甘木瀬斗の暗殺教室   作:つがう

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33話

 午後12時を過ぎ、チラホラと休憩のためにお弁当を広げる生徒達が出てくる中、私も例外ではなく、お昼ご飯を食べていた。

 卵焼きを箸でつまんで口に入れようとした時、隣にいた茅野さんがあっと声を上げた。

 

「門のとこ、小さい子いる」

 

 授業ではなく訓練続きの私たちは、外で昼食を取っていたため、外の様子がよくわかっていた。だからこそ、茅野さんは門のところにふと視線を動かした時にその子供とやらが目に写ったのだろう。

 

「え? 子供? こんな山に?」

「でもほら……」

 

 茅野さんの指を指す方をなぞるように見て、私はギョッと目を丸くする。

 

「棘!?」

 

 そこには私のはとこにあたる男の子、狗巻棘がいた。私はお弁当を横に置いて慌てて棘の元に駆け寄る。

 

「どうしたの棘、放課後になったら迎えに行くからお家で待っててって言ってたはずだけど……」

 

 しゃがみこんで視線を合わせながら言うと、棘は瞳をうるうると涙で滲ませた。

 

「……すじこ」

 

 ぎゅっと、私の首元に抱きついてくる。

 

「棘?」

 

 一体どういうことかわからないけれど、とりあえず落ち着かせようと背中をさするのだが、依然として私に抱きついてぐすぐすと鼻を鳴らしている。

 

「棘、何かあった?」

「おかか……」

「棘のパパとママはお家? ちゃんと言って出てきた?」

「……おかか」

「んー、寂しくなっちゃった?」

「しゃけ……」

 

 そっかあ、寂しくなっちゃったのか。無理もない。まだ6歳なんだし。

 

「でもだからといって勝手に来たら駄目だよ。心配する」

「ツナ。しゃけ…」

「わかればよろしい。でも私まだ学校あるから誰かに迎えに来てもらわないと……」

 

 棘の両親がいないってことは、多分呼んでもすぐには来られないし……。そもそも棘は今日夕方から高専の私の部屋でお泊まりだったのだ。

 

「傑に頼むか……」

「ツナ?」

「そう、私の友達」

 

 スマホを操作し、メッセージを送ると、すぐに返信が来た。迎えに行くのはいいが、20分くらい後になってしまうという事だった。

 

「ん~~……20分……なんとも微妙な……」

 

 でも仕方がない。烏間先生達に事情を話して少しの間棘をここにいさせてもらおう。

 

「ほら棘、行こう?」

「…………おかか」

 

 しゃがみこむ棘。行かない、ということだろうか。

 

「棘?」

「おかか……」

「はぁ~~~……おいで、抱っこしてあげる」

 

 よいしょと立ち上がって手を広げると、棘は素直に両手を広げて抱きついてきた。私はそのままひょいと抱え上げる。

 

「烏間先生ー」

 

 私は生徒たちの訓練している場所まで行って声をかける。ちょうど休憩中だったようで、烏間先生はすぐにこちらにやってきた。そして、私にくっつく棘を見て目を丸くする。まあそりゃそうだよね。突然自分の生徒が男児連れてきてたらびっくりするわ。

 訳を簡潔に話し、迎えが来る20分程だけでもここで預かってもらう許可をもらった。烏間先生もみんなも快く承諾してくれたのでよかった。

 

「その子、瀬斗さんの弟?」

「ううん、はとこ。今日学校から帰ったら遊ぼうねって言ってたんだけど、寂しくなっちゃったみたいで……」

「え~、可愛い~」

 

 女子たちがニコニコしながら棘に近づく。

 

「……ツナ」

 

 だが棘はふいっとそっぽを向いて私にしがみついてしまう。

 

「こら棘」

「おかか」

「もー……」

「ずっと気になってたんだけど、なんでこの子おにぎりの具しか喋らないの?」

 

 ……痛いところを突かれてしまった。いや当たり前だよな。小さい子ならまだしも、棘は傍から見ても小学生くらいだってことがわかるし……。

 でも呪言のことは言えないしな……どう説明したものか……。

 

「えーとね、ごっこ遊び、みたいな? 最近ハマってるらしいんだよね。人見知りも相まってなかなか口数が少なくてさ……」

「へぇ、そうなの」

 

 咄嵯についた嘘にしては上出来だろう。

 

「いくら?」

「あともう少しだと思うよ」

「しゃけ」

「会話が成立しているのが不思議でしょうがない……」

 

 クラスの人にそう言われ、私はクスクスと笑いながら棘を後ろから抱きしめる。

 

「棘の事が大好きだから分かるんだぁ。ねー棘、棘も私の事好きだもんね」

「しゃけ!」

 

 よしよしと頭を撫でると、棘は嬉しそうに笑みを浮かべた。

 

「瀬斗ー」

「お、噂をすれば」

 

 門のところに傑が立っていた。私は棘と手を繋ぎ、傑の元へ向かう。

 

「遅くなってごめんね」

「いいよ別に。むしろこんな事頼んじゃってごめんね。悟は子供のお守りとか無理そうだし、硝子は出来ると思うけど煙草とかが……いやまあ傑も吸ってることあるけどさ、子供の前では吸わないじゃん?」

「はは、言わんとすることはわかるよ。それじゃあ瀬斗が帰ってくるまで私が責任持って面倒見るよ」

「ありがとう、助かる」

「じゃあ行こうか、棘君」

「しゃけ」

 

 傑と棘は数回だけだけど面識がある。そのためか、棘は特に警戒も緊張もすることなく傑の手を握った。

 ぶんぶんと私に大きく手を振って去っていく棘を、私も笑顔で小さく手を振りながら見送る。

 

「訓練に戻ろ」

 

 私はみんなのいる場所に戻り、また訓練を再開する。

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