今回、表現がちょっと杜撰なとこが多々あるかもしれません。
資料室より3つ程隣にあるデュエル研究部の部室。
そこに仭を含めた3人(+精霊1人)が勉強をするなり、読書するなりしていた。それもこれもデュエル研究部の活動の1つである研究はやることがたまたま決まっておらず、また相談してくる者もいないため、暇であったからだ。
「デュエルモンスターズの精霊っていると思うか?」
読書をしていた仭と同じ黒髪の少年が、誰に対してと言うわけでもないが突如声を上げる。
「急にどうしたの遼介? 子供みたいなことを言いだして」
「…その通りとしか言いようがないだろうが、さすがに酷くないか簪?」
課題をやっていた少女、
簪のその容姿はセミロングで水色の髪の眼鏡の少女。内側に髪がはねており、またぱっと見た感じでは気弱そうに見える。
遼介は仭のようにある程度の長髪ではなくショートカットで、また簪と同じく眼鏡をかけている。そしてその見た目は堅物そうな感じだ。
「けど、精霊…仭はどう思う?」
「
「…まったくだ」
彼女は同じく課題を行っていた仭へと振る。どうも話の内容にあまり興味がないらしい。
「精霊なぁ。…幽霊とかがいてもおかしくはない世の中だ。いても不思議ではないとは思うな」
「ふ~ん」
「お前らしい答えだな」
(本当はいるって言いきれるんだがな)
そう。少なからず、寝てる最中に呪いを仕掛けてくるような奴が。
「幽霊的な存在か。…そう考えるなら、精霊を見えるのがいるかもしれないな。あくまで精霊がいるんだとしたらの話だが」
「そんな奴がいるのなら、さぞ神経をすり減らされている事だろうよ。幽霊を見える奴にも言えそうだが」
「何故だ?」
「例えば、精霊がそこら中にいたんだと想像してみろ。見える者にとっては視線地獄になるかもしれないだろう」
「「…あ~」」
「それに、悪い影響を与えないとも限らないしな」
『…どうして私の方を見ながら言うのかな?』
自分はエリアルしか視えない――いや、縁がないのだが、これ以上増えるのは御免こうむりたい。
全員がエリアルのような性格でしゃべるというわけではないのは分かるが、落ち着かないのは少なくとも間違いないからだ。
「仭は相変わらず現実的だよね」
(現実に精霊がいるのだから仕方がないだろう。それも風呂を覗いてきたりするような奴が)
「ああ、実は精霊が見えてるんじゃないかと思うほどだ」
(正解だったりするぞ。もっとも、そうだと言ったところで、冗談と取られるのが落ちだが)
心の中でそう突っ込みを返しながら、エリアルの方を何気なくまた見る。ジト目で此方を見ていた。どうやら先程の事が余程気になっているらしい。
「もし精霊が見えるだけでなく話すこともできたら、デュエルの際にその精霊に頼んで相手の手札を
「いや、相手の弱みを握ろうとする気も」
『…確かにそういうこと命令しそうな危うさがあるかも』
「本人を前に好き勝手言ってくれる」
一応仭はそんなことはしていない。テスト中に隔離するようなことをされているも、エリアルもそんなことはしていない。ただ何かしでかしそうだから、仭がそうしているだけである。
「まあ、弱みを握ると言うことに関しては、絶対にやらかさないと否定はしないが」
「いや、そこは否定しておけよ」
「しかも”否定できない”じゃなくて”否定しない”って言ってるし」
何せ壁をすり抜けることもできるし、基本的に他人には見えないのだ。(エリアル曰く精霊を見える者は、数は少ないものの、他にいるにはいるらしいが)盗み見や盗聴に使う際には持ってこいと言える。
「精霊に人格があって、尚且つその性格が悪く、言葉も通じるんだったら、他人の不幸の様を見るために、協力してくれるかもしれないからな」
「「考え方が現実的すぎる」」
幼い子供が考えそうなことぶち壊しである。
「…ただ精霊がいるかどうか聞いただけの筈が、どうしてこんな話に」
「それ以前に何で急に精霊なんて話を持ち出してきた?」
「いや、な。資料室で気になる資料を見つけてな」
「またか」
今までも千年アイテムや闇のゲームなどオカルト関係で、研究できそうなのを提供して来てくれている。このように好奇心旺盛であるのは悪いことではないのだが、
