理子ちゃん(ストロベリー風味)   作:呪術使えない

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理子ちゃん(空港待機中)

 

 

 向かい合う。趣味の悪い調度品の置かれた応接室だった。一人は、この建物の主である、特級呪詛師……夏油傑。

 そしてもう一人、彼を目の前にして、決して怯まない彼女は、同じく特級を冠する呪術師……九十九由基。

 

「夏油くん。話はわかるだろう? 非術師を術師に変える術式を行使するとして、天元の結界を利用するプランになる」

 

「それが簡単だろうね」

 

「でも、私が見てきた限り、海外では、呪霊も術師も極端に少なかった」

 

「そうだったね」

 

「天元を利用し、術師となれるのはこの国限定。呪力はエネルギーだ。それをこの国の人間だけが利用できるとして、他の国はどうなる?」

 

 それが歪な構造であるということは間違いがない。ましてや、人がエネルギー源になれるというんだ。

 呪霊の脅威がなくなろうとも、人と人とで悲劇が始まる。

 

「なんのための特級術師だろうねぇ?」

 

 特級術師――一人でも国家転覆が可能とみなされる術師に対するラベリングだった。

 

「……君は天元にでもなるつもりかい?」

 

 眉を顰めて、九十九由基は夏油傑へと尋ねる。

 夏油傑はやれやれと肩をすくめた。

 

「さぁね。理子ちゃんの術式が天元と比べて、どの程度違うかはわからない。天元にならない程度に、やるだけはやってみるつもりさ」

 

 夏油傑は、星漿体という生贄を認めてはいない。認められるわけがないというのは、彼の手持ちの最高の呪霊を見ればわかる。

 

「いいや、わからないのかい? 私たちが目指すべきプランは、呪力からの脱却だよ。全てを術師とすることじゃない」

 

「それは……」

 

「あぁ。伏黒甚爾……全てを彼のような完全に呪力のない人間へと変える。それを目指すべきだと私は思うんだ」

 

「……っ」

 

 夏油傑は奥歯を噛み締め顔を歪める。それは、忘れもしない名前だった。あの男が奪い去った彼女の覚悟に優しさは、なにがあろうと忘れはしない。

 

 そんな夏油傑の変化には気づかずに、九十九由基は続けていく。

 

「呪霊も術師も存在しない。そんな世界こそが人間のあるべき姿だよ」

 

「もしそれをするとしても、呪力を剥奪するのは、呪力を漏出している非術師だけだろう? すべての人間から呪力を奪うわけにもいかない」

 

「いや、いずれは術師からも完全に呪力を剥奪した方がいい」

 

 確かにそれは理想的、なのかもしれない。

 けれど、極端が過ぎるだろう。

 

「もし誰も呪力を持たないなら、想像もできないようなイレギュラーな過程での呪霊の発生や、呪物の受肉……それらによる呪術的な脅威に無防備になるんじゃないかい?」

 

「そうだね。だから、君の言うとおり、最初は非術師からだけ呪力を完全に奪う。その後に、呪霊や呪物を完全に殲滅するため、術師から呪力を奪うのは様子を見ることになるかな?」

 

 プランとしては、理に適っている。実行ができれば、それは理想的なのかもしれない。

 

「俺は反対だな」

 

「五条くん?」

 

 だがそれを、脇で大人しく聞いていただけのはずの五条悟は反対をした。

 

「僕たちは、宿儺の指を千年破壊できていない」

 

「……それを言われると、弱いね……」

 

 誰も呪術の使えなくなった世に宿儺のような呪物に宿る呪いが蘇った場合、どうなるか。

 鏖殺だ。

 誰も抵抗できずに、ただなすがままに殺されるだろう。

 

「それに、呪術を使える人間を選んでどうなんのよ? 何千年もかけて呪物を殲滅する気? その間に御三家みたいな感じになって、グズグズになるのなんて目に見えてるでしょ」

 

「もっともだね」

 

 御三家の一角である五条家の当主、彼が言うからには、説得力が段違いだ。

 

「それで、どうすんの? 俺は全員術師にする方がいいな。それならまだ自分の身は自分で守れる。なにより、そっちの方が楽しそうだ」

 

 そんな未来を考えてか、五条悟は笑顔を浮かべた。そんな顔に、九十九由基はゾッとする。

 

「とにかく、私は呪力からの脱却を目指す。夏油くん、君は?」

 

「私も悟と同じくすべての人間を術師とする方向でいくよ。心配はいらない。私たちは最強さ」

 

「……っ!?」

 

 警戒をし、九十九由基は呪力を高める。邪魔者として、ここで殺される可能性すらあった。

 

「やれやれ」

 

 夏油傑は肩をすくめる。ここで戦うつもりはないようだった。

 

「わかった。じゃあ、私は君たちには協力できない」

 

 同じ特級とはいえ、この二人の相手は無理だ。仲違いをしてしまえば、途端に生きた心地がしなくなる。

 

「それで、ラルゥ、ミゲル。君たちはどうするんだい?」

 

 九十九由基の後ろに控えていた彼らだ。彼らは海外の術師で、九十九由基とともに行動をしていた。

 

「私は夏油ちゃん個人に惹かれて協力していたわ。だから、夏油ちゃんに付くけど」

 

 ラルゥ――女性口調の筋肉質の大男はそう言う。

 

「俺モ同ジダ」

 

 ミゲル――黒人の大男は片言の日本語でそう言った。

 

「え……っ? 私、人望なさすぎ……」

 

 きっかけは夏油傑とはいえど、海外で一緒に活動した仲だった。こうも迷わずにあちら側に付かれると、九十九由基の心にはくるものがある。

 

「ま、それじゃ……二人はこれまで通り彼女と一緒に行動してもらえるかい?」

 

「監視ね。わかったわ」

 

「九十九由基モ、特級。俺タチガ、戦ウトナレバ無茶ダ」

 

 ということは、当分は状況も、変わらないだろう。夏油傑としては、特級術師を完全に敵に回したいわけではないか。

 

「ま、夏油くん。考え直してくれたら嬉しいね」

 

 いざとなればと考える。だから、舞台を整える必要があるだろう。

 

 

 

 

 ***

 

 

 

「恵ー。無事ー?」

 

 宿儺は沈んだはずだ。肉体の主導権はすでに恵へと移っている。

 

「どうやら、眠っているみたいだね」

 

 恵の意識はないようだった。天内の領域の術式から、死んでいるというのはあり得ないだろう。

 恵を完全に治すまでに時間はそれなりにかかった。念の為、宿儺が沈んだ後も宿儺の魂の残骸に無量空処を当て続けていたが、もういいだろう。

 

「まったく、迷惑かけてくれるね」

 

 領域展開を解く。久しぶりに傑と全力を出せて楽しくはあった。それはそれとして、恵の暴走に感じる部分はある。若人の青春ってことだろう。

 

「さてと、じゃあ後は改造人間たちを治して……」

 

 傑も天内に領域展開を解かせて――、

 

「凰輪――ッ!!」

 

 目の前で傑が吹き飛ばされる。

 不意の一撃だった。その攻撃の放たれた方向を見る。

 

「九十九由基……ね」

 

「そういえば、五条くんからは聞いてなかったね。どんな女がタイプかな?」

 

 接近、そしてこちらに殴りかかる。

 

 その術式によってか……見た目以上に攻撃が重い。攻撃を防いだ腕が吹き飛ばされる。

 術式の焼き切れたこのタイミングを狙った不意打ち。相当前から準備していたのかもしれない。

 

「はは……っ。いいね……ぇ」

 

 反転で腕を生やそうとする。その瞬間だった。

 

「『領域展開』」

 

 九十九由基の領域が展開される。

 傑とは、分断か。完全にこちら狙い。

 

 ――シン・陰流『簡易領域』。

 

 術式の焼き切れの瞬間を狙った領域だ。こちらは領域を展開できない以上、取れる対策は限られている。

 

「……っ!? 『簡易領域』が削れない……っ!?」

 

 だが、そこにあるのは揺るぎのない実力差だ。本来なら、本物の領域に対して『簡易領域』は大した時間稼ぎにもならない。だが、実力差がある場合は別だろう。

 さすがに全く削られていないわけではない。しかし『簡易領域』が削られる速度は、一目では削れているか判断ができないほどに緩やかだった。

 

「さてと……どうしようか……」

 

 このまま術式の焼き切れが戻るのを待つのもいい。

 まずはさっき吹き飛ばされた右腕の修復か。

 

「それは、させない! 凰輪!!」

 

 九十九由基と、その式神との挟撃だ。

 

「なるほどね。少し、しんどいか……」

 

 反転と簡易領域を使いつつ、相手をするのは面倒だった。

 式神の攻撃をかわし、九十九由基の蹴りもかわす。意識を反転と相手の攻撃に割いているぶん、簡易領域が削られる。

 

 腕の反転は一時、止める。

 

 優先すべきは――、

 

 九十九由基は、俺が腕の反転をやめたのを見て、わずかにだが、口もとを緩ませる。

 

「さすが五条くん。術式なし、右腕なしの二枚落ちでやっと勝負に、か……」

 

 九十九由基は、そんな軽口を叩いてくる。

 

「これでなら勝負になるって、舐めすぎじゃない? 僕のこと」

 

 姿勢を受けから、攻めへと変える。式神との連携を受けてわかったが、九十九由基は、圧倒的に格下だ。

 

「な……っ!?」

 

 拳に、九十九由基の反応が遅れた。腕のガードはかろうじて間に合ったが、そこからの呪力のガードが間に合わず甘い。

 左腕は折れただろう。

 

 呪力操作のみによるコンパクトな攻め。こちらの速度に、九十九由基はギリギリで喰らいつくだけ。

 

「ほらほら? 僕のこと倒したいんだろ? 頑張れ、頑張れ」

 

「く……凰輪ァ!!」

 

「ん?」

 

 式神にベルトのように巻き付かれた。まぁ、動きに支障はない。

 

「まだまだ……!」

 

 ――『星の怒り』!!

