主「(・3・) アルェー?ほとんど進んでなくね?」
?「まぁ、説明とか多いし多少はね?」
「へ?」
自分で考えて行動しているがどこか酒に酔ったような感覚だった意識が急激に覚醒した。
気が付けばリクオと同じように何が起こっているのかわからないといった表情をした少年少女3人(+1匹)と死ぬまでのカウントダウンが秒読み状態で空中に投げ出されていた。
景色は幻想的だったが体を地面に近づけている重力と風圧がこれが現実であることを伝えた。
「・・・!」
自分はまだいいが、他の3人はこんな高さから落ちれば万に一つも助かる可能性はない。
そこまで考えたリクオはどうにかして助けようとしたが、今は「昼」という扱いらしい。
『昼』の自分は多少人より頑丈だったりするがあくまで人という範疇でしかない。空も飛べなければ、火も出せない。
それでも最後まで足掻こうと手足をばたつかせているうちにどんどん地面が近づいてくる。
そして、
バシャーン
リクオの予想より遥かに小さい衝撃でどことも知れない湖に落ちた。
途中、膜のようなものに当たったあたりから急激に落下速度が落ち、最終的に軽い飛び込み程度の速度になっていた。
リクオと他3人は水に濡れて重くなった衣服を引きずりながら陸地に上がる。
そうして落ち着いたところで活発そうな二人がまずさっきのことに対して文句を言った。
「し、信じられないわ!招待したからにはそれなりの対応があるでしょう!」
「全くだぜクソッタレ。石の中に呼び出されたならまだ何とかなったっつーのに・・・」
「呼吸ができるならなんとかなるかな・・・」
「ニャ、ニャー(お嬢・・・。ワシ猫やから高い所からの着地とか得意中の得意やったたけど・・・、これはトラウマものやでぇ・・・)」
「・・・これは普通だったら高所恐怖症とかになっちゃうんじゃないかな」
4人はどこかズレた感想を言い、改めて現状に対して根本的な疑問を述べた。
「此処・・・・・・・・・どこだろう?」
誰かがつぶやいたそれに明確な答えを言える人間はこの中にはいなかった。
なんとなくではあるが、全員が全員一つだけ理解していることがあった。
ここは、「自分たちがいた『世界』ではない」ということだ。
「お前のその・・・変わった服装は乾きにくそうだな」
「・・・これは、その・・・・・・そう!祭りがあってこういう格好なんだよ!いやー、ツイテナイなー」
「へー」
各々がだいたい水を絞り終えた中、未だにひどい状態であったリクオに対して同じ男であるヘッドホンの少年が怪しそうな視線を向けた。
それもそのはず。
学ランは普通、他二人も私服と言って問題ないデザインだった。
一方でリクオは、まずもってなかなか着ないであろう和服に「畏」の紋所の入った上着を着ているという状態だったのだ。
リクオは猫を除いた全員から不思議そうな視線を向けられながらもどうにか誤魔化し、ふぅ・・・と息を吐く。
そんなリクオに意味深な視線を向けながらヘッドホンの少年・・・
「ま、そいつの服装に関してはまた話すとして、一応確認しておくぞ。・・・お前達にもあの変な手紙がきたのか?」
「そうね、それに関してはまた話すとして、まずその『オマエ』という呼び方は訂正して。私の名前は
「・・・
「そう。よろしくね春日部さん。それで不思議な格好の貴方は?」
「そこそんなに引きずらなくていいから!・・・ふぅ、僕の名前は奴良リクオ。好きに呼んでいいよ。っていうか、初めて会ったばかりの相手となんで同じく初めて会った相手をいじれるんだ・・・」
「ヤハハハ!そりゃー、お前がそういう空気を出してるからだろ。おっと、自己紹介だったな。見ての通り凶暴で凶悪で快楽主義者で切れやすい最近の若者な逆廻十六夜です。適法、適量で接してくれよ特にお嬢様」
「あら喧嘩を売ってるのかしら?いい値段で買ってやろうじゃない」
「いいねいいね!なんなら値切ってもいいぜ?」
「仲良いと思ったらそんなことはなかった!ってやめなよ二人共!!・・・春日部さんも抑えるの手伝って!」
「・・・楽しそうだね」
「ニャー(さすがお嬢!これが昔流行ったくーるびゅーてぃーってやつやな)」
ケラケラと笑い、煽っている逆廻十六夜。
強いプライドを持ち、不機嫌さを隠そうともしない久遠飛鳥。
どうにか落ち着かせようと頑張る変な服の常識人、奴良リクオ。
第三者然とし我関せず無表情を装う春日部耀。
そして(耀以外に)何を言っているかわからない猫。
そんな三者三様な様子を物陰から見ていた元凶、黒うさぎは思う。
(・・・これは常識人っぽい人が一人でもいることを喜ぶべきでしょうか?それとも他がどうしようもないことを嘆くべきでしょうか?)
