仮面ライダーヴァイカー   作:ギャビソ

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第2話『Welcome to 仮面ライダー』

「チームの名前?」

 

 炎天下が続くスラム街に、作業着姿の蓮司はレザースーツを着た少年に聞き返す。少年は亜麻色の髪を掻き分け鼻をすすると、蓮司を連れてトタンで出来た倉庫から一旦出る。少年の指さす先には、ちょうど看板が付けられそうなスペースが倉庫の上部分に残っていた。

 

「俺たちの工場だ、これからデッカくしてくんだからピッタリの名前を付けようと思ってさ」

 

「いやー、ならナットやチェーンに頼めよ。アイツら一応学校行ってたんだろ?」

 

「いいやもう決めたんだ! レンジ、みんな! 今日から俺たちは『ヴァイカー社』の社員だ!!」

 

 少年は倉庫の中で作業していた仲間たちを奮い立たせる。彼らは快くそれに応えると、組み立て中の部品に再び目を向けた。

 蓮司はため息をつくと、近くに立てかけてあった木材を拾い上げて倉庫の屋根にかざす。

 

「ヴァイカー社ね。お前にしてはセンスあるな、マックス」

 

「まあな。という訳で、これからよろしく頼むぜ社長〜!」

 

「おいおい、だからそれやめろって……」

 

 マックスと呼ばれた少年は、蓮司の脇腹にに肘を小突いて笑みを浮かべる。それにつられて蓮司も上機嫌で木材片手に作業に戻って行った。

 

 

 

 

 

「……俺は、ヴァイカー……の……」

 

 目を覚ました蓮司は口元に付いた涎を拭うと、ハカセと真冬、そして運転手の後に続いて車から降りた。まだ筋肉痛が残っている蓮司は、真冬の肩を借りながら目を擦る

 

「ここどこ?」

 

「ホテルニューホウダニの地下駐車場です」

 

「マジ? 近所じゃん」

 

「ですね、放課後通い易いと思いますよ」

 

 ハカセはそう言うとポケットからゼリー飲料を取り出す。開封するや否や一気にそれを飲み干すと、ここまでバンを運転してきた片眼鏡の青年にゴミを渡して一呼吸置く。

 

「紹介が遅れました。彼はジョシュ、ジョシュ彼らは赤城蓮司と近口真冬」

 

「ジョシュと申します。よろしくお願いします」

 

 ジョシュは膝に両手を置いてお辞儀する。執事服を着こなした長身の青年は3人をエレベーターまでエスコートしながら、47階のボタンを押した。

 僅かな時間であるが、蓮司は心に引っかかっていることをハカセに問いかける。

 

「さっきはスルーしたけど、何で俺らの名前知ってんの?」

 

「ヴァイカーの生体認証の際にこちらに基本情報は共有されます、ついでに近口さんの事も個人的に興味があったので調べました」

 

「へー、生真面目な割にそういう事はズケズケとやっちゃうんだ?」

 

「お互いを知ることがコミュニケーションの基本、ではないんですか?」

 

 ハカセは目を見開いて首を傾げる。彼の傍らにいたジョシュも違和感を抱いている様子はない。

 薄気味悪い。蓮司と真冬はただそう感じた。

 

「さ、着きましたよ。詳しい話は中で話しましょう」

 

 エレベーターを降りたハカセは青いサングラスをかけると、タッチパネルを開いて操作し始める。キーボード画面が見えた為、何かパスコードを打ち込んでいる様子だった。

 作業を終えたのかサングラスを外すと、そのまま廊下を先行して奥にある部屋を解錠した。

 

「後でやり方は教えます、一応敵襲対策という事で。さあどうぞ」

 

 ハカセは扉を開き、蓮司と真冬をぎこちなさげに手招きした。

 

 

 

 

 

 中はスイートルームにあちこちに機材が置かれたようなとっちらかった様子だったが、ハカセはその中で比較的綺麗なままのソファの上に体育座りをして両手を広げた。

 

「ようこそ対ネイバー同盟へ。歓迎します」

 

「歓迎する雰囲気じゃないっすよね?」

 

「生憎、私はこちらの文化をまだ完全に理解できていません」

 

「それじゃ勝手に失礼します。これ退けても良いです?」

 

 真冬は椅子に置かれたぬいぐるみを退かすと、埃を払って蓮司と共に席に座る。

 するとジョシュが彼らにゼリー飲料を手渡した。

 

「いや、こういうの珈琲とかじゃないんすか?」

 

「我々はこれしか口にできないもので、ここにはこれしか」

 

「そうっすか。あんたら人間?」

 

