甘木瀬斗の暗殺教室   作:つがう

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9話 Noside

 とある日の休日。最近できたショッピングモールに遊びに行こうと声をかけたのは茅野だった気がする。幾人かに声をかけ休日にみんなでモール内を歩いていれば、少し離れた前方の案内板の前によく知ったクラスメイトが立っていた。

 

「あれ、瀬斗じゃね?」

 

 そう口を開いたのは杉野だ。

 瀬斗にも遊びに行こうと誘ったのだが、当日は予定があるからと断られていた。ので、その用事なのだろうが、どうせ同じ目的地だったのなら俺らと来ても良かったんじゃないかと杉野は続けた。

 

「瀬斗さんって、なんか不思議な雰囲気だよね」

「確かに。あんまり暗殺にも乗り気じゃなさそうだしね。体育は楽しそうにやってるけど、瀬斗さんが個人的に殺せんせーに暗殺しかけてるのとか見たことないし」

 

 カルマがコーンに乗っかったアイスを舐めながら言えば、杉野がそれに同意を返す。案内板から少し離れたところでスマホを見ている瀬斗を観察していると、服屋に入っていた女子たちが帰って来た。

 

「何見てるの?」

 

 茅野が渚達の視線の先を見て、首を傾げた。神崎と奥田も同様に首を傾げている。

 

「あ、瀬斗さんじゃん。何してるんだろ? 待ち合わせかな?」

 

 茅野の言葉に、潮田達は再び顔を合わせる。すると瀬斗がスマホから目線を離して顔を上げる。きょろきょろと辺りを見渡すと、どこか一点に向かって手を振る。

 

「お、待ち合わせ相手かな」

 

 そう言って瀬斗の手を振る方を見ると、そこにはおしゃれな私服に身を包み、黒いサングラスをした白い髪の青年がいた。

 

「「……え」」

 

 ほぼ全員の声が重なる。だって、その青年は明らかにイケメンだ。身長も高くて、足もすらりと長くてモデルみたいだし、なんだかキラキラしている。背景に花すら見える。

 そんな人が、なぜ瀬斗に手を振り返して近づいてくるのか。

 

「えっ、マジであの人が待ち合わせ相手?」

 

 少し遠くで困惑していることなど知る由もない瀬斗と待ち合わせ相手の青年はそのまま並んで歩いていく。

 

「……どうする?」

 

 誰かのその言葉に、みんなしてその後ろ姿を見失わないように付かず離れずで尾行をし始める。ギリギリ2人の声が聞こえる距離まで近づき、耳を澄ませる。

 

「な~腹減ったんだけど」

「傑と硝子と合流するまで我慢」

「じゃあアイス」

「子供か」

 

 そんな会話をしながら2人はアイスを買ってベンチに座って食べていた。

 

「あいつらまだ来ねえの?」

「もう少しだってさ」

 

 どうやら2人だけではなく、まだ友人が来るらしいが、その友人が到着していないらしい。

 

「なーそっちの欲しい」

「いーよ」

 

 瀬斗と合流した白い髪の青年は瀬斗の食べている2段アイスを指さしながらそう言った。瀬斗ははい、とアイスを青年の方に寄せる。

 そのまま青年は自分のアイスを1口齧ると、すぐに瀬斗の方に戻す。そして、また自分のアイスを食べる。……ん? いや、ちょっと待って。

 

「カップルかよ」

 

 尾行してたメンバーの誰かが呟いた。……そうだ、瀬斗と青年のやりとりは完全にカップルのそれだ。いや別にいいのだ。ただ友達同士でシェアしてただけかもしれないし。だが明らかに距離が近い!! あれで付き合っていないのなら度肝を抜かれる。

 全員がそう感じたようで、なんとも言えない表情をしていた。

 

「お、来た。傑ー、硝子ー、こっちー!」

 

 瀬斗が嬉しそうに手を振る。新たに合流したのは男と女。私服姿の瀬斗と白い髪の青年とは違い、新たに合流した2人は黒い制服のようなものに身を包んでいた。

 

「やほ。お疲れ、傑、硝子」

 

 瀬斗がそう声をかけると、合流した黒い服の2人は疲れたような顔でベンチに座った。

 

「傑顔暗いね。また話の通じないバカに当たった?」

「当たらずも遠からず。田舎じゃないだけまだマシって程度かな」

「途中で夏油がキレるんじゃないかってハラハラしたよ」

「超やばいじゃんそれ。今日は奢るよ。悟が」

「ふざけんな」

「よしさっそくご飯屋へゴー!」

「おい、無視すんな」

「え~だめなの?」

「別にいいけどさぁ」

「じゃあいいじゃんか。そんで傑、何食べたい? 蕎麦?」

「うん」

「だと思って既に蕎麦屋をいくつかピックアップしておきました! どこ行く?」

 

 そう言って瀬斗はスマホを特に疲れている黒髪の男に向かって見せた。仲良く4人でそれを覗き込むと、瀬斗はスマホを操作しながら説明を始める。

 その様子を見ていた渚たちは、ポカンとした顔をしていた。まず、瀬斗は普段あんなにテンションが高くはない。どちらかと言うと教室の後ろで落ち着いているタイプだ。それが今は、まるで別人のようにはしゃいでいる。しかも、あの、いつも教室の後ろでクラス全体を見守っているような瀬斗が、だ。

 それに、先ほどの白い髪の青年とのカップルのようなやり取り。名前呼びだったし、瀬斗のことを呼び捨てにしていた。あれは一体どういう関係なのか。

 

「学校で聞く?」

「え~、下手に突いても絶対はぐらかされるよ」

「だよね……」

 

 渚たちはこそっと話すと、その場から離れていった。




「……行った?」
「うん、どっか行ったっぽい」
「あいつらってお前が今行ってる学校の奴らだろ。無駄に尾行スキルあんのがちょーうぜえんだけど」
「まあ仮にも暗殺者の訓練受けてるし、しょうがないんじゃない?」

 瀬斗の言葉を聞いて、白い髪の青年、悟はチッと舌打ちをした。
 先ほどまで渚たちが尾行していたことには気づいていた。だがあえて気づかぬフリをしていたのだ。

「なんでもいいから早く蕎麦屋行こ。お腹空いた」
「それもそだね」

 4人はベンチから立ち上がると、そのまま蕎麦屋に向かった。
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