高専に戻った瀬斗は、夜蛾に簡易的な報告書を提出し、部屋へと戻った。
「よ、おかえり」
「悟。ただいまー」
たまたま廊下ですれ違った悟に声をかけられる。彼は今日任務がなかったようで既に制服ではなくラフな部屋着だ。
「悟どうしたの」
「喉乾いたからジュース買いに来た」
「へー、私も買ってから部屋に戻ろうかな」
自販機の前で立ち止まると、悟は財布を取り出す。
「俺イチゴオレ買うけど、お前は?」
「んー、私も同じの」
「あいよ」
ガコン、と音を立てて落ちてきた紙パックのイチゴオレを取り出し口から拾い上げ、2人はそのまま談話室に移動する。ソファに並んで腰掛け、紙パックにストローを刺して飲む。ぷは、と息を吐いてから隣を見ると、同じようにイチゴオレを呑んでいる悟と目が合った。
「学校、どうだった?」
「想像以上に普通。あの超生物も普通に先生やってるし、みんなも普通に受け入れて授業受けてる」
「ふーん」
適当な返事をして悟はまたストローに口をつける。瀬斗も再びイチゴオレに視線を落とした。
「ふあ、ねむ……。なんか要らん体力使ったかも」
「なにそれ」
「慣れない環境と、あの規格外のタコのせいで」
瀬斗はそう言って大きく伸びをしてからころん、と談話室のソファに寝そべる。
「おい、寝るなら自分の部屋行けよ」
「ん~……ちょっと横になるだけ」
「ったく……」
瀬斗は目を瞑ると、すぐにすやすやと穏やかな寝息を立て始めた。それを見下ろした悟は呆れたように溜息をつく。
「無防備すぎんだろ、こいつ」
呪術師としてこの先大丈夫か? と思いながらも、このまま1人で放っとくわけにもいかないので、仕方なく瀬斗を抱き上げて部屋まで運ぶことにした。彼女を抱え上げると、華奢な見た目通りかなり軽いことに驚く。もっと飯を食わせよう、と決意しながら瀬斗の部屋の方へ足を動かし始めた。
瀬斗の部屋に入り、ぬいぐるみやらが置かれているシングルのベッドに彼女を下ろすと、瀬斗は小さく身じろいでからゆっくりと目を開ける。ぼんやりとした表情で瞬きを数回繰り返していた。
「ふふ。ありがとー、さとる」
「……おう。つかそのまま寝てたら制服皺になるんじゃね? 着替えれば?」
「んー……うん、そうする」
瀬斗はもそりと起き上がると、しゅるりとネクタイを緩めてボタンをひとつ外し始める。
「ばっっっか!! 俺がいなくなってから着替えろ!!」
慌てて瀬斗の部屋から飛び出て扉を閉める。警戒心どうなってんだよ!と内心で悪態をつきながら、まだバクバクとうるさい心臓に気づかないふりをして自分の部屋へと戻る。
(あいつ、女としての自覚あんのか?)
悟は頭を抱えるしかなかった。
一方で瀬斗は、覚醒しきっていない寝ぼけた頭を捻りながら着替えを進めていた。