十六夜「アァ?ねぇよんなもん」
白雪「え」
『帰る方法はある?』
一応方法はあるそうだが、「元の世界・元の時間軸」となるとかなり難しいらしい。
帰れるか、帰らないかはリクオにとって最も重要なことだ。
一時期なりたくないと思っていたが、今では自分がそうでなくてはならないという使命感のようなものをもつようになっていた。
『関東任侠妖怪総元締奴良組三代目総大将』
初代である祖父、そして亡き父から譲り受けた『畏』の名の下にその役目を全うし、自身を信じてくれている仲間達のためにもあの場所には戻らなければいけない。『夜』の自分が気分転換のような目的で決めてしまったためしばらくはこの世界で過ごしても問題はないだろう。
しかし、いつかは戻らなければ、否、あの世界に帰らなければいけないのだ。
例え、帰れる可能性が低いとしてもゼロでないなら十分だった。
リクオにとって少しでも可能性があるならそこに賭ける価値はある。
「もうすぐ着きそうだね。」
「は、はい。そうですね」
自身のコミュニティも存在する箱庭二一〇五三八〇まであと少しというところでリクオにそう言われた黒ウサギは少しどもりながらも返答した。
本当に"箱庭"なんだねー、と感心したように外壁を眺めているリクオを横目で見ながら困惑したような表情を浮かべた。
(どうしてこれほど落ち着いているのでしょう?そもそも「全てを捨ててもいい」という強い意思がなければ来れないはずなのにこの世界に来れた事もそうですが・・・)
黒ウサギは不思議に思った。
意図せず来てしまったならもっと嫌がるのではないか?
帰れる可能性が限りなく低いと知ったらもっと悲しむのではないか?
リクオからここに
(「一応方法はあるんでしょう?ならいいよ。」の言葉だけでしたし・・・)
言うほど元の世界に帰りたいと思っていないという可能性もあるかと思ったが、訊かれた時のリクオの目を思い出し否定する。あれは強く帰りたいと思っている目だった。黒ウサギはそう確信した。
頭の中でいろいろと考えていると、箱庭の「入口」付近に見知った顔を見つけた。
これからのことと問題児達(リクオさんは他の3人よりはマシでしょうか?)への説明を思うと憂鬱だがそんなことを言っていられる状況ではないのだ。
「ジン坊ちゃーん!新しい方を連れてきましたよー!」
そう声をかけると呼びかけられたダボダボローブを着た少年ジン=ラッセルは、新しい同士になるであろう
初めて目にする場所にも関わらずビクビクせず、その目に隠しきれない強い好奇心を宿した3人を見て、何とも言えない初々しさを感じながら、まずは黒ウサギに感謝の言葉を伝えた。
「おかえり。そしてご苦労様、黒ウサギ。そちらの3人が?」
「はいなこちらの御三方が───」
笑顔で固まった黒ウサギはギギギと後ろを振り返り、目を見開いた。
その様子からリクオも後ろを向くとそこにはキョトンとした表情を浮かべた飛鳥と耀がいた。・・・正しく表現するなら飛鳥と耀「しか」いなかった。
そう、一番いろんな意味でやばそうな十六夜がいないのだ。
「・・・・・・え、あれ?あのすっごく問題を起こしそうな問題児様はどこに!?」
「ああ、十六夜君のこと?彼なら『ちょっと世界の果てを見てくるぜ!』って言って駆けて行ったわ。あっちの方に」
慌てている黒ウサギに対して、飛鳥はいたって落ち着いた様子である方向指差す。
指差された方向の先は数多くの幻獣と呼ばれるギフトを持った獣が存在するという場所だ。
そこまで気の回った黒ウサギは呆然とした状態から回復し、二人を問いただした。
「な、なんで止めてくれなかったんですか!」
「『止めてくれるなよ』と言われたもの」
「どうして黒ウサギに教えてくれなかったのですか!」
「言ったら止められると思ったんだと思う。『黒ウサギには言うなよ』って言われたから」
「・・・僕にも黙っていったんだね」