「クラブ上、悪いってわけじゃないが…長引く系統を短期間に次々と持って来るのは、本当に程々にしてくれよ副生徒会長殿。実質お前はほとんど動けないんだから」
「うっ、済まん」
「本当だよまったく」
「そいつに比べたらかなりマシだが、お前もだろうが簪」
遼介は生徒会に所属している。それだけならともかく、空手部の方も兼部しているため、結局ほとんど来ることはないのだ。仭が他を優先しろと言ったためでもあるが。
ちなみに簪は生徒会のみだが、家での習い事があり、来れない時がある。それでもまだ来れる方だが。
「でも、生徒会の方も真面目な話、ちょっと忙しいんだよね」
「新しく引き継いだ生徒会長もなかなか人使いが荒いからな。俺は空手部の方もあるからではあるが」
「自分だけサボってるってわけじゃないんだけど」
「苦労してるようだな」
いささか2人に同情の目を向ける仭。
「性格が悪い仭でさえ、生徒会に引き入れようとした人だからね。一筋縄じゃいかないよ」
「さりげなく俺への悪口を混ぜるな」
「さりげなくじゃないよ。わざとだよ」
「さらに酷くなったし」
「…相変わらず、仲が良いなお前らは」
簪のからかいに、仭は冷静に返す。それもこれも仭が簪をそういう奴だと、
『…どうして私との対応がこんなにも違うのかしら』
単純だ。エリアルの場合、1日に接する時間が多いことによる(ある意味での)監視されながらの生活が、なかなかにストレスを溜めさせるためだ。――対応が違うのは、一応それだけではないが。
「やれやれ。せめてもう1人くらいまともで、しっかりしてる部員が入ってくれればいいんだがな」
「まともに毎日来れるのって仭を除くと、もう1人しかいないからね」
「いや、それでも来れない分、俺は真面目にやってるぞ」
「知ってる」
デュエル研究部。
仭が高等部1年の際に、設立してみたクラブであり、部員は6名で男女3名ずつ。
だが、兼部やらサボりやら色々な事情があって、ある程度は仭ともう1人で対応していることになってしまっているのが現状だ。
「すいませ~ん」
「ん?」
ともかく、研究活動の方はどうしていこうかと考えていると、ドアをノックする音が。
「どうぞ」
「あの、失礼します」
入ってくれと促すと、1人の女子生徒が入ってくる。少々おどおどしている様子だ。こういう風に誰かに相談ということ自体初めてなのだろうか。
「ドアに札がかけてあったのですが」
「ええ、今日はやってますよ。で、間違いなく、ここはデュエル研究部です。デュエル関係の相談も受けています」
ちなみに女子生徒と喋っているのは仭である。仭が1人の時に相談者が来ることもあるので、対応する立ち位置となっているのだ。――仭を知る人物の大半からは何かイメージが崩れると言われているが。
「それで俺は部長の倉間仭です」
「中等部1年の森田と申します」
「ああ…中等部でしたか」
「珍しいな」
高等部にしかデュエル研究部がないため、今回のように中等部の生徒が来る時も稀にある。大抵は教師や友人に相談などをして解決してると思われるのだが。
「それで、どうかしました?」
「はい、その……デッキの相談なんですが」
デッキの相談と来た。さて、この前の宮田のような相談だろうかと思っていると、
「友人に『昆虫族デッキとかきもい』と、言われまして…」
「「「…………」」」
それでどうしろと。そんな内容の相談を持ちかけられてしまったかもしれない。
ひとまず昆虫族デッキを使い続けるなら、これは仕方がないことなのかと聞きたいのだろうかと考え、部員に問うことにする。
「…どう思う? この場で唯一いる女子部員の簪さんよ」
「私は別に嫌悪感が湧く程、駄目ってわけじゃあないけど…」
「お前が大丈夫かどうかなんて聞いてない。これは駄目な奴からしたら、仕方がないことなのかって聞いてるんだ」
「う~ん…仭がワームとかエーリアンとか使って、私とデュエルしてきたら……さすがにちょっと無理って思うかも」
「…ということらしいので、使い続けるのでしたら、ある程度そういうことを言われるのは覚悟した方が良いかと」
