電話を終えて教室に戻ると、何やら興奮したような声が聞こえてくる。
「うお、マジかよ殺せんせー!?」
「この前君が雑誌で見てた奴です。丁度プールの廃材があったんで作ってみました」
中に入ると、吉田君が興奮した様子で殺せんせーが作ったバイクを見つめていた。クオリティ高いな。今にも走り出しそう。
「……何してんだよ、吉田」
和気あいあいとした雰囲気の場に、明らかに不機嫌です、と言いたげな寺坂君が登場した。吉田君は気まずそうに言葉を発する。
「あ、寺坂。い、いやぁ……バイクの話で盛り上がっちまってよ、うちの学校こーいうの興味ある奴いねーから」
目線の先にはしっかりヘルメットとライダースーツまで来た殺せんせーがドヤ顔をしている。
「ヌルフフフ、先生は大人な上に漢の中の漢、この手の趣味も一通り齧ってます。しかもこのバイク最高時速300km出るんですって、先生一度本物に乗ってみたいモンです」
「アホか、抱きかかえて飛んだ方が速えだろ」
吉田君の言葉にクラス中に笑いがこぼれる。しかし寺坂君だけは相変わらず苛立ったままで、不機嫌な感情を吐き出すように殺せんせーが作ったというバイクを蹴飛ばして壊してしまった。
「にゅやーッ!!?」
「こ、殺せんせー、大丈夫?」
「い、いや直せばなんとかなるんですが…頑張ったのに…このフォルム……」
しくしくと泣き出して壊れたタイヤの残骸を手に取る殺せんせー。
「何てことすんだよ寺坂!!」
「謝ってやんなよ!! 大人な上に漢の中の漢の殺せんせー泣いてるよ!?」
「そーだそーだ!」
ブーブーとブーイングが湧き上がる。そんな中、寺坂君は反省の色もなく、さらに苛立ちを隠さずに言葉を吐く。何を思ったのか自分の机の中から殺虫剤の缶を取り出し、床に投げつける。衝撃で殺虫剤の缶に穴が開き、勢いよく白い煙が噴き出す。
みんなが咳込んだり、涙を浮かべたりしている中、少々怒った様子の殺せんせーが寺坂君を引き留めようと肩を掴む。
「寺坂君!! ヤンチャするにも限度ってものが…」
「触んじゃねーよモンスター。気持ちわりーんだよ、テメーも、モンスターに操られて仲良しこよしのテメーらも!」
そう言い捨てる寺坂君に対し、カルマ君が独り言のように呟く。
「何がそんなに嫌なのかねぇ……。気に入らないなら殺しゃいいじゃん。せっかくそれが許可されてる教室なのに」
その一言を皮切りにクラスの空気が変わった。
「何だカルマ、テメー俺にケンカ売ってんのか。上等だよ、大体テメーは最初から――」
そこまで言いかけて、カルマ君は寺坂君の口を塞ぐように顎を鷲掴みにする。自分の口元に人差指を立て、囁くように言った。
「ダメだってば寺坂。ケンカするなら口より先に手ェ出さなきゃ」
「ッ!! 放せ!! くだらねー!!」
カルマ君の手を振り切り、そのまま教室を出ていってしまった。
「……なんなんだ、アイツ」
「一緒に平和にやれないもんかな……」
みんながため息をつく。
寺坂君、変なことしなきゃいいけどな。