 真冬の何気ない発言に、ハカセは咳払いして真剣な顔をする。

 

「いいえ私とジョシュは人間ではありません。この世界と別の世界で生きる『ニア』という種です」

 

「別の世界? それってつまり、ガチの異世界人って事か?」

 

「といっても見た目は人間は何ら変わりありません。我々は元々ネガワールドという電脳世界の住民ですが、あと数年でネガワールドは無数にある次元の崩壊に巻き込まれて消えてしまいます。その前にこの世界に移住いや、侵略してやろうと」

 

「待て待て待て、つまりお前ら侵略宇宙人ってわけ?」

 

「ええ。ですが私とジョシュはそんな同胞のやり方に嫌気が差して見限りました。その後対ネイバー同盟を設立、ここも秘密裏に国の関係者と手を結んで間借りさせていただきました」

 

 ハカセはジョシュから手渡されたタブレットを操作し、画面を蓮司と真冬に見せる。そこには先程ヴァイカーが倒したムカデネイバーが映されていた。

 

「ニアは人々にホルダーギアを使って遺伝子構造を書き換え、異形の怪物ネイバーに変えて暴走させてしまいます。真冬さんが熱中しているオンラインゲーム『グッドネイバーズ』のキャラクターに似ていることから名付けられました」

 

「そういう事っす。全部説明してくれましたね、私の個人情報暴露されたけど」

 

 真冬は眉をヒクつかせて脚を組む。

 蓮司は彼女の方を一瞬見たが、急いで目を逸らすと変身に使ったキーホルダーを取り出す。

 

「ホルダーギアって、これか?」

 

「ええ、ニアは直接人間の構造を書き換えますがボウエイドライバーならリスクなしでその驚異的な力を引き出すことができます。また、ボウエイドライバーを使ってネイバーを倒せば元の人間に戻すことができます」

 

「なるほどね。じゃあ今お前たちに協力しないって選択肢はなくなったわけだ」

 

「ええその方が助かります私も、個人的に貴方と肩を並べて戦えたらと思っていたところですから。共にウェブウォーリアー、いや仮面ライダーとして戦いましょう」

 

 ハカセはタブレットを投げ捨てて手を差し出す。蓮司は椅子から身を乗り出してそれに応えると、およそ10秒もの握手で対ネイバー同盟への参加を決意した。

 いつまでも握手を続けそうな空気が嫌になった蓮司はそっと手の力を緩めると、席に戻って腕を組んだ。

 

「では早速会食でもどうでしょうか。私は残念ながらゼリーですが、あなた方の為に出前を取ろうと思っています。お代は結構、ネガワールドの技術提供の代わりに経費は無限に落ちますから」

 

 と、その時蓮司とハカセのサングラスが振動した。2人がサングラスをかけると、付近に出現したネイバーの目撃情報が目の前に広がった。

 

「どうやら森林公園にネイバーが現れたようです。それにバグネイバーの群れまで」

 

「ああ、沢山いるな。これはヤバいぞ……」

 

 蓮司はSNSでの目撃情報を追っていくと、ある1つの投稿に目が移った。

 

『ネイバー似の怪人また出ました! 助けて仮面ライダー!! ミカ@仮面ライダー推し』

 

 自分に助けを求めている投稿には、ピンぼけしたネイバーの写真が載せられていた。蓮司はサングラスを外すと、拳を握りしめてハカセを見る。

 

「バグネイバーは中身のないネイバーな分、数が多くて厄介です。私も同行します」

 

「同行ってお前、あの銃でか?」

 

「幸いドライバーの修理が終わりました。駐車場にバイクがあります、乗れますね?」

 

 ソファから飛び降りたハカセは再び手を差し出すが、蓮司はそれを払い除けると両手を合わせて頭を少し下げた。

 

「悪いが先行っててくれ、俺は自分のバイクで行くからよ。じゃ!」

 

 そう言って蓮司は小走りで部屋から出ていった。

 

「どうやら拘りが強いようですね。ジョシュ、ここから関係各局と連携を。近口さんはここで待機でお願いします」

 

「は? いや私も何かこう、変身! したいんですけど」

 

 真冬は立ち上がって右手を斜め上に上げたが、ハカセはそれを無視して部屋から出ていってしまった。

 取り残された彼女は下唇を噛んで悔しさをにじませたが、すぐに気を取り直すとジョシュの肩を叩いてにやけた顔を浮かべる。

 

「ここ、徹底的に掃除していいっすか?」

 

 

 

 

 

 森林公園では黒猫の怪人・ネコネイバーと、クロオオアリの怪人・バグネイバーの集団が子供たちを襲って暴れていた。

 

