禪院直哉のヒーローアカデミア   作:からや

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遅れてすみません。
次はそんなに間がないように…


雄英史上初

 (やっちゃったなぁ…

 まさか逃げ遅れちゃうなんて。)

 

 個性『透明化』の女子、葉隠透は、危機的状況にありながらも、非常にクリアな思考を巡らせていた。

 

 (ポイントは十分獲得した。やっぱりロボットはカメラからの情報を頼りにしてたから、こっそり近づいて壊すのコンボでなんとかなった。

 けどそれが裏目に出るとは…とほほ…)

 

 葉隠透は現在、0ポイントの仮想敵が出現した事による落石で足を取られ、動けない状態にあった。

 そして彼女の個性は『透明化』。気づいてもらうのが難しいと言うのは、彼女が一番、よくわかっていた。

 

 「叫んだら、気づいてもらえるかな…!」

 

 しかし、誰も気づいた様子はない。受験生は全員逃げており、受験生を近くで監視している市民役の教員も、彼女の声を拾うことは出来ない。

 彼女のすぐ近くでは0ポイントの仮想敵が暴れており、声もかき消されているからだ。

 

 「ホント…どうしよ…

 動くのも…駄目。このバランスが崩れたら骨折れちゃう。」

 

 葉隠が途方に暮れていた、その瞬間。

 

ガァン!!!

 

 仮想敵の首が、吹き飛んだ。

 

 「え、何!!?」

 

 状況が分からない。先程まで猛威を振るっていた仮想敵が、急に沈黙した。 

 何かあったと思われる仮想敵の頂上部分には、1人の男が立っていた。

 

 「あれって…」

 

 金髪、鋭い目つき、そして和服。

 その顔には微笑みを浮かべ――

 

 「思った通りや。ここは見晴らしがええ。

 

 おかげでカス共の痴態もよう見える。」

 

 

 笑みは笑みでも嘲笑を浮かべた、性格ドブカスの禪院直哉であった。

 しかしそんな事、今の葉隠にはどうでもいい。というか誰なのか分かっていない。

 

 「だっ、誰か助けて!」

 

 今の葉隠にできる最大の声量。これで気づかれなければ、恐らく試験が終わるまで気づいて貰えないだろう。と思う。

 そして葉隠の望み通り、直哉の強化された耳は助けを呼ぶ声を拾う。

 

 「はいカス1号。とりまオマエはヒーロー目指すの止めるのオススメしとくで。」

 

 一瞬で眼の前に現れたと思えば、相変わらずの毒舌、傲慢さ。気怠そうな体勢でありながら、しかし一切の隙はない。

 

 

 「あ!毒舌金髪の人!!君が倒したんだアレ!?」

 「このまま無視してもええんやで?」

 「ごめんなさい助けてください」

 

 直哉はため息をつく。このまま瓦礫の下敷きで良かったのではないかと本気で思った。というか気付いて興味本位で来てしまった自分を少し恨んだ。

 

 「でもこの瓦礫どかすんメンドいわ。

 てか俺にメリットあらへんよな、こんなん。」

 

 「ねぇキミホントにヒーロー科受けに来てるんだよね?」

 

 いよいよ本当にヒーローになる気があるのか分からなくなってきた。損得勘定じゃないよねヒーローって。

 もっとこう…「キミが、助けてほしそうな顔してた!」くらいは言ってほしいよね。

 ヒーロー活動を面倒くさがったら最早ソレをヒーローと呼ぶのかすら疑わしい。ただのニートだそんなもん。

 

 「は〜うざ。なら助けへんわ。俺にメリットとかあらへんやろうし。

 惜しかったなぁ、もっと恭しくしとれば助かったのかもしれへんのに。

 後は直哉様の言う事聞きますとかな。何も差し出せへんのに助けてもらおうとかたるんどるわ、最近の女って。

 非常識やなぁ。」

 「えちょ!どういういm

 もう居ない!!」

 

 葉隠が何か言おうとした瞬間、直哉はすでに次の仮想敵を屠りに向かっていた。

 あまりにも早い移動。オールマイトじゃなきゃ見逃しちゃうね。

 

『あと2分を切ったぜぇ!!』

 

 「あ、そこのセロハンテープの人!!お願い助けて!!」

 