「やっぱりそうですよね…」
当たっていたらしい。
もっとも、ワームやエーリアンなどに比べたら昆虫族は全体的にマシであろうが。――見た目的に。
おそらくであるが、ワームやエーリアンなど、見た目があれな絵柄のカードは人気がない。何せ使っている者はこの場にいる部員3人とも、1名を除いて見たことがないのだ。
女子はまあ、生理的に無理というのもあるだろうが、男子の方では女子などに嫌われたくはないからというのがあるのだろう。
(まあ、その言った奴を強く責めるってことはできないんだよなぁ。…それが昆虫が駄目な女子の……反応であるんだろうし)
基本的にそういうのは我慢という暗黙の了解なのだが、カードの絵柄がやはりあれで、デュエルディスクのソリッドビジョンがリアル過ぎるからか一部には耐えられない者がいるのだ。
それを3人は分かっている。
「あんまり嫌われない類のカードを使えばいいんじゃないか? 昆虫族でも見た目が…こう、あれじゃないのもあるだろう」
「昆虫族を交えたデッキも使うお前だからこその言葉か。…だが、俺の記憶が正しければ、お前が主戦力としてる昆虫族モンスターは、ある程度の女子に気味悪がられて、『そんなの使ってるのかよ』って目で見られていたような気がするが――」
「黙れ」
藪蛇だったらしい。どうも気にはしていた様だ。それは一部であるし、全女子に嫌われているってわけでもないのだから、気にする必要はないと思うのだが。
睨みを利かせた視線を受け流しながら、相談者との会話を再開する。そして最終的に様子を見ると言うことで相談者の方が結論付けた。
「そうですか。まあ、そう非難するのも一部の者だけでしょうし、深く気にすることはないと思いますよ」
「はい。あっ、それともう1つ用があって、ここに来たんです」
「他にデッキについての相談でも?」
「いえ」
では、何だろうかと思ったが、すぐに思い至った。何故なら、
「私と誰か、デュエルしてほしいんです」
デュエルディスクを構え、やる気満々な表情を見せているからだ。
中等部の生徒が高等部の生徒に挑むとは、また珍しい。やる気があって何よりというべきか。周囲を見ると、2人も否定的ではなさそうだ。ならば、
「さて、遼介。俺とお前、どっちがやる?」
「ふむ」
「ちょっと待って」
「ここにはあまり出られないことだし、俺がやろう」
「いや、私も「よしやれ」――……」
簪以外の部員2人は、彼女を置いて話を進める。が、彼女は大人しく引き下がらなかった。
「どうして私がデュエルする相手に含まれてないの?」
「駄目だから」
「何で?」
「…部長命令」
『それ、答えになってないよ』
エリアルが何か言ってくるが、気にしない。
「部長命令で済むなら、デュエリストがデュエルを断らないなんて常識はいらないんだよ」
「そんな常識は知らない」
「…えっ!?」
そんな何で知らないんだという風に驚かれても。デュエリストだって挑まれたデュエルは断ったっていいじゃないか。気分とかがあるもの。
「とにかく、奴の言い分も一理あるから、任させる。お前より来れないんだからな」
「むぅ……」
遼介が自分が相手で大丈夫かと、相手に問うて了解を受け取ってるのを視界に収めながら、そう簪に言い聞かせる。頬を膨らませていて、納得がいかないと言う表情だ。
『可愛い…』
(もっとも、この理由は建前だが)
本音はこの目の前の少女がデッキだけでなく、才能的な意味でもデュエルが強いためだ。下手をすれば、相手は対応すらできずに終わることもある。
だから、簪を知っている高等部の生徒ならばともかく、中等部の生徒にはなるべく相手をさせないと言うのが、この部では本人に秘密で決まっている。
仭としては別段そうなっても仕方がないと思うのだが、顧問の”命令”であるが故に仕方がない。
「ついでに今日はもう閉めてしまおう。2人のデュエルが終わったら、そのまま解散で」
「なら、誰が鍵を返しに行くんだ?」
「ふむ…お前はデュエルやるし、消去法で簪で」
「えー」
「俺も鍵を持って来たり、返しに行ったりしてるんだから、これぐらいいだろう」
「えー」
「しつけぇ」
『相変わらず、女子にも甘くないわね』
