昼「やっちゃったよ!(泣」
『妖怪』
それは、古来より人間にとって限りなくいないモノとされながらその存在を
その姿・形・力は十人十色だ。
妖怪達は己の力を高めるために、またはさらなる強者より身を守るために力ある妖怪のもとに集い「組」と呼ばれる集団を作った。
組同士は集いさらに大きな集団となって『畏れ』を集めた。
そうして数多の百鬼夜行が互いの畏れを奪い合ったが、次第に隙を伺いつつも一定の安定を手に入れ、大きな争いは起こらないようになっていった・・・。
だが、かつて本当の意味で日本を支配し、真の百鬼夜行の主となったモノによってその平穏は打ち砕かれた。
彼の者は自身の配下である鬼や陰で生き続けてきた陰陽師・御門院家を用いて再び日本を支配しようと目論んだのだ。
「清浄」と称し、自らに逆らう妖怪たちをことごとく静粛していった彼らは強く、一人一人が「化け物の中の化け物」であり日本の表と裏は再びそのただ一人の手に落ちるかに思われた。
しかし、当世において最も真の百鬼夜行の主に近き者と彼の配下や彼に同調するものたち、さらに本来は敵である現代の陰陽師・花開院家の協力のもと古き主を倒し真の主を決める争いは終わった・・・。
「もうあれから2年か・・・」
かつて日本を支配していた最凶の妖怪にして最強の陰陽師でもあった安倍晴明を倒し、名実ともに日本の妖怪たちの頂点と言える百鬼夜行の主となった少年、奴良リクオはかつての激戦を思い出しながら一人呟いた。
文字通り自身の半身を失いながら辛くも勝利を収め、しばらくは『もう一人の母』とともに傷の療養に専念しこちらに戻ってきてからしばらくは飲んで、歌って、騒いでのドンチャン騒ぎを楽しんでいたがそれからは今現在まで被害を受けた各地のアフターケアや関連する事後処理に没頭した。というか、現在進行形でしている。
はぁ・・・と何度目かわからないため息を吐く。
幼い頃の自分が憧れ、自ら望んで百鬼夜行の主となったがリクオはここまで忙しいとは思っていなかった。
もちろん初代であるぬらりひょんが事あるごとに集会を開き、場合によっては「出入り」なんてことをしていたのは知っていた。
今回の場合はあの安倍晴明が各地の妖怪を襲撃し大きな爪痕を残したからこそであることも頭ではわかっているつもりだ。
だが、なんとなく祖父・ぬらりひょんが「早く頭目を告げ」と言っていたことにはこういう面倒事をさっさと押し付けようという意思があったのでは?と思うようになった。
「実際、僕が継いでから『ちょっと世界の妖怪たちとあってくる』って言って本当に世界旅行始めちゃったもんね・・・・・・」
確かに、奴良リクオが奴良組三代目の頭となったため初代が特別なにかする必要なない。
だからと言って、書き置きひとつで行ってしまうのはどうなのだろう。
リクオ自身は、色々ごたごたするだろうし相談役ぐらいはやってくれるかな、と期待していたのだ。
予想以上のアグレッシブさによって期待は裏切られたわけだが。
『昼の自分』にとっての一日は終わり、床を軋ませながら縁側を歩いていく。
自分の寝室まで歩いていきながら明日の予定を整理しておく。
当初は中一だったが、今は高校受験に向けて詰めていかなければならない時期だ。こっち方面のことだけではなく、日常の勉強もしっかりしておかなければならない。
リクオにとって勉強自体は苦ではないが、一度聞いただけで全て理解できるほどではない。
日々予習・復習を重ねておかなければ一定以上を維持することはできないのだ。
「明日は何時間かとれそうかな・・・。折角みんな(島くんは、サッカー推薦で別の高校らしいけど)同じ公立高校を目指すんだから、がんばらないと」
リクオにとって自身の秘密を知り、それでも付き合ってくれる掛け替えのない友人たちのことを思い浮かべながら寝室の障子を開け多少整理してから床に就く。
枕元に置いている刀・祢々切丸をみて僅かに目を細める。
あの戦いの時には自身と同じようにボロボロになりながら花開院家に頼んで直してもらった大切な相棒。
そして、『夜』のことを思う。
