遊戯王5D's とある異分子の物語   作:狂戦士

2 / 6
アカデミアとかの説明を書いたわけでもないのに、長くなってしまいました。

どっちもどっちな2人です。…オリ主の方が悪い気がするけど。


第2話 放課後の過ごし方

 体育館の観客席に座り、実技試験の様子を見ていた仭は試験終了の放送を聞いて立ち上がった。

 

(試験も終わったけど、どうするかな)

 

 別段家に帰って都合が悪いということはない。悩んでいるのは別の事だ。それについてどうするかと思いながらひとまず本校舎の方へと戻る。

 

『呪ってやる』

 

「…さて……」

 

『呪ってやる』

 

「…………」

 

『呪ってやいだだだだ!?』

 

「うるさいんだよお前は」

 

 周囲を確認。誰もいないことを確認し、懐からリチュア・エリアルのカードを取り出し、そして曲げる。

 

『うう…』

 

「体育館離れた後から思い出したように呪い始めやがって。周囲に人がいた状況でやってたら、帰った後にライターで炙ってたぞ」

 

『怖いこと言ってるよこの人。さすがリアリスト。大抵の状況でデュエルを受けずに力ずくで抑え込むだけはある』

 

「その行動が正しいことが多いと思うが」

 

『そうだけどさぁ』

 

 エリアルが言ったこととは別に思い返すは数ヶ月前。難癖を付けられてカードを寄越せとカツアゲされかけていた知り合いを偶々見つけ、助けた際に相手から『デュエルだ!』と挑まれたが『断る』と返してそのまま正論やらを。そしてその後(相手からによる)リアルファイトに突入したが、カウンター攻撃1発で終了した。――決して機嫌が悪かったから、さり気なく煽ってわざとリアルファイトに持ち込ませたというわけではない。

 

『というか、私だってさすがに周囲を確認して呪い始めたから』

 

「そこは話しかけたと言っておこうか。てか、本当か?」

 

『本当よ本当。教室とか確認したけど、誰もいなかったもん』

 

「林檎食べたくて適当なこと言ってんじゃないだろうな?」

 

『………は?』

 

「いや、何でもない」

 

『えっと、私は実体化できないから林檎は食べられないんだけど』

 

「何でもないと言ってるだろう」

 

 真面目に返答しだしたエリアルに呆れながらも、メールの着信音が鳴ったので携帯端末を取り出す。

 

【今日、クラブやる? PS 試験じゃ相変わらず鬼畜だったね】

 

「…………」

 

 クラブ活動があるかどうかについてと、実技試験での感想だった。それに僅かに微笑を浮かべながら返信用の文面を作る。

 

【いいや、なしだ。それとそれはお前が言うなって突っ込み待ちか? 俺の記憶が正しければ相手フィールド上のみを一掃して、その後モンスター3体でダイレクトアタックで、かなりのオーバーキルだった気がするんだが】

 

 皮肉を混ぜた文面でメールを返すと、少ししてすぐに返信が来た。

 

【仭に比べたら私なんて可愛いものだよ】

 

「嘘付け」

 

 決まればそれなりにあのデッキは鬼畜だ。それは認める。だが、その決まった際での鬼畜さで上なのは絶対に相手の方だ。これだけは譲れない。

 

『…くだらないことをメール越しで押し付け合ってるところで悪いけどさ、資料室に結局行くの?』

 

「…おっと」

 

 そうだった。このまま相手の方がどれだけ鬼畜なのかわからせるために、電話で話し合おうとするのはいつでもできる。だが――

 

(やっぱり試験の復習がてら明日の予習のためにも資料室に行っておくか)

 

 勉強の方が今は大切であろう。明日のデュエル戦略の授業のために、開いている残りの時間も微妙な資料室に行くか行かないか悩んでいたが、やはり行くことに決めた。

 

 そのまま携帯端末をしまい、向かうと資料室へと到着。中へ入るとテスト後だからか、いつもより人の数は多くなかった。

 

「仭さん」

 

「ん?」

 

 目当ての資料を探していると声が聞こえ、そちらに振り向くと知った顔。

 

「宮田か」

 

「どうもです」

 

 同じクラスの女子生徒である宮田ゆまだった。交友関係は知り合いというレベル。おっとりとした性格で人を疑うことを知らない、将来それで大丈夫かと思われる程の女子生徒だ。

 

「試験の復習か? それとも明日の予習か?」

 