俺は男女平等主義だからなと、内心で返しておく。もっとも、男だろうが女だろうが容赦はしないと言う意味であるのだが。
そんなこんなでデュエルフィールドへ移動中。
手洗いに行っている間に、他は先へと行ってしまったので、仭は
「しかし残念ではあるかな。俺がやることになってたら【リチュア】を使おうと思っていたのだが」
『えっ、本当に?』
「ああ」
『……どういう風の吹き回し?』
何という奴だ。せっかく使ってやろうと思ったのに。最初に出てくるのが疑いか。
「気分」
『…嫌がらせが目的でしょう?』
「まっさかー。こんちゅうぞくとむかいあわせて、そのはんのうをたのしむとか、りょうしきなおれがおもうわけないじゃないかー」
『嘘よ! 絶対にこの前【カエル】や【爬虫類族】とやらせた時みたいに、嫌がらせ目的でしょう!! てか棒読みだし!』
「大丈夫だ。安全地帯で留まらせるなり、
できたらではあるが、嫌がらせ目的であった。最悪である。だが、それを自覚して、尚且つ直す気がない性質の悪い奴であるのが仭という人間だ。
『…絶対にいつか実体化してぼこってやるんだから』
「そうか。楽しみにしてるから、精々修行を頑張るんだな」
『…………』
そう言いながら僅かに笑みを浮かべると、それが癪に障ったのか睨み付けてくる。
「まあ、そう睨むな。この前運よく2枚目を当てたグングニール譲ってやるから」
『…それとはこれとは別だもん』
「いらないんだな」
『あっ、嘘です! お願い! グングニールは本当に強力だから!』
(ちょろい)
カード1枚ごときで安い
それと仭の場合、カード1枚に数十万の値が付くような世界とは、別の世界からの転移者かつこの世界に未だ完全に馴染み切れていないから、そう思えるだけである。
『…私は安い女じゃない。うん、安い女じゃない』
(そう自覚してる時点で、お前は安い女だよ。…カードの値段としては人気があるからか、普通くらいだが)
今日もまた仭はエリアルに酷い対応を行い、怒らせたりするが、それでも完全に嫌われないよう、関係を収めているのだった。
「私がやりたかった」
「…しつこい女は嫌われるぞ」
「仭なら嫌わないから別にいい」
隣で座っているのが何か言っているのを無視し、デュエルリングの方を見る。
既に2人はデュエルディスクを構えていた。
「デュエル!」
遼介:LP4000
森田:LP4000
先行は中等部女子の方らしい。
「私のターン、ドロー!
共振虫
DEF:700
鈴虫の様なモンスターが現れる。
「さらに大樹海を発動。カードを1枚伏せて、ターンエンドです」
「俺のターン、ドロー! テラ・フォーミングを発動し、デッキからフィールド魔法
2人の立っている場所が断崖へと変わり、その間にある谷には輝く風が見られる。
「霞の谷の雷鳥を召喚」
霞の谷の雷鳥
ATK:1100
「霞の谷ですか」
(…今回はそういう軸のデッキか)
「そして『ミスト・バレー』と名の付く雷鳥を手札に戻し、ミスト・コンドルを特殊召喚! この効果で特殊召喚されたコンドルは攻撃力が1700になる」
ミスト・コンドル
ATK:1400→1700
「さらに手札に戻った雷鳥、神風の効果発動! 神風の効果で自分フィールド上の風属性モンスターが手札に戻った場合、レベル4以下の風属性モンスターをデッキから特殊召喚する。デッキから霞の谷の戦士を特殊召喚! さらに表側表示の時にフィールド上から手札に戻った雷鳥は特殊召喚される!」
霞の谷の戦士
ATK:1700
展開するなぁと思っていると、
「トラップ発動、激流葬!」
「なっ!?」
「「『あっ』」」
激流が突如起こり、モンスターはそれに巻き込まれて、呑み込まれていく。
「やらかしたな」
「やらかしたね」
『やらかしたわね』
やらかした。激流葬で、展開したモンスターが一掃されたと言うのもあるが、問題は相手の方だ。
「大樹海の効果で、共振虫と同じレベルの代打バッターを手札に。そして共振虫の効果で、レベル5のプリミティブ・バタフライを手札に」
(共振虫の場合、普通はデビル・ドーザーの方を手札に加えるが…孵化かチューナーでも手札にあるのか?)
