三代目総大将も来るそうですよ?   作:冷龍

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こそこそ更新(長らく8割で放置してたのをちょくちょく手直ししつつ一応一話分に)


"フォレス・ガロ"と"ノーネーム"

────箱庭二一〇五三八〇外門・"フォレス・ガロ"居住区

 

 

「これは・・・、凄いね」

 

「さすが獣のコミュニティね!住むところまで『森』とは思わなかったわ」

 

「ん、見たことない木だな?箱庭特有の種か?」

 

「こんなに大きな森なのに、あんまり生物はいないみたい」

 

「・・・あはは、これは一体どういうことなんデショウ」

 

 

"フォレス・ガロ"と"ノーネーム"のギフトゲーム当日。

ギフトゲームの会場を見た問題児たちは素直に驚き、黒ウサギはその場所を知っているがゆえに驚いた。

()()いろいろと考えさせられることがあり、あまり寝付けなかった"ノーネーム"リーダー、ジン=ラッセルもまたその光景を見て、感じていた眠気が吹き飛んだように目を見開いた。

気を取り直して辺りを見渡し、ここがこれからゲームの行われる居住区(見た目は完全に森)であることを確認する。

ここに来る同中でガルド=ガスパーの側がギフトゲームの会場を普段ゲームを行う舞台区画から居住区画に変更したらしいということを道行く人から聞いてはいた。

が、本当だとは思いもしていなかった。

舞台区画と居住区画なら当然、ゲームのために準備された舞台区画の方が主催者側に有利。

そのためそのことを聞いた際には、意図の見えないその行動に黒ウサギと一緒になって首を傾げた。

しかし、この森の中という環境なら(ガルド)にアドバンテージがある。

 

 

けど、それだけだろうか?

 

 

ジンは少しでも情報は得られないかと、木々を凝視しこれから行われるであろうギフトゲームがどんなものになるかと予測する。

まず、元々獣のギフトを持つ者達のコミュニティではあるが居住区はこんな風に木々に覆われていなかったはずだ。

さらに、

 

「あれ?」

 

「どうした、御ちび?」

 

「いえ・・・・・・"鬼化"?(いや、まさか、『彼女』な訳がない)」

 

ジンは木の一本に手を伸ばし、そっと触れる。

植物ではなく、生き物であるかのようにその表皮は脈を打ち、血の流れを作っていた。

これはある種が生まれながらに持つ権能として代表的なものだ。

その種の知り合いがかすかに浮かんだが、すぐに関係はないだろうと頭を振る。

 

「ジン君。これ"契約書類(ギアスロール)"じゃないかしら?」

 

「はい。確かにこれみたいです。・・・・・・な!?」

 

飛鳥の声を聞き、再び意識をゲームへ集中させ、ほとんど木やツタに覆われている門柱(ここが正規の入り口らしい)に貼られた羊皮紙のゲーム内容を確認する。

しかし、途中まで読み進めたところで、言葉を失ってしまった。

今回のギフトゲーム、よっぽどなミスをしなければ負けることはない、とジンは推測していた。

昨日の広場でのやり取りもあり、ギフトの"格"でいえば間違いなく三人ともガルドより上だ。

正面から戦えばたとえ個人であろうと、ガルドを打倒し得るだろう。

しかし、このゲーム"ハンティング"に限って言えばギフトの強力さによるゴリ押しの打倒は不可能だ。

 

『プレイヤー一覧 奴良リクオ,久遠飛鳥,春日部耀,ジン=ラッセル

 クリア条件 本拠内に潜むガルド=ガスパー討伐

 クリア方法 ホスト側が指定した特定の武具でのみ討伐可能。指定武具以外は"契約"によってガルド=ガスパーを傷つける事は不可能

 指定武具 テリトリー内に配置』

 

 

クリア条件を自身の打倒とし、さらに倒す武具を指定することであらゆる"恩恵(ギフト)"による害から身を守る。

"契約(ギアス)"を使った、ギフトの克服。

リクオ達に説明をしながら、ジンは自分の迂闊さを悔やんだ。

本来このゲームは昨夜、十六夜が語ったような事を除けば"ノーネーム"には何のメリットもなく受けなくてもいいものだ。

一方で"フォレス・ガロ"は受けなければならない状態だった。

挑戦者側が最初から有利であり、"契約書類"作成において意見を述べておくこともできたはずだ。

しかし、感情が先立ち冷静な判断ができなかった。

原因は単にジンの経験不足。

改めて、自身がリーダーとして足りていない事を自覚したジンは、肩を震わせた。

 

「あちら側は命を賭けて五分にした。それだけのことだよ。それに五分になったからって負けるつもりもさらさらないしね」

 

そんなジンの肩に触れ、リクオが笑顔で語った。

この程度は危機でも何でもないように。

 

「一方的な勝負よりはいい。私も全力でやる」

 

「ええ、そうね。あの自尊心を跡形もなく砕いてやるにはそれくらいがちょうどいいかしら」

 

「・・・みなさん」

 