「両方です。特に明日は先生に当てられるので」

 

「ああ、なるほど」

 

 確かにデュエル戦略の教師は、日付から生徒の出席番号に当ててくるからなと仭は思う。

 

「それであの、分からないところがあるので、教えてもらえないでしょうか」

 

「ん…分かった」

 

「本当ですか? ありがとうございます!」

 

「勉強してるのがいるからもうちょっと静かにな。それにただのついでだ。試験の復習についてはともかく、予習は一緒にやれるし。まあ、予習に関しては見直しみたいなものだが」

 

 仭は予習・復習は欠かしていないため、基本的には授業の前日に行う予習は理解できているかどうかの見直し程度であったりする。

 

 そして試験の復習と明日の授業の予習を始めてから時間が経ち、資料室の閉館時間が迫ってきたことから中断することになったので、後はどの辺をやっておけばいいかゆまに軽く指摘していた仭はもうそろそろ帰るかと考え始めていると、ゆまが何やら思い出したよう顔を見せる。

 

「あっ、それともう1つお願いがあるんですけど」

 

「…そういうのは最初の方に言っておいてほしかったな」

 

「あうぅ、すいません。予習の事でいっぱいで」

 

 別段用事があるわけではない。帰ろうとしていたからこそだった。

 

「まあいいや。聞くだけ聞こう」

 

「はい、私とデュエルしてほしいんです」

 

「理由を聞こうか」

 

 基本的にデュエルは、理由がなくとも行われることは多い。仭は理由があるからデュエルをするというタイプではあるが、アカデミアでは勿論理由がなくともデュエルは行っている。が、さすがにそれなりに遅い時間帯になってるというのに、理由もなしにデュエルをしようとする人物ではない。

 エリアルの言ったように、デュエリストであると同時に現実主義者(リアリスト)でもあるのだ。

 

「実は最近デュエルの調子が悪いんです」

 

「調子ねぇ」

 

「デッキに問題があるんでしょうか」

 

「…いや、でしょうかと言われてもな」

 

 どうしようもない。デッキを見せてくれと言えるほど仲が良いわけでもないし、基本的にデュエリストは他人にデッキを見せはしない。

 

「不調ってのは最近か?」

 

「そうですね…」

 

 ならばスランプというのであろうか。確かにゆまはたまにデュエルの授業で成績を悪くしてしまう時もあるが、それもたまにだ。今回もそれと同じようなもので少しばかり長引いていしまっているだけだろうと思う。

 

「それで何かアドバイスがいただけたらなと思いまして、デュエルしてほしいんです」

 

「なるほど」

 

 デュエル研究部の活動実績にもなるだろうし、引き受けるのもいいかと仭は考える。

 

 ちなみにデュエル研究部とは、基本的にはデュエル戦術やらカードの使い道、オカルト関係(言わずもがなデュエルモンスターズ)をテーマにして研究するクラブであり、またデュエル関係で相談を受け、解決したり支援したりすることもある。

 前者に関しては部員に色々と都合やら問題などがあって不定期ではあるのだが、後者に関しては動く時はしっかり動く。仮にも部活なのでそれなりに行動実績を上げておかなければ、後々面倒になるからだ。

 

「よし、分かった」

 

「ありがとうございます」

 

 そして外でデュエルをすることになり、それじゃあ先に言ってますと、ゆまはさっさと行ってしまう。それを追いかけるために仭も資料室を出る。

 

「…で、何でお前は俺を睨み付けてるんだ」

 

『べっつにぃ』

 

「ああ、そう」

 

『…………』

 

 視線がさらにきつくなった気がする。何故だ。それ以上問い詰めなかったからか。それ以前にどうして睨んでいたんだ。先程小走りで外へと向かった彼女との距離が近すぎたからか。

 

『ねぇ、仭』

 

「ん?」

 

『デュエル、私にやらせて』

 

 そういえば26回だか、エリアルの入ったデッキすら使っていなかったと、そう愚痴っていた記憶が。

 普通の人であったらならば、怯むであろう目に感情が宿っていないエリアルを見ながら、そんなことを仭は考えていた。

 

「嫌だといったら?」

 

『呪う』

 

「無視すると言ったら?」

 

『じゃあ憑依して、その間に仭のイメージが”最低”になるくらい行動してやるわ』

 

「以前そうやろうとしたが、俺の意識を乗っ取ることはできなかった気がするが?」

 