改めて、布団をかぶり今度こそ眠りにつく。
「おやすみ・・・」
──────後はよろしく──────
目を覚まして早々に準備を済ませる。
『夜の自分』としてこれからのことを考えながら部屋を出る。
最近は安倍晴明がやったこと自体に関する事後処理は無事終わった。
しかし、各勢力が弱まったこともあり新規新鋭の妖怪が一部で暴れだした。
たいして強力な力を持っているわけではないが、それでも勢いというのは恐ろしいもので馬鹿にならない被害が出ているそうだ。
そういった場所に奴良組から援軍を派遣したり、自分で行ったりして自体を収めている。
勢いに便乗した輩は、戦力差が大きくなれば冷静になるものだ。
「しっかしジジイの奴、絶対に帰ってきたら絞める・・・」
あいつがいりゃーもう少し楽ができんのに・・・と『昼』の時のことを思う。
単純な交渉や約定だけなら『昼』にもできるだろうがそのせいで若干疲れがたまってきている。
『昼』も『夜』も同じではあるからこっちでたまにストレス発散しているが焼け石に水だろう。
自分が背負い込みやすい性格であることは理解しているつもりだ。
「どっか療養ついでに羽伸ばせればな」
さて今日はどこに行くか・・・と、散歩(ストレス発散)コースを考えながら廊下を歩いていく。
古い日本家屋といった感じを強く出し、縁側における灯りも月明かりだけであるこの家でふと、『何か』が廊下の先の部屋に入ったような気がした。
ちょうど月明かりが雲で陰っていたため正確に顔を確認することはできなかったが、
「あそこは確か・・・ジジイの部屋だっけか。ってことは・・・・・・」
入った部屋がどこであるか思い出し、その人物が誰かと思考するとリクオの祖父である初代ぬらりひょんが帰ってきたのだと思い当たる。
ぬらりひょんは気が付かずソコにいて、気が付いた時にはソコにいない妖怪だ。
そんな性質を持つぬらりひょんなら何も言わずに帰ってきてまたどこかに行くという可能性も高い。
「・・・」
入った人物が祖父であるとアタリをつけ、一言言ってやろうかと、音を忍ばせてその部屋に近づいていく。
ギシ・・・と抑えても出てしまう音がより一層大きく感じながらようやく部屋の前にたどり着く。
こちらが光側であるから障子に自分の影が映ってしまうが、どうせ部屋には小さな四角窓しかないので気にする必要はない。
障子に手をかけながら、部屋の中があまりに静かなことに少しだけ違和感を覚えたが、観念したのだろうと勝手に納得し、障子を開ける。
『奴良リクオ殿へ』
部屋の中には誰もおらず机の上にポツンと
封書になっているようで近づいてその封を切る。
そうしている間も周りに視線を走らせる。
ぬらりひょんの「能力」を考えれば、見えないからといっていないとは限らないからだ。
そうして折りたたまれていた手紙を取り出し、広げてみる。
表の自分の名前と同じように達筆な文字でこう書かれていた。
『その才能を試す事を望むのならば、己の家族を、友人を、財産を世界の全てを捨て、
我らの〝箱庭〝に来られたし』
「全てを捨て・・・ねぇー」
明らかに怪しい手紙ではある。
だが、なんとなくこの手紙は「本物」のような気がする。
そう考えて手紙の内容を吟味する。
自分はこの奴良組の三代目であり、この世界には未練もかなりある。
とてもではないが手紙の通りに「捨てる」ことはできそうもない。
しかし、少し間が差した。
──────おもしろそうだ──────
こんな文なのだからそれに見合った『モノ』なのだろう。
なぜか頭の中には今頃世界旅行を楽しんでいるであろう
ぬらりひょんのサガなのかかなり、とても、すごく興味がそそられる。それに、生きていれば戻ってくることだってできるだろう。
そう思った瞬間・・・
『奴良リクオ』はこの場所から消えた。
総文字数はたぶんいろいろになるかと・・・(慣れたら長くなるのかな
一応、三人称(?)の練習も兼ねてます。
主「なんでリクオさんハーメルンにあんまりいないんだろう・・・」
(卿)「逆に考えるんだ・・・、自分で書けばいいさと・・・」
主「ヤッタルゾー」