続くように耀や飛鳥も、『そんなこと』が原因で負けてやるつもりはさらさらない、と言い放った。

その言葉に励まされるように、思考を前向きに、より冷静になるよう努める。

直接戦うことのできない自分は、考えることをやめてはいけない。

 

今回のギフトゲームはこれからの"ノーネーム"にとって決して()()()()()()ゲームだ。

ジンは昨夜の出来事を思い出し、改めて覚悟を決める。

 

 

───月明かりの下、これからの"ノーネーム"の運命を決定づけたといえる方針。それは何の旗印も持たなかった名無し(ノーネーム)が打倒魔王を掲げる『ジン=ラッセルのコミュニティ』となった瞬間。───

 

 

 

「さーて、俺は手を出さない分しっかりお前らの実力を見ててやるよ」

 

「ふん!えぇ、しっかりと私たちが勝利するところみてなさい」

 

飛鳥に挑発するような言葉をかける十六夜を見ながらジンは思う。

どこか軽薄そうなその言動を繰り返している十六夜だが、リーダーとしての資質というか、人をまとめあげる力はジン以上に充分だ。

 

強力な能力を持ち、博識さとそれを活かす頭脳持つ。

 

ジン達の最終的な目標は、『旗』と『名』と『仲間』を取り戻すことだ。

しかし、その目的のためにジンがしてきたことは少ない。

今までは『生きること』『耐えること』、それだけしかできなかった、否、それだけをしていればよかった。

新しい人材、それも飛びっきりの人材を手に入れた今はかなり自由に行動することができる。

生活基盤整えてからコツコツギフトゲームに勝利してコミュニティを大きくし、その中でかつての仲間を助け出していく。

()()()行動方針しか頭になかったジンにとって、十六夜の言葉は考えもしなかったことだった。

 

(対魔王戦を想定したコミュニティ・・・。旗や名がないというハンデを代表者である僕の名前を看板とすることで打ち消し、信用を得る)

 

悪くない、むしろ半永久的に付いて回るノーネームの信用問題を考えれば良策と言えるほどだ。

魔王という存在に対して箱庭に住む全ての人々が大なり小なり不満や敵対心を抱いている。

そんなところで魔王を倒すことを目的とするコミュニティ(ノーネーム)が現れれば自然と注目を集めることができる。

 

そして、今回のギフトゲーム。

もしそのコミュニティ(ノーネーム)が、悪事を働く魔王配下のコミュニティ(フォレス・ガロ)を打ち倒したとすれば、半信半疑のコミュニティにもノーネームの意志を伝えることができる。

 

 

「リクオさん!くれぐれも無茶はしないようにしてくださいね!人外の血を持っているといっても、この箱庭は上を見渡せばきりがないほど強者で溢れているんですから・・・」

 

「わかってるよ、黒ウサギ。僕だってそれなりに修羅場は潜り抜けてきたんだから。それに、僕は自分自身単体が強者である、なんて思ってないからさ」

 

黒ウサギにとってグリフォンとのゲームでその実力を示した耀、そして大男(ガルド)に対して一歩も引かない胆力及び"生物を操る能力"を持つという飛鳥に対してどこか大丈夫ではという思いがあった。(十六夜は論外)

故に、力の片鱗を見たに過ぎない黒ウサギは奴良リクオという優しそうな少年に真っ先に声をかけた。

胸の中にある漠然とした、根拠のない安心感を抱きながら・・・。

 

一方で黒ウサギの心配するような言葉を聞き、リクオは苦笑しながらも頷いた。

リクオは自身の弱さを自覚している。

それと同時に、仲間と一緒闘うことの強さを知っている。

共に闘う仲間がいるなら、奴良リクオは誰にも負けない。

これまでの経験からくる自信を言葉にのせて、黒ウサギに答える。

 

 

そうしてゲームに挑戦する人員がそれぞれ心境の整理をしているなか、ジンはチラリとジンや黒ウサギを励まし、安心させようとしてくれている奴良リクオに視線を向ける。

昨夜、十六夜の『提案』と同じくらい自身を驚かせた人物である彼に。

 

(やっぱり同一人物だってことが信じられない、けど、あれは間違いなく強者だ。妖怪、ぬらりひょん・・・。見られるだけで緊張してしまうような存在感。リクオさんは、間違いなくリーダーの器を持っている。あの独特の雰囲気というか、一種のカリスマ性は確かに率いる者のそれだった)

 

『変化』したリクオは男であるジンでさえ一瞬見惚れてしまうほどの妖艶さと、不思議な妖しさ、そして(おそ)ろしさを放っていた。

昼の『人間』としての姿と夜の『妖怪』としての姿、二つの姿を見て初めて奴良リクオに本当の意味でジンは出会ったのだ。

黒ウサギから聞いたことだが、奴良リクオという青年は箱庭で言うコミュニティのような存在のリーダーを務めていたそうだ。

そして殺し合いのような闘争を何度も重ねてきたという。

ジンはその話を聞いたとき、どこか信じられないような思いを浮かべていた。

あの姿を見るまでは・・・

 