 

「重っ……」

 

 そうか。九十九由基の術式は、質量。今までの見た目、速度以上に高い攻撃力は質量の付加によるもの。俺のことを重くしないってことは、術式の範囲は、九十九由基自身か、この式神ってとこだろう。

 

「どうだい? 五条くん」

 

「正直、だからなんだって、話なんだけどね」

 

 この式神から抜け出すのも、そこまで難しくはない。ただ、どうしようか。

 

 九十九由基の拳の追撃。巻きついた式神を盾にして受ける。

 この程度の重さなら、動きにそれほど影響はない。このまま戦ってみてもいい。

 

「ずいぶんと、余裕そうだね」

 

「実際、かなり余裕だし」

 

 巻きついた式神に手をかける。

 なかなかにキツく締めてくれちゃって……式神に呪力でインパクトを与えつつ、するりと下へとおろしていく。

 

「術式なしで、そのパワーか」

 

「これ、返すね」

 

「おっと」

 

 九十九由基へと、その式神を蹴り返す。九十九由基は軽く受け、思ったよりも威力が出ていない。式神の質量の増加分を、術者は無視できる感じか、なるほど。

 

 さて、どうするか。

 まぁ、決まってるか。

 

 優先するべきは――、

 

「そんなふうにスカした男はタイプじゃなくてね!」

 

「は……くだらないこと言ってないで、逃げた方がいいんじゃない?」

 

 九十九由基の術式は質量の増加。

 簡単な話だ。肉弾戦一辺倒。そして、質量の増加は九十九由基の動作……さらには手応えからして、九十九由基の肉体の強度の増加には寄与しない。

 

 笑えてくる。こうして殴り合いで勝てない相手にはとことん意味ない術式じゃねぇか。

 こんなんで、僕のこと倒そうとしてるのかよ。

 

「く……っ、まだ……!」

 

「ま、僕の術式戻ったら、もう無理でしょ?」

 

 優先すべきは――術式の修復。

 

 九十九由基の拳は、質量は、無限のこちら側へは届かない。

 

「まさか……もう……っ!? でも、これでいい」

 

 同時に、『簡易領域』が剥がれきる。術式の修復を優先したぶん、身体への反転が遅れている。掌印を組む右腕がない。

 

 領域の必中効果が発動する。

 

 ――『順流星極圏』。

 

「……ッ!?」

 

 これは、なんだろう。

 遅れている。全てが遅れている。

 

 九十九由基の術式が可能なのは、自身への質量の付加。そして、例外はあの式神。

 

 そうか、質量。術式の対象を拡張し、相手にも質量を付加するのがこの領域の必中効果。

 質量が付加され、脅威なのは体が重くなることではない。血液の流れ、細胞の動き、脳の神経の伝達……もし仮に、その全てが通常の質量の二倍となった場合、必要なエネルギーは二倍になる。

 

 単純な話、質量が増加させられたのならば、生命活動が破綻してしまうだろう。まさに必中必殺。通常運用は微妙だったが、領域になればなかなかいい術式だ。

 

 

 あぁ、だけど――、

 

 

「――術式反転『赫』」

 

 

 僕の術式の方が――、

 

 

「  〝波羅蜜〟

 ( )〝位相〟  〝光の柱〟――」

 

 

 圧倒的に上だ――……。

 

 

 細胞一つ一つ、原子一つ一つに『赫』を適用し、付加される質量を相殺する。

 

「そうか……順転の『蒼』は引力。それは質量同士で引き起こされる現象と同じか……。等価原理ってやつだね。なら、反転の『赫』は当然……」

 

 ――負の質量。

 

 九十九由基はそうこぼす。

 

「正っ、解!」

 

「私の領域をこうも容易く……やってくれるね……っ。これが六眼……これが無下限か……。く……」

 

 九十九由基の体術は正の無限で完全に止まる。領域の必中効果は負の無限で相殺可能。

 反転術式により、右腕を再生させる。

 

「ま、ここまでかな。『領域展開』」

 

 

 ***

 

 

 

 五条悟の領域が九十九由基の領域を塗り潰そうとするその瞬間だった。

 

「……っ!?」

 

 領域の外側からの乱入者が現れる。

 

「あ? あの独活じゃん」

 

 渋谷駅、地下五階で、再起不能になるほどに無量空処を必中()て、放置をした呪霊の一体だった。

 

 呪力の雰囲気が違う。ただの呪霊でないことは、すぐにわかった。呪霊操術で操られている呪霊、というのが経験からの判断。そして、この残穢は、夏油傑のものではない。

 

「『領域展開』」

 

 新たに行われる領域の展開。五条悟の必中が相殺される。だが、九十九由基はその援軍に、素直に喜ぶことができない。

 なぜなら、領域の押し合いで五条悟に勝てはしないと知っているから。

 

「――っ!?」

 

 だが、『無量空処』は発動しない。必中効果が相殺されている。

 

 ――これは、そうか。

 

 領域展開は、基本的に結界の外郭の押し合いだった。相手の外郭を押し切れば、結界とともに展開された生得領域が消え。簡単に勝負がつく。

 

 だが、この呪霊は領域の外郭をあえて発生させないことにより、領域を簡単には塗り潰せない状態へともっていっている。閉じない領域なんて器用なものじゃない。これはいわゆる()()()な領域。だが、この場面では最も有効。

 そして、掌印を結び続けることにより、領域自体を押し切られることにかろうじて耐えている。

 

 柔軟な発想に息を呑む。この呪霊操術の術者は結界術に精通しているのだろう。

 

 それで、どうする。数秒耐えたところで、五条悟は健在。というか、術式を使える五条悟を相手にすれば、呪霊も特級術師も、数秒とかからずに倒される。

 

 なら、どうすれば――、

 

 

 ――領域外。

 

 そこには一本の杖が地面に刺さっている。

 その杖が飾られるのは、三つのしゃれこうべ――三つ魂が互いを観測することにより成り立つ自立型呪骸。

 

 事前の命令の通り、自立型呪骸は動いた。

 

 ――嘱託式『領域展開』。

 

 幾重にも重なる縛りにより、その呪術は成立していた。

 

 ――『胎蔵遍野』。

 

 閉じない領域。単純に発動することさえ至難の業のはずであるそれの、嘱託式での発動。それは、まさに絶技と言うに他ならない。

 五条悟の領域の結界を覆うように、それは発動をする。

 

 領域に付与された術式は重力。それにより、結界は押しつぶされ、変形を始める。そして、数秒、五条悟の領域が崩壊する。

 縛りとして、ここまでだった。嘱託式の領域展開は完全に終了する。

 

 

 ――そして、現れる。

 

 

 結界内で戦っていた、五条悟、九十九由基、さらには花御。

 花御の未完成の領域展開は、五条悟の領域の外郭が消えたことにより霧散する。

 

 領域内の全員の術式が焼き切れる。

 

 

 

 ***

 

 

 

「マジか……」

 

 領域の結界は外側からの攻撃に脆い。なにかの手段で外郭を破壊された。

 

 異質な呪力を感じる。あれは、杖……自己補完できる呪骸か。でも、夜蛾先生を乗っ取ったあいつは殺したはず。

 まだ仲間がいた、と考えるべきか。

 あの杖は、呪力が底を突いているから、放置しても、まぁ大丈夫か。

 

「さ、しきり直しといこうか。凰輪!」

 

「は? 領域内で、術式なしの僕に勝てなかったこと、忘れてんの?」

 

 九十九由基に、式神に……それと草タイプの呪霊も割って入ってきている。

 だからなんだって、話だ。

 

 呪霊に拳、式神に投げ、九十九由基に蹴り。続け様にくらわせる。

 ここまでやろうと俺には届かないってわけだ。全員が倒れる。

 

 ――『領域展開』。

 

「今度は誰だよ……?」

 

 ――『蕩蘊平線』。

 

 砂浜に景色が変わる。そういえばいたな、タコ頭の呪霊。

 こう、領域で波状攻撃を仕掛けられると、面倒でたまらない。

 

 ――『死累累湧軍』。

 

 これは……魚の式神の無限湧きってところか。

 魚の式神は、領域の必中効果でこっちに攻撃が当たった状態で出現する。

 

「ま、雑魚だね。くさタイプがやられたから、今度はみずタイプって? 僕はほのおタイプじゃないんだぞ?」

 

 ――御三家秘伝『落花の情』。

 

 そもそも魚の式神には、俺に攻撃を通すほどの力がなかった。たかがしれてる。痛くはないけど、噛みつかれたままじゃ面倒だから、『落花の情』の呪力カウンターで式神は触れた瞬間おろしていく。

 領域展開でこの程度とか悲しくなるね。

 

「私を忘れてもらっちゃ困る!」

 

 式神を振り回す九十九由基だ。反転でダメージから回復した……いや、治してないな、こいつ。

 なるほど、俺の『無量空処』と違って必中効果は相手を選べるタイプか。

 

 九十九由基が振り下ろした式神を受け止める。

 重い。

 九十九由基は術式が焼き切れている最中。この式神に付与された質量の術式は九十九由基から独立しているか。

 

「そんな、重そうに振り回して……術式のコントロールがないだろ?」

 

「く……っ!」

 

