体かは、自由に選択できるんだろ? さぁ、あと一体だ」

 

「くそ……」

 

 あっという間に最後の一人だ。

 五条悟は、敵へと指を向ける。

 

「さっきのは無限の収束。次は無限の発散だ」

 

 術式反転――『赫』。

 

 しかし、何も起こらない。

 あ、ぶん殴った。

 

「なんじゃったんじゃ……?」

 

「できそうって思ったんだけどなぁ……」

 

 まぁ、今の五条悟は反転術式が使えない。

 だから、最強と言っても、強さの天井をぶち抜くほど強くはないということだ。

 

 ちょうど、携帯の着信が鳴る。

 私は黒井としか番号もメルアドも交換していないから、黒井からだ。開いて中を見る。

 

「どうやら、黒井が攫われたようじゃな」

 

 五条悟に送られてきたメールを見せる。ふんじばられた黒井の写真が添えてあった。

 まぁ、予定通り。黒井は夏油傑と一緒にいたから、攫われない可能性も考えたが、敵は上手く攫ったようだ。

 

 すぐに夏油傑と合流する。

 

「すまない。私のミスだ」

 

 合流した途端に、夏油傑は謝ってきた。

 黒井は、夏油傑の方についていっていた。私から黒井に、事前にあまり離れるなとも言っておいた。

 

「よい。どういう状況だったのじゃ?」

 

「目を離した一瞬の隙だった。その隙に黒井さんはいなくなった」

 

「傑は大丈夫じゃったのか?」

 

「あぁ、なんともない」

 

 私は、相手の気持ちになって考える。

 

「万が一を相手は恐れたのじゃな。一撃で黙らせねば戦闘になり、近くにいた悟もやってきたじゃろう。それを恐れた」

 

「相手は人質交換で来るだろう。交渉の主導権は天内のいるこっちだ。取引の場さえできればあとはどうにでもできる」

 

「あ、妾もついてゆくぞ?」

 

 私は漫画知識で相手の正体も知っている。だからこそ、この提案をするしかない。

 

「あ? ガキのわがままに付き合ってられねぇよ」

 

「高専に妾一人を取り残してどうなるのじゃ……? 黒井を攫ったやつは傑でも気取れなかった……気配……あるいは呪力を消す術式か呪具を持っていると考えるべきじゃろう」

 

「そんなことが……」

 

「高専の結界も意味をなさない可能性さえある。むしろ、妾だけを取り残すことが敵の狙いかもしれぬじゃろ?」

 

 敵の正体がわかっているからこそ、これが言える。

 実際に、ここで私だけが高専に残ったら、簡単に殺されてしまうと思う。だから、ついて行くしかない。

 

「たしかに万が一を考えるなら、理子ちゃんにはついてきてもらった方がいいね」

 

「傑……!」

 

「決まりじゃな」

 

「チッ……わかったよ。その代わり、いくら帰りたくなっても、引きずって連れて行くからな」

 

 

 

 ***

 

 

 

「めんそーれ、なっのじゃー」

 

 沖縄だった。無事に黒井の救出も済み、砂浜で私たちは遊んでいた。

 私は砂で像を作っていた。

 

「なに作ってるんだ?」

 

「ふ……見よ! これが伝説のポケモン!」

 

「ミミズじゃないのか?」

 

 たしかにミミズじゃ。妾にセンスはなかったのじゃ。

 踏み潰してぶち壊す。

 

「ふん、二度とやらぬのじゃ」

 

 五条悟にギャハギャハと笑われる。

 

「ウヒャヒャヒャヒャ!」

 

「ぎゃー」

 

 ヒトデとナマコを装備した五条悟に私は追いかけられていた。

 

「悟! 時間だよ!」

 

 夏油傑にそう言われる。

 二時間、あっという間だった。ちょっと寂しい。外に出てこんなふうにはしゃぐのは初めてだったかもしれない。

 

 五条悟はこちらを見ていた。そのまま、夏油傑へと声をかける。

 

「傑、帰るのは明日にしよう」

 

「だが……」

 