 

その姿はジンがまだ物心ついたばかりの頃、かつてのコミュニティ"------"でその知恵と力をふるい、いくつもの困難を可能にしてきた『彼ら』の姿を思い出させた。

 

 

逆廻十六夜と奴良リクオ。

この二人は問題児たちの中でも特別だ。

飛鳥や耀は強力なギフトを保持してはいるが、隙や弱点もあり、同時に大きな成長をとげる伸びしろがある。

しかし、十六夜やリクオはほぼ完結し/完成している。

それ以上成長しない、という意味ではなく、『闘争』の中での自分の力の使い方を理解している即戦力ということだ。

故に、十六夜とリクオは例え「今すぐ魔王とのギフトゲーム」という事態になったとしても戦いきれる可能性が高い。

そんな即戦力足りえる二人は、昨夜の提案の後今日のギフトゲームに関してジンに二つのことを告げた。

 

逆廻十六夜は、これから共闘していくに際して今日のゲームの「勝利」を条件とした。負ければ、"ノーネーム"を抜けると付け足して。

奴良リクオは、ただジンの戦いを見たいと、どんな風に闘いきるか見たいと頼んだ。

 

 

ジンは、当然困惑し聞き返したが、答えは同じだった。

だが、そのとき二人の目を見て理解した。

十六夜は笑ってはいたが、その目は真剣そのものでありジンを見定めるように見つめた。

リクオも軽く笑っていたが、ジンを見るその目は優しくまるで師が生徒を見るようだった。

つまり、二人はジンを()()()()()

このギフトゲームで負けるようなことがあればコミュニティを抜けるという十六夜、このギフトゲームにおいてジンの能力を見定めようとしているリクオ。

なんとなくではあるが、十六夜やリクオはこの箱庭のどこでも暮らしていけると思った。

彼らはどこでもやっていける。

だからこそ、ジンを試している。

ジン=ラッセルのコミュニティ"ノーネーム"は自分たちが入るに相応しいところかどうかを・・・。

 

(このギフトゲームの結果次第じゃ、十六夜さんとリクオさん、どちらも失うことになるかもしれない・・・。絶対に勝ってみせる!僕にできることは限られているかもしれないけど、これからのためにもこんなところで負けてたまるか・・・っ!!)

 

ジンには、十六夜のようなわかりやすい力もリクオのようなリーダーとしての素質もほとんどない。

しかし、どちらも十分『これから』手に入れることができる。

なんといってもここは、能力(ギフト)才能(ギフト)を対価とするギフトゲームに溢れた箱庭の世界なのだから・・・。

 

いよいよ新生"ノーネーム"としての初めてのギフトゲームが始まる。

審判としての黒ウサギと観客としてゲームを見極める十六夜が見送る中、プレイヤーである飛鳥、耀、リクオ、ジンの四人はガルドが待ち構えているであろうジャングルのような居住区に入っていった。

 

 

 

 

迷いなく進んでいく耀の後ろをリクオ達はついていく。

動物の友達の数だけその力が増していく耀は、こと聴覚や嗅覚などの五感に関して言えばあの規格外である十六夜さえ陵駕する。

近くに生物の気配がないことから、森の奥に存在する自身の屋敷にガルドがいるのではと推測し、大きく周りを歩いていき罠や指定武具のヒントがないか慎重に確認していく。

当初想定していた「獣という特性を生かした森の中での強襲」がなく、若干の肩透かしをくらった4人は探索を続けながらも言葉を交わしていく。

 

「うーん、やっぱりこれだけの範囲で"鬼化"させることができるのは・・・」

 

「そういえば、さっきも言ってたけど"鬼化"ってどういうことなの?」

 

あらゆる生物がいないこの森は不気味な静寂を作り出し、ぽつりとジンが呟いた言葉もリクオ達に届かせた。

問われたジンは、何度も頭をよぎる『彼女』をできるだけ考えないようにしながら説明した。

 

「"鬼化"というのは、一般的に吸血鬼と呼ばれる存在が生物に与えることができる恩恵です。その効力は生命力や身体能力の強化、他にも吸血や喰肉によって力を得られたりできるようになります」

 

「吸血鬼、鬼化、それがガルドの奥の手なのかな?」

 

「さぁ、そこまでは何とも」

 

リクオの問に対してジンは言葉を濁すように答えた。

ただ、コミュニティ"フォレス・ガロ"の今までの戦績はその大部分が不戦勝だ。

そのため、使われることのなかった秘蔵のギフトなり、アイテムなりがある可能性は高い。

 

「なるほど、ね。流石腐っても大手コミュニティを名乗るだけはあるわね」

 

「生物ってことはこの辺りに生えてる木、全部?」

 

飛鳥が納得の言葉を返すと、今度はジンの説明から自身の感じていた違和感の正体を察した耀が確認するように訊ねる。

 

「はい。おそらくですが、この居住区の木は全て鬼化していると思います。木々の急成長もその影響ではないかと」

 

