甘木瀬斗の暗殺教室   作:つがう

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30話

 一度高専に戻った私は真っ先に共同の風呂場へと向かい、どろっどろの汚い制服を脱ぎ捨てる。この汚れ落ちないだろうから新しい制服発注しなきゃだよなぁ……。

 なんて考えながらシャワーを浴びて湯船に浸かる。

 

「ふいー……」

 

 やっぱりお風呂はいいね。日本人に生まれてきてよかったと心の底から思う。

 しばらく使ってから持ってきた替えの服に着替える。パーカーにシャツ、ゆるっとしたサルエルパンツ。まだ夜にも任務があるし、動きやすい格好じゃないと。

 汚れた制服が入った袋をゴミに出してから部屋に戻ることに、仮眠取らなきゃ死ぬ。

 

「よっ、疲れた顔してんなー」

 

 後ろからがばっと悟が抱き着いてくる。

 

「わっ」

 

 私は慌てて悟から離れる。振り返って悟を見ると、おもちゃを取り上げられた子供のような顔をした悟がいた。

 

「え、何……。そんな離れるほど嫌なわけ」

「あ、いや、違うよ。さっき祓った呪霊の体液死ぬほど臭くて、お風呂は入ったんだけどまだ臭いついてたら恥ずかしいなと思ってさ……。私も一応女の子ですし……? そういうのには気を使うといいますか……」

 

 言い訳のようにもごもごと喋ると、何を思ったのか悟は私に近寄ってすん、と鼻を鳴らした。

 

「おわぁっ!?」

「別に変な臭いとかしねーけど」

「あ、ありがとう?」

 

 思わずお礼を言ってしまった。

 

「つーかンなことどうでもいいからゲームしね?」

「私夜に任務あるから仮眠したい……」

 

 と言うと、悟は私の頬をむにっと掴んでくる。

 

「にゃに」

「つまんね~~~!!」

「そんなこと言っても疲れてるから寝たい」

「じゃあ俺が添い寝してやるよ」

「今まで添い寝とかしたことないのによくそんな提案してきたな……。あと悟でかいから窮屈そう。ヤだ」

「は~? こんなイケメンと添い寝できんだぞ」

「いらんて~……」

 

 そう断ったのだが、悟は私を持ち上げる。

 

「んえ~~」

「不細工な声出すなー」

 

 そしてそのまま寮の方へと連れていかれる。

 

「悟? こっち男子寮の方じゃないの?」

「え? だって俺の部屋で寝るもん」

 

 なんでだ。と言いたかったが言ったところで恐らく無駄なので黙って運ばれることにした。

 悟の部屋に着くなり、ベッドにぽいっと投げられる。

 

「いてっ」

 

 柔らかくお高いマットレスなので痛みはないが、反射的に言葉が出てしまう。

 もそもそと悟もベッドに入ってくる。

 

「ほんとに添い寝する気~……?」

「おー。ほんとほんと」

 

 適当に返事をする悟に呆れるが、とんとんと私のお腹辺りを軽く叩く。

 

「ちょっと、私子供じゃないんだけど」

「はいはい、ねんねしましょうねー」

「そのテンションうざぁ……」

 

 と口では言うものの、私の目がうとうととし始める。それに加えて、とくんとくんと悟の心臓の音が聞こえてくるから、余計にだ。

 規則正しい音を聞いているうちにいつの間にか眠りについていた。




「無防備すぎだろ……。つーかこんな風に押されたら誰とでも添い寝するわけ?」

 少々ムッとした声音で悟は瀬斗の眉間をつんっと押す。瀬斗は起きる気配もなく、すやすやと気持ちよさそうな寝息を立てている。
 ムカムカしていても、寝顔が可愛いと思ってしまう。起こさないように注意しながら彼女の頭を撫でる。短い髪だが指通りがよくさらりとしている。
 どうせ寝てるんだし、と少し邪な気持ちが働いた悟は、瀬斗を自分の胸元に引き寄せるように抱きしめると、自分の匂いをつけるかのようにぐりぐりと首筋あたりに額を押し付ける。すると、腕の中で瀬斗が小さく身じろいだ。
 やばい、起きたか?と思い距離を離すが、またすぐに穏やかな寝息を立てたのでほっと息を吐く。
 悟は再び瀬斗の髪を撫でる。任務の際に浴びた呪霊の体液で臭いを気にしていたが、今の瀬斗からはシャンプーのいい香りしかしない。別に血みどろでも構わないのに。

「……惚れた弱みってコワ~……」

 ぽそりと呟いて、悟も目を閉じた。
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