 そのまま五条悟は、夏油傑に近づくと、コソコソと話を続けている。

 そうして、沖縄旅行は続行になった。

 

 まぁ、ここで高専に戻っても、高専の結界内での戦闘を想定している以上、五条悟の負担はそれほど変わらないから、別にいいかもしれない。沖縄の方が呪詛師も少ないだろうし。

 懸賞金の制限時間も機内で切れた方がいいだろう。

 

「あ、制限時間!!」

 

「天内? どうした?」

 

 忘れていた。私の懸賞金には制限時間があるんだ。

 

「この懸賞金の制限時間、おかしくはないか? 盤星教がこの依頼を出したとして、制限時間を同化の時間までに設定しない理由がわからぬ」

 

「それは……これは闇サイトだから、制限時間を長めに設定するのにもお金がかかるんじゃないかい?」

 

「いや、黒井の輸送はプライベートジェットじゃ。そんな輩じゃぞ? 金なんてあまりにあまっているはず。不可解じゃ」

 

「それは……まさか、懸賞金が切れた後の油断をした瞬間を狙っている?」

 

 私の誘導に乗っかって、夏油傑が核心にたどり着く。まぁ、ここまで言えば二人なら気がつくだろう。

 

「ま、そうじゃな。今は旅行を楽しむことにしよう」

 

 

 

 ***

 

 

 空港に向かう最中だった。悟、黒井さん、理子と前を歩いていて、その後ろを歩いている。

 理子は、気に入ったのか私の最初に出した呪霊を連れて歩いていた。

 

 ふと、視界の端に葉っぱに止まるカタツムリが目に入った。なんとなしに手を伸ばす。

 

「あ、傑! カタツムリに触ってはいかん! いかんのじゃ!」

 

「ん? あぁ、どうしてだい?」

 

「寄生虫に感染して死んじゃうのじゃ! 南から、やばい寄生虫がやってきているという話もある」

 

「理子ちゃん、物知りだね」

 

「ふ……妾はポケモンマスターであるとともに、調べものマスターでもあるのじゃ。ネットは友達じゃ」

 

「あ、うん。そうなんだ」

 

 ずっと狭い世界で過ごしてきたからこそ、この子はそれくらいしかできることがなかったのだろう。このまま天元様と同化するのだから、やはり可哀想に思えてくる。

 

「のう、傑? 傑はやはり、他人のポケモンは奪えぬのか?」

 

「え? ん? 他人と契約している呪霊ということかい?」

 

「あぁ、そうじゃな」

 

「どうだろう? やってみないとわからないとは思うけど」

 

「不確定なことに己の生死をかけるのは、やめておくのじゃ」

 

 彼女はなにかを見透かすような目をしてそう言った。

 ときどき、彼女はそんな目をする。

 

「あぁ、そうするよ」

 

「あと、そうじゃ。妾がもし死ぬようなことがあれば、化けて出るのじゃ! ふ、妾は必ずや伝説のポケモンになる。なってみせる」

 

「縁起でもないことを言わないでほしいな。強い呪霊になったら、周りの被害だって馬鹿にならないだろう?」

 

「その前に止めることじゃな。なに、信じておる。……あと、妾を捕まえたときのモンスターボールは、いちご味で勘弁してやろう」

 

 くすりと笑って、彼女は言った。そんな彼女にやれやれと肩をすくめた。

 これから襲ってくるのは術師だろう。呪力により殺されたのなら、呪霊に変ずることはない。

 

「そもそも、理子ちゃんは死なない。私に、悟もいるからね」

 

「絶対か? これから襲ってくる相手は、己が呪力を完全に隠匿できる輩かもしれぬ。要するに、得体がしれぬ」

 

「そうだね」

 

「それでもか?」

 

「あぁ、勝つさ」

 

 誰が立ちはだかろうと、この少女を守り切ってみせようと、そう悟と決めていた。

 

「ぶっ……」

 

 吹き出して、思いっきり笑い出した。そんな彼女の様子に困惑してしまう。

 

「どうして笑っているんだい?」

 