ここにある木は鬼化している。

普通の木より頑丈で、生命力が在り、ある程度ではあるが動くこともできるだろう。(あくまで、『普通の植物より』と付く)

植物以上生物未満の存在だ。

 

「けど、樹を鬼化することに何の意味があるんだろう?」

 

それは当然の疑問だった。

急成長した木々は、道を建物を破壊しリクオ達に、視界の悪さと動きにくさを与えていた。

だが耀によると、ガルドは自身の居城たる中心部の屋敷から全く動く気配がない。

つまり、この森という獣に有利なフィールドでの戦闘をする気がないということだ。

 

「そう、ですね。飛鳥さんのようにこの木を操作でもできるならかなり厄介ですけど、それ以外に木々を鬼化させる必要は・・・、もしかして・・・・・・」

 

「どうかしたの?」

 

何かに気付いたように黙ったジンに飛鳥が問い掛けた。

間違っているかもしれない、そう思いながらもジンはその答えをリクオ達に伝える。

 

「一定以上の格をもった吸血鬼が相手を鬼化させた場合、対象の霊格を『鬼』という属性によって上書きしていく段階で周辺の格の低い存在、つまり普通の植物などを鬼化させることもできるそうです。」

 

「これがただの余波みたいなものってこと?」

 

「あぁ、なるほど。つまり、()()()にされた存在がいるってことだね」

 

「・・・ガルド本人?」

 

基本的に吸血鬼になることは自身の『強化』に他ならない。

昨日の一件から身体能力で耀に負けていることをわかっているなら、勝率を上げるために鬼化してでも強くなろうとするのは十分ありえるとジンは考えた。

元々、獣の身体能力を持つガルドが吸血鬼となればその力は耀のそれに迫るものに、最悪それ以上になる可能性が高い。

制約によって身を守り、強化された自身の力をもって直接ジン達を叩き潰す。

それが、今回のゲームでガルドが見出した勝機なのだろう。

 

「聞けば聞くほど厄介ね。指定武具もわかってないのに・・・」

 

「いえ、さっきの推測が正しいとするなら指定武具の予想はつきます」

 

この森に入ってから指定武具に関するヒントやそれらしい物は見当たらず、あるのは鬼化した樹ばかりだ。

そうなると、この森こそがすでに指定武具へのヒントとなっているということがありえてくる。

討伐対象が獣ではなく吸血鬼、ということなら吸血鬼の弱点として広く知られている太陽や十字架、聖水などが指定武具となっていると予想できる。

『武具』と書かれているからには、引っかけでもなければ武器の形をしているはずだ。

 

「つまり、箱庭内では意味がない太陽を除いた『十字架』『聖水』後は、『銀』の武器を探せばいいってこと?」

 

「なら、森の中に隠してあるって可能性は低そうかしら・・・。もしそうなら、もう少しヒントがありそうだもの」

 

「・・・じゃあ、ここまで周りを探してた意味ってあんまり、ない?」

 

「うぅ、すいません。僕がもう少し早く気づいていれば」

 

「よし!ガルドのいる屋敷に行こうか。ジン君もほら、直接対決前に気づけてよかったんじゃないかな?」

 

ジン達一行は探索を打ち切り、ガルドがいる屋敷へ向かった。

一応、屋敷への道中でも周辺を見回したが、結局屋敷に到着するまでそれらしい武器はなかった。

 

莫大な財を投じ建てたであろうその屋敷は、木造でありながらところどころに豪奢な外装が見て取れ、"ノーネーム"本拠に負けず劣らずの豪邸だった。

・・・もっとも、この屋敷自体も木々の侵食を受けひどい有様となってしまっていたが。

 

 

それまで先頭を歩いてきた耀が慎重に、ツタや根の侵入によって取り払われた扉を踏み中に入っていく。

 

『・・・・・・・・・』

 

「・・・あら、お出迎えはないのね?」

 

「うん、動いてない。2階奥の部屋にいるみたい」

 

屋敷の中は静かなもので、その静けさが余計に打ち捨てられた空き家のような雰囲気を放っていた。

壁際に飾られていたであろう高級そうな絵や調度品の数々が植物の進軍の中で落とされ、壊され、飲み込まれている。

リクオ達が入ってきた入り口に限らず窓や壁のわずかな隙間、そして床からも鬼化しているであろう木々が強引に屋敷を蹂躙していた。

建物内ということもあってか、森の中以上に屋敷は暗く今が昼なのか夜なのかわからなくなるほどだ。

そんな屋敷の様子を見回したリクオは、この環境下でなら()()ことができることができそうだと確認する。

そして、いつでも戦闘に移れるように"祢々切丸"をギフトカードから出し、握り締めた。

 

「まずは一階を探しましょうか」

 

「武器、だね。春日部さんはガルドに少しでも動きがあったら教えてくれる?」

 

「うん、わかった」

 

