甘木瀬斗の暗殺教室   作:つがう

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14話

 昼休み。みんなが机を移動させるのに手伝いながらも、早く来ないかとそわそわしてしまう。お腹空いたし。

 すると、スマホのバイブレーションが起動する。確認すると、ちょうど今来たところらしい。

 立ち上がって小走りで廊下から玄関、外へと出る。そこには私愛用のポメラニアンの絵が描かれたランチバッグを持った傑がいた。面白いぐらい似合わないな……。とはいえ届けてくれたのはすっごく嬉しいので私は傑に飛びつく勢いで抱きついた。

 

「傑~~!! ありがと~~!!」

「はいはい、どういたしまして」

 

 私の頭をぽんと撫でて、それからランチバッグを手渡してくれた。

 

「あれ、髪湿ってる? 何かあった?」

「プール、泳いだんだ」

「へえ。涼しそうでいいね」

「私たちも海とか今度行こうよ」

「いいね、悟が喜びそうだ」

「硝子は面倒くさがりそうだけどね」

「違いない」

 

 雑談を交え、私は改めて傑にお礼を言う。

 

「今度お礼するよ。美味しいご飯とか食べに行こ!」

「それ君が食べたいだけじゃないのかい?」

「それはそう! 他になにかして欲しいこととかあった?」

 

 私が聞くと、傑は少し考えて言った。

 

「それなら今度、君の術式で生んだ呪霊をくれないか?」

「え? いいけど……。そうなったら私、主従組んじゃダメだから、鎮静化させることになるな……。でも私の生んだ呪霊って基本雛鳥の刷り込みみたいに私に懐くからなぁ、大丈夫かな?」

「大丈夫だと思うよ。強い主従を組んでいなければ一応取り込めるから」

「そうなの?」

「ああ。でもさすがに君の弟切や食食は取り込めないけどね」

「へ~、面白いね。呪霊操術って。でも呪霊って死ぬほど不味いんでしょ? そんなのがお礼になる?」

 

 私がそう言うと、彼は微笑みを浮かべたまま答えた。

 

「戦力はいくらあってもいいだろ?」

「それはそうだけど……」

 

 良いのかな。それで。……まあいっか。本人が欲しいっていうんだし。

 私が了承したのを見て、傑は満足げに笑っていた。

 

「それじゃあね。あ、今日の夜は寮母さんがいないからなにか作ろうと思うんだけど、何が食べたい?」

「傑が作るの?」

「そのつもりだよ。完オフだしね。どうせならって。で、何食べたい?」

「んー…………あっ、冷やし中華!」

「ふふっ、了解」

 

 私がリクエストを言うと、傑はくすっと笑って私の頭をぽんぽんと撫でてからじゃあねと言って去っていった。

 ランチバッグを持ってルンルンで教室に戻ると、何故かクラスのほとんどの顔がニヤニヤとこちらを見ていた。殺せんせーまでもが、だ。

 

「え、なになに怖い」

 

 自分の席に座りながら聞いてみる。

 すると中村さんがにゅっと近づいてきて言った。

 

「な……何?」

「そのお弁当を届けてくれた人はもしや彼氏ですかな?」

「…………えっ」

 

 あ~~なるほど、なるほどそういう……。中高生は恋バナ好きだもんな、そりゃニヤけるよな~。

 私は首を横に振って否定した。傑とはそんな関係じゃないし、そもそも私たちは呪術師なのだ。恋愛なんてものはご法度。ましてや私たちの職業柄、いつ命を落とすかもわからない。

 それに、愛ほど歪んだ呪いはないしね。

 

「傑はただの友達。一緒の寮に住んでるだけ」

「寮?」

「うん。東京にある全寮制の高校。私そこに引き取ってもらってるような形だから、生徒じゃないけど住まわせてもらってるの」

 

 自分でも驚くほどペラペラと嘘が口から出てきた。

 

「それじゃあ本命はこっち?」

 

 と、カルマ君がスマホの画面を見せてくる。そこには悟とのツーショットが。あのショッピングモールの日、つけてきてたのは知ってたけど写真まで撮ってたのか……。

 

「こっちも同じ。一緒の寮ってだけだよ。友人」

「いえいえ、そこから始まるラブストーリーというのもまた乙なものですよ?」

 

 殺せんせーがそう言って私の顔を覗き込む。

 

「殺せんせーもそっち派ぁ~? ゴシップ好き?」

「ええ。3学期までに生徒全員の恋バナをノンフィクション小説で出す予定です」

「最悪すぎ~。でも私のは出せないかもね。恋愛したことほぼ皆無だし。いや、ほぼじゃないか。恋愛したことないよ」

「うっそ~!」

「うそじゃないでーす」

「つまんな~い」

「つまんな~いじゃないわ」

「じゃあさじゃあさ、瀬斗ちゃんってどんな人がタイプなの?」

 

 倉橋さんに聞かれて、考える。好きなタイプ……か。

 

「うーん……。一緒にいて楽しくて、自分の背中を預けられるような人……とか?」

 

 私がそう答えると、女子たちがキャッと黄色い声を上げた。なんだか恥ずかしいな。こういうの慣れてないんだよ。

 

「それはそれとして~、この人たちとの話とか聞かせてくんな~い?」

「いやだからただの友達だって……」

 

 その後も根掘り葉掘り聞かれたが、何もないの一点張りで押し通した。本当に何もないし。

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