「あら、リクオ君。あなたに言っても止められると思ったんでしょうね。『リクオにも言うなよ』と言われたから」
「嘘です!ダウトです!実は面倒くさかっただけでしょう、この問題児様達はー!?」
「「うん」」
憂鬱になりながらもこれから共に暮らしていけば、きっと『コミュニティの再建』という一大事を達成できると思っていた黒ウサギとしてはこの現状になぜか胃が痛くなってきた。
しばらく放心していたが十六夜の身を案じ(普通に笑ってそうではあるが・・・)、ッハと我に返り
「こうしていれません!"世界の果て"にはただの人間ではとても太刀打ちできないような幻獣たちのギフトゲームが待ち受けているのです。このままでは十六夜さんが・・・」
「幻獣・・・私も行けばよかったかな?」
「そうね。彼だけにそんな思いをさせるのも癪ね」
「冗談を言っている場合ではありません!」
「ははは・・・(十六夜君ってじいちゃん並みのフットワークの軽さだよね。僕もその『幻獣』に会ってみたいとは・・・言えそうもないな。)」
本気なのに・・・と、真面目に残念がっている2人とリクオをジンに預け自分は十六夜を「助け」に行くため力を溜める。預けられたジンも事の重大さを正しく理解し目配せ一つで黒ウサギの考えを読み取る。
「ジン坊ちゃん、申し訳ありませんが・・・」
「うん。早く行って黒ウサギ。3人は僕の方で案内するから」
「よろしくお願いします。・・・ふふふ、助けるついでに"箱庭の貴族"と謳われるこの黒ウサギの本気を、骨の髄まで刻みつけて差し上げやがりますよ!」
暗い笑みを浮かべた文字通りの黒ウサギは、その怒りのまま自らの「本気」をだす。なんらかの『力』を感じたリクオはその様子を面白そうに見つめ、その怒りを表すかのように艶のあるその黒髪がみるみる緋色に染まっていくさまを見た飛鳥と耀は驚いたような表情をした。
「一刻程で戻ります!御三方は一足お先に箱庭ライフをご堪能くださいませ!」
言うが早いか、言葉の終わる頃には赤い星となって遥か彼方に跳んで行った。跳躍の際に使った足場にはヒビが入り、衝撃によって舞った土埃に目を細めながらも3人は黒ウサギの行方を追った。
「・・・箱庭の兎は随分速く跳べるのね。」
「ウサギ達は箱庭の創始者の眷属にして、様々なギフトや特殊な権限を与えられた貴重な存在です。よっぽどのことがない限りもう一人の方も大丈夫だとは思いますが・・・」
そう・・・と、本当に気にしてないような声を返した飛鳥は改めてここが自分達がいた世界とは違うと認識させられた。そして、心配そうな表情をしたジンに向き直り、とりあえずは黒ウサギの言うとおりにしてみることにする。
「さて、黒ウサギもああ言ってたことだし彼より先に箱庭を堪能しましょうか。エスコートをお願いできるかしら?ジン君?」
「あ、はい。えーと、コミュニティのリーダーをしているジン=ラッセルです。若輩者ではありますが、よろしくお願いします。」
「久遠飛鳥よ。そこで猫を抱えているのが」
「春日部耀」
「そっちの変なk」「わー!僕の名前は奴良リクオだよ。こちらこそよろしくね、ジン君!!」
「は、はい!」
礼儀正しく名乗ったジンに対して、3人も自己紹介を兼ねて挨拶する。言葉を遮られた飛鳥も少し不満そうにしながら倣って一礼をし、箱庭に向けて歩き出した。
慌てて追いかけてくるジンを尻目に心から楽しそうな笑みを浮かべ、
「それじゃ入りましょうか。まずは軽い食事をしながらじっくり箱庭について聞かせてもらいましょうか。」
石造りの通路を通った先は壁で覆われているとは思えないほど明るい・・・、というか本来はあるべき天井が見えず、透き通るような青空が広がっていた。
それなりに不可思議には慣れているリクオはここと外の違いを強く感じることができた。
(ここは遠野の隠れ里や半妖の里に近いものを感じるな・・・。箱庭自体、単純に壁で囲ってるだけじゃなくて、「何者か」の力の影響下にある"異界"なのかな?)