 掴んだ式神で、九十九由基を吹き飛ばして、奪い、叩き潰す。

 術式の焼き切れ前は九十九由基は、式神の増加させた質量を感じてはいなかった。だが、焼き切れた今は、焼き切れる前に付与した式神の質量を九十九由基自身が感じるようになってしまっている。

 

 これでは、俺に使ってくれと言っているようなものだ。

 

「はは……っ。けっこう良いじゃねーか、これ」

 

 振り回す。起き上がって、こちらを殴りに来た草タイプの呪霊をプチリと一撃で潰す。こいつ、なかなか硬かったんだよなぁ。

 次は領域を維持していた水タイプも吹き飛ばす。

 

 領域は砕け散った。

 これであとは、倒れて、かろうじて意識を持つ九十九由基をコテンパンにしてやれば終わりだ。

 

「五条くん。君はなかなか無理してるね」

 

 ――領域展開。

 

 九十九由基は、反転術式でダメージを治していなかった。それは、俺の真似をして術式を修復するためだった。

 そういえば九十九由基は、呪霊や術師に対していろいろやっているんだったか。だからこそ、俺の術式の焼き切れの修復を再現しようと試みることができたみたいだ。

 

「はっ……だから? ……『領域展開』」

 

 ただ、術式を回復させられたのは僕も同じだ。

 その九十九由基の頑張りは、意味のないことだった。

 

「が……はっ!?」

 

 九十九由基は、鼻や目から血を吹き出す。まだ『無量空処』は発動してない。術式の焼き切れの修復にミスって、脳がぶっ壊れて領域ができなくなったというわけか。

 

「ははっ。ただでさえ負けるのに、不発とか、ダッサ……」

 

 押し合いを簡単に済ませられるよう、結界で閉じる領域を選んだが、意味がなかったか。ま、どっちでも良い話か。

 

 もうおしまいだ。

 分断したってことは、傑も戦ってるんだろうが、宿儺相手じゃないしあっちは大丈夫だろう。

 

 完全に結界が閉じ切る。

 

 

 ――布瑠部由良由良。

 

 

 乱入者により、領域は破綻をする――、

 

 

 

 ***

 

 

 

「俺が、負けたか……」

 

 虎杖くんの頬に開いた口は感慨を持ってそう呟いていた。

 特級術師、九十九由基。彼女によりもたらされた特級呪詛師二人を倒す作戦は単純明快。宿儺の相手をさせたのち、分断をして倒すというものだった。

 

「では、私たちは行きます。虎杖くんは待機を」

 

「ナナミン、俺は……」

 

「虎杖くんは待機を」

 

 なぜ、虎杖くんをこの渋谷へと連れて来たかといえば、上層部の命令だった。

 狙い通りにことが運べば、一級の私で最低ライン。虎杖くんには、経験が足りない。才能を開花させ、呪術としての純粋な強さとして、一級の線に足をかけてはいる。けれど、まだここに立つべきではない。

 

「ブラザーの実力は、俺が保証する。連れて行ったらどうだ?」

 

「東堂くん。消耗しているとはいえ、相手はあの夏油傑です。相手が本気なら、命の保証は」

 

「本気なら……だろ?」

 

「…………」

 

 あれで夏油さんは甘い。

 おそらくは、こちらの命までは取らないと踏んでいる。ここにいる全員がだ。

 

 五条さんの相手を少数精鋭に九十九由基さん()()が、そして手数の多い夏油さんの相手を一級術師の総力で行う。その手筈だった。

 

 だからといって、虎杖くんを参加させることはできない。宿儺というイレギュラーに、五条悟の存在もある。

 

「キヒ……ッ。小僧、地下五階だ。面白いものが見られるぞ?」

 

「は……?」

 

 宿儺が、うそぶく。

 虎杖くんが宿儺の器だということは秘密ではある。一応、今ここには信頼のおける術師しかいないため、ごまかしは利く。

 

 相手は呪いの王。何を狙っているのかわからない。ただ、虎杖くんを参加させない口実としてはもってこいだが、リスクとしては宿儺の言葉通りに虎杖くんを動かした方が高い。

 

「虎杖くんは待機を」

 

「ナナミン。俺、俺ができたはずのことがあるなら、はなからやらないなんてこと、絶対にしたくないんだ。ナナミン、俺、ナナミンと戦えないなら、行くから」

 

「はぁ……君は止めても行くんでしょうね」

 

 連れていくか、宿儺の言葉に従わせるか。

 どちらにせよ、リスクが高い。

 

「貴様らでは十八本の俺を倒したあやつらには勝てんぞ? クク……ッ、せいぜい足掻くといい」

 

 宿儺が何かを言っている。その言葉の通りだと私は感じている。

 

「ナナミン。ほんと?」

 

「やるだけやるしかないことです」

 

 ここで嘘をつくこともできたが、虎杖くんは馬鹿じゃない。きっと察してしまっただろう。

 

「宿儺! その地下五階に俺が行けば、俺は役に立てるのか?」

 

「知らん。だが、少なくとも今よりはマシにはなるだろうな」

 

 宿儺……一体、何を企んでいるんだ。

 宿儺は……虎杖くんの体に宿る宿儺は指一本分。そうであれど呪いの王。警戒をしない理由にはならない。

 

 けれど、虎杖くんなら、リスクを知っても前に進む方を選んでしまう。

 

「ブラザー、本当にそれでいいのか?」

 

「あぁ、俺、絶対に役に立ってみせるから」

 

「危険だと思ったのなら、すぐに退避してください」

 

「おう」

 

 そうして、虎杖くんは渋谷駅へと走っていく。

 それを見届けて、私は向き直る。

 

「作戦を確認します。二人が領域を解除した瞬間に、九十九さんが分断をします。その後、私たちはすぐさま夏油さんを抑えます」

 

「まったく、全ての人間を術師にするなんて、やっかいなことを考えてくれるね、夏油くんは」

 

 冥さんはそう言った。

 この人は一度、二人が離反した際に数年海外で生活をしていたが、最近になって日本に戻ってきたのだった。

 まぁ、あのときのことで一度術師を辞めた私が何か言える立場にはない。

 

「ここで夏油さんを抑えなければ、この国は終わりです。呪霊、そして宿儺によって削られたまたとない機会。絶対に負けるわけにはいきません」

 

「そうだね」

 

「あぁ、それと、夏油さんを殺すのはなしです。あくまで必要なのは捕縛ですから、捕縛を狙います」

 

 夏油さんが、死んだ場合、この国はおしまいだろう。呪霊や呪詛師被害が抑えられているのは、あの二人が抑止力として働いているおかげだった。

 

 夏油さんをもし殺せたとして、あの人が……五条さんがどう出るかわからなかった。

 五条さんだけが生き残るより、夏油さんが生き残る方がまだリスクが低い。とにかく、夏油さんが死んだ場合は詰みだ。殺してはいけない。

 

「だが、殺す気でいかなければ勝てないだろう?」

 

「そうですね。ただ、一応念頭に置いておいてください」

 

 本当に、あの人たちは……。

 ここで嘆いても仕方がない。

 

 領域の解除とともに、九十九由基が切り込んでいく。

 

 

 

 ***

 

 

 

「さて、こっちもか」

 

 悟は、九十九由基の領域に閉じ込められた。

 そして、こちらには――、

 

「夏油さん。おとなしく倒されてくれたら嬉しいんですが」

 

「七海。あいにくだがそれはできないね。こちらにも大義があるんだ」

 

 高専の術師たちだ。

 まず、目の前に現れたのは七海。そして、もう一人。

 

「どんな女が好みだ?」

 

「なるほど、君が東堂葵か」

 

 初対面の問いかけ方が、九十九由基のそれだった。

 話に聞く、九十九由基の優秀な弟子とは彼のことだろう。

 

「どうした? 答えてくれないのか?」

 

「なるべく、怪我はさせたくないんだけどね」

 

 まずは小手調べか。

 術式を持たない一級相当の強さの呪霊を二体、放つ。

 理子ちゃんの術式が焼き切れて、手持ちの損耗がありうる今、どうしても少し出し惜しみ気味に動きたくなる。

 

「この程度で、俺の歩みを止めることなどできんぞ?」

 

「行きますよ? 東堂くん」

 

 放った呪霊を軽く倒して、二人はこちらへと走り出す。

 

「学生にしてはやる……。七海も、腕を上げたね」

 

「私の術式は十劃呪法。対象を線分した際、七対三の内分点を強制的に弱点とする呪術です。対象は全長だけでなく部位ごとに指定可能、さらには呪力を帯びたものだけでなく呪力のない無機物を対象にすることも可能です」

 

「あぁ、知ってる」

 

 術式の開示。手の内を明かす縛りだが、七海の術式は学生時代に知っている。再確認程度の意味合いになるか。

 

 七海の攻撃は、適当に当てたとしても一定の確率で七対三のウィークポイントに触れるということになる。

 もちろん、七海は狙ってくるが、それを外してもどれかのウィークポイントに当たっている確率は十分にある。完全に避けるか、ウィークポイントに当たった攻撃がもとからの攻撃力と考えて動く。

 

 そして、注意すべきはもう一人の持つ術式。

 七海の攻撃を呪霊操術で呼び出した呪霊で受けようとする。

 

 ――拍手の音が響いた。

 

 七海の攻撃が顔面に当たる。七海の攻撃を受けさせようとした呪霊は私の後ろにいる。

 

「位置替え……か。だが、まだまだ連携が洗練されてない」

 

 呪力で防いで、ダメージはそれほどない。だが、困った。

 呪霊と私の位置を変えられるなら、呪霊の数で攻める場合は相手の選択肢を増やすだけになりうるか。

 

「夏油くん。私もいるよ」

 

「冥さん」

 