自らが行ったことから現実逃避気味にくだらないことに悩んでいた。
もうダメかもしんないね。
「さてと・・・いいかげん遊ぶのはやめて本題に入るか」
「やっぱり遊んでたんだ・・・」
さっきまで場をかき乱していた十六夜が急に素に戻り、辺りを見回した。
呆れながらも、リクオ自身いい加減現状に対する説明をして欲しかったので何気なく『何か』が隠れている草陰に視線を向けた。
リクオの視線を目聡く見ていた十六夜はへぇー、と嫌な感じの笑みを浮かべ、
「なんだお前も気付いてたのかよ。奇抜な外見の割になかなか鋭いじゃねーか」
「えっと、取り敢えず外見が容姿のことを含むなら金髪ヘッドホンもなかなか奇抜じゃないかな・・・。流石にこの距離なら気配というか、まぁね?」
「あら、もしかして全員気づいてた感じかしら?」
「風上に立たれたら嫌でもわかる」
「・・・へぇ?面白いなお前も」
こそこそと話しながらも注意は向け続ける。
どうやら「何か」はまだこちらが気づいていることに気づいておらず逃げようともしないらしいことを確認すると、いかにも悪巧みを思いつきましたといった様子で
「じゃ、誰が一番に捕まえるかゲームでもしてみるか?」
「いいわね」
「・・・ハンデはいる?」
「あれ?なんでそんなに乗り気なの?いや、ここは普通に話しかけて説明聞くとか言う場面じゃ・・・」
「「「ない!」」」
「ですよねー」
いきなりの大声に驚いたのか、僅かに「何か」が動揺した空気が伝わる。
(うわ!ビックリしました・・・。しかし、これは早く出たほうがいいというお告げかもしれません。あまりお待たせしすぎてパニック状態に・・・ならないかもしれませんが、万が一もありますよね、だぶん。)
思考に埋没していた黒ウサギはその声で我に返ると共に、自身の役目を思い出し覚悟を決める。
そして、3人が飛びかかると同時に草陰から『ウサギ』が出てきた。
「ようこそ!〝箱庭の世界゛へ!・・・って、御三人様!?どうしてそんなに笑顔でらっしゃるのですか!そしてどうして黒ウサギに襲いかかっているんですか!!」
「よし!ウサギが逃げたぞー!」
「かわいい兎ね。逃げ足が速そうだし全力で捕まえましょう!」
「実際、兎は逃げる時には時速60キロぐらいだすらしい」
「どう考えても原因知ってそうな雰囲気じゃない?だから話しを・・・って、聞いてないね」
もはやリクオの話しを聞いているものはいなかった。
三者三様に黒ウサギを追いかける。
十六夜の拳が大地を抉り、飛鳥の「命令」一つで周辺の小鳥や植物が逃げ道を塞ぎ、先を読むように逃げた先々で耀が俊敏に襲う。
明らかにオーバーキルにも関わらず、そこは魑魅魍魎が跋扈する箱庭において"箱庭の貴族"とまで呼ばれる黒ウサギだ。
ヒラリヒラリと紙一重で3人の魔の手から逃れる。
「うわーん。どうして誰も話を聞いてくださらないのですかー!」
「「「・・・逃げるから?」」」
「それは貴方方が追いかけるからでしょう!」
流石に疲れてきたのか飛鳥と耀は軽く息を吐き(黒ウサギは言わずもがな)、3人と1人は追いかけっこからにらみ合いになっていた。
十六夜に関して言えば、全く疲れを見せず今よりほんのちょっと「本気」を出せばすぐに黒ウサギを捕まえられるだろう状態だったが。
互いに動きあぐねるなか、いい加減に捕まえるか、と十六夜が本腰を入れようとすると
「はい、そこまで!」
「わ!」
声とともに4人は気づいた。
いつの間に「そこ」にいたのか、空気だったリクオが黒ウサギのすぐ後ろにおりその肩に手をかけていたのだ。
肩を触れられるまで気づかなかったことに対して黒ウサギは不思議そうな顔を浮かべ、・・・目の前に集中し過ぎましたでしょうか?と、察知能力にも優れているはずの自慢のうさ耳をしおらせた。
飛鳥や耀も「はぁ、周りが見えてなかったのかしら・・・」「負けた・・・。影の薄さの勝利?」と自分が捕まえられなかったことを残念がり。
みんな少しは周りを気にしようよ、と笑っているリクオを見ながら十六夜は、
(おいおい・・・。こいつは面白いな。本当に「気付いたらそこにいた」って感じだ。見えなかったってより、気付かなかった・・・か。)
一人自身が感じたことを考察し、凶暴そうな表情を浮かべ。
「ははは・・・(なんか怖いくらい見られてるんだけど)」
どうにか収めようとしただけなのに・・・と、笑いながら心の中で一人泣いた。
「───リクオさんありがとうございます。・・・・・・ほんっとーにありえないのです。はい、そこで関係なさそうにしている御三方のことですよ!やっと話を聞いてくれるかと思ったら私の自慢のうさ耳を触りたがったり、事あるごとに話しの腰を折ったり」