『……ちっ』

 

 悔しそうに舌打ちをするエリアル。

 実は彼女は幽体離脱?をして、仭の身体を乗り移ることができる。――それも仭が意識を渡すことに抵抗がない時の場合という限定ではあるが。反応からどうやら無理矢理意識を乗っ取るという事は、現段階ではできないようである。

 

「ところで、人に頼むときは何て言うんだっけ?」

 

『ぐっ……そ、それを私に言わせるの?』

 

「元はお前から言わせたんだろうが」

 

『うぐぐ……お願いします』

 

「いいだろう」

 

 数日前、カードショップで駄々をこねる子供のようにカードを『買って買って』とごねてくれた仕返しだ。と、内心ほくそ笑む仭。

 どの辺が仕返しか。うるさくてうざかったことである。

 

『…実体化して、物理的にこの外道を叩きのめしたい』

 

「さて、もう急ぐか」

 

 自分の事を棚に上げる精霊と立ち止まって話をしていたから、いい加減にゆまを追いかけなければならない。早足で外へと向かった。

 

 

 

 中庭。

 そこで仭とゆまは向かい合っている。――そこに仭以外には見えないもう1人が加わるが。

 それなりにまだ生徒は残ってるなぁと、生徒達(ギャラリー)を見ながらデッキをデュエルディスクに入れる。

 

「よし、やるか」

 

「はい!」

 

『負けないわよ!』

 

(何1つ聞こえてないがな)

 

「「『デュエル!』」」

 

エリアル:LP4000

ゆま:LP4000

 

 先行は仭(エリアル)。

 

「俺の先行、ドロー」

 

 ドローして手札を見ているエリアルの指示を待つ。基本的に彼女が指示を出し、仭が行動するがエリアルが召喚されて、フィールドに出てしまっている時は仭が代わりにプレイングを行う。

 

『う~ん、まず私のお母様を召喚して』

 

「俺はリチュア・ノエリアを召喚」

 

リチュア・ノエリア

ATK:1700

 

 魔女といった風の外見の女性が現れる。

 ちなみにだが、精霊はエリアルしかいない。

 

「ノエリアの効果。召喚時、デッキの上からカードを5枚めくる」

 

めくられたカード

スノーマンイーター

リチュアの儀水鏡

ヴィジョン・リチュア

大嵐

イビリチュア・リヴァイアニマ

 

『それなりに上々ってところかしらね』

 

「そしてめくった中の儀式魔法または『リチュア』と名の付いたモンスターは、全て墓地に送る。残ったカードはデッキの一番下に戻す」

 

 で、次はどうする。そう目で聞くとエリアルはこのカードを伏せろと指示を出してくる。

 

「カードを2枚伏せ、墓地の儀式魔法 リチュアの儀水鏡の効果発動。このカードをデッキに戻し、墓地の『リチュア』と名の付いた儀式モンスター イビリチュア・リヴァイアニマを手札に。これでターンエンド」

 

「私のターン、ドロー」

 

 ターンが移り、ゆまのターンになる。

 

「手札から融合を発動です。手札のE・HERO ザ・ヒートとE・HERO ボルテックを融合して、E・HERO ノヴァマスターを融合召喚!」

 

E・HERO ノヴァマスター

ATK:2600

 

 炎を纏ったHEROが現れる。効果は戦闘破壊を行うたびに1枚ドローで、それなりに優秀な効果だ。

 

『発動しちゃって』

 

「その融合召喚時にトラップ発動、水霊術―「葵」。ノエリアをリリースし、お前の手札を確認して1枚捨ててもらう。さあ見せろ」

 

「あうぅ」

 

 ゆまは融合の発動によって少なくなった手札3枚を見せる。

 

ゆまの手札

E・HERO エアーマン

幻影の魔術士

ヒーロー・シグナル

 

『エアーマンね』

 

「エアーマンを捨てろ」

 

「はい…。でもこれで仭さんのフィールドはがら空きです。バトルです! ノヴァマスターでダイレクトアタック!」

 

「トラップ発動、儀水鏡の幻影術。手札から『リチュア』と名のついた儀式モンスター1体をこのターンのみ特殊召喚する。イビリチュア・リヴァイアニマを特殊召喚」

 

イビリチュア・リヴァイアニマ

ATK:2700

 

 剣を持つ竜のようなモンスターが現れる。ノヴァマスターとは攻撃力が僅かに勝る。

 