 葉隠は困惑しつつも、とりあえず自分が取るべき行動を考え、行動する。

 幸運にも、直後に葉隠の前を通った人物は葉隠に気が付き、瓦礫をどけてもらうことが出来た。

 

 「しっかしまさかの個性透明化かぁ。俺が気づかなきゃやばかったんじゃない?」

 

 「あはは…気付いた人は居たには居たんだけどね…。

 まぁ助けてもらえなかったんだけど。」

 

 「え!?マジぃ!?あ、あんま筋力とかなかったり?俺でも結構重かったし。」

 

 「いや、絶っっ対に余裕でいけたと思う。」

 

 セロハンテープの少年――瀬呂範太は、少しの時間考えた後、

 

 

 「え理由わからん」 

 「普通に性格悪いからだよ多分きっと間違いなく」

 「何でソイツヒーローになろうとしてんの」 

 「世も末だね」

 「世も末だな…」

 

 ちなみに世も末である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「試験終了〜!!」

 

 

 終了の合図が響く試験会場Dには、とてつもなく強い力で殴られたような壊れ方をしたロボット達だけが残っていた。

 


 

 実技試験が終了し、雄英の教師たちは試験の結果について話し合っていた。

 

 「いやぁ、今年は波乱だったな。」

 「あぁ、Dの子、アレはヤバイ。アレに勝てるヒーローが一体何人いるか…」

 「てか彼の個性『アニメ』ってそんな使い勝手のいいようなものでもないだろうに、あそこまで使いこなせるものなんだな。

 全く、まだ若いってのに恐ろしいよ。」

 

 2人の教師が直哉の動きについて話している。

 パワーはそこまでではないにせよ、亜音速に突入するほどの速さ、捉えられる人間はそう多くは無い。

 

 「実技、成績出ました!」

 

 モニターに試験結果の表が表示される。

 

 

 『1位 禪院直哉 敵463P  救助(レスキュー)−42P』

 

 「…圧倒的ね。まさかの400点超え…しかも試験中の殆どを個性を使用したまま戦闘していたしね。素晴らしいタフネスだわ。」

 「2位の子も去年と比べればすごいぞ、レスキューポイント0で敵ポイント72だ。

 後半、他が鈍っていく中、目立つ爆発の個性で敵を引き付けた。こっちもタフネスの賜物だ。」

 「対照的に敵ポイント0で8位。」

 「0ポイントのヴィランに立ち向かった受験生は過去にも居たけど、ぶっ飛ばしちゃったのは久しく見てないね。

 それも今年は2人も!!

 思わずYeah!って叫んじゃったよ。」 

 「だが片方は自身の個性で甚大な負傷…まるで個性を発現させたばかりの幼児だ。」

 

 「……で、何で誰もコイツの雄英史上初のレスキューポイントがマイナスだってことに触れないんですか。」

 

 教師達が盛り上がる中、少し薄汚い格好をした教師、相澤消太が口を開いた瞬間、空気が凍りついた。

 

 「いやぁ、まぁ…」

 「そこは…ねぇ?」

 「まぁ担任に任すって感じかなぁ…って思って…」

 

 「他人事じゃ済みませんけどね」

 

 またしても冷えた空気が流れる。

 

 「……アンチヒーローな行動をした受験生は過去に少ないが居た。ソイツらは即失格になったんだが……今回は…なぁ?」

 

 「ええ、ただ見捨てただけ。そこには助けていては試験に受からない、みたいな理由があったかもしれないわ。

 まぁ尤も、その力があったと判断された上で見捨てたのだからマイナスになってしまったんだけど…」

 

 「危害を加えたわけじゃないからな、マイナス、ということにするしかなかった。ヒーローとして有り得てはいけないことだがな。」

 

 次々と教師達が口を開く。

 内容は総じて禪院直哉の見捨て行為に関するものだ。

 

 「皆そこまでにするのさ!

 まぁ精神に難有りとはいえ、将来有望なヒーローがウチの門を叩いたのさ!