3人は吸血鬼が普通に暮らしていることや天高くに積み上げれていいるかのような巨大な都市、生活圏にしてはありえないほど澄んだ空気に驚きながらも噴水近くにあった"六本傷"の旗を掲げたカフェテラスに座った。
席に着くとすぐに猫耳少女(本物)の店員が現れ注文を尋ねてきた。
「いらっしゃいませー。ご注文はどうしますか?」
「そうね・・・」
すでに猫耳では驚きもしない3人はメニューを見ながらそれぞれ飲み物と軽食を頼んだ。
全員が言い終えたあとに、ニャー!、と耀の猫が一鳴きした。そこまで聴いた店員は、
「はいはい。ティーセット4つにネコマンマですねー」
「「「??」」」
『おー、言ってみるもんやなー』
「!三毛猫の言葉、わかるの?」
頼んだ覚えのない品が言われ一瞬戸惑ったが、猫の鳴き声に対していくつか返答したように見えた店員と心底おどろいたような耀の言葉を受けて理解した。店員が店の奥にもどって行く様子を見ながら嬉しそうな耀が、
「箱庭ってすごいね、三毛猫。私以外に三毛猫の言葉がわかる人がいたよ」
『来て良かったなお嬢』
「ちょ、ちょっと待って。貴女もしかして猫と会話できるの?」
珍しく動揺しながら飛鳥は聞き返した。『動物と話せる』というのは物語の中でしか見たこがないような、夢のような能力だ。自身も子供の頃は、『能力』で気づかないうちに会話できないかやっていたかもしれない。そう思えるほど、誰もが一度は望み、欲しいと思う能力。
「うん。猫だけじゃなくて生きているのなら誰とでも誰とでも会話できる」
「そう、それは・・・とても素敵ね。じゃあ、あそこに飛んでいるような野鳥とも?」
「う・・・ん?たぶんできる、と思う。雀とか鷺とか後は・・・・・・ペンギンとも話せたからきっといける」
リクオもジンや飛鳥を同じように驚いていながら、そういえば・・・と自身の組にいた烏天狗や化猫組のやつらはカラスや猫と会話できるらしい話しを聞いたことがあったこと思い出した。
「さっきの店員さんは化け猫の妖怪なのかな・・・?」
「・・・なんで妖怪という発想が出ててくるの?」
「うえ!?えっと、その」
ポツリと呟くように出た言葉であったが、ばっちり聞こえていたらしい。飛鳥の疑問やリクオの慌て具合に不思議そうにしながらジンはリクオの疑問に応えた。
「いえ、彼女は純粋に『種』として存在する猫族ですよ。確かにリクオさんの仰るように、長く生きることなどによって人化の術を身につけた・・・まぁ、俗に言う『妖怪』『妖物』に分類される存在もこの箱庭にはいますけどね。確か、1つ上の層だったと思いますが『妖怪のコミュニティ』もありますよ。」
「へぇ、妖怪なんてのもいるのね」
「妖怪・・・箱庭にはいるんだ」
ジンの答えに注意が向かったことで飛鳥や耀からどうに逃れたリクオは、二重の意味でほっと息をついた。
(ナイス、ジン君!それにしても・・・、この世界にも妖怪はいるんだね。やっぱり世界が違えば、こっちにいないよう妖怪もいるのかな?)
まだ見ぬ妖怪がどこかにいると思うと何だか安心した。
「しかし、全ての種と会話できるというなら耀さんのギフトはとても心強いですね。さっき言った妖物のようにこの箱庭には様々な存在がいますからね。幻獣の中には言葉を理解しても、伝えることができないようものもいますし、そういった言語の壁はとても厳しいですからね。」
「そうなんだ」
「はい。箱庭の創始者の眷属にあたる黒ウサギでも、全ての種とコミュニケーションをとることはできないはずですし」
「春日部さんは・・・・・・本当に素敵な力があるのね。羨ましいわ」
「久遠さん?」
ジンが耀のギフトの有用性を力説し照れたように耀が笑うなか、リクオは飛鳥が憂鬱そうにそんな言葉を呟いたのを聴いた。まだ出会ってそんなに経ってないが、それでもこの声色と表情が久遠飛鳥という少女には似つかわしくないであろうことはわかった。
それは一緒にいた耀にもわかったようで、心配そうな顔をした。
「えっと」
「・・・ふぅ、リクオ君も春日部さんも飛鳥でいいわ。よろしくね。それで、なにかしら春日部さん」
「う、うん。飛鳥はどんな力を持ってるの?」
「・・・」
話しを聞きながら、ここに来てすぐの黒ウサギとの追いかけっこを思い出す。他二人が比較的普通(?)に身体能力が高かったのに対して飛鳥は言葉一つで動物や植物を『操っている』ように見えた。