「攻撃を中断します。幻影の魔術士を守備表示で召喚。さらにカードを1枚伏せてターンエンドです」

 

幻影の魔術士

DEF:700

 

「エンドフェイズ時、リヴァイアニマは手札に戻る」

 

エリアル LP4000

手札4(イビリチュア・リヴァイアニマ)

・モンスター

なし

・魔法・罠

なし

 

ゆま LP4000

手札0

・モンスター

E・HERO ノヴァマスター

幻影の魔術士

・魔法・罠

伏せ1

 

「俺のターン、ドロー。手札のシャドウ・リチュアの効果発動。このカードを手札から捨てて『リチュア』と名の付いた儀式魔法であるリチュアの儀水鏡を手札に加える。さらにサルベージを発動。墓地のヴィジョン・リチュアとシャドウ・リチュアを手札に。そしてリチュアの儀水鏡を発動。手札のヴィジョン・リチュアをリリースし、イビリチュア・リヴァイアニマ再降臨」

 

イビリチュア・リヴァイアニマ

ATK:2700

 

『そのままノヴァマスターを攻撃しちゃって!』

 

「バトル。リヴァイアニマでノヴァマスターに攻撃。この瞬間、リヴァイアニマの効果発動。デッキからカードを1枚ドローし、それをお互いに確認。確認したカードが『リチュア』と名の付いたモンスターなら相手は手札1枚をランダムに確認する…が、そっちの手札は0だから見せるだけで終わるわな」

 

『いいからとっととドローしなさいよ』

 

「ドロー。引いたカードは、深海のディーヴァ。バトルに戻る」

 

ゆま:LP4000→3900

 

「トラップ発動です。ヒーロー・シグナル。手札・デッキからレベル4以下のE・HERO1体を特殊召喚します。デッキからE・HERO ブレイズマンを特殊召喚です。そしてブレイズマンの効果でデッキから融合を手札に加えます」

 

E・HERO ブレイズマン

DEF:1800

 

 今度は一回り小さな炎のHEROが現れる。それを見て仭は厄介だなと思う。

 

「(ブレイズマンやっぱり持ってたか。融合も手札に加えられたし、次のターン、融合モンスターが呼ばれてしまうな)モンスターをセット。カードを1枚伏せて、ターンエンド」

 

「私のターン、ドロー。メインフェイズ、ブレイズマンの効果で、デッキからE・HEROを1体墓地に送ります。デッキからE・HERO シャドー・ミストを墓地に。ブレイズマンはこのターンだけ、墓地へ送ったモンスターと同じ属性とステータスになります」

 

E・HERO ブレイズマン

DEF:1800→1500

 

「そして墓地に送られたシャドー・ミストの効果で、デッキからE・HERO1体を手札に加えます。E・HERO オーシャンを手札に」

 

(予想通りの流れだな)

 

「さらに手札から融合を発動です。手札のオーシャンとブレイズマンを融合して、E・HERO アブソルートZeroを融合召喚です!」

 

E・HERO アブソルートZero

ATK:2500

 

 現れるは極寒のHERO。最強のHEROとも呼ばれているモンスターだ。

 

(来てしまったか。効果だけでも厄介だが、今回水属性デッキだから余計に厄介だ)

 

「Zeroは、このカード以外のフィールド上の水属性モンスター1体につき、攻撃力が500ポイントアップします。リヴァイ()()は水属性なので攻撃力が500ポイントアップします」

 

「…リヴァイ()()な。アニマ」

 

「はうっ! す、すいません」

 

『たまにいるのよねぇ。言い間違えるの』

 

E・HERO アブソルートZero

ATK:2500→3000

 

 Zeroの上半身に氷の刃が生え、さらに腕も氷の刃へと変わる。

 

「バトルです。Zeroでリヴァイアニマを攻撃です! 瞬間氷結(Freezing at moment)!」

 

エリアル:LP4000→3700

 

E・HERO アブソルートZero

ATK:3000→2500

 

「ターンエンドです」

 

エリアル LP3700

手札3(深海のディーヴァ、シャドウ・リチュア)

・モンスター

セット

・魔法・罠

伏せ1

 

ゆま LP3900

手札1

・モンスター

E・HERO アブソルートZero

幻影の魔術士

・魔法・罠

なし

 

「俺のターン、ドロー」

 

『それじゃ、お願いね』

 