仭はそんなことを考えながら、2ターン目にして状況がかなりまずそうな部員へと、声をかける。
「おーい、遼介!」
「!」
「そのまま何もあがくことすらできずに負けたら、どうなるか分かってるだろうな?」
「どうなるの?」
「高等部の生徒にしばらく馬鹿にされ続けるだろうな」
「むっ……」
そう観客席の方を向いている彼に対し、僅かに微笑を浮かべながら語る。
何もできずに高等部の生徒が中等部の生徒に敗れる。そうなった場合は、恥以外の何でもない。
「さすがに無抵抗のまま、やられるってことはない。カードを2枚伏せてターンエンドだ」
遼介 LP4000
手札1
・モンスター
なし
・魔法・罠
霞の谷の神風
伏せ2
森田 LP4000
手札5(代打バッター、プリミティブ・バタフライ)
・モンスター
なし
・魔法・罠
大樹海
「私のターン、ドロー! 自分フィールドにモンスターが存在しないので、プリミティブ・バタフライを特殊召喚!」
プリミティブ・バタフライ
ATK:1200
「プリミティブ・バタフライの効果発動! 自分フィールドの昆虫族モンスターのレベルを1つ上げます」
プリミティブ・バタフライ
レベル5→6
「さらに孵化を発動。レベル6のプリミティブ・バタフライをリリースして、レベル7の昆虫族モンスターブレイン・クラッシャーをデッキから特殊召喚!」
ブレイン・クラッシャー
ATK:2400
プリミティブ・バタフライが突如苦しみ始め、さらに痙攣し始めて落下。そしてその背中に切れ込みが現れ、そこから新たな昆虫が。…かなりあれな光景に、観客の一部は引いていた。
「…あれ、演出どうなってるの?」
「……体内に寄生している(とされている)卵が孵化。で、昆虫がモンスターを内側から食い破るなりして出て来たって感じじゃないか」
「でも、その解釈だと機械族じゃ無理な気がするけど?」
「…………」
簪の指摘に黙る仭。確かに通常魔法 孵化のイラストの卵も、それを入れられている巣も、どう見ても鳥のものにしか見えないため、昆虫が鳥の卵に寄生し孵化すると解釈できなくもない。が、それだと確かに機械族はどうなるのだろうか。機械に寄生できるわけがないのだ。
そんな話をしてる間にも、デュエルは進んでいた。どうやらダイレクトアタックしてきたブレイン・クラッシャーの攻撃を、ガード・ブロックで防いだらしい。
「代打バッターを守備表示で召喚。ターンエンドです」
代打バッター
DEF:1200
「俺のターン、ドロー! 忍者マスター HANZOを召喚!」
「忍者!?」
忍者マスター HANZO
ATK:1800
服部半蔵をモチーフとされた忍者が現れる。
「召喚に成功したHANZOの効果で、デッキから『忍法』と名のついたカード1枚を手札に加える。忍法 変化の術を手札に。そしてカードを1枚伏せてターンエンドだ」
遼介 LP4000
手札2
・モンスター
忍者マスター HANZO
・魔法・罠
霞の谷の神風
伏せ2
森田 LP4000
手札3
・モンスター
ブレイン・クラッシャー
代打バッタ-
・魔法・罠
大樹海
「私のターン、ドロー!」
相手のフィールドを見て、警戒の目を向ける。
「(あの伏せカードの一方は間違いなく変化の術。でも霞の谷なら多分…)通常魔法 闘虫仮装を発動! 手札の昆虫族を1枚捨てて、デッキから昆虫族を手札に加える。私はアーマード・フライを捨てて、デッキから
「あれ、効果処理の最後に昆虫族を破壊するカードだから、代打バッターもタイミング逃さないんだよなぁ」
「あー」
代打バッターは、時の任意効果でタイミングを逃すことが多々あるものの、手札から上級昆虫族モンスターを召喚補助できる事はかなり役立つ。しかも大樹海と併用すれば、レベル4昆虫族限定の擬似リクルーターともなる。
「大樹海の効果で、デッキから