 冥さんは、おそらく私の相手をしても命の危険はないと踏んでいるのだろう。その上で、私を倒せた場合は高専から大金を得ようという心積りか。相変わらずで安心をする。

 

 ――『神風』。

 

 ――『うずまき』。

 

 冥さんの黒鳥操術――その術式で操られる鴉は、命を失うという縛りにより、本来あり得ないほどの呪力をまとい、並でない威力の突撃を行ってくる。

 それは私は、一つ一つ、低級呪霊をすりつぶした『うずまき』で相殺する。

 

「お久しゅう。夏油くん」

 

「ん……?」

 

 七海に、東堂葵に加えてもう一人。

 いつか見た顔だった。

 

「なかなかに賑やかやが、堪忍や。悪く思わんといて? リベンジマッチや」

 

「縛りでは、私たちに手を出さないということになっていたんだけど」

 

 七海と、東堂葵の攻撃をさばきながら、そう尋ねる。

 

「あれは禪院家として結んだ縛りや。今の俺は禪院やない。家からの命令も受けてはおらへん」

 

「なるほど、そういうことか」

 

 野暮だったか。彼個人の意思でここにいるということだ。なら、それは尊重しておいてあげた方がいい。

 

 冥さんの援護に加えて、近接戦を得意とする三人か。なかなかに人数が増えると連携がごたつくかと思ったが、さすがは一級術師だ。

 七海の攻撃をメインに、東堂葵が撹乱、禪院家の彼が遊撃、冥さんが隙を見て決定打を狙ってくる。

 

 下手に呪霊を出そうものなら――、

 

 ――三方で、黒い火花が散る。

 

 ま、こうなる。

 

「絶好調じゃないか。参ったね」

 

 理子ちゃんの術式が焼き切れている今、私は純粋に呪霊操術の力で戦わなくてはならない。

 ただ、呪霊操術だけでも、私は並の一級レベルではない。

 

 ――呪霊操術『特級呪霊・漏瑚』。

 

「……っ!?」

 

 その存在感に気圧され、三人が一度身を引く。

 宿儺には通じなかったが、漏瑚とはそういうレベルの呪霊だった。

 

「さ、耐えられるかな?」

 

 敵の人数が多い場合の足切りとも言えるだろう。

 これに耐えられなければ、私と戦うに足り得ない。

 

「領域――」

 

 それは、上からの襲来だった。

 

「領域展開」

 

 ――『坐殺博徒』。

 

 

 

 ***

 

 

 

「恵くん。君の作戦には掛ける価値がある」

 

「ですけど……リスクが大きすぎる」

 

「他に方法はないかな。もうリスクを考慮していられるステージじゃない」

 

 九十九由基さんからの電話だった。内容は、あの二人を抑える方法についてだ。

 

 全ての人間を術師にするという二人の計画は聞いた。あの二人ならやりかねないような大それた話だった。

 

「五条くんを封印しようと特級の呪霊が動くという話を耳に挟んでね。決行はそれに乗じて……ハロウィン、十月三十一日……渋谷だ」

 

「五条さんが封印? にわかには……」

 

「おそらく失敗するだろうね。それでも、消耗はするはずさ。少しでも確率を上げるためかな」

 

 そもそも、呪霊がそんなふうに計画性を持って動くという話が信じられない。そんなに理知的な呪霊がいるのか。

 いや、これは考えても仕方ないか。

 

「おい、宿儺!!」

 

「お前らの思い通りにはならんぞ? なぜなら、俺が勝つからだ。九十九由基と言ったな? せいぜい容易く俺に殺されないよう足掻くことだな」

 

 九十九由基さんが高専に話をつけて、日付は変わる。

 ハロウィン、渋谷。『帳』の中に一般人が閉じ込められるという異常事態に、渋谷駅地下五階に五条悟が、地上にいる改造人間たちを治療するために夏油傑は奔走していた。

 

「恵くん。津美紀ちゃん。たぶん、あそこだ」

 

「うん!」

 

「はい、憂太さん」

 

 俺たちのおこなっていたのは、『帳』の術師の捜索だった。

 憂太さんが呪霊操術で、夏油さんから借りた呪力を解析できる呪霊によって、術師を発見する。

 

 ビルの屋上。

 

「来たか!? 夏油の一味!!」

 

 おそらくは呪詛師。三人、かたまっている。

 

 津美紀は構築術式で作った虫の鎧、俺は鵺、憂太さんは呪霊に乗って、それぞれが三方向から空を駆けて登ってきた。

 

「津美紀ちゃん!」

 

「こっちは任せて!」

 

 そう言うと津美紀は三人のうちジジイを連れて地面へと降りていく。

 俺たちは、残った二人の相手か。

 

 男と、腰の曲がった白髪のババアだ。

 

「婆ちゃん」

 

「――――」

 

 何かを白髪ババアは唱え出した。

 

「憂太さん」

 

「うん、そうだね」

 

 これは時間をかけない方がいい。

 同時に、俺たちは動き出す。

 

「……っ」

 

 白髪ババアを守るためか、男は前に出る。

 

「く……っ」

 

 憂太さんの調子が出ないのは、なるべく殺さないためだった。別に不殺にこだわっているわけではないが、殺したいわけでもない。

 

「『玉犬』!!」

 

 玉犬に噛み付かせて動きを止める。この前に立ちはだかった男は憂太さんにとっては弱すぎる。俺くらいがちょうどいいだろう。

 

「今です!」

 

「ありがとう、恵くん!」

 

 そうして、憂太さんは白髪ババアの意識を刈り取りにかかる。

 

 

 ――『霜凪』!!

 

 

 直前に、氷が襲った。

 あまりの冷気に、あたりが凍り尽くす。

 

「危なかった」

 

 俺を引っ張る形で、憂太さんはその攻撃を上に避けて、氷の上に着地している。

 

「外したか……」

 

 白髪頭でおかっぱの男とも女ともつかない中性的な人物だった。

 

「君はいったい……」

 

「器の貴様! これを受け取れ!!」

 

「は……?」

 

 そしてそいつが話しかけるのは俺にだった。渡されたのは、袋……中には指が……宿儺の指が入っている。

 いや、そういうことか。

 

「『鵺』!!」

 

 俺は振り返って、そのまま憂太さんから鵺で逃げる。

 

「恵くん!?」

 

「『禪院甚爾』!!」

 

 後ろからは、あの何かを唱えていたババアの声も耳に入る。あれで無事だったのかよ……。

 

 まぁ、いい。袋から、指を取り出し、鵺の上で一つずつ飲み込んでいく。

 追いかけてくるのが一人。

 

「恵! どうしたの!?」

 

「津美紀!?」

 

 もうあのジジイ倒して、こちらの異変に気がついて駆けつけていたか。

 ここで指を奪われるのはまずい。急いで、飲み込む。

 

「恵、それって……」

 

「キヒ……ッ!!」

 

 許容量を超えた指を飲んだことにより、宿儺が表へと出る。

 だが、次の瞬間には主導権が俺に戻る。

 

「宿儺、縛りだ。忘れたか?」

 

「チッ……つまらん」

 

 宿儺に課した縛りは、俺の家族……津美紀、美々子、菜々子、黒井さん、憂太さんを直接的、間接的な方法も含めて殺しても、傷つけてもならず、危機を見逃してはならないという縛りだった。

 それに加えて、俺の家族に宿儺が悪意や害意を持った時、その感情がなくなるまで、肉体の主導権が俺に渡るという縛りもある。

 

 いま、津美紀に害意を持ったことにより縛りは発動し、宿儺は体を俺に明け渡した。

 

 俺が助けるのは自分にとってかけがえのない人間だけだ。それ以外がどうなろうとも、知ったことではない。

 ただ助ける人間を選んだ結果がこれだった。

 

 もし、宿儺が五条悟と夏油傑を殺した場合、今後は宿儺が縛りを破った場合を除き、基本的に肉体の主導権を得ることになる。

 縛りがある。これなら、俺は安心できる。

 

 縛り……そう、縛りだ。

 俺は思い出す。

 

 ――は? 津美紀たちを傷つけない縛り? 恵って、とことん俺たちのこと信用してないよね。

 

 ――あぁ、それがあれば、俺は……。

 

 ――んで、それ……津美紀たちと結ぶことになるけど、あいつらがペナルティ望まなきゃ、縛りって機能しないと思うよ? 意味ないし、面倒なんだけど。

 

 ――じゃあ、俺となら……。

 

 ――恵はさぁ。いつからそんなに偉くなったのさ。それって、恵が決めることじゃないよね。

 

 あぁ、だから、これは俺のわがままだった。

 

「恵! 何するつもりなの!!」

 

 津美紀が止めようとする。

 それでも、俺は行かなくてはならない。

 

「万? 貴様! 宿儺様から離れろ!!」

 

「う……っ」

 

 氷の術式のあいつだった。津美紀が、冷気に飲まれて離される。今の津美紀なら、きっと大丈夫だろう。

 憂太さんは……遠目に、誰かと戦っている姿が見える。

 

 みんなと離れて……ようやく、全ての指を飲み込める。

 肉体の主導権は宿儺へと移る。

 

「鏖殺だ!」

 

 そして宿儺は、夏油傑、さらには五条悟に挑み、敗北した。

 

 そうやって取り残された俺は、眠っているふりをし、術式の維持を続けて、機を窺い……待った。

 

 

 ***

 

 

「は……っ、今度は恵かよ……っ!!」

 

 魔虚羅を使い、五条悟の領域の破壊に成功する。

 魔虚羅は無量空処には適応済み。宿儺を沈めるため、念入りに無量空処を当てられたからこそ、宿儺の魂を肩代わりさせた適応は手早く済んだ。

 