「友達……トモダチィィィ!!」

 

 ネコネイバーは両腕の爪で木を切り倒しながらその鋭さに磨きをかけると、付近に止めてあったゴミ収集車に紫の斬撃を飛ばす。

 車は3つに分かれて爆発、炎上して周りの自然を燃やしていった。

 その地獄のような光景を、公園から遠く離れたスタジアムの展望デッキから2人の人影が覗いていた。

 

「今度は中学生のガキか。一体どういう基準で……」

 

 白い長髪を結んだ、2メートルもの大男は蜘蛛のような意匠を持つ怪人・ニアスパイダーに尋ねる。

 ニアスパイダーは蜘蛛の糸であやとりをしながら、面倒くさそうに答えた。

 

「さあ。寂しいって言うから望みを叶えてやっただけですよー、バグ作るのも疲れるっていうのに」

 

「街がどれだけ壊れようと構わん。だがウェブウォーリアーに打ち勝つようなポテンシャルの人間をネイバーに変えてもらいたいものだ」

 

「そんなのデストさんがやればいいじゃないですか。気になってるんでしょ? 新しいウェブウォーリアーが」

 

 ニアスパイダーはそう言うと、デストと呼んだ青年にあやとりの完成系を見せた。そこには器用にバイクの全体像が表されていたが、デストは正拳突きの風圧でそれを破壊してしまった。

 

「ボアー。我々の任務は責任重大なんだぞ」

 

「責任? 自己中集団を助けてやる義理がどこにあるって言うんですか……と言ってたら来ましたね。裏切り者が」

 

 森林公園から出ようとするネコネイバー達の元に、XR250ベースのバイク・マシンディフェンダーが駆けつけた。

 

 

 

 

 

「さて。もう全員倒してしまいますか」

 

 ヘルメットを脱いだハカセはマシンディフェンダーから降りると、青いサングラスをかけてドライバーを装着する。

 

『ボウエイドライバー!』

 

「オ前、誰ダ!?」

 

「ウェブ……いや、仮面ライダーです」

 

 ハカセはジーンズのポケットからサイコロの絵柄がプリントされたホルダーギアを取り出し、バックルの右側にある差し込み口に装填した。

 

『ベガス!コネクト!』

 

 陽気な男性の機械音声と共にトランペットによるファンファーレが鳴り響くと、目の前にシルエットによる起動シークエンスが表示された。

 ハカセはガイド通り右手で指を鳴らすと、首を軽く傾げる。

 

【ACCESS!!】

 

「変身」

 

 ドライバーから粒子コーティングによって青色の装甲が装着されていく。

 胸部にルーレット、メット部分に黒いハット帽のアクセサリーが取り付けられた仮面の戦士に彼は変身したのだった。

 モニターにはコインの山のアニメーションが映され、真ん中に『BET』の文字が描かれていた。

 

『ドリーマー! ベガスフォーム!』

 

 

 

 

 

「私は仮面ライダードリーマー・ベガスフォーム。です」

 

 変身を終えたドリーマーに、ネコネイバーは周りのバグネイバーに彼へ襲いかかるよう命令する。

 対するドリーマーはタッチパネルを開くと、『SLOT』のメニューを開いて目の前に出現したレバーを引いた。

 

「さあ鬼が出るか蛇が出るか」

 

 タッチパネルに映されたスロットはクルクルと回り続ける。その間襲いかかってきたバグネイバーを軽くいなしながら待っていると、ドリーマーの身体にバチバチと青白い雷が帯電した。

 

【THUNDER】

 

「なるほど、そう来ましたか」

 

 四方八方からバグネイバーが迫ってくるが、ドリーマーは気にせず地面に向けて拳を叩きつけた。

 すると電流が走った地面によって、バグネイバー達は次々に感電して爆発していく。その猛威は遠く離れたネコネイバーにも届き、飛び上がってその痛さにのたうち回ってしまう。

 

「マダ友達ハイル……イケ!」

 

 ネコネイバーの指示によって、焼けた花壇からバグネイバーの集団が姿を現す。

 ドリーマーは再びスロットを回すと、残った電気を帯びた蹴りでバグネイバーを牽制しながら隙を見てバイクに飛び乗る。

 

「サンダーから次の回転で9秒……となると」

 

【FIRE】

 

「予想通りです」

 

 出目を確認したドリーマーは、マシンディフェンダーを発進させてバグネイバーに突撃していく。群れを掻き分け奥にいたネコネイバーを弾き飛ばすと、方向転換してアクセルを思いっきり回す。