鉄鋼装甲虫
ATK:2800
全身が分厚い装甲で覆われていると、テキストに書かれていながら守備力はあまり高くなく、昆虫型生物とあるが昆虫族ではないのかと、色々突っ込む箇所があるモンスターだ。
「そして墓地の共振虫とプリミティブ・バタフライを除外して、デビルドーザーを特殊召喚!」
デビルドーザー
ATK:2800
これで最上級モンスターが3体だ。
「バトル! 鉄鋼装甲虫でHANZOを攻撃!」
「トラップ発動、忍法 変化の術! 自分フィールド上の『忍者』1体をリリースし、そのレベル+3以下の獣族・鳥獣族・昆虫族のいずれかのモンスター1体を手札またはデッキから特殊召喚する。HANZOをリリースし――」
HANZOが煙に包まれ――
「霞の谷の巨神鳥を特殊召喚!」
霞の谷の巨神鳥
ATK:2700
巨大な神鳥へと変化した。攻撃表示なのは少なからず、ブレイン・クラッシャーに奪われないようにするためだと思われる。
「…攻撃は続行です! 鉄鋼装甲虫で巨神鳥を攻撃!」
「トラップ発動、鎖付きブーメラン! 2つある効果のうち攻撃力を上げる効果を使用。巨神鳥の攻撃力を500ポイントアップさせる」
もう1つに相手モンスターを守備表示へと変更させる罠。
それが装備される前に、森田はカードを手札から発動する。
「手札から速攻魔法 禁じられた聖杯! 鉄鋼装甲虫の攻撃力を400ポイントアップ!」
「巨神鳥の効果発動! 自分フィールド上に表側表示で存在する『ミスト・バレー』と名のついたカード1枚を手札に戻し、魔法・罠・効果モンスターの効果の発動を無効にし破壊する!」
「…えっ!?」
霞の谷の巨神鳥
ATK:2700→3200
森田:LP4000→3600
だが、どうも巨神鳥が効果を発動したことに驚きを隠せていない様子だ。表情から効果を知らないというわけではなさそうだが。
巨神鳥が大きく羽ばたくとフィールド魔法が消え、さらに聖杯も鉄鋼装甲虫にかかることなく吹き飛ばされる。攻撃力が上がることのなかった鉄鋼装甲虫は、そのまま返り討ちに合った。
「えっ、な、何で無効に…? 速攻魔法に効果モンスターはチェーンは…」
「…残念だが、巨神鳥は速攻魔法にもチェーン発動することができる」
何やら巨神鳥の効果によるチェーン発動について、互いに認識が違っているらしい。
一応高等部の生徒のデュエルの途中でも、たまに見られる光景だ。こういう処理の仕方について食い違いをなくす意味では、デュエルディスクの存在はメリットであろう。
「…ああ、あれは巨神鳥の効果をスペルスピード1として認識していた様だな。もしくはチェーン中なら効果を発揮しないと思ったか」
スペルスピード――魔法や罠、効果モンスターのカードの効果に設定されているスピード。
効果モンスターは、基本的に速攻魔法や罠にチェーンはできないのだが、霞の谷の巨神鳥の場合は誘発即時効果を持つため、その効果を発動できたわけだ。
少しすると、説明を受けて納得したのか、デュエルが再開した。
「(どうしよう…と言っても打てる手が)共鳴虫を守備表示で召喚。ターンエンドです」
共鳴虫
DEF:1000
「俺のターン、ドロー! 神風を再び発動。覆面忍者ヱビスを召喚!」
覆面忍者ヱビス
ATK:1200
「そしてヱビスを手札に戻し、
A・ジェネクス・バードマン
ATK:1400→1900
「風属性モンスターが手札に戻ったことにより、神風の効果でデッキから霞の谷の見張り番を特殊召喚!」
霞の谷の見張り番
DEF:1900
「さて、レベル3のバードマンに、レベル4の見張り番をチューニング! 霞の谷を守護する雷神よ! その力で仇なす者を微塵に砕け! シンクロ召喚! 降臨せよ、霞の谷の雷神鬼!」
霞の谷の雷神鬼
ATK:2600
現れたのは霞の谷に定住する雷神鬼。――何故か両手に千切れた機械の部品を持っている。