 精神を含めて教育していくのが、我々の仕事さ!」

 

 そんな空気を晴らすため、校長が上手く締めくくり、教師達も他の生徒の成績やビデオに移っていった。

 

 

 

 相澤のため息は、他の教師の声にかき消された。

 

 

 

 

 


 

4月 

 

 

 「ん?」

 

 少し制服を着崩した男、禪院直哉は、自分のクラス、1-Aに向かっていると、入口でたむろしている3人の生徒が目に入る。

 

 「ちょっと退いてもらえへん?」

 

 「む、すまない。確かにここは通路だったなって君は…!」

 

 真っ先に反応したのはメガネをかけた真面目そうな少年、飯田天哉だ。

 彼は入試の時の直哉の行動をハッキリと覚えており、あのような態度をとっていた直哉が合格したことにあまり良い印象は持っていない。

 

 「ん?面識あらへんやろ?」

 

 だが直哉は。

 

 「っ…君は試験の説明の時を覚えてないのかい?」

 

 「説明?

 ………あ〜、あれやな。あん時俺に喧嘩売ってきよった猿か。

 どや?物見遊山やったかw」

 

 直哉は嘲るような口調で飯田に笑いかける。

 

 「……いや、ここにいるということは、何かあの行動にも考えがあったのだろうが…そのような熱意で成れる程、ヒーローというのは甘くないぞ。」

 

 飯田は実の兄に、インゲニウムというプロヒーローを持っている。故に、このクラスの誰よりも、ヒーローになるまでの苦労、ヒーローになってからの苦労を理解している。

 だからこそ、ヒーローを舐めているとしか取れない直哉の態度に人一倍憤っているのだ。

 

 しかし直哉は。

 

 「自己紹介はもちっと簡潔にな。

 聞く気起きへんで、そない冗長な話。」

 

 そう短く言うと、もう飯田への興味をなくしたかのように緑谷へ視線を移す。

 

 「ほんで縮れ毛の君は…あぁ、転びかけとった素人か。

 ここにいるっちゅう事は、ごっつええ個性持っとるんやな。」

 

 「えっ!あっ、僕!?」

 

 急に話を振られた緑谷は素っ頓狂な声を上げてしまう。

 根がヲタクである彼は、直哉と飯田の言い合いに萎縮していたのだ。

 性格の悪い陽キャと委員長風の真面目な生徒の言い合い。見てる分にも結構ハラハラしてしまう。

 

 「そうだ!この人受かったんだよ!あの時の言葉、訂正しなよ!

 『お前受からへんで』

みたいなやつ!」

 

 これに合わせて緑谷と同じく今まで空気だった女子――麗日お茶子が直哉とのファーストコンタクトを思い出し、謝罪を求める。

 

 「ええ個性持ってたら違うとも言ってたと思うで。

 自分の都合良いように過去を改竄すんなやクソ(アマ)ァ。」

 

 「口悪!?」

 

 こっちが責めていたと思ったら10倍ぐらいの威力のカウンターが飛んできて麗日がたじろぐ。

 ドブカスに常識は通用しない事が多い。

 

 「オトモダチごっこがしたいなら他所へ行け。

 ここはヒーロー科だぞ。」

 「「「!?」」」

 

 栄養ゼリーをすすりながら寝袋に入っている薄汚い男が会話に入り込む。

 飯田、緑谷、麗日が男に気を取られている隙に、直哉は自分の席に座っていた。

 

 「ハイ静かになるまでに9秒かかりました。

 時間は有限、君達は合理性に欠くね。」

 

 寝袋を脱ぎながらこの1-Aの担任、相澤消太は驚く生徒達を気にも留めず話を続ける。

 

 「担任の相澤消太だ。よろしくね。」

 

 不審者と思ってからの担任と、眼の前の人物の印象の反復横跳びに直哉を除く全員が困惑する。

 

 「早速だが、コレ着てグラウンドに出ろ。」

 

 青い服――雄英高校の体操服を、何処に入っていたのか寝袋の中から取り出す。

 

 「何すんねん、入学式もやらへんで。

 協調性とかないんか?」

 

 生徒達が困惑している中、直哉が相澤へ質問する。

 教師が相手であっても、舐めた態度は崩さない。

 コレを御していた蝶野先生とは一体。

 

 「教師には敬語を使え、禪院。

 …そうだな、知らないまま来いってのも納得できないか。

 これから行うのは、個性把握テストだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




実はゆっくり実況もしています。
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 チャンネル 
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拙作のラスト

  • ヒロアカエンド 
  • 呪術なエンド ※人の心あり
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