 俺が宿儺に求めていたものは、五条悟と夏油傑を宿儺に倒してもらうことじゃない。

 

 津美紀は、呪物に宿った人間の知識により術式の運用法を会得していた。だからこそ、俺が宿儺に求めたもの……それは手本だ。

 

 宿儺の持つ、圧倒的な呪力センス、術式の理解度。悔しいが、俺よりも巧みに十種影法術を使いこなしていた。

 

 そして、宿儺自体は沈められたが、それにより宿儺の指が持っていた圧倒的な呪力は今は俺が自由に使用可能。

 

 ただ、宿儺の術式は使えない。津美紀なんかは脳に刻まれた受肉した相手の術式を使えるが、俺は違った。

 術式を司るのは脳の部分。宿儺は、魂が沈められる際に、宿儺の術式が刻まれた俺の脳の部分を律儀に反転術式で元通りに治して行きやがった。

 

 なんにせよ、求めていた状況が、今、目の前にある。五条悟は俺が倒す。

 そのための条件が、整っていると言ってもいい。

 

「領域展開『嵌合暗翳庭』」

 

「シン・陰流『簡易領域』」

 

 もとより、狙いは必中効果ではない。

 領域により、バフの乗った式神『阿形』『吽形』に、五条悟を攻撃させる。

 

「術式なしは、ちょっときついか……」

 

「……ちっ」

 

 そう言いながらも、式神の攻撃を捌く五条悟が憎らしい。

 波状攻撃を加えるが、拮抗が続く。

 

「ま、一旦休憩! てね!」

 

 五条悟の術式が戻った。『阿形』も『吽形』も、簡易領域の先の五条悟の不可侵を超えられない。簡易領域も剥がれる様子はなかった。

 このままでは五条悟は倒せない。だが、領域で有利を取れる状況だから、五条悟と勝負になると踏んだわけではない。

 

 なによりも――、

 

「へぇ、時間経過か……」

 

 ――魔虚羅は、五条悟の不可侵に適応している。

 

 魔虚羅の適応は時間経過とともに進んでいく。そして、攻撃を受けた経験が多ければ多いほど、解析の速度は加速する。

 

 宿儺は、一度、『蒼』を受けていた。魔虚羅の適応は始まっていた。

 だからこそ、俺はこうして、待った。適応を完了させた魔虚羅により、俺は五条悟をようやく倒せる段階に至った。

 

「ま、でも……領域なら僕の方が上でしょ。さっきは結界ごと壊されたけど、結界で閉じなきゃいい話でしょ」

 

 その掌印は、当然ながら無量空処。結界で領域を閉じないとかいうふざけたことを五条悟はぬかしている。

 あぁ、そうだ。俺の領域では押し切られる。魔虚羅が適応をしたのであって、俺は無量空処に無防備だった。

 

 一瞬でも、無量空処が決まれば俺は負ける。

 

 

 

 ***

 

 

 

「術式の修復は、術式を司る脳の前頭葉の部分を呪力で破壊し、反転術式で作り直す。五条くんとはいえど、そうとうな無茶をしなくちゃいけない」

 

 離れたところで息も絶え絶えな九十九由基だった。

 

「だから、なんだよ?」

 

「君は、今日、何回領域を使ったかな?」

 

 渋谷駅の地下五階で一度、そこから宿儺相手に一度、宿儺の攻撃を受け中断し再展開をして一度、九十九由基相手に二度。

 合計五回の領域展開。その全てで、術式の修復を行なっている。

 

 宿儺の相手をした際は、天内のサポートはあった。ただ、その分術式の修復の速度を上げていたため、脳へのダメージは自力の場合と変わらない。

 

「さてね」

 

 ――領域展開。

 

 恵の領域を包み込むように、俺の領域を広げようとする。

 

 ただ、あぁ、九十九由基の指摘通り……、

 

「が……っ」

 

 俺は失敗する。

 なかなか、ここで限界のようだった。恵の領域が残り、俺だけが領域を展開できていない。不可侵に適応した魔虚羅も相手の手札にはある。

 

「五条さん。覚悟してください」

 

 宿儺相手にした時は、隣には傑がいた。それなりに追い詰められはしたが、焦りはなかった。

 

 これほどの緊張を感じたのは……確か――( )

 

「へぇ、やっぱ……親子だね」

 

 被って見える。

 なら、なおさら、負けるわけにはいかないかもしれない。

 

「……?」

 

「〝位相〟 〝智慧の瞳〟

    ( )〝黄昏〟    ――」

 

 順転の『蒼』を使った瞬間移動は、距離を短縮し、一歩が遥か彼方までに届くようにする技だ。

 この呪詞の詠唱はその逆。『蒼』の要領で時間を短縮すれば、一呼吸で遥か未来に行ってしまう。だから、その反転だ。『赫』を使えば、一呼吸が瞬く間へと変わるだろう。

 

 簡易領域を保ちつつ、『蒼』で接近をして、グーパンで恵の腹を殴る。

 

「ぐ……、魔虚……羅」

 

 魔虚羅は適応をしたからか、変わった特性の呪力で無下限を中和してくる。これをされると不可侵が維持できなくなり、魔虚羅以外の攻撃も当たるから厄介だった。

 

「  〝波羅蜜〟

 ( )〝位相〟  〝光の柱〟――」

 

 ――術式反転『赫』。

 

 魔虚羅を吹き飛ばす。けれど、それは影になって消えてしまった。またもう一体、魔虚羅が湧いて現れる。

 

 なるほど、領域内だと無限リポップか。たぶん、同じ式神複数もいけるな。ただ、一撃で倒していく限りは適応はされない。

 

「くそ……っ!?」

 

「恵、それ……影分身? へぇ、そんな器用なこともできるんだ。じゃ、俺もー」

 

 恵の影分身に合わせて、俺も『蒼』を使って分身したように見せかけ、攻撃をする。

 

「がは……っ、ご……っ」

 

 そろそろ領域保てなくなるんじゃないかとも思ったけど、意外と粘る。

 

 それにしても、術式を回復するために連続で脳に反転をかけ続けたせいか、反転の出力が落ちている。そろそろリポップする魔虚羅を『赫』で倒しきれなくなりそうだ。

 

「さて、と。『茈』は……やめとくか」

 

 ただ、『蒼』も『赫』も、今の恵は耐えられるかだ。決着は急ぎたい。

 魔虚羅を抑え続けられる限界がある。恵の耐久力次第だが、こうしてぶん殴り続けるのではこっちが先に『赫』の出力切れでギブアップだな。

 

「クソッ……まだ……っ!」

 

「恵、確かに術式とか呪力の使い方は上手くなったよ。でも、全然怖くないね」

 

 いい加減、付き合うのも面倒になってきた。

 出力がマシなうちに、『赫』で吹き飛ばして、後のことは後で考えようか。

 

「恵くん……! もう君は無理だ!」

 

「九十九さん! 俺はまだ!」

 

「……もう、諦めよう」

 

 ボロボロになって観戦していた九十九由基は言った。ま、妥当だろう。

 僕もなにも殺したくて人を殺すわけでもないし、当然、話し合いには応じるつもりだ。

 

「なに? 君ら、もしかして泣いて謝ってくれんの?」

 

「恵くん、君は逃げてくれ。君は希望だ」

 

 なんか、九十九由基が俺の前に立ちはだかった。そんな死に体でなにができるのやら。

 

「凰輪!」

 

 式神が恵に巻き付いて、引っ張っていく。

 同時に、恵の領域が解けた。呪力量にはまだ余裕があるように見えたが、集中力の限界だったかもしれない。

 

「ま、恵。悪くなかったよ。でも、やっぱり呪力は使い方だからね。宿儺を手本にしっかり復習しとくといいかな」

 

「クソ……ッ。九十九さん!!」

 

 恵はもっと強くなれる。今のままじゃ、宝の持ち腐れってとこだ。これからに期待って感じかな。

 

「で? なにしてくれるの?」

 

「そうだね……」

 

 ふらふらのまま、九十九由基はこちらに殴りかかってくる。その拳は、無下限で止まった。

 

「あきらめなよ。もう領域使えないってことは、僕に攻撃当てられないでしょ」

 

 止まった拳を手で掴んだ。

 

「五条くん、一つアドバイスだ。術式頼りの守りに回るのは、余裕のないときだけにしておいた方がいい」

 

「は……っ、それで?」

 

「私の術式は質量。術式で付与した質量は、私自身には影響を与えないが、それは一定を超えるまでの話だ」

 

「あ……?」

 

「『蒼』っていう時空を歪める技を使う割には、想定が甘いんじゃないかい?」

 

「な……っ!?」

 

 とっさに離れる。『蒼』を使った高速移動だった。

 だが、これは……そう……九十九由基に、空間ごと引き摺り込まれている……。

 

「ブラックホール……知っているかい……? 突き詰めれば、質量も、時間も、空間も……」

 

 天内が、俺の術式の原理がブラックホールに似ていると言っていたことを思い出す。

 捕まったら逃れられない、計算上無限の密度を持つ天体のことだ。

 

 九十九由基は、自身に質量を付加し、潰れ、ブラックホールになったということか。

 

「術式反転『赫』!」

 

 炸裂前の『赫』をその中心に打ち込む。引力を『赫』の斥力で相殺する。原理としてはこれが正しいはずだった。

 

 若干、引き摺り込む力が弱まった。だが、変わらずまずいと俺の感覚は告げている。

 

 何か、他に手は……。

 

 

 ――いや、もういいか。

 

 

 思えば、俺は強くなりすぎた。

 傑と一緒だったけど、あの宿儺さえ倒してしまったんだ。

 