「いいからさっさと進めろよー」
「・・・」
リクオが黒ウサギを捕まえた、ということでゲームは終わり、いざ説明に・・・・・・となるかと思ったが問題児たちは落ち着くということを知らなかった。
なんの脈絡もなく黒ウサギの耳を触ろうとしだし、それをどうにかリクオが留めたりしてようやくここまで来ることができた。
説明する前から、黒ウサギはボロボロだ。
しかし、それでも彼らの力を十分過ぎるほどに体感し、自身の目的を叶えることができそうだという希望を胸に、この状況を受け入れ咳払いを一回、
「えーと、コホン。では、定型文ではありますが言わせていただきます。ようこそ!〝箱庭の世界゛へ!我々は皆様のようにギフトを与えられた物達だけが参加できる『ギフトゲーム』への参加資格をプレゼントさせていただこうかと召喚いたしました!」
「ギフトゲーム?」
黒ウサギが両手を広げ、魅惑的に挑発的に語ったことを簡単にまとめると、
①この世界は自分達のような特殊な能力を持っていたりする存在のために作られた世界であること
②この世界の住人は基本的に"コミュニティ"と呼ばれる集団に所属している
③この世界には
「・・・なんだか、なかなか世紀末というか、荒っぽいね。勝てば全てって感じかぁ」
「安心してください。腕っ節がダメでも難解な問題を解くような種類のゲームも存在しますし・・・。それに主催者側にも賞品を奪われるリスクを背負っていますからね」
リクオが黒ウサギから聴いた印象は「力の有る者が勝ち、力の弱い者は奪われる側でしかない」ということだ。
もちろん、力が弱い者はコミュニティに入ることで力の有る者の庇護下となり生活するのだろうと予想はできるが(『組』のことを思い出した)それでも一方的関係であることは変わらない。
黒ウサギの説明の意味するところからただ楽しいだけではないことが伝わったのか、飛鳥や耀も黙って聞いていた。
(ふふふ・・・。一時はどうなるかと思いましたが、やはり皆様理解しておられるようですね。この世界のことを)
真剣に考えているような空気を感じ取った黒ウサギはそう胸中で思いながら、全員にとって見覚えのある「封書」を取り出した。
「さて。皆様の思っている通り『招待』の依頼をしたのは黒ウサギです。そして、私には箱庭の世界における全ての質問に答える義務があるわけですが・・・、それらに答えるには少々時間がかかります。ここから先は我らのコミュニティでゆっくりとお話させていただきたいのですが・・・・・・よろしいですか?」
「おい、一番肝心な質問がまだだぜ」
説明が始まってから妙に静かだった十六夜が威圧的な声をあげた。
「肝心な」という言葉とその顔に刻まれた真剣な表情から、黒ウサギもその耳をピーンと張り質問に身構えた。
「そんなに身構えなくったっていいぜ?他の奴らも気になってるだろうことだから俺が代表して聞くって話しだ」
そう言って自分を見ているリクオや飛鳥、耀を見回し、最後に黒ウサギに視線を向けた。
「手紙にも書いてあったことだが、黒ウサギ・・・・・・・・・この世界は『面白い』か?」
「「・・・」」
全員がその疑問に呆気にとられてような顔をし、それぞれ思い思いの表情で答えを待つように黒ウサギを見つめた。
リクオは好奇心と期待感をもって熱い視線を向けている他2人を見ながら、「『夜』の自分といい酒が飲めそうだなぁ」と苦笑しながらも同じようにその答えを待った。
そんな視線にさらされた黒ウサギはとても楽しそうな笑顔をもって望まれている通りの答えを口にした。
「───YES!徒人には体験できない神魔の遊戯が皆様を待っています!外界の全てと比べても遜色ない面白さがこの世界にあること、この黒ウサギが保証いたします♪」
世界を捨ててきた3人は、これから自分が暮らしていくことになる世界がどれほどの「冒険」を与えるのかを想像しその目を輝かした。
「あ、そういえば聞き忘れてたけど。元いた世界に帰る方法ってある?」
「「「はぁ!!?」」」
・・・が、思い出したように自身が気になっていたその疑問を口にした瞬間、問題児達も、呼び出した黒ウサギでさえ驚愕の表情を浮かべ質問者・・・・・・奴良リクオを見つめた。
夜「おい・・・。俺の出番がねーじゃねーか!」
昼「いや、だって昼だし」
夜「・・・」
というわけで説明回でした、gdgdだったような気もするけど・・・。
会話とか考えるのは楽しいんですけど、間でちゃんと地の文も入れたいんですよね。
次回は問題児達とリクオさんの『違い』です