――コンコン
「はーい、開いてるよ」
夜、傑の部屋をノックするとすぐに中から返事があった。扉を開けるとラフな格好をした傑がいた。Tシャツにハーフパンツ姿。髪型も昼はお団子にしているけど夜はさっと結んでいることが多い。
「瀬斗? どうしたの?」
「勉強教えて」
「……それはいいけど、悟には教わらないのかい?」
「悟? なんで?」
「いや、いいや。とりあえず入って。飲み物は紅茶でいい?」
「うん」
「種類は?」
「なんでもいーよ」
部屋に入ると、相変わらず物が少なくスッキリとしている。部屋の真ん中にあるテーブルに持ってきた参考書を広げ、向かい合って座った。とりあえず今日は数学を教わるつもりなので数学の教科書を開く。
傑の教え方は丁寧だ。分からないところがあってもすぐに解決できるように導いてくれる。それにとても分かりやすい。私も勉強はできる方だけど、傑はもっとすごいと思う。さすがは努力型の天才って感じ。
「はい紅茶、今日はミルクティーにしてみたよ」
「ありがとう、ミルクティー大好き」
傑からカップを受け取って一口飲み、それから問題に取り掛かる。傑の説明を聞いていると、やっぱり自分で解くよりも頭によく入っている気がするし、スラスラ解けている気がする。中学校のテストとはいえ、あそこは日本有数の進学校だ。正直内容は高校生レベル。実年齢が高校2年生だからと胡坐をかいていればすぐに成績は落ちていくことだろう。だからこうしてわざわざ勉強をしているというわけなのだ。
「次こっちの――」
私の言葉を遮るように、傑の部屋の扉がそこそこ派手な音を立てて開いた。驚いて振り向くとそこには悟がいた。
「ど、どしたん悟……」
「別に? 勉強してんだって?」
「え、うん。期末テスト近いから」
「へー」
興味ないなら聞くな。そう思いつつ教科書に視線を戻すと、悟が私の後ろに立って、私の脇の下に手を入れひょいと持ち上げる。
「わわっ」
そしてそのまま座り、膝の上に私の身体を乗せる。
「ほんとに何!?」
「いいから勉強しろよ。お前頭悪い方じゃねえから大丈夫だよ」
「いいけどさぁ、何も言わないのはやめてほしい……」
「硝子ももう少ししたら来る」
「いつも通りの大集合じゃん」
まあいいかと思いながら私は問題を解き始めた。少しして悟の言った通り硝子がやってきた。いつもの様に煙草を咥えながら、部屋の中にいる私たちを見るなりくすっと笑う。
「群がってんな。ウケる」
「ウケないけど……??」
すとん、とベッドに座る硝子。
「その後ろの重くないの?」
「重い」
重いに決まってるだろ。悟190以上あるんだぞ、その分筋肉とか体重とかあるんだから寄り掛かられたら重いに決まってる。なんかお腹の方に手回ってるし。これ私トイレとか行けなくない?
まあいっか。程よく温いし。
「次はこっちの問題解いてみて」
「はーい」
4人いるのに勉強しているのは私だけという不思議な勉強会だった。