壁の中の階段をゆっくりと降りて行く奨真。
「なんだよこれ‥‥絶対地下になんかあるだろ‥‥わかりやす‥‥。」
一段一段階段を降り、広めの部屋へと辿り着いた奨真。
「なんだここ?‥‥暗くてなんも見えねぇ‥。電気、電気っと。」
壁を手探りでつたってスイッチらしきものを見つけた奨真。
「これか?」
スイッチを押すと、ライトがつき、奨真は眩しさに目を瞑る。
「うわっ!‥‥ってなんだこれ!?」
光に眼が慣れた奨真が見たのは、石造りの家具もないまっさらな部屋にある机、その上に大量に置いてあるフラスコ。そんな机が部屋いっぱいに置かれている光景だった。
「‥‥ここ、なんかの研究してたのか‥‥?ん?これって‥‥?」
床に広がるガラス片を避けながら部屋の奥へと歩いて行くと、床に見覚えのある物を見つけ、拾い上げる。
「これ、戦兎が使ってるフルボトル‥?なんか色褪せてるけど似てるなぁ。」
「おーい!奨真!ここか?」
兎の顔が彫られた灰色のボトルを拾い、まじまじと見ていると、外から声が聞こえ、輝たちがやってきた。
「いたいた、ってなんだここ!?」
「それ、入る前に言うことだろ‥‥。奨真、なんなんだここ?」
今更ながらに驚く輝にジト目を向けながら、戦兎は奨真の方はと目を向ける。
「‥俺にもさっぱり。でも戦兎、これ、フルボトルみたいじゃないか?」
「‥‥なんだこれ?見た目はそっくりだけど‥‥帰って調べてみないとわかんねぇな。‥‥他にも何本かあるみたいだ‥。」
奥へと進むと、机の上に十数本の同じようなボトルを見つける。
「‥凄いなここは、まるで何かの研究所のようだ。」
「貴虎さん、俺もおんなじこと思ってました。なんか手がかりでもあるといいんですけどね。」
「それはちょっと遅かったみたいだぞー。」
階段を降りてきた貴虎と話していると、奥から戦兎の声が聞こえてくる。
「これ、見てみろ。」
「戦兎さん、なんですかそれ?」
戦兎は奥にあったパソコンの画面を全員に見せる。
「これ、ファイルが並んでるけど全部空っぽだ。多分、消されたのは1週間前とかだろう。なんかしらの原因でここを捨てなきゃいけなかったって事だ。」
「それで残ったのがこれってことか‥‥。」
奨真は手元のボトルを見る。
「とりあえず帰って解析してみよう。敵の拠点もここから近いはずだ。一旦立て直すぞ。」
「おー!」
全員はもと来た階段を登って行くのであった。
帰ってきた途端、奨真と輝が凰蓮に抱きつかれ、髪をわしゃわしゃされるなどがあったが、一行は解散し、奨真達は貴虎邸へと戻ってきていた。
「とりあえず‥‥帰ってきたな〜。」
「そうだな〜〜。」
ほっとしている奨真と輝の2人の背中を、勢いよく戦兎が叩く。
「うっ!」
「いった!!何すんだよ戦兎!」
「うるせぇ、ほんわかしてる暇があったらさっさと座れ。輝の体の検査もしなきゃならないんだ。やる事はいっぱいあるからな。」
そう言いながら即座に椅子に座り、パソコンを立ち上げる戦兎。
「‥‥ふふっ。」
うなだれながらソファに座る2人を見て、貴虎が笑みを漏らす。
「どうしたの?兄さん。」
「いや‥‥ここも賑やかだなと思ってな。」
「ふっ‥‥そうだね。」
「ほら、そこの2人もホワホワしてるんじゃないの!」
3人を見ながらほわついている2人に戦兎がつっこむ。
「あ、そうだ戦兎さん。これ、返したほうがいいですよね?」
そう言いながら輝はビルドドライバーと鳥のロボットを持ち出す。
「あぁ、ドライバーは返してくれ。それがないと戦えないんでな。そっちのロボットはお前が持ってろ。ロボットってのも言いづらいし、名前もまだつけてなかったからなぁ。まぁ自由につけてくれ。」