ガルドが急に動き出しこちらを襲ってくることも考え、手分けしたりせずに一部屋ずつ順に見て回って行く。

どの部屋も等しく木々によって蹂躙されている様子は、リクオ達に一つの疑念を抱かせた。

 

結局、一階にはめぼしい物はなく、最後の一部屋を探索するまでガルドに動きはなかった。

二階への階段を前に飛鳥が全員の心中に渦巻く疑問を口にだした。

 

「・・・妙、ね。いくらこのゲームがあの男の人生最後のゲームだとは言え、今までの栄誉の結晶たる自身の屋敷をここまで無下にできるかしら?しかも、その屋敷を私達は我が物顔で歩き回ったのよ?あの、自尊心の塊のような彼が、それを黙って許す?」

 

「昨日のこともあって僕達、というか春日部さんを警戒してるからじゃないかな?」

 

フォレス・ガロとのゲームが決まった昨日の際にガルドは、飛鳥と耀に圧倒されその力の差を知った。

そこから、今回のゲームで"契約"による自身の保護や鬼化によって対策は重ねているがそれでも耀一人に勝てるかどうかもわからない。

 

「だからこそ勝機(チャンス)を見逃さないはずよ。彼は春日部さんの索敵能力を知らないのよ?つまり、自分の庭たるこのテリトリー内であれば不意打ちし放題・・・なんて考えてもおかしくない、と思うのだけど・・・」

 

言葉の最後が歯切れ悪くなったのは、実際に襲われることがなかったからだ。

飛鳥自身、ガルドという男を見誤ってしまったかと思い始めていた。

そんな飛鳥に考え込むように黙っていたジンが声をあげた。

飛鳥達より知り合った時間が長く、ヒトとなりをそれなりに知っているジンからしてもこのゲームでのガルドの動きのなさには違和感があった。

 

「いえ、僕も今回のゲームのガルドはなんというか・・・ガルド本人の意志が感じられないように思えます。」

 

「ガルド本人の意思、ね」

 

ガルドという男は『我』の強い存在だ。

それが戦うにしろ逃げるにしても、その意向はゲームに大きく反映されるはずだ。

さらに今回のギフトゲームは、下手をしなくてもガルドの人生最後のゲームになる可能性が高い。

 

"ノーネーム"がコミュニティとして相手をされないのは『名』と『旗』がないこと、つまり信用がないからだ。

皮肉にも"フォレス・ガロ"は名と旗を持ったままで信用を失った。

今までの行いが行いなだけにその扱いは今の"ノーネーム"へのそれよりよりもはっきりとした拒絶という形で現れるだろう。

 

「そんなゲームに介入できるとすると、ガルドより強い存在ってことかな。ほら、確か後見人で魔王のコミュニティの、えーと・・・・・・」

 

「"六百六十六の獣"?」

 

「そうそれ!」

 

「ふーん。もし、そうならこれは魔王の力を知れるいい機会ということかしら」

 

「・・・えーと、恐らくですが"六百六十六の獣"は動いていないと思います」

 

未だ『現役』の魔王に会ったことはない3人は心のどこかで、その力見てみたいという気持ちを抱いていた。

特に飛鳥はその思いが強いらしく、その表情と言葉は自然と挑戦的なものになっていく。

ジンも魔王の協力(それ)を考えないわけではなかったが、伝え聞く彼の魔王のコミュニティのことや今回のゲームの規模などからその可能性は低いとみていた。

コミュニティ"六百六十六の獣"の魔王は動かないことで有名であり、比較的傘下になることへの制限などもないため数多くのコミュニティが魔王の威光にあずかろうとその名を借りている。

コミュニティ"フォレス・ガロ"及びガルド=ガスパーの性格から考えても、大多数のコミュニティと同じように名を借りることを目的として傘下となったと思っていいだろう。

ジンの説明に納得した三人だが、各々が少しだけ残念そうな表情を浮かべる。

その様子を見て注意するべきか、心強いと思うべきかつい考えてしまう。

 

「まぁ、あんまり深く考えなくていいんじゃないかな?僕たちを本気で潰そうと思ってるならこんな回りくどい事しないで直接仕掛けてくるだろうし」

 

「・・・確かに、高位の吸血種を保有するようなコミュニティならノーネーム相手にこんなことはしないでしょうね」

 

自分で言っていて少し虚しくなるが、こちらに新しく入るメンバーがどれほどの存在か知られていない現状、魔王にほぼ壊滅させられた自分たちのコミュニティ"ノーネーム"をそこまで警戒するコミュニティはいないだろう。

各部屋の探索を終えた一同は、最後の部屋・・・ガルド本人がいると思われる部屋に足を向けた。

 

 

 

 

「───」

 

かつて『ガルド・ガスパー』と呼ばれ、コミュニティ"フォレス・ガロ"のリーダーであったその存在は、ここは自分の居場所だという漠然とした思いでその部屋にいた。

部屋の壁に立てかけられた自身にとって害となる銀色の長剣に嫌悪感を感じながらも薄暗い部屋の中でじっと息を殺し続けていた。

 

