「~♪」
鼻歌を歌いながら高専内を歩いていると、前方に人影が見えた。私はその人影に向かって足を動かす。
「なっなみく~ん!」
くるりと振り返るのは1つ下の後輩、七海建人だ。すでに私よりも身長が大きい七海君は私の姿を確認すると目線を落としてくれる。
「どうしました?」
「見かけたから声かけただけ。これから任務?」
「いえ、帰りです。これから寮の方に戻ろうと思っていましたが」
「へ~。私今息抜きにジュース買いに行こうとしたんだけど、七海君も飲む?」
「…………いただきます」
視線を少し動かしてから答えてくれた七海君に思わず笑みが零れる。自動販売機まで歩きながら私は口を開いた。
「七海君何飲む?」
「コーヒーで」
「大人だね~」
ピッという電子音と共にガタンと音が鳴った。缶を取り出して、取り出し口に手を突っ込む。コーヒーと、自分の分のオレンジジュースを取り出す。
「はいどうぞ」
「ありがとうございます」
プルタブを開けて一口飲もうとすると、缶がひょいと上に上がる。
『ママ、かんかん』
「あーこら、人の缶ジュース取らない」
弟切が大きな手とカギヅメでかしかしとプルタブを開けようと引っ掻いているのを叱る。またこの子は勝手に人の体から出てきて……。飲むなら新しいのにしてよね。私だって喉乾いているんだから。
『マーマ』
「はいはい。ジュースは私のじゃなくて自分で買って飲んでね」
そう言いながら弟切に小銭を渡す。楽しそうに自動販売機にお金を入れ、私と同じジュースを買った。かしゅっと音を鳴らし、一気にジュースを飲む。
「ごめんね、七海君」
「あ、いえ。……器用ですね」
「私の真似だよ。七海君、弟切を見るのは初めてだっけ?」
「そうですね。遠くから見たことはありますが、こんなに近い距離で見るのは今日が初めてかもしれません」
「そっかー。弟切、私の後輩の七海君だよ。挨拶して」
『ナァミ?』
「ななみ」
『なーみ』
名前をちゃんと言えていない弟切にため息をつく。まあすらすら言葉を喋れることの方が少ないけどね。
弟切はぺこりと七海君に頭を下げると、またジュースを飲み始めた。
「瀬斗さんは今、長期任務中なんですよね?」
「うん、そうだよ。都内で中学生やってる」
「……はい?」
「意味わからないよね、えーっとね」
七海君に説明すると、彼は小さくため息を吐いた。
「大変ですね……。これだから呪術師は……」
「あはは、でも案外楽しいよ。疲れはするけどね」
「お疲れ様です……」
「七海君もね」
にこにこと笑いながらジュースをまた一口飲んで立ち上がる。そろそろ自分の部屋に戻って勉強再開しないと。弟切にも私の中に戻るように言う。
「そんじゃあそろそろ自分の部屋に戻ろうかな~、またお話ししようね、七海君」
「はい」
ひらりと手を振ってその場を去る。
「明日はテスト本番。最後の大詰めと行くか~」
私はぐいっと伸びをして気合を入れなおした。