 エリアルから声がかかり、それに了解と心の中で返事をする。

 

「リチュア・エリアルを反転召喚」

 

『久しぶりの出番!』

 

リチュア・エリアル

ATK:1000

 

 セットされた状態からやっと解放されたとばかりに、エリアルは嬉しそうだった。それは使われたという思いもあるからだろう。

 その姿に僅かに苦笑しながら、仭はプレイングを進める。

 

「リバース効果でデッキから『リチュア』と名の付いたモンスター1体を手札に加える。2体目のシャドウ・リチュアを手札に」

 

『そのまま行っちゃって!』

 

「墓地のリチュアの儀水鏡をデッキに戻して、儀式モンスターであるイビリチュア・リヴァイアニマを手札に。さらに手札のシャドウ・リチュアの効果発動。このカードを捨てて、デッキからリチュアの儀水鏡を手札に」

 

 毎ターン取れる選択肢が多いソリティアデッキを、さらにどんどんぶん回していく。

 

「トレードイン発動。リヴァイアニマを捨てて、デッキからカードを2枚ドロー。深海のディーヴァを召喚」

 

深海のディーヴァ

ATK:200

 

「深海のディーヴァは召喚に成功した時、デッキからレベル3以下の海竜族モンスター1体を特殊召喚できる。2体目のヴィジョン・リチュアを特殊召喚」

 

ヴィジョン・リチュア

DEF:500

 

「リチュアの儀水鏡を発動。場のヴィジョン・リチュアをリリースし、イビリチュア・ガストクラーケを儀式召喚」

 

イビリチュア・ガストクラーケ

ATK:2400

 

 そして今度は下半身にイカのような足をはやした魚人の様なモンスターが召喚される。――その際に若干ゆまやデュエルを見ている生徒達の一部が顔を歪めたのは、仕方がないと言える。

 

「ガストクラーケの効果発動。儀式召喚に成功した時、相手の手札をランダムに2枚確認して1枚をデッキに戻す…と言っても手札は1枚だけだな。さあ、それを見せてデッキに戻せ」

 

「あうっ、また手札を…」

 

ゆまの手札

ヒーローアライブ

 

「よし、戻せ」

 

「あうぅ…」

 

「えー…レベル6のガストクラーケに、レベル2の深海のディーヴァをチューニング」

 

 ディーヴァは2つの光の輪になり、その中へガストクラーケが飛び込む。

 

「寄せ集めのがらくたの竜。今、破壊の竜として場に降臨せよ。シンクロ召喚、スクラップ・ドラゴン」

 

スクラップ・ドラゴン

ATK:2800

 

 そして光の中から現れたのはその名の通り、がらくたからできた竜。 

 

「スクラップ・ドラゴンの効果発動。1ターンに1度、お互いのフィールド上のカード1枚を破壊する。俺が破壊するのは、エリアルと幻影の魔術士」

 

『うう、やっぱり…』

 

 仭の個人的な私情による行動ではないだけに、怒るには怒れず、だがそれでもやはり破壊はされたくない複雑な心情のエリアル。

 

「済まないエリアル。お前の犠牲はこのデュエル中絶対に忘れない…多分」

 

『調子の良いこと言いやがってー!!』

 

 スクラップ・ドラゴンは上空へ光線を放つ。それは2つに分かれるとリチュア・エリアルと幻影の魔術士へと落ち、破壊する。

 

「さて、スクラップ・ドラゴンでZeroを攻撃」

 

ゆま:LP3900→3600

 

 光線を放ち、Zeroを消滅させる。だが、

 

「けど、Zeroの効果で相手フィールド上のモンスターはすべて破壊されます」

 

 スクラップ・ドラゴンは瞬時に氷結。そのまま砕けてしまった。

 

「やっとZeroがいなくなってくれたか。装備魔法 契約の履行を発動。800のライフを払って、墓地から儀式モンスターを特殊召喚する。俺はイビリチュア・リヴァイアニマを蘇生」

 

エリアル:LP3700→2900

 

イビリチュア・リヴァイアニマ

ATK:2700

 

「ターンエンド」

 

 ゆまのフィールドにカードは0。手札も0。

 が、一部のデュエリストには追い詰められることで、キーカードを引く、形勢を逆転するドローであるディスティニードローを起こすことがある。

 

「信じるものは、救われるんです! ドロー!」

 

 ドローしたカードを見て、表情を輝かせるゆま。

 

