翌日の昼休み、殺せんせーがぐすぐすと涙を流してる。それに対してイリーナ先生が訪ねた。
「なによ、さっきから意味も無く涙流して」
「いいえ、鼻なので涙じゃなくて鼻水です。目はこっち」
「まぎらわしい!!」
本当に紛らわしいな……。目も鼻もどっちも同じに見える……。
「どうも昨日から体の調子が少し変です」
「あー、勉強会の時も何回か泣いて、いや、今の状態から見るに鼻鳴らしてたもんね」
「夏カゼですかねぇ……」
「先生も風邪引くんだ……?」
基本的な性能がチートな殺せんせーだけどちょくちょく普通な感じが垣間見える。まあ出てるのが粘液だからやっぱり普通ではないんだけど。
クリームコロッケを頬張ったとき、教室の扉が開いて寺坂君が入ってきた。てっきり今日は全部サボるかと思ったのに。
「おお寺坂君! 今日は登校しないのかと心配でした!!」
寺坂君の肩を掴み、びしゃびしゃと粘液を撒き散らす殺せんせー。ちょっとモラルが低いぞ。電車でくしゃみする人とそう変わらないじゃないか、それ。寺坂君も嫌そうにしてるし。
「昨日君がキレた事ならご心配なく!! もう皆気にしてませんよね?ね?」
「…う、うん……。汁まみれになっていく寺坂の顔の方が気になる」
「昨日1日が考えましたが、やはり本人と話すべきです。悩みがあるなら後で聞かせてもらえませんか?」
殺せんせーの言葉を聞いて寺坂は静かに目を開き、殺せんせーのネクタイを掴んで粘液で汚れた顔を拭く。それから彼は殺せんせーに放課後プールに来るように言った。私たちにも手伝うように呼び掛ける。いや、横暴すぎないか。今まで自分暗殺なんかに参加しませんけど、みたいな風に駄々をこねて輪の向こうで意地を張っていたのに、急に手伝えとか……。
「……」
こいつ、何考えてんだ?
「なぁ寺坂、おまえずっと皆の暗殺には協力して来なかったよな。それをいきなりおまえの都合で命令されて、皆が皆ハイやりますって言うと思うか?」
「ケッ、別にいいぜ来なくても。そん時ゃ俺が賞金100億独り占めだ」
そして寺坂君は再度教室を出ていった。
「…なんなんだよあいつ…」
「もう正直ついてけねーわ」
村松君と吉田君が呆れ顔で話す。寺坂君といつもつるんでいた2人までこの態度だから、他のみんなは尚更だろう。
「私行かなーい」
「同じく」
「俺も今回はパスかな」
そんな皆の声に反旗を翻したのはターゲットである殺せんせーだ。
「皆行きましょうよぉ」
「うわ!? 粘液に固められて逃げられねぇ!!」
ぐちゃりと足元から音がしたかと思えば、教室の床には殺せんせーの鼻から出たであろう粘液が広がってみんなの足を絡めとって固まり始めていた。なんだこれ。ほんとに先生の粘液は何でもありだな!!
「せっかく寺坂君が私を殺る気になったんです。皆で一緒に暗殺して気持ち良く仲直りです」
「まずあんたが気持ち悪い!!」
殺せんせーの顔は粘液が溶けすぎて目が見えなくなっていた。