 これから先、戦いで俺が死ぬことは、きっとない。俺に勝てるとしたら傑だけど、呪霊の数だけ青天井に強くなっていくあいつだ。正直に……あぁ、正直に言えば、いつかあいつに置いていかれるのではないかと、少しの不安があった。

 

 なんにせよ、死ねば終わりだ。

 みんな、俺がいなくてもきっと大丈夫だろう。

 

 親友がいて、みんながいて、全力で戦って、悔いはないし、悪くない人生だった。

 

「んで、天内。お前はこっちにいるのか?」

 

「そうじゃな」

 

 空港だった。思い出深い、あの場所だ。待合の座席に、背中合わせで俺たちは座る。

 

「えっと……そうだな。ブラックホール、地球滅ばないか?」

 

「ブラックホールは常にエネルギーを放出しておる。放出が取り込む質量より大きければ崩壊するじゃろ。あのサイズならすぐに崩壊じゃ」

 

「そっか」

 

「それに、魔虚羅もおる。『蒼』に適応済みなら、似たような現象のブラックホールもなんとかするじゃろ」

 

「そうだな」

 

「…………」

 

 気まずい空気が流れる。沈黙だった。

 

 俺の唯一の心残りといえば、たしかにそうか……天内だった。

 

 だから、きっと、これは俺の妄想だろう。死後の世界とか、そういう雰囲気ではあるが、天内は今、呪霊になって傑のところにいる。

 

「最期に思い出すのがお前かよ。なんかなぁ……」

 

「なんじゃ? その煮え切らん態度は……」

 

 都合が良すぎる。ここで天内に謝って、終わりってことだろう。夜蛾先生は、呪術師に悔いのない最期はないって言ってたか。

 でも、そんなことはなかったわけだ。

 

「天内、あのさ……」

 

「悟よ。本当にこれで終わりか?」

 

 話を遮って、天内は言った。

 少し俺は考える。

 

「なんか、無限で面白い話とかない?」

 

「む? うーん」

 

「ないか……」

 

 起死回生の新技でも披露できたら、なんとかなるかもしれないと思った。

 そう都合のいい話もないか。

 

「あ、そうじゃ。摂動論って知っておるか?」

 

「いや、知らないけど」

 

「こう、現実に起こる現象を関数で書こうとすると、超やべー関数になるわけじゃ。解けない。それを無限個の難しくない関数に分けて、影響の大きそうなやつだけ取り出して、近いふるまいを観察しようって手法なんじゃが」

 

「へぇ……」

 

 相変わらず、天内は変な話をよく知っている。

 星漿体で、外出をしないから、ずっと部屋にこもってインターネットをやっていたという話だったが、それにしてもだ。

 

「そうすると、状況によってじゃが、影響の大きそうな関数がの……無限大に発散する」

 

「……ダメじゃん」

 

 無下限呪術を使う俺はよく知っているが、現実に本来、基本的に無限はない。

 

「ま、この無限大は、一つの超やべー関数を無限個にわけたことによるものじゃ。全部足したら、当然ながら有限に収束するわけじゃが……」

 

「ま、当然そうだよな」

 

「たとえば、電子や光子のふるまいだとか、強い力の相互作用をする素粒子のクォークやグルーオンのふるまいだとかも、そうやって解析するわけじゃ。そして無限大に発散する」

 

「……どうすんのよ? 解析できてないじゃん」

 

「簡単な話じゃ、無限大を質量とか、電荷とかいった、そういう量に押し付けて、お前は無限大じゃないぞー! と決めてやるんじゃ。ま、実際はもっと面倒なんじゃが、大雑把にな」

 

「んで、それが?」

 

 なんとなく、話の要点は理解できた。

 なんの話をしていたんだったか。

 

「悟の無下限は、そういう現実にない無限を現実に持ってくる――( )そういう術式なのじゃろう?」

 

「そうだな……」

 

 そうだ。俺の術式の無限の話だ。

 確かに、そう、現実にない無限を持ってくる術式が、俺の無下限だった。

 

「たとえば今の話だと、無限の電荷を持つ電子なんてものも、登場しておかしくはないはずじゃ」

 

「それは……まぁ、そっか」

 

「無限というのは、あらゆる現象に、あるようでない……ないようである」

 

「そうかもな。じゃ、やってみようか」

 

 天内なりに、俺の無茶振りに応えてくれたんだろう。だったら少しやってみようと、術式を回す。

 

 術式を拡張しろ。解釈を広げろ。

 それでも、天内の言う無限にはたどり着けない。術式の拡張の範囲を逸脱しているのかもしれない。

 

 あぁ、できない。なぜできないか。それは無限のベクトルが違うからに他ならない。

 

「できぬのか? 反転と順転は別の効果じゃろうに……」

 

「そんな簡単じゃないんだよ。そもそも、反転と順転は出力するのが負の呪力と正のエネルギーで別だろ?」

 

「別じゃな」

 

「別……。別……?」

 

 そういえば、魔虚羅は無下限を突破するために、無下限を中和する呪力へと自身の呪力性質を変えていた。

 

 呪力の性質が変わると、出力される術式はどうなる。術式は呪力の性質の影響を受けずに、同じ術式が……だが、それでは正のエネルギーで術式が反転する辻褄が合わない。

 

 だからそうだ。

 呪力の性質が変われば、術式により引き起こされる事象も自ずと変わってくるはずだ。

 

 けれども、違う性質の呪力を作ることができるはずも――、

 

「そこは、ほら。妾の出番じゃよ」

 

 俺たちは背中合わせに座っていた。そこから天内は、体の向きを反転させて、椅子に膝立ちに、背もたれからこちらへと身を乗り出す。

 

 天内の術式による同化を何度か俺は受けている。

 天内の呪力は、魔虚羅の使った無下限を中和する性質の呪力に近い。もともと星漿体として同化に向いていたからだろう。それは今でも変わらなかった。

 

 そして、天内は、傑の呪霊と繋がっていた。天内は、あらゆる性質の呪力をその身に宿していると言っても良いだろう。

 

「なぁ、天内?」

 

「なんじゃ?」

 

「どうして、俺のこと……助けてくれるのさ?」

 

 俺は、天内のことを死んで良かったとさえ思ってしまっている。

 

「ん……? ま、そうじゃな。悟が好きだからじゃ」

 

 天内が、俺への頬に口づけをする。溶けるように、俺の体……魂に呪力が流れ込む感覚がある。

 

 感じ取る。天内の同化を通して、混じり合った呪霊たちの様々な呪力を。

 死に際で理解させられた呪力の真理。永遠の術式を持つこの呪いは、俺のことを終わらせては決してくれない。

 

 イメージするのは、魔虚羅の方陣。

 

 ――術式輪転『翠』。

 

 今までの誰もが辿り着いたことのないこんな所へと、俺たちは辿り着いた。

 

 あらゆる事象に無限に適応する『翠』。その効果は、森羅万象に対する強制相殺。

 

 無限のパターンの呪力の性質により術式として出力されたその『翠』は、可能な全ての無限が足し合わされたことにより、一時は安定した球を作る。

 一つ一つの無限の出力は順転や反転のそれには劣る。ニュートラルの無下限レベルだ。だが、その対象は、物質であり、術式であり、現象であり、概念でもある。無限が世界へ弾けていく。

 

 緑色の光に包まれて、俺はただ一人、なにもなくなったその場所に佇んでいた。

 

 輪転――性質を変えた呪力を試しにいくつか作ってみる。体の中を巡るだけで、反転と同じくアウトプットはできなかった。俺はそういう才能がないってことだろう。

 

 あの天内は、俺と同化した後に残った天内の魂の残滓と言ったところか。

 変わらないな、あいつは。

 

「五条! あんた!!」

 

 一人、感慨に耽っていたら、声がかけられる。少しくらい、浸らせてくれていてもいいんじゃないかと思ってしまう。

 

「というか、歌姫じゃん」

 

 弱い歌姫がどうしてこんなところにいるのかわからなかった。

 

「よくも私の可愛い生徒をやってくれたわね!! ぶん殴りに来たわ!」

 

 見回す。歌姫の近くには京都校の生徒っぽい奴らがいる。

 

「おいおい、正気じゃないな? というか、歌姫の生徒、ちびっちゃってるやつばっかじゃん。つまんな……」

 

「く……っ」

 

 たぶん、歌姫より強いんだろう。

 実力差を理解して、動けない。そんな感じだ。

 

「と……っ」

 

 狙撃? 呪力のこもった銃弾だった。ただの銃だ。

 もうちょっと、俺を倒したいんだったら、工夫くらいするもんじゃないか。

 

 さて、どうしてやろうか。

 このまま無視するのもいいが、ちょっと試してみたいこともある。おどかしてみようか。

 

「虚式『茈』。術式順転の『蒼』と術式反転の『赫』の二つの無限をぶつけてできた仮想の質量を押し出す技のことだ」

 

「それって……」

 

「それで、これが今完成した新しい無限の『翠』……」

 

 人差し指の先に作った、小さな緑色の球体を見せる。

 さらには、もう一つ……。

 

 ――術式輪転『翠』。

 

 ――術式順転『蒼』。

 

「虚式……」

 

 裾を引かれる。

 天内だった。ちゃんと、呪霊だ。

 

「悟、流石にそういうのはどうかと思うんだけど」

 

「ん? 傑、そっちは終わったのかよ」

 

「まぁね。みんな強かったよ。私たちがいた頃より、平均レベルは上がってるね」

 

 天内は俺の脳を術式で治してくれている。これでまた領域が使えるようになる。

 