「いや、すまぬ。本当に傑は悟と仲良しなのじゃな……」

 

「まあね」

 

 もしかしたら、悟も同じことを聞かれて、同じように答えたのかもしれない。だとしたら、少し恥ずかしくもある。

 

「傑! 天内! 遅れるぞ?」

 

 先を歩いていた悟に声をかけられる。

 話し込みすぎたかもしれない。

 

「おうおう、今行くのじゃ!」

 

 彼女は呪霊に乗って、走らせていた。周りには人気もないから、まぁ大丈夫だろう。

 それに走って追いついていく。

 

 空港まで、時間は瞬く間に過ぎていった。

 

「お疲れ、灰原、七海」

 

 空港を呪詛師に占拠されないように、配置していた後輩二人だ。

 

「お疲れ様です! 夏油先輩! その子が?」

 

「うむ、星漿体の天内理子じゃ!」

 

 ポーズを決めて、彼女は自己紹介をしていた。

 

「悪かったね。滞在時間を変更しちゃって」

 

「いえ、こちらは異常ありませんでしたし、全然大丈夫です!」

 

「異常がなかったのは結果論でしょう。なにかあったら、一年に務まる任務ではなかった」

 

「これ、お土産のちんすこうに、シークワーサーだから」

 

「ありがとうございます!」

 

「あと、もうひと頑張り頼むよ?」

 

 天内理子の方を見る。黒井さんと向き合っていた。

 

「黒井! 黒井とはここでお別れじゃ」

 

「はい、お嬢様……」

 

「黒井! 今までありがとう……こんな私と一緒にいてくれて」

 

「理子さま……」

 

「黒井、大好き……っ!」

 

 二人は涙ながらに抱き合って、別れを惜しんでいる。

 

「それじゃ、黒井さんの警護を頼むよ?」

 

「はい。わかりました!」

 

 天内理子の提案により、もう一晩、黒井さんには沖縄に泊まってもらうことになっていた。

 昨晩、盤星教のプライベートジェットは破壊しておいたから、黒井さんは沖縄にいれば安全だという読みだ。

 

「理子ちゃん。行こうか」

 

「うん……そうじゃな……」

 

 唯一の家族とも言える存在との別れに、彼女は機内でもずっと泣き腫らしていた。

 

 

 

 ***

 

 

 

「やっと、高専の結界内に入れたね」

 

「ようやくじゃ」

 

 そうして私たちはひと心地つく。

 

「ガキのお守りは、もうごめんだね」

 

 そう言って、五条悟は、無下限の術式を解除する。

 

 ――あぁ、それは一瞬だけのことだ。

 

「チッ、気づきやがったか……っ!」

 

「やっぱり来たね」

 

 背に刺さる手前で止まる刃がある。

 背後に立つのは、天与呪縛、フィジカルギフテッドをその身に宿す呪力ゼロの因果の破壊者。禪院……いや、伏黒甚爾だ。

 

 攻撃に失敗し、伏黒甚爾は五条悟から距離を取った。

 

「理子ちゃんの読み通りだったね」

 

 夏油傑によって呼び出された芋虫のような呪霊によって、伏黒甚爾は飲み込まれる。

 丸呑みだから、多分死んではいないだろう。

 

「アイツの相手は俺一人で十分だ。傑達は先に行っててくれ」

 

「あぁ、任せたよ」

 

「余裕、余裕。すぐに倒すさ」

 

 五条悟は、二日間寝てはいないが、初撃も防いだし大丈夫だろう。私たちは天元様のもとへと、薨星宮へと進んでいく。

 

 ふと、夏油傑が立ち止まった。

 

「理子ちゃん」

 

「ん? どうした? 進まぬのか?」

 

「今ならまだ引き返せる。黒井さんのところに戻って、一緒に暮らすのはどうだい?」

 

「なにをいうとる?」

 

 夏油傑は微笑んで言った。

 

「悟とは、すでに話し合いはおわっているんだ。君がどんな選択をしても、私たちは、君の未来を保証するさ」

 

「大馬鹿じゃな……」

 