「名前‥‥名前かぁ‥‥。」
戦兎にドライバーを渡しながら輝は自分の周りを飛んでいるロボットをみる。
「あと、輝。体になんか異変があったらすぐ言えよな。一応病院でも検査してもらえ。」
「はい。そうなんですけど、ドライバーって‥‥。」
「後で作っておくよ。このてぇんさい物理学者に任せなさい。」
「相変わらずすげぇな‥‥‥。」
誇らしげに胸を逸らす戦兎に呆れる奨真。その言葉に戦兎はさらに得意げな顔をするのであった。
[1週間後]
前回の突入以来、街にインベスが現れる事はぱったりとなくなり、人々の避難生活は終了した。その間に、戦兎が輝用ビルドドライバーを作り(材料などは不明だが)奨真達の高校生活も再開を迎えたのだった‥‥が
「えっと‥‥これはどう言う状況‥‥?」
昼休み、いつも通り昼食を取ろうとした奨真は真と怜に捕まり、そのまま屋上へ連れていかれ、詰められていた。
「なんでって‥お前あの後何も説明しないで帰っちゃうし、連絡取れないしでこっちは状況整理ができてないんだよ!」
「その通りだ。いい加減説明してもらおうか。」
「わ、わかったんでとりあえず飯食わせてください‥‥。」
有無を言わせぬ状況の2人をなだめ、座らせると、奨真は弁当を取り出し、今までの経緯を説明し出す。
「‥‥と言う訳で、俺はあの力を手にしたって訳。納得したか?」
「‥‥なるほど‥って言うにはちょっと訳わかんないな。」
「奨真、そのドライバーをお前に与えた人物とは一体誰なんだ?」
「えっ‥‥、そういやあの人誰なんだろう‥‥。」
今まで考えた事のなかった質問に奨真は考え込んでしまう。
「その人物はその時しか現れていないのだろう?怪しいと思わなかったのか?」
「あー、あんときは色々切迫してからなぁ。」
「なら尚更調べた方がいい。戦国ドライバーを持っているならもしかすると‥‥。」
「ユグドラシルの関係者かもってことか?」
真の言葉に怜が頷いた瞬間、チャイムが鳴り響く。
「やべっ!予鈴だ!おい、早く教室もどるぞ!」
3人は話を切り上げ、急いで屋上から去っていくのであった。
教室に時間ギリギリに戻ってきた奨真達は、急いで自分の席へと戻り、何とか眠気に耐えながら五時限目を終える。
「ふぁ〜〜、やっと終わったかぁ。」
「おう、お疲れ奨真。」
机に体を横たえる奨真の元に、大きくあくびをしながら輝がやってくる。
「おう、お前もなんか疲れた顔してるなぁ。」
「‥‥実は、さっき小春に呼び出されてさ‥‥絞られたんだよ、今までのことについてさ。」
「‥‥マジ?‥‥」
「マジ。」
奨真の顔に近づけて小さな声でそう伝えると、奨真の顔が少し青ざめる。
「俺もさっき真達におんなじこと聞かれたわ。」
「そっか‥‥だよなぁ、暫く音信不通だったんだもんな俺。」
眼鏡を直しながら頭を掻く輝を見上げ、奨真は深くため息をつく。そのとき、チャイムが鳴り響く。
「おっ、奨真。またな。」
「おう。」
輝はいそいそと自分の席へと戻っていき、
奨真も目の前の黒板を見据える。
夕日が差し込む教室、教師が黒板に複雑な化学式を書き込んでいくなか、奨真の頭の中は別のことを考えていた。
「(1週間‥‥この1週間まるで何もなかった、
一体何なんだってんだ‥‥?)」
そんなことを考えていると、教師と目が合ってしまう。
「桐生!ちゃんと聴いているのか!」
「(ヤッベ‥‥)聴いてまーす。」
「じゃあ前に来て解いてみろー」
「‥‥はーい」
不満げに、しかし少し笑顔で前に出ていく奨真なのであった。
次回から新章!
乞うご期待!