ギシ・・・ギシ・・・

 

「───」

 

そして部屋の扉を見据えて、こちらに向ってきている『敵』の存在に全神経を集中させる。

かつて獣であった頃の、森の守護者として多くのものに畏れられていた頃の全能感を感じながらただひたすらにその一瞬を狙う。

自身の住処を荒らす敵の存在には随分と前から気付いていた。

それでもこの場所から打って出なかったのは、それが(ガルド)のやり方だったからだ。

何時間、何十時間と敵を待ち獲物が来た瞬間全力で狩りに行く。

最も合理的で正しい本能に従い待つ。

 

「──ぅ」

 

僅かに扉の前で息を整える声が聞こえる。

緩やかな緊張に包まれながら全身の筋肉に力を蓄えていく。

 

バン!

 

両開きの扉が大きく開き、先頭にいた仕込み刀のような刀剣を持った男が見えた瞬間、ガルドはその前足を大きく振りかぶり襲い掛かった。

男はとっさに巨大な爪と体との間に刃を構えたが契約によってこの刀が自身を傷つけることができないと理解しているガルドは、躊躇うことなく剛腕を振り切った。

 

「ガァアアアアアア!!」

 

「っく・・・!」

 

『リクオくん(さん)!』

 

すぐ後ろにいた耀たちが何かする暇もなくリクオは一際広い部屋を大きく横切り壁に叩きつけられた。

パラパラと壁の木片が降り注ぎ、リクオはすぐに起き上がることなく崩れ落ちたまま起き上がらない。

部屋自体が暗いためその表情を窺うこともできない。

 

「っ!飛鳥、ジンくん・・・少し、下がってて」

 

「春日部さん!?・・・・・・えぇ、分かったわ」

 

「え、耀さん何をっ!?」

 

直接的な戦闘能力を持たない飛鳥やジンではこの(ガルド)に対応することはできない。

リクオでもとっさに反応することしかできなかった様子からそれを感じた耀は二人が離れられるまでガルドの相手をするために一歩踏み出し、それを理解した飛鳥は邪魔にならないようジンと共にゆっくりと後ずさる。

当然そんな弱点をさらした獲物を見逃すことなく、ガルドは耀をちらりと見た後後ずさっていく飛鳥達に視線を向ける。

 

たくさんの動物たちと触れ合ってきた耀には、言葉は分からなくともガルドの考えが容易に理解できた。

ガルドは間違いなく後ろの二人を先に狙う。

耀に構うことなく、強引にでも狩りに来る。

もし普通に止めようとすればいくらか打ち合った後に突破され二人に追いついてしまう。

耀にとって二人はまだ出会ったばかりの相手であり、知り合い以上友達未満という間柄でしかない。

しかし、二人は耀の能力(ギフト)をすごいことだと肯定してくれた。

父との絆の証といってもいいこの贈り物(ギフト)を肯定してくれた。

だから、耀は覚悟を決める。

普通に止めれば突破されるが、多少()()()()()()十分時間を稼ぐことができる。

 

「・・・うん」

 

その過程で多少傷を負うかもしれないがただでやられるつもりはない。

耀はガルドに注意を向けたまま部屋全体を見まわし、部屋の壁に立てかけられた銀色の西洋剣を確認する。

銀色に輝くそのいかにもな剣がおそらくジンの予想していた指定武具だろう。

速さで撹乱して隙を見てあの剣を取り、ガルドを攻撃する。

先程の強襲は確かに速かったが、グリフォンとのゲームによって空中さえ移動できるようになった耀の機動力はそれを上回る。

ガルドが身を沈め、それに呼応するように耀も身構える。

 

息を整えた両者が互いに隙を窺い動き出そうとしたまさにその瞬間・・・

 

 

「不意打ち一発全力で狩りにくるたァ、肝っ玉が据わってるじゃねーか。・・・改めて(オレ)の甘さを思い知らされたよ。」

 

「あ、リクオ?」

 

力が溜まりきる直前、集中を乱す様な絶妙な間で耀の真横からその声は聞こえた。

気が付けばそこにいたとしか表現のしようがない現れ方をした彼は、その刀───祢々切丸の切っ先をガルドの眼前に突き付けていた。

 

「グゥ・・・!」

 

傷つけられることはないとは理解していても目の前に突き付けられた刃への忌避感から、ガルドは大きく後ろに飛びずさった。

耀やリクオが銀剣を取らないように、銀剣の真正面にゆっくりと移動していく。

その行動に確かな知性を感じながら、妖怪へと変化したリクオは同じようにガルドを見つめていた耀に話しかけた。

飛鳥達の足音も遠ざかったの確認し、仕掛けるタイミングを見計らう。

 

「ところで耀、ああいう刃物は扱えるか?」

 

「無理」

 

「・・・まぁ、そりゃあそうか」

 