 するとマシンごと彼の体は炎に包まれ、残っていたバグネイバー達はその突撃を食らって次々と炎上し爆発していった。

 

「さあ、この攻撃で終わりですね」

 

 ドリーマーはもう一度方向を変えて突撃しようとする。

 すると彼の横を赤い閃光が走ったかと思うと、残りのバグネイバー達は一斉に爆発していった。

 

 

 

 

 

「一体何が!?」

 

「俺だよ俺、お待たせ」

 

 ドリーマーが振り返ると、そこには水色のラインが入った赤色のバイク・マシンレッドエンドに乗ったヴァイカーだった。

 ヴァイカーはマシンから降りると、ドリーマーにデコピンを食らわせて彼の肩に右腕を置く。

 

「主役を差し置いて無双はどうかと思うよ」

 

「戦いに主役はありませんよ。遅かったですね」

 

「遅いんじゃない。お前が強いんだ」

 

 ヴァイカーはドリーマーの背中を軽く叩くと、タッチパネルを開いて『FINISH』のメニューを開いた。それに続いてドリーマーも必殺技を放つべくメニューを開く。

 

「ヴァイカー。あなたは先の戦いでの疲れが残っていますなので、私がトドメを」

 

「オッケー。ファイナルラップに乗り遅れんなよ?」

 

 ヴァイカーはネコネイバーの斬撃を回避しながら接近していくと、両腕のタイヤを回転させてエネルギーを拳に集中させた。

 間合いを詰めた刹那、ヴァイカーのパンチが目にも止まらぬ速さで繰り出されていく。重い拳から放たれるパンチは、鈍い音と共にネコネイバーの身体を凹ませる。

 

『レッドゾーン! フルスロットルブレイク!』

 

「パスだ、ドリーマー!」

 

 ネコネイバーの後ろに回り込むと、タイヤの回転で強化された右脚で背面を蹴り上げる。宙に浮いたネコネイバーの周りには、幾つものワームホールが生成されていた。

 それらは全て、地上でタッチパネルを操作していたドリーマーが作り出したものである。『ROULETTE』のメニューを開いてウィールを回転させると、投入されていたボールが18の目に止まってワームホールから18人のドリーマーが出現する。皆右脚に水色のエネルギーを集束させていた。

 地上のドリーマーは空に浮かんだ敵まで巨大なコインの階段を作ると、それを駆け上がる事に七色のエネルギーを右脚に集めていく。

 

『ベガス! マキシマムブレイク!』

 

 最後の段を蹴り上げたドリーマーは、周囲を囲う分身と共にネコネイバーへ必殺キックを放った。

 次々と分身の攻撃とドリーマー本人の強力な一撃を食らい、ドリーマーの分身と共に色鮮やかな花火となった。花火はやがて水流に変化すると、燃え続けていた花や木を鎮火していく。

 着地したドリーマーの足元には元に戻った男子中学生が倒れていた。

 

「仮面、ライダー……」

 

「友達なら相手を選んだ方が良いですね最も、私が言えた義理ではありませんが」

 

 変身を解除したに戻ったハカセは、同じく元の姿に戻った蓮司に右の掌を差し出す。

 

「ハイタッチです。一件落着ということで、後の事はこの世界の機関に任せましょう」

 

「そうだな。一件落着、っと」

 

 蓮司は彼の手を叩き、2人はそれぞれのマシンに乗ってホテルの方角へ走る。

 その様子を、ドリーマーによって作られた虹と共にインスタントカメラで写真に撮る女子高校生がいた。

 蓮司と同じ北宝寺高校の制服を着た大宮美香は、ヴァイカーとドリーマー、そして深緑色の装甲を纏った骸骨頭の仮面ライダーの写真ファイルを広げる。

 

「フフフ……まさか仮面ライダーさんがあたしの学校にいたとは!!」

 

 まっさらなページに新しく撮った写真を収めると、瓶底メガネをかけ直して髪の毛先をクルクルといじり始めた。




次回の仮面ライダーヴァイカー!

「サインと握手、それから写真!」

「何卒よろしくお願いします先輩!」

「貴方の存在、書き換えてあげるわ!」

「見てろ! 蓮司に出来て私に出来ないことは、無い!」

「くそっ……マモル君! しっかりするんだ!」

第3話『仮面ライダーの推し事』





ハカセのライダーメモ
■ベガスホルダーギア
ウェブウォーリアーをベガスフォームに変身させるホルダーギア。
ベガスの力を得たウェブウォーリアーは、多種多様な攻撃手段を使いこなせる反面、制御デバイスによる確率操作を行わなければならない。
私はそれらを最適なタイミングで引き出すことが出来る。
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