 あたりを見渡す。

 恵はいないか。宿儺との戦い、そして九十九由基のブラックホールで、渋谷が更地だった。

 

「じゃ、適当に津美紀と憂太連れて帰るか」

 

「恵は?」

 

「どっか行った。飽きたら帰ってくるでしょ」

 

 六眼で、憂太の呪力を探す。憂太の呪力は大きいからわかりやすくてこういうとき助かる。

 

「ちょっと待ちなさい! 五条! 夏油!」

 

 俺たちは『蒼』で移動して、憂太たちと合流した。

 

 

 

 ***

 

 

 

 領域展開『坐殺博徒』。

 この領域は簡単にいうと、生得領域のオブジェクトとして具現化したパチンコが当たったら領域が終わり、術者が一定時間無敵モードになるという術式だ。

 

 その領域の必中効果は、パチンコのルールを理解させるという非殺傷のもの。自身の能力の増加に特化した領域だった。

 ゆえに、必中必殺の領域と比べての足し引きだ。必殺ではないぶん、展開が早く、押し合いに強い。

 

 領域を押し切られた漏瑚は、術式が焼き切れていた。

 

「なるほど、そういうことか……!?」

 

 領域の必中効果を受けて、なにが起こったのかを完全に理解する。

 術式の使えない漏瑚を引かせる。再び、戦いは拮抗を始める。

 

 

 ――まずい……。

 

 

 戦いを俯瞰して見つめ、冥冥はそう感じていた。

 

 秤金次……彼は要するに、こちらの領域対策。

 領域同士の対決では、彼の術式は無類の強さを発揮するからこそのこの手。彼を最初から参加させなかったのは、領域を確実に無駄打ちさせ、こちらがアドバンテージを取るためだった。

 

 想定していた領域は、天内理子の『久遠色界』。

 もちろん、天内理子の術式が焼き切れた状態で戦い始める予定ではあった。いわゆるこれは、術式の焼き切れ中に倒し切れなかった際のサブプラン。

 

 ――夏油くんが、これほど格の高い呪霊を持っていたとはね。

 

 並の特級呪霊の領域展開であれば、一級術師が四人……領域対策で対応は可能だった。

 だが、あれは無理だ。現れた瞬間に秤金次の投入を決めた憂憂の判断は見事なものだった。

 

 しかし、これで、こちらにはもうあの呪霊の女王の領域に対抗する術がない。

 もちろん、この状況を考えなかったわけではない。ただ、ない袖は振れない。今ある戦力の中でベストな作戦を考えただけだ。

 

 もう、天内理子の術式は回復している可能性がある。

 秤金次が、領域内で回るパチンコが、当たったら、領域の終了とともにこちらは終わる。まさか、当たらないことを祈るハメになるとは思わなかった。

 

 それを抜きにして、秤金次の領域を維持する呪力が切れてもこちらは終わりだが。

 

 なんにせよ、時間がない。出し惜しみはなし。今のうちにやるしかない。

 

「ま、終わりかな。理子ちゃん」

 

 特級呪霊、天内理子。その術式が戻ったのだろう。

 女王に従うように、天内理子の周りを多くの呪霊が回遊している。いや、あれが噂に聞く、人工仮想怨霊。

 

 呪霊の女王は掌印を結ぼうとする。

 七海たち四人が、とっさにだろう……止めに入る。

 

 ――領域展開。

 

 まだ、坐殺博徒は継続中。なら、必中効果は相殺される。

 

 ――『久遠色界』。

 

「あ……」

 

 術者の行動不能により、領域の結界が崩壊する。

 想定が希望的すぎた。坐殺博徒でも人工仮想怨霊に強化された天内理子の領域は相殺できない。

 

 空が見える。結界で閉じ込めない領域という常識外れの技だった。

 太陽の光とは違う、緑色の光が降り注いだ。これは、術式によるものだろう。

 

「悟、あっちはかなり派手にやってるね。新技かな」

 

 

 ――また、海外生活かな……。

 

 

 

 ***

 

 

「くそ……っ!」

 

 俺は弱い。

 領域の使えない状態の五条悟に、適応が完了した魔虚羅がいて、負けた。俺は負けた。

 

 ――恵くん、ま、もしものときの後始末は任せたよ。

 

 ――九十九さん。どうしてそこまで、五条悟を……。

 

 ――あれは、私から見れば制御の利かない怪物だよ。今君の体の中にいる宿儺とどっちが危険かと問われたら、私は五条悟を選ぶ。

 

 ――でも、夏油さんは……。

 

 ――あっちはまだ道理を通そうって心があるからわかりやすい。とりあえず、五条悟は最低でも、相打ちかな。そうなったら、あとは恵くんに任せるよ。

 

 こっちまで、緑色の光が照らしてくる。

 この呪力は、五条悟だ。

 

 あんな呪術、俺は知らない。

 俺の出る幕なく、九十九さんのブラックホールは無へと帰った。九十九さんの命を賭けたその呪術は無意味だった。

 

 強く、ならなくては……。強くならなくては、いけない。息をするのにも誰かの許しがいる。大切な人が誰かの気紛れで簡単に死んでいくなんて、俺は普通ではいられなかった。

 

 あぁ、進もう。次は絶対に負けない。

 

 

 

 ***

 

 

 渋谷駅……地下五階。

 

「う……ぐ……。これは……? おえ……ぇ」

 

 むせ返るような死臭だった。

 大勢の人間が死に絶えている。

 

「全て、五条悟がやった。残穢でわかるだろ?」

 

 宿儺は言った。

 たしかに、残穢は五条悟のもの。あったことがあるからわかった。

 

「うぐ……みんな……本当に死んでる? まだ生きている人間がいるかも」

 

「ふん……そんなわけなかろう……。いや……」

 

 呪力を探った。

 まだ生きているなら、呪力が残ってるはず。そして、見つける。

 

「こいつら……」

 

 三人……倒れていた。

 そのうち二人は、人間と一目ではわからないような異形の体だった。

 

「キヒ……ッ! なるほど! こいつら、受肉体か……ッ! しかも半分呪霊の!」

 

「受肉体……それって、俺みたいな……」

 

「いや、貴様とは違う。体をもともと持っていたやつの魂は沈められて、完全に乗っ取られている。ゆえに、並の人間に耐えられぬ五条悟の無量空処を受けて生きているのか」

 

「そんな……っ」

 

 ということは、もし助けても助けられるのは宿儺みたいなヤツということだ。

 

「ちょうどいい。小僧、しばらく体を貸せ。この三人を助けてやる。もちろん、人間の方をだ」

 

「信じられるか」

 

「なら、縛りを結ぼう。体を貸したら助けてやる。それ以外はなにもしない」

 

「破るなよ?」

 

「当然」

 

 縛りを結ぶことにより、宿儺は表に出る。

 宿儺は反転術式を扱いながら、三人から何かを引き抜く、そして、それを飲み込む。

 

「ち……指一本分にもならんか……」

 

 そして、そう呟く。

 宿儺の反転術式を受けた三人は、表情を柔らかくして眠っていた。

 

「やぁ、宿儺」

 

「ん……? お前は……羂索か」

 

 額に縫い目のある女だった。羂索とそう呼ばれ、彼女は優しく微笑む。

 

「いやぁ、宿儺。君も負けちゃったか。それにしても、良い顔するようになったね」

 

「黙れ……」

 

「でも、宿儺……君はまだ全力を出し切れてないだろう?」

 

 勝負の際の指の数は十八本。さらには、使用しなかった手もいくつかある。

 全てを打ち砕かれての完全敗北……というわけではない。

 

「羂索、貴様……獄門疆を持っているだろう? よこせ」

 

「あぁ、持ってるけど、また挑戦してみようと思ってね」

 

「よこせ」

 

「はぁ、しかたないな」

 

 羂索は獄門疆を懐から取り出すと、すぐさま宿儺はひったくった。

 

「これで、指三本分くらいにはなるか……」

 

 そして、食らう。宿儺は、呪物『獄門疆』を飲み込んでしまう。

 

「宿儺……ちょっと! まだ使うって!」

 

「ていうか宿儺……俺の体! なに、ナチュラルにまだ代わってるのさ」

 

 そして、宿儺は引っ込んで行った。

 

「ふん、こんな呪物であの男を封印など、無粋極まりないな、羂索。それと小僧、貴様が主導権を取り戻そうとしないからいけないのだ」

 

 頬に開いた口がそう喋る。

 羂索と呼ばれた彼女は、呆れたように肩を竦める。

 

「やれやれだね。悠仁」

 

「え? 俺んこと知ってる感じ?」

 

「知ってるもなにも、お腹を痛めて産んだ子どもだからね」

 

「は……?」

 

 羂索と呼ばれた彼女の顔をマジマジと見る。

 母親は物心つく前にいなくなった。父親はうっすらと覚えているくらい。

 けれど、自分の母親なら、こんなに若いはずがない。

 

「チッ……気色悪い」

 

「宿儺、君は感動の母子の再会に水を刺すつもりかい?」

 

 信じられない。

 だが、女の口ぶりから、それが嘘とは思えなかった。

 

「じゃあ、アンタが俺の母ちゃんだったとして、どうして、そんなふうに宿儺と親しそうに……」

 

「こいつは、千年前から生きる術師だぞ? 小僧」

 

 千年前から、この若々しい姿を保って生きてきたということだろうか。呪術があればそれが可能なのだろうか。

 

「あぁ、私の術式は脳を入れ替えて他人の体を渡り歩くものなんだ。この体も、さっきここで死んでいた人間から拝借してね」

 

「脳を……」

 

「私も好きこのんで殺して乗っ取ったりしないよ。手頃な死体に移るのがいつもさ」

 