「もちろん、天元さまとも戦うことも覚悟している。でも大丈夫だ。私たちは――」

 

 ――最強なんだ。

 

 涙が出てくる。

 

 よくやった。私はよくやった。きっと悟は、伏黒甚爾に勝ってくれる。

 それに、傑も、道を違えたりしないはずだ。

 

 だから、もういいんじゃないかとも思った。

 我慢しないで、私は私の人生を生きていい。

 

 けれども、それに首を振った。

 

「妾は妾じゃ。星漿体の天内理子じゃ。妾が天元さまと同化することで、たくさんの人間が救われる。じゃから、妾は行くよ?」

 

「そう……なんだね」

 

「だけど、そう言ってくれて、私は嬉しかった。ありがとうね、悟、傑」

 

 お礼を言って傑に抱きつく。このくらいは許されるだろう。

 

「理子ちゃん……」

 

「そうじゃ、これをやる。妾にはもう不要なものじゃ。妾の代わりに、妾の仲間を次の冒険へと連れて行ってくれぬか?」

 

 DSから下のカセットを引き抜いて、傑に渡す。

 

「うん、わかったよ」

 

「あと、あのポケモンを出してくれぬか? 妾の良きパートナーだった」

 

「うん」

 

 すぐに召喚してくれる。お別れのよしよしをする。

 短い付き合いじゃったが、こやつとは心が通じ合えた気がする。

 

「では、傑、息災でな! くくっ、呪霊に苦しむ人間が現れないよう、そして妾のような贄が必要とされないよう、頑張っていくのじゃよ!」

 

 晴れ晴れとした気持ちだった。

 私がこうして天元さまと同化することで、漫画で起こる不幸はかなり減るだろう。夏油傑もきっと仲間のままだから、もう完璧に違いない。

 あぁ、生まれてきてよかったと、私は思える。

 

 これなら、理子ちゃんもきっと許してくれるだろう。

 

 そうして、傑に手を振って、明るい気持ちで私は一歩を踏み出した。

 

「あ……え……」

 

 視界が急に暗くなる。

 

 

 

 ***

 

 

 

「理子……ちゃん……?」

 

 目の前にあるのは、血溜まりに倒れる女の子の姿だった。銃殺だった。即死だった。

 

「ハイお疲れ。解散解散」

 

 銃声を鳴らしたのは、伏黒甚爾だ。五条悟と戦っていたはずだった。

 

「なぜ、お前がここにいる?」

 

「なぜって、あぁ、五条悟は俺が殺した」

 

「そうか……死ね!!」

 

 龍の呪霊を召喚する。それに、伏黒甚爾はやれやれと肩をすくめた。

 

「焦んなよ」

 

 そこから、伏黒甚爾はペラペラと自分の能力を解説するが、頭へとは入ってこない。なにか言葉にはできない負の感情が湧いてくる。

 

 そのままに戦いが始まる。虹龍で攻め立てるが、フィジカルギフテッドを前に、決め手にかける。

 伏黒甚爾の持つ刀により、簡単に斬り裂かれ、祓われる。

 

 あの刀は特級呪具に準ずるものだ。ゆえに、刃を通すことも容易でない虹龍が、いとも簡単に斬り伏せられた。

 

「く……っ!」

 

 次の手を打つ。

 

 ――口裂け女。

 

 手持ちの仮想怨霊のうちの一体。特殊な簡易領域を造り出し、伏黒甚爾を捕捉する。

 

「ワ、ワ、ワ……わたし、きれい?」

 

「趣味じゃねぇ」

 

 伏黒甚爾は、従える武器庫の呪霊から、新たな鉾を引く抜くと、口裂け女の術式に付随し現れた必中の鋏を払いのける。

 

 その隙に、近づく。

 

「はぁ……馬鹿かよ。終わりだな」

 

 そこは、伏黒甚爾の間合いだった。

 

「オマエが……」

 

 呪霊操術を用いて、武器庫の呪霊を従えようとした。失敗だった。弾かれる。

 

「クク……」

 

 伏黒甚爾は虹龍を斬り裂いた刀に持ち替え、袈裟懸けに斬りつける。

 