(あっ、嫌な予感)

 

「ミラクル・フュージョンを発動です! 墓地のオーシャンとボルテックを融合して、2体目のアブソルートZeroを融合召喚!」

 

『うわぁ…』

 

「また出やがった…」

 

E・HERO アブソルートZero

ATK:2500→3000

 

 そして再びこの場面。

 というか、2体目持ってるのかよと突っ込みたい。確かあれは単品で買うならかなり高額なカードの筈だが。

 

「バトルです。Zeroでリヴァイアニマを攻撃です! 瞬間氷結(Freezing at moment)!」

 

(壁として出しておいてなんだが、申し訳なくなってくるな)

 

エリアル:LP2900→2600

 

E・HERO アブソルートZero

ATK:3000→2500

 

 2回も同じモンスターに破壊される羽目になったリヴァイアニマに、仭は心の中で割と真面目に謝罪の念を込めていた。

 

「ターンエンドです」

 

エリアル LP2600

手札2(シャドウ・リチュア)

・モンスター

なし

・魔法・罠

伏せ1

 

ゆま LP3600

手札0

・モンスター

E・HERO アブソルートZero

・魔法・罠

なし

 

「俺のターン、ドロー」

 

 ――運が良い。エリアルによる恩恵だろうか。

 

『うまくいけば、このターンで終わらせられるわね』

 

「手札のシャドウ・リチュアの効果を発動して、デッキから2枚目のリチュアの儀水鏡を手札に。さらにリチュア・チェイン召喚」

 

リチュア・チェイン

ATK:1800

 

「チェインが召喚に成功した時、デッキの上からカードを3枚確認する」

 

確認したカード

リチュア・アビス

儀水鏡の反魂術

イビリチュア・ジールギガス

 

「その中に儀式モンスターまたは儀式魔法カードがあった場合、1枚を相手に見せて手札に加える事ができる。儀式モンスター イビリチュア・ジールギガスを手札に加え、残りはデッキの上に戻す」

 

『うん、上出来上出来♪』

 

 続いて先程引いたZeroを封じるカードを発動する。

 

「速攻魔法 月の書を発動。Zeroを裏側守備表示に」

 

「はうっ!?」

 

 あらゆる状況でフィールドから離れた場合に効果が発動するアブソルートZeroだが、それでも弱点がある。例えば、裏側表示になっている場合に、フィールドを離れても効果は発動しないなど。

 

「そしてトラップ発動、儀水鏡の瞑想術。手札の儀式魔法を相手に見せ、自分の墓地の『リチュア』と名のついたモンスター2体を手札に加える。リチュアの儀水鏡を見せ、墓地のガストクラーケとエリアルを手札に」

 

『えっ?』

 

「リチュアの儀水鏡を発動。手札のガストクラーケとエリアルをリリースして、イビリチュア・ジールギガスを儀式召喚」

 

『わざわざリリース要因にするがために、私を手札に!?』

 

イビリチュア・ジールギガス

ATK:3200

 

 2体のモンスターを生贄に現れたのは、リチュア最大の攻撃力を持つ4つの腕を持つ巨人。

 

『この外道! スクラップ・ドラゴンの時はまだ分かるだけど、今回は絶対にわざとでしょ!!』

 

 エリアルが何かぎゃーぎゃー騒いでいる。まったく、何が酷いと言うんだ。過労死する勢いで働かされているシャドウ・リチュアとヴィジョン・リチュアの苦労を少しは考えたらどうだ。

 

「ジールギガスの効果発動。1000ライフを払い、デッキからカードを1枚ドローしてお互いに確認する。そして『リチュア』と名のついたモンスターだった場合、フィールド上のカード1枚を選んで持ち主のデッキに戻す」

 

「うぅ…でも」

 

「そう。さっきチェインの効果でデッキトップは操作されている。お前は俺が確認したカードが『リチュア』と名の付いたモンスターでないことを願うばかりだが…ドローしたカードはリチュア・アビス」

 

「やっぱり~」

 

「そういうわけで裏側守備になっているZeroにはご退場願おう」

 

 これでゆまのフィールドには何も残らない。またこういう場面かと思いながら、仭は攻撃を宣言する。

 

「これで終わりだ。チェインとジールギガスでダイレクトアタック」

 

ゆま:LP3600→0

 

「ふぇ~、負けちゃいました」

 