問われた飛鳥は言いづらそうにしながらも、覚悟を決めて告白することにした。例え『魔女』と恐れられることがあったとしても、せめてこれから共に過ごすかもしれない相手には誠実でありたい。そして、
「私の力は、・・・貴方達とは比べるでもなくひどいものよ、だって」
「おんやぁー?東区画の最底辺のゴミコミュ"名無しの権衛兵"のリーダー、ジン君じゃーないですか。今日はお守り役の黒ウサギは一緒じゃないんですかァ?」
・・・今にも語ろうとしたところで横槍が入った。ジンを呼ぶ声に振り返るとその巨体に似合わないピチピチのタキシードを着た変な男がいた。
そんな変な男に一世一代の覚悟を邪魔された飛鳥は、静かに、しかし強烈な怒りを覚え『命令』した。
「聞いたぞ、名無しめ。聞けば───」
「
「───!?」
命じられた変な男は、訳も分からないといった様子で口をパクパクと閉じたり開いたりさせた。しかし、本来出るべき声は出ず、空気の塊が出入りするだけしかしな。
「全く、少しは空気を読みなさい!今、ちょうど、私が話すところだったでしょう!それがわからなかったの!ちゃんと聴いてるかしら!?貴方が遮ったせいでどうしようもない空気になっちゃったじゃない!!これでも15年生きた中でも一番の覚悟をした上で話そうとしたのよ!それを貴方みたいな変な格好でいかにも悪そうな輩に邪魔された私の気持ちがわかる!?どうしたの!!言いたいことがあるなら、言ってみな───」
「ストーップ!!飛鳥さん落ち着いて、落ち着いて!その人、多分今は喋れないから!」
飛鳥の大声に周辺の通行人のほとんどが立ち止まり、こちらを注目していた。
「・・・お騒がせしました。もう喋っていいわよ。」
「───ッ!ハァ・・・な、なんだ今のは・・・?」
いつの間にか立ち上がっていたらしい飛鳥は席に着き、リクオは立ち止まっていた人達に「もう解決しましたから!ははは、ちょっと間が悪かっただけですから」笑って誤魔化した。とても無理があったが、リクオの必死な様子が伝わったのか、一人・・・また一人そっとその場から離れ歩き出していった。
そうして場が落ち着いたところで、原因である変な男にまくし立てるように話しかけた。
「さっきのことに関してはいきなり話しけて、遮ってしまったそっちにも原因があるからお互いに忘れましょう!」
「え」
「それで、話しかけたからには何か用があるんじゃないの?」
「え、あぁ。・・・・・・おいジン=ラッセル、貴様新しい人材を呼び寄せたようだが、名と旗を奪われ未練を引きずるだけならまだしも、僅かな誇りさえ捨てたんじゃないだろうな?自分のコミュニティがどんな状態かも知らせずに、何も知らないお嬢様方を騙して利用しようとしているんじゃないだろうな?」
「なっ!?何を言っているんですか!かつては森の守護者と言われていた時ならまだしも、ただ荒らすだけの獣になり果てたあなたには言われたくありません、ガルド=ガスパー!」
「なんだとォ・・・?小僧、言葉には気をつけとほうがいいぜ・・・。紳士で通っている俺にも聞き逃せないこととがあるんだからよォ!?」
ガルドと呼ばれた大男は、挨拶とばかりにジンと激しい罵り合いを交わした。礼儀正しかったジンでさえ感情を顕にして怒る様子からこの2人のの関係をだいたい把握する。ヒートアップするやり取りを見た感じ、ガルドが見た目通り暴力に訴えるような人物であるならジンが危険だ。
互いに言葉を発していないタイミングで、リクオが仲介となり落ち着かせる。
「二人の仲が悪いことはわかったから。・・・けど、僕らがいること忘れてない?」
「す、すみません。」
「これは、紳士としたことが・・・。皆様には正式に名乗ってもいませんでしたな。私は箱庭上層のコミュニティ"六百六十六の獣"の傘下、"フォレス・ガロ"のリーダーしているガルド=ガスパーです。以後お見知りおきを」
冷めた目で流れを見ていた飛鳥と耀は聞くことに徹した。
どこか芝居がかったような態度で改めて名乗ったガルド。上辺だけは丁寧で慇懃無礼な言動。
普段なら話を聞く必要もない相手だろう。しかし、自分達にとって重要なことを知っている。自分たちは知らず、ガルドとジンが共通して知っていることだ。
「それでガルドさん、君が知っているジン君のコミュニティについて・・・教えてくれるかな?」
「喜んで」
「リ、リクオさん・・・」
そしてリクオが説明する人物として指名したのは、ガルドだった。そのことに、ジンはなぜ?という感情を浮かべた。それを見たリクオは困ったように、しかしきっぱりと伝えた。