 その額の縫い目は、脳を入れ替えたから。

 つまり、他人の肉体を使って子どもを産んだということか。たしかにそれは、宿儺がさっき言ったとおり……、

 

「どうした、悠仁。顔色が悪いけど?」

 

 優しく、心配をするようにこちらに語りかけてくる。その態度は、心から我が子を心配する親のものに見える。

 

「じゃあ、どうしてここに」

 

「そりゃ、五条悟を封印するためなんだけどね。ほら、彼、呪詛師でしょ? 私は今、高専のトップだから」

 

「え……?」

 

「今まで、私は千年前から一千万体以上の呪霊を無力化してきた」

 

 自慢げな顔で彼女は言う。

 

「一年で一万体? えっと一日で……」

 

「だいたい三十体だね」

 

「すっげー」

 

「私は陰ながらこの国を守ってきたわけだよ」

 

 感嘆する他なかった。ナナミンでもそんなペースで呪霊を倒してはいないだろう。

 

「いけしゃあしゃあと」

 

「事実だからね」

 

 宿儺の茶々にも、毅然とそう返す姿が、とても頼もしく見えてくる。

 

「じゃあさ、じゃあさ。そんな母ちゃんなら……っ。特級呪詛師で、国がやばいんだろ? なんとかしてくれよ。ナナミンたちが今戦ってる」

 

「うーん。もうすでにいろいろ手を打って、やってみたところなんだけど……ダメそうだね……」

 

「当然だ。あやつらが貴様ら程度の小細工で動ずるはずがない」

 

「なんで、宿儺偉そうなのさ……」

 

 納得がいかない。というか宿儺は負けたんだったか。

 

「じゃあ、どうすれば……」

 

「まぁ、方法がないわけじゃない」

 

「え……っ?」

 

「死滅回游」

 

 つぶやかれた聞き覚えのない言葉だった。

 なにか、嫌な雰囲気を感じる。

 

「それって……」

 

「あぁ、私は今まで様々な時代の術師を呪物に変えてきたんだ。その呪物たちを受肉させ、一つのゲームに強制参加させる」

 

「受肉って、そしたら、受肉させられた人は……」

 

「悠仁、今の術師たちじゃ、戦力が足りないのはわかるだろう?」

 

「それは……」

 

 今戦っているみんなは、たぶん、負けるのだろう。信じると言うことは簡単だが、それで現実を無視してしまってはいけないということはわかる。

 

「ケヒヒ……小僧。その呪物、全て喰らうぞ? 雑魚がいくら群れようと、あいつらは倒せん」

 

 宿儺は言った。戦いたいのだろうか。

 今ひとつ、宿儺の心がわからなかった。

 

「死滅回游は……そうだね。東京、新宿で行おうか。日付は後で教えるから、私はこれで準備してくるよ」

 

「それって……」

 

 彼女が取り出したのは、つぎはぎの呪霊……あの優しかった順平の母親を殺した呪霊の生首だった。

 

「あぁ、魂をいじる術式だろう? これを使えば非術師を術師にすることや、器の適性が足りない者を器にすることもできる。呪骸の力で強制的に術式を引き出せる状態にしてあるから、私はこれから全国を回って、参加者を集めてくるかな」

 

「地道……っ!?」

 

「地道な作業は得意だからね」

 

 なんでもないことのように、そう言われる。

 さすが一日三十体、呪霊を倒し続けてきた人間のセリフだ。説得力が違う。

 

「でも……ゲーム? 戦力を集めるのはわかるけど、どうしてそんなゲームなんか」

 

「夏油傑の仲間には、悠仁と同じような受肉体がいるんだ……まぁ、呪物の方の魂が沈められているから、そう呼ぶのは適切ではないかもしれないけど……」

 

「えっと、それで……」

 

「だから、そういうゲームを始めれば、受肉体は強制的に引き込める。夏油傑と五条悟はそれに釣られて参加はするだろうし、ゲームのルールはある程度はこっちで決められるから協力的でない受肉体も協力せざるを得ない状況にできて一石二鳥ってね」

 

「おぉ!!」

 

「ま、期待してなよ。全国津々浦々、あらゆる時代の猛者たちが、この時代の東京新宿に集まるわけさ」

 

「おおぉお!!」

 

 なんだか、いけそうな気がしてきた。

 さすがは千年生きてきただけはある。きっと、勝てる。

 

「言っとくけど、悠仁たちも受肉体だから、強制参加かな」

 

「あぁ!」

 

「ふん……」

 

 だからそうだ――、

 

「まさか、死滅回游、こんな形になっちゃうとはね……」

 

 そのつぶやきの意味はわからなかった。

 

 

 

 ***

 

 

 

「なぁ、真希! 釘崎! テレビ!!」

 

「あ?」

 

「急になんだよ? パンダ」

 

 待機と言われて暇だから、運動場で体を動かしていたところだった。

 

「ネットでもいいよ。ほら、これ」

 

「吉野、お前まで……」

 

 スマホをいじって、順平が見せてくる。

 動画……ライブのようだった。

 

 そこに映る人物には見覚えがある。袈裟の男だ。

 

「こいつ、特級呪詛師の……」

 

「しー」

 

 言いかけたところを、静かにしろと抑えられる。なにか、喋り出すところだった。

 

「えー、この度は、総理大臣ならびに、官房長官、各省庁の大臣の皆様方がお亡くなりなられたこと、大変お悔やみ申し上げます」

 

「…………」

 

 ハロウィンの日、あの戦いの裏で皆殺しにされたという話だった。

 まさに、政治的な空白が今だった。

 

「えー、これよりこの国は、生まれ変わります。この国の人間は、呪力という超能力のような力を身に宿しています。これから、各国は、この力をエネルギー源として……あるいは戦争の道具として、日本国民を狙うでしょう」

 

「…………」

 

 わけがわからなかった。呪力の存在を他国が知らなかったとして、知ったからと言って、そんな行動に出るとは思えなかった。

 

 カメラが移動する。

 ヘリコプター……飛行機へとか……銃を突きつけた外国人が、日本人を連行していこうとする光景だった。

 

「日本人の人権と主権を守るために、私は断固として、この残虐な行為を許しません。私はこの国のリーダーとして、非道な他国には屈しないと誓います」

 

 呪霊が……蹂躙していく。

 銃を持つ外国人を気絶させ、宙になげ、戦闘機を潰していく。

 

 

「――私に従え」

 

 

 

 ***

 

 

 

 国際連合は声明を発表。日本を不当に占拠するテロリスト、スグル・ゲトーを批判。日本国民を保護し、さらには臨時政府の樹立のため、アメリカを始めとする国々により連合軍の派遣が決定した。

 

 

 

 ***

 

 

 

「悠仁……悠仁!」

 

「あ?」

 

「悠仁! あいつは、ダメだ! 信じてはダメだ!」

 

「お前は……」

 

「俺はお兄ちゃんだ!! いいか、加茂憲倫……あの男……いや、お前の母親は絶対に信じるな!」

 

「いや、お前って」

 

「悠仁!!」

 

 ――去ね……!

 

「が……っ」

 

 

 

 ***

 

 

 

「今のって……」

 

 夢にしては生々しかった。最後のあれは、宿儺だろうか。

 

「兄ちゃん……?」

 

 存在しないはずの記憶が疼くような、そんな奇妙な気分だった。




登場人物紹介

理子ちゃん(空港待機中)
ピンチに心の世界に現れて、励まして、新技のヒントをあげた。

九十九由基
いろいろやったけど負けた。

五条悟
魔虚羅先生のおかげで新技が習得できた。

夏油傑
私に従え!

両面宿儺
呪物を取り込んで、何かを企んでいるらしい。

虎杖悠仁
母親と感動の再会をした。

脹相
俺はお兄ちゃんだぞ!

伏黒恵
次こそは勝つ。

伏黒津美紀
裏梅といい勝負だった。

乙骨憂太
現れた里香ちゃんが、一方的に降霊した伏黒甚爾を倒した。降霊術をゲットしたらしい。

オガミ婆
術師を入れない帳が必要なかったから、非術師を閉じ込める嘱託式帳を守っていた。
 
オガミ婆の孫
伏黒甚爾になって、里香ちゃんにぶちのめされた。

粟坂二良
術師を入れない帳が必要なかったから、非術師を閉じ込める嘱託式帳を守っていた。津美紀に瞬殺されたらしい。

七海建人
変な方向に行った先輩をぶん殴ることはできた。

東堂葵
力及ばずだった。タイプ聞けなかった。

禪院直哉
流石に今は禪院じゃないは、無理筋だと思ったけど、会議の時に家入に夏油相手ならいけるっしょって言われて行った。いけた。

秤金次
領域対策だった。対策しきれてなかった。

冥冥
海外生活再び!

庵歌姫と生徒たち
五条悟にからかわれるだけで終わった。虚式撃たれなくてよかった。五条が帰ったから、たぶん七ターン目だった。

釘崎野薔薇ら東京高専待機組
いろいろ関われずに待機中。

ラルゥ・ミゲル
九十九由基に出し抜かれて海外にいる。

裏梅
相変わらず痒いところに手が届く。たぶん、こおり・ひこうタイプ。

羂索
作ってよかった宿儺の器。全ての人間が術師になって、天元がいらない世界にならないよう、まず第一目標を夏油傑と五条悟の排除に決める。新宿一点集中の死滅回遊で頑張るつもりらしい。現在、全国行脚中。
政治的空白の元凶。

乙骨憂太、一か八か祈本里香の降霊

  • 美々子が降霊先
  • 菜々子が降霊先
  • 津美紀が降霊先
  • 黒井さんが降霊先
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