よっぽど特殊な家系でもない限り刃物を振り回す経験はないだろう。

武器を使う人間と素手で戦う人間の戦い方は大きく違う。

確実にガルドに当てるためにも、"慣れた"存在が銀の剣を扱うべきだろう。

作戦といえるほどではないがそんな行動方針を決めたリクオは、先程から特に驚いた様子を見せることなく夜の姿をリクオだと認識している耀を見つめる。

 

「?どうかしたの??」

 

「いや、十六夜の奴でさえ驚いてたんだがな・・・。普通はこの姿をすぐに(リクオ)だって思わないぜ?」

 

「え、だって匂い変わってるわけじゃないし・・・」

 

「・・・ははっ!確かに、どれだけ変わって見えても匂いは変わってないな!」

 

耀に言われて改めて思い出す。

変化した姿や雰囲気に流されることなく、自身の五感への絶対の信頼をもつ。

耀の能力は父親と数多くの友人達との絆の証だ。

だからこそ知覚した事実を疑うことなく、事実のまま受け入れることができる。

十六夜は分かりやすい力を持っているが、それ以外の二人も十分別方面で規格外のギフトを持っている。

リクオは自然と『守る』という思考をしていたが、生まれた時からそのギフトを持って元の世界で生きてきたのだ。

リクオとはまた違った荒事を経験してきているのだろう。

そこまで考えたところで、これから仲間として戦っていくために先に信頼してみることにした。

 

「じゃあ耀。・・・少しガルドを任せていいか?」

 

「問題ない」

 

即答。

それを聞くと同時にリクオは駆けだした。

銀剣までは一息の距離だ。

最短距離をまっすぐ向かってくるリクオに対して、当然ガルドは飛び掛かっていく。

先程と同じように前足で薙ぎ払うが、その攻撃を横目にリクオは防ぐ素振りさえ見せず逆にスピードを上げていく。

そして、その無防備な胴体に剛腕が叩きつけられようとした瞬間・・・

 

「ガァ!?」

 

「よっと」

 

リクオを追い抜いた耀がその低い姿勢からバク転するように横に振りぬこうとした腕を蹴り上げ、態勢を崩したガルドの足を()()()()()()()という力技で引き倒した。

その間に難なく銀剣を手にしたリクオは何かをやり遂げたような満足げな表情を浮かべた耀に苦笑しながら言葉をかける。

 

「っくく。本当に規格外だな」

 

「ふふん。当たり前。リクオは心配し過ぎ」

 

「あー、確かにこりゃその通りだな」

 

ガルドを挟んで互いに和やかに会話する。

そこで耀は、リクオが銀剣をしっかり攫んでいない事・・・そして僅かに見えた手の平が赤くなっている事に気が付いた。

視線の動きからそれを読み取ったリクオは隠すことなく

 

「いや、どうやら銀剣(コイツ)的に妖怪(オレ)はダメらしくてな。持てない程じゃねぇが若干ひりひりする」

 

「・・・大丈夫?」

 

「あぁ、これこそ心配するほどじゃねえよ」

 

心配そうにする耀に対して、リクオは軽く剣を摑んで見せて大した痛みではないことを伝える。

リクオが感じる痛みで一番近いように感じるのは陰陽術を受けたときのものだろうか。

陰陽術(それ)よりかは熱さも痛みも軽いものだったが、確かに近い感覚だった。

元の世界で銀に退魔の力があると考えられていることから、この銀剣は魔のモノ全般に対しても効果を発揮する・・・そこに妖怪も含まれているということなのだろう。

 

「ガルル・・・」

 

ガルドは自分の不利を理解していた。

それぞれの身のこなし、そして自分を抑えることもできるであろう怪力をもつ少女と自分を傷つけることができる銀剣()を手に入れた男。

現状を正しく理解し、この屋敷から脱出し森という広大な狩場を有効に使うべきだ。

合理的な本能が勝率のある行動浮かび上がらせる。

しかし、自身の内側から湧き上がってくる出処のつかめない感情が叫ぶ。

 

『ここは俺のテリトリーだ!誰にも渡さない・・・!ワタサナイィイイイイイ!』

 

人であった頃の強い執着と森の王者としてのプライド。

二つが混じり合った感情が生きようとする生存本能を抑え、ただ『敵』を排除することだけを思考する。

敵を一人でも多く・・・そう考えた時点でガルドは答えを見つけた。

ここは森の中。

ここは弱肉強食の世界。

自分はこの二人よりも弱い、だから喰われる。

ならば・・・

 

 

 

 

ダッ!