「他人のポケモンは奪えない……か」

 

「なんの話だ……?」

 

「…………」

 

 浅い。かろうじて離脱が間に合った。まだ戦える。新しく呪霊を出して……。

 

「烏合だな」

 

 先ほどの呪霊とは、格が落ちる。

 伏黒甚爾に簡単に接近を許してしまう。

 

「理子……ちゃん……?」

 

 ふと、目が合う。目が合ってしまう。

 そのまま、深く斬りつけられた傑は蹴り飛ばされ、倒れ伏す。

 

「幽霊でも、見たような顔……、な……っ」

 

 

 呪霊化、条件――呪力の籠らない攻撃による術師の殺害。

 

 

「おい、聞いてねぇ……!? タダ働きはごめんだね」

 

 伏黒甚爾は、目の前にあった私の死体を収納呪霊に収納させると、駆け足で離脱をする。

 私は静かにそれを見送る。

 

 

 

 ***

 

 

 

「やぁ、久しぶり」

 

「マジかよ……」

 

 星漿体、天内理子の遺体を売り払い、金を受け取った。

 飯でも食おうと、外に出たその先に、そいつらは待ち構えていた。

 

「やっと追いつけたよ理子ちゃん」

 

「…………」

 

 夏油傑と……呪霊と化した天内理子だ。

 この感じるプレッシャーは、特級相当。

 

「ハハ、意味わかんねぇよ。どうして死んでないんだ? 呪霊だぞ? 見境なく人を襲って、オマエは殺されてなきゃおかしいだろ?」

 

「あぁ、縛りだよ。利害の一致さ。縛りを結んで、降伏を省いたんだ。そうだよね、理子ちゃん」

 

「…………」

 

 天内理子の呪霊はコクリと頷く。

 呪霊と縛りを結ぶなんて、この男は明らかに正気じゃねぇ。

 夏油傑の傷は治っているのか。反転術式……それにしては異質。

 

 とにかくまずいと肌で感じる。逃げる算段をたてる。

 

「やろうか、理子ちゃん」

 

 ――呪霊操術。

 

 虚空から、呪霊が現れる。牽制か、溢れ出たムカデの形の呪霊が襲う。だが、しょせんは烏合の衆。本命は天内理子だろう。

 武器庫呪霊から、釈魂刀を取り出し、切り裂く。

 

「な……っ!?」

 

 ――祓えない。

 

 低級呪霊のはずだった。急所も突いた。そのはずだったが、なぜか消えずに再生し、また動き出す。

 

「オマエの敗因は、理子ちゃんを呪力のないただの銃で殺したこと。呪霊操術に集められた呪霊の解放を恐れて、私にとどめを刺さなかったことだ」

 

 呪力で無理やり雑魚どもも再生させているということだろう。

 それを可能にしているのは、呪霊となった天内理子から溢れ出す呪力によるもの。

 

 ただ、それでも、なぜ急所を突いても再生するのかわらない。天内理子の術式だろうか。

 

「ハ……っ」

 

 笑えない。

 無限に再生する呪霊の軍団が、一人の指揮のもとで動く。烏合の衆とはもはや言えない。

 天逆鉾を試そうかとも思いもしたが、武器庫呪霊に呪具を全てしまい込む。かわりに吐き出させるのは無数の蠅頭。

 

 やってられるわけがない。金も稼げない戦いに、命を賭けるわけがない。

 

 すぐさま、武器庫呪霊を飲み込む。呪力のない自身は透明人間。蠅頭の撹乱により、武器庫呪霊の微かな呪力も追うことはできはしない。こうなったら、誰も捉えることなど不可能――( )

 

 ――術式反転『赫』。

 

 蠅頭が全て吹き飛ぶ。

 

「遅かったじゃないか、悟」

 

「傑に……、天内は……そうか」

 

 六眼が、捉えていた。

 確かに殺したはずだった。だが、あぁ、こうして目の前にいるということは、そうだ。

 

「反転術式か……」

 

「正解……俺は死に際に、呪力の核心を見たってわけだ」

 

