甘木瀬斗の暗殺教室   作:つがう

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48話

「よくやってくれました、渚君。今回ばかりはどうなるかと思いましたが、怪我も軽そうで安心しました」

「……うん。僕は平気だけど……でも…」

 

 解毒剤が足りない。鷹岡から奪った分だけでは全然足らないのだ。

 

「とにかくここを脱出する。ヘリを呼んだら君らは待機だ。俺が毒使いの男を連れてくる」

「フン、てめーらに薬なんぞ必要ねえ。ガキども、このまま生きて帰れるとでも思ったかい?」

 

 3人分の足音と共にやって来たのはここに来るまでに対峙した3人の殺し屋だった。殺し屋たちも先に、烏間先生が口を開く。雇い主は倒したのだから戦う理由はもうないはずだと。もちろんそれでもかかってくるのならば相手にはなるが、無駄に被害が出ることは両者ともに望んでいないだろう、そう烏間は殺し屋たちに向かって言う。

 それに対し殺し屋のうちの1人、銃使いの男が言葉を発した。

 

「ん、いーよ」

 

 なんとも軽々しい返事だった。

 

「ボスの敵討ちは俺らの契約にゃ含まれてねぇ。それに今言ったろ、そもそもお前らに薬なんざ必要ねぇって」

「お前らに盛ったのはこっち、食中毒菌を改良したものだ。あと3時間くらいは猛威を振るうが、その後急速に活性を失って無毒となる。ボスが使えと指示したのとは別の薬だ。本当にこっちを使っていればお前らマジでヤバかったかもな」

「使う直前にこの3人で話し合ったぬ。ボスの設定した交渉期限は1時間。だったら、わざわざ殺すウィルスじゃなくとも取引は出来る」

「交渉方に合わせて多種多様な毒を持ってるからな。お前らが命の危険を感じるには十分だったろ?」

「……でもそれって、あいつの命令に逆らったってことだよね、お金貰ってるのにそんなことしていいの?」

 

 そう岡野さんが言うと、銃使いの男は笑った。確かに金の為に動くのが殺し屋だ。だがなんでも金で動くと思ったら大間違いだと。もちろん依頼人の意に添うように最善は尽くす、だが依頼人はハナから薬を渡す気はなかった。

 だから彼らは天秤にかけた。カタギの中学生を大量に殺した実行犯になるか、命令違反がバレることでプロとしての評価を落とすか。どちらが今後の仕事に差し支えるか。考えた挙句、彼らは前者を選んだらしい。

 

「ま、そんなワケでおまえらは残念ながら誰も死なねぇ」

 

 そう言って毒物使いの男がこちらに瓶のようなものを投げた。

 

「この栄養剤を患者に飲ませて寝かしてやんな。倒れる前より元気になったって感謝の手紙が届くほどだ」

「…………信用するかは生徒たちが回復したのを見てからだ。事情も聞くし、しばらく拘束させてもらうぞ」

「……まぁ、しゃあねぇな。来週には次の仕事が入ってるからそれ以内にな」

 

 烏間先生が呼んだヘリに元凶の鷹岡、その他雇われた殺し屋や、見張りたちなんかが乗り込んだ。私たちも別のヘリに乗り込み、ホテルへと帰った。

 こうしてE組の大規模潜入ミッションは、ホテル側の誰一人気づかないままコンプリートした。

 

「ありがとう寺坂君、あそこで止めてくれて」

「……おー」

 

 私はあの時、彼が私を止めてくれたことに心底ほっとしていた。感情のままに非術師を殺そうとしたのはこれで二度目だ。成長できていると思っているのは私だけなのだろうか。

 ヘリの天井を見つめ、息を吐いた。

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