 

「なに・・・?」

 

「うわっ」

 

それは突然のことだった。

こちらに完全に意識を向け、いつ飛び掛かってくるかという風に見えていたガルドは身を反転させ強引に部屋の出口に駆け出した。

その切り替えの早さに一瞬呆気にとられた二人だったが、その行動に明確な目的があることを感じすぐさま後を追った。

 

「耀!」

 

「分かった・・・ッ!」

 

何歩か先を行くガルドの速さからリクオは一番速い耀に足止めを頼む。

四肢を投げうち全身の筋肉を使ったガルドの走りは確かに速いが、全力の耀よりかは遅い。

だが、ガルドもただ真っ直ぐ進むだけではなく廊下に並べてある観葉植物の様な物を蹴飛ばし少しでも距離を取ろうとする。

 

「っち!この野郎・・・待ちやがれ!」

 

「!!やっぱり、ガルドは飛鳥達の所に向かってるみたい・・・二人とも屋敷の入口にいる!」

 

「二人ともか・・・!なんか作戦でもあるのか、見届けるためか・・・ッ」

 

戦いの邪魔にならないように離れたが、完全に屋敷を離れるのも危険と判断したのだろう。

森は(ガルド)の領分だ。

 

(どこから襲ってくるかわからない森を避け、構造上ある程度向かってくる方向を絞れるところで迎え撃つ・・・高い身体能力を持つ訳ではない二人が確実にガルドを捉えられる方法か・・・)

 

リクオは飛鳥達の行動の意味を考え、そう推察したがそこまで考えてられても飛鳥達にはガルドに抗う肝心の『武器』が無いように感じた。

そうして二人が階段口に辿り着いた時には、今まさに手すりを突き破ったガルドが玄関に立ちふさがっている飛鳥に飛び掛かっているところだった。

間に合わないと分かっていながら耀はガルドの後を追うように手すりに足をかけ、リクオは遠距離攻撃でもして弾き飛ばせるかと畏れをその刃に込めた。

しかし、ガルドの向こう側に見えた飛鳥と目が合った瞬間動き始めていた体を押しとどめた。

言葉はなくとも確かに二人はその目から感じていた。

自信に満ちていた少女がどこか不安そうに浮かべた『信じて欲しい』という意思を。

 

空中から勢いのまま飛鳥に襲い掛かったガルドは背後からの敵の攻撃もないこともあって勝利を確信していた。

その頭の中では赤い少女を血染めにした後、森に隠れ潜み一人づつ仕留めていき勝利する自分の姿を想像しながら。

そこでふと、自分が今まさに切り裂こうとしている赤い少女の顔を見て困惑する。

『なぜ、コイツは怯えた表情ではなく勝利を確信した・・・オレトオナジカオヲシテイルンダ?』と。

その困惑は驚愕に変わる。

 

「・・・今です!」

 

「『ガルドを拘束しなさい』!」

 

「ガッ!?」

 

回避する暇もなかった。

飛鳥の言葉のまま、壁や床そして天井を突き破り四方八方からガルドに巻き付いたその()()()は吸血鬼となった獣人であるガルドの力を持ってしても容易に振りほどくことができなかった。

それは、ガルドと同じように鬼化した樹木だ。

当然、その頑丈さは普通の樹とは比べ物にならない。

木々の拘束は明らかにガルド自身がそれを砕き、折るよりも早い。

自分を傷つける事はできなくとも、そもそもの物量が違う。

体はどんどん疲弊していき、力が入らなくなっていく。

 

「グ、グォオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

それでも尚、諦めることなく足掻く。

自分ハコンナ所デ終ワル存在デハナイ!

マダ一匹モ仕留メテイナイ!

コンナノハ森の王タル自分デハナイ!

その剝き出しの闘争本能は、その場にいたもの全員に恐れを感じさせた。

それは死に瀕したガルドの本能が、理性が、知性が、執念が混ざり合い凝縮された叫びだった。

人も持つその原始的な『死にたくない』という叫びは聞いた者の心に響き体を縛り付ける。

全員が勝ちを確信し、安心したその一瞬の余裕。

だからこそ動けない。

もしノーネームの仲間が一人でも傷つけられていたら戸惑うこともなく、止めを刺すまで余裕なんて感じなかっただろう。

耀も飛鳥も時代や環境は違っても人並みに他者を害することが悪であることを認識し、それでいてガルドという悪を自らの手を汚して殺すことになっても納得し許容できるだけの覚悟を持っていた。

それでも、覚悟していても目の前でその叫びを聞けば躊躇ってしまう。

その躊躇いは正しく、それでいてほんの少しの間をおけば飲み込めるものだ。

また誰もが動けずともガルドは拘束されたままであり、ガルドに勝機はない。

だが、その一瞬確かにガルドが場を支配した。

狩りを躊躇う狩人など怖くない。

そう言っている様にガルドは足掻き続けた。

 

 

「あぁ、いいぜ・・・。今のお前が本当のお前(ガルド)なのか」

 

「ガゥ・・・」

 

「リクオ、さん」

 

 

誰もが固まって動けなくなっていたなか、ただ一人当たり前のように近づいていたリクオ。

そこに緊張はなく、怒りもなく、少しの敬意さえ感じさせた。

その姿を見た瞬間ガルドは理解した。

この男は自身の全霊をもった叫びを恐れていないと。

この男は自分(ガルド)を終わらせるモノだと。

 

 

 

"フォレス・ガロ"と"ノーネーム"のギフトゲーム

その勝敗は決した。




次はいつでしょうね・・・(FG○ポチポチ
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