 化け物が二人。なんにせよ、詰みだった。

 覚醒した六眼の術師の視界に入っている以上、逃げることは不可能だろう。こんな化け物たちと戦うなどもってのほかだ。

 

「最期に言い残すことはないかい?」

 

「ねぇよ」

 

「そうか……」

 

 呪霊により、くびり殺される。

 

「二、三年したら、俺のガキが禪院家に売られる。好きにしろ」

 

 

 

 ***

 

 

 

 拍手が聞こえる。

 悟は、星漿体、天内理子の遺体を抱えていた。

 

 今でもフラッシュバックする。呪霊となった天内理子を飲み込んだ瞬間だった。

 いつものように、形容しがたい不快な……それと一緒に、甘酸っぱいストロベリーの味がした。

 

「はぁ、これは当分……イチゴが食べられそうにないな……」

 

 一人、そう呟く。

 悟は、理子ちゃんの死体から、こちらへと視線を向けた。

 

「傑、こいつら、殺すか?」

 

「いい、意味がな……っ、が……っ」

 

 そう言った瞬間だった。心臓を鷲掴まれるような痛みが起こる。

 

「傑……!! な……っ、天内……!! なにしてんだ!」

 

 どうやら、犯人は理子ちゃんみたいだった。

 状況を理解する。

 

「悟……これは縛りだよ。理子ちゃんを取り込むときに約束したんだ。理子ちゃんの復讐は必ずするって。それを拒んだから、こうなってる」

 

「なに言ってるんだよ? 復讐っていうなら、さっき……」

 

「あぁ、そうだね。でも、そうじゃなかった。これは私のミスだ」

 

「縛りなら、二人の同意がなきゃ……」

 

「だから、そうなんだ。私が、そう望んでしまったからなんだ……」

 

 私が、天内理子に訪れた理不尽を呪ってしまった。

 彼女は他人のために自分を犠牲にできるような優しい子だった。だからこそ、天内理子という呪いを作ったのは私だ。

 

「こいつら殺すぞ?」

 

「ダメだ悟。ここで殺したら、言い訳はできない。それに、理子ちゃんを理由に、人を殺すのは間違いだ」

 

「そんなこと言ってる場合じゃねぇだろ、傑!」

 

「悟……っ!!」

 

 

 

 ***

 

 

 

 任務概要

 星漿体・天内理子の護衛。

 担当者2名(高専2年 夏油傑 五条悟)が派遣。同化当日、薨星宮にて天内理子の死体を確認。

 夏油傑、及び五条悟は、盤星教・時の器の会の一般信者総勢112名を殺害、逃亡。

 呪術師規定9条に基づき、夏油傑、及び五条悟を呪詛師と認定。以後処刑対象とする。






登場人物紹介

理子ちゃん(ストロベリー風味)
転生者。ゲーム大好き。うーらーめーしーやー。

黒井美里
沖縄残留により、生き残った。

五条悟
十四歳の少女を生贄にして生き延びるのが胸糞悪いと感じていた。なんとか理子ちゃんに未練を作らせて、同化しないようにと頑張ってた。
原作通り伏黒甚爾に負けて覚醒した。
呪詛師認定されて逃亡中。

夏油傑
十四歳に少女の献身に心を打たれて、さらに共感もしていた。呪霊になった理子ちゃん(ストロベリー風味)を食べた結果、縛りやらなんやらで大幅パワーアップした。原作とは違って、多分覚醒五条悟と同じくらいの強さで並べるようになった。
呪詛師認定されて五条悟と共に逃亡中。

灰原雄
後輩。お土産もらった。

七海建人
後輩。お土産もらった。

伏黒甚爾
初撃は防がれたが、頑張って五条悟を倒した。理子ちゃん(ストロベリー風味)の想定よりも強かった。
最後は化け物二人に囲まれてどうしようもなかった。敗因は(略

夏油傑の見た理子ちゃん(ストロベリー風味)のラグラージは?

  • フルアタ威力最重視
  • 旅パ秘伝技要因
  • 厳選済みガチ対戦用
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