「ジン君。君はリーダーとして最も重要なものを失っている状態だ。・・・それは、『信頼』。本来なら一番に君の口から説明すべきことだったんだ。例え、自分に不利なことであろうリーダーとして責任を果たさなくちゃいけない。今、初めて会ったガルドと話さなかった君はほぼ同じだ。そして、客観的に説明してくれそうな方を僕は選んだ。」
「う・・・」
「ククク、いやー、冷静な方がいたようで・・・。では語りましょうか、ジン=ラッセルのコミュニティの没落秘話を!」
リクオは口を大きく歪ませて笑うガルド見て、分かっているのだろうか?と思う。
『ジン=ラッセル』と『ガルド=ガスパー』はどちらも自分達にとっては初対面の相手であり、『信頼を失ったジン=ラッセル』と自身が同じくらい怪しいと言われていることに。
そんな中でガルドの語った『没落』。
人間がリーダーとなった最高峰のコミュニティは、理不尽な"天災"『魔王』によって滅ぼされてしまいました。
かくして、最高峰のコミュニティは最底辺のコミュンティ"ノーネーム"になってしまたのです。
「拒否権のないギフトゲームを挑める"
「なるほどね。コミュニティにとって誇りである名前と旗、さらには主力のほとんどを奪われてしまったわけね。」
「はい。名を失い、旗を失い、信用を失ったコミュニティは主催者となることもできません。それにそんな所に強力なギフトを持つ者は留まらない!」
ガルドから聴いた話から、自身が身を置くことになるコミュニティはとんでもない逆境状態であることを知った。新しい名と旗を立ち上げればまだやりようはあったのに過去を捨てきることができずにここまで来てしまったコミュニティ。それは確かに栄誉にしがみつく亡霊とも言えるだろう。
「・・・それでガルドさんはどうして僕達にそんな話を教えてくれるのかな?コミュニティの今のやり繰りまで丁寧に」
「単刀直入に言いましょう。もしよろしければ私のコミュニティに来ませんか?」
なっ!と、今まで俯いていたジンが叫んだ。そして抗議の声をあげようとして、先ほどリクオに言われたことを思い出す。
(今の僕は、信頼を失っている・・・。どれだけ声を上げても何もしなかった上辺だけのリーダーじゃダメだ。もっと、考えておけばよかった・・・。黒ウサギに甘えすぎたせいで僕は仮初のリーダーさえ失格になっていた・・・ッ)
ただただ拳を握り締め、彼らがガルドのコミュニティに行くことを見守るしかない。そう思っていた。
「うん。それじゃジン君のコミュニティにしようかな。」
「そうね、悪いけど間に合ってるわ」
「「は?」」
不覚にもジンとガルド同時に声を出していた。そして、先程の言葉を何度か思い出し理解する。ガルドの誘いは断られ、ジンの"ノーネーム"が選ばれたということを。
そして何事もなかったかのように紅茶を一口飲んだ飛鳥は、何も言わなかった耀に笑顔を向ける。
「春日部さんはどうかしら?」
「別に。私はただ友達を作りに来ただけだもの」
「そう?なら私が友達1号に立候補していいかしら?」
「・・・うん。」
友達になろう発言は流石に恥ずかしかったのだろう。飛鳥と耀は互い赤くなりながら笑顔を向けた。耀の猫が泣きながら、どことなく嬉しそうに鳴いた。そんな二人の様子リクオが苦笑していると、呆然としていたガルドが顔を引きつらせながら口を開いた。
「あ、あの皆さん?」
「あら、まだいたの。もう帰っていわよ」
「・・・」
あんまりの言い草にガルドの思考は停止した。自身のコミュニティの大きさとジンのコミュニティの現状を語った上での誘いだ。断られることなど夢にも思っていなかったのだろう。
しかし、ガルドの予想外はまだ終わらなかった。そういえば・・・と、飛鳥が鋭い視線を向け
「まだ聞きたいことが残っていたわ。貴方は、
その『命令』と共に、ガルドの行動を不可視の力が抑制する。どうにか膝をつくがそれまで。それ以上指一本動かすことはできなかった。カエルがヘビに睨まれたかのように嫌な汗が体中から吹き出した。自分よりはるかに小さい目の前の少女から恐ろしい程のプレッシャーを感じる。
久遠飛鳥の尋問が始まった。
主「・・・進むの遅いな」
白雪「おい!出番は!?」
主「いや、ただでさえゆっくり進行なのに基本原作通りワンパンでやられたとこわざわざ映すのも・・・ね?」
白雪「うぅ(泣)」
水龍をワンパンで倒した男「ま、主人公はリクオだしな」