 デュエルが終わり、ソリッドビジョンが消えていく。

 

「…お前の相談の件だが」

 

「あっ、はい」

 

「デッキも悪いとは思えないし、プレイングも悪くはないとは思う。多分気持ち的なものだと思うぞ」

 

「気持ち…ですか?」

 

「まあ、めげずに頑張れってことだ。しばらく経って、やはりデッキが駄目なのかもしれないと思ったらまた相談しろ。勿論俺じゃなくてもいい」

 

 とどのつまり感情論であるのだが、正直に言ってデュエルの不調が一時的なスランプであるとしか思いようがないので、今日のところはこれでお帰りいただくことにする。――決して匙を投げたわけではない。

 

「…そうかもしれませんね。もっと頑張ってます!」

 

「ああ、頑張れ。(相変わらずポジティブだなぁ)」

 

 それが長所でもあり短所でもあるのだろう。

 

「今日はありがとうございました。それじゃあ、またなのですっ」

 

「おお。それとくれぐれもあの男嫌いには今日の事は話さないようにな」

 

 釘を指すのも忘れずにし、そこで別れた。

 

 

 

 そして帰路。

 

『それにしても随分と適当なアドバイスだったこと』

 

「適当は人聞きの悪い。リアルファイトとかでも自分の実力を疑ってたら、勝てるものも勝てないんだからそれと同じだ。別段デッキが悪いわけでもないように見えるし、本当に一時的なスランプだと思うけどな。…あるいは相性が悪かったか」

 

『デュエルした相手が、どういうデッキだったとか聞いとくべきだったんじゃない?』

 

「もう後の祭りだ」

 

 機嫌が悪いエリアルから色々言われるものの、適当に受け流しながら帰路を歩く。まったく、心を込めて謝ったろうに。

 

(しかし、やっぱり持ってる奴は持ってるんだよなぁ。デュエルの才能ってのを)

 

 そう思うはゆまのことだけではなく、今隣で騒いでいる幽霊のような彼女。

 

(こういうのを選ばれた者っていうんだろう)

 

 別段自分はデュエルの不利な状況で、逆転のカードが引けないというわけではない。それなりというレベルであるだけだ。それでもディスティニードローを引ける天性の才能を持っているわけではない。

 だが、エリアルがデュエルする場合は違う。彼女が自分を通してデュエルを行う場合は、何故かドロー運が上がるのだ。実行しているのは仭だというのに、変な話である。

 

『…ん? 何よ』

 

「いや? 怒った顔も可愛いなと思っただけだ」

 

『っう!? な、何を…』

 

「…本当に怒ってると時は隙ができるな。ただの冗談なのに」

 

『なっ!?』

 

 また騒ぎ始める。仭はそれをすべて聞き流しながら、今度は如何にしてエリアルから一本取るかを考えていた。

 

 

 

 




ゆまを出したのには、特に意味はないです。デュエル相手という意味ぐらいで。

次話はようやく他の人物出します。…やっぱりオリジナルでのアカデミア生活は難しいなぁ。



エリアル『今回は私! 今日の最強カードは、リチュアで最大の攻撃力を誇るイビリチュア・ジールギガスよ』

仭「…意外だ。てっきり自分を最強カードにするかと思ってた」

エリアル『一体私をどういう風に思ってるのよ! っと、説明説明。レベル10と儀式モンスターの中でも非常に高いレベルだけど、ヴィジョン・リチュアやシャドウ・リチュアのリリース軽減効果を用いれば容易に儀式召喚できるわ。…誰かさんはそうしなかったけど』

仭「ドロー効果はライフコストが(この世界においてはかなり)痛いが、バウンス効果を発動することもできる。しかも『対象を取らないデッキバウンス』と、これに耐性を持つモンスターは少ない」

エリアル『難点としてはやっぱりライフコストと守備力0だということかしら。それでも基本的に気にするのはライフコストくらいだけど。…ところでさ』

仭「またか」

エリアル『どうして【リチュア】をいつもいつも使ってくれないの?』

仭「あれ、(お前に対してのもっともな理由)言ってなかった? 確かに強いんだが、世間体を気にする俺はあんまりソリティア系を使いたくないんだ」

エリアル『嘘付けぇっ!!』

仭「本当はちょっと回すのが大変だから。それじゃまた次回に』

エリアル『あっ、私の役を取らないでよ! てか、それだけで納得すると思うなぁっ!!』

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。