「雷神鬼の効果発動! このカード以外の自分フィールド上のカード1枚を手札に戻し、このカードの攻撃力をターン終了時まで500ポイントアップさせる。俺は神風を手札に戻す」
霞の谷の雷神鬼
ATK:2600→3100
雷を起こし、フィールド魔法へと落としていく。どう見ても効果が破壊にしか見えない光景だった。
「神風を発動し、バトルだ! 雷神鬼でデビルドーザーを攻撃!」
「うっ…」
森田:LP3600→3300
両手に持つ千切れた機械の部品で、デビルドーザーを殴りつける。――雷で攻撃をしろ。
「大樹海の効果。…2体目のデビルドーザーを手札に」
「巨神鳥でブレイン・クラッシャーを攻撃!」
「くぅっ…大樹海の効果で、地獄大百足を手札に」
森田:LP3300→2500
「エンドフェイズ、雷神鬼の攻撃力は元へ戻る」
霞の谷の雷神鬼
ATK:3100→2600
闘虫仮装(アニメ5D'sオリカ)
通常魔法
手札の昆虫族モンスター1体を墓地に送って発動する。
デッキから昆虫族モンスター1体を手札に加える。
その後、自分フィールド上の昆虫族モンスター1体を破壊する。
遼介 LP4000
手札2(覆面忍者ヱビス)
・モンスター
霞の谷の巨神鳥(鎖付きブーメラン装備)
霞の谷の雷神鬼
・魔法・罠
霞の谷の神風
鎖付きブーメラン
忍法 変化の術
森田 LP2800
手札2(デビルドーザー、地獄大百足)
・モンスター
共鳴虫
・魔法・罠
大樹海
「私のターン、ドロー……墓地のブレイン・クラッシャーと鉄鋼装甲虫を除外して、デビルドーザーを特殊召喚」
デビルドーザー
DEF:2600
「ターン、エンドです」
「俺のターン、ドロー! カードをセット。そして雷神鬼の効果でセットしたカードを手札に」
霞の谷の雷神鬼
ATK:2600→3100
「通常魔法 ガルドスの羽根ペンを発動! 墓地の風属性モンスター2体をデッキに戻し、フィールド上のカード1枚を手札に戻す。墓地の雷鳥と戦士をデッキに戻し、共鳴虫を手札に!」
「あっ…」
「雷神鬼でデビルドーザーを攻撃!」
デビルドーザーをやはり手に持つ機械の部品で叩き潰す。
「そして巨神鳥でダイレクトアタック!」
森田:LP2800→0
そうしてデュエルが終了した。そこに簪が一言。
「結構危なげだったのに、その実ライフが減らなかったね」
「確かに…」
激流葬でモンスターが一掃された時はどうなるかと思ったが、結果は徐々に巻き返して勝利。そのまま無抵抗で負けたら恥だと言ったのが、少々恥ずかしくなってくる。
「しかし、今回は忍者軸の【霞の谷】ってところか。見たことないから、新しく作った調整用のデッキだな」
「そうだね」
彼のデッキは基本的に【忍者】だ。それを主に色んな軸の派生デッキのレシピを作っている。
「ただ、あいつのように忍者でデッキを複数組むなら、結構裏で苦労してると思うんだよな」
「…お金がかかるから?」
「それもある。変化の術系でリクルートするモンスターは、大抵上級モンスター。それを手に入れるんだったら、それなりに掛かるだろう」
仭が使っている炎王神獣 ガルドニクスやダーク・シムルグなど、最上級モンスターはパック買いではなかなか出ない。故にパック買いで望むカードが手に入るなら、それはよっぽど運が良い者であろう。
「後、あいつが忍者それぞれを数十枚も持っているとは絶対にない。だから作り直すのためにカードを抜き入れしてるのは確かだろう」
「……裏でそういう苦労があるんだ」
「きっとな。色んな軸を使ってみたいって気持ちは分かる気がするんだが」
(…何やら可哀想な目で見られている気がする)
そんなこんなで、今日も終わる。
今日もまたアカデミアはいつも通りと言ったところ。明日もこのようになって欲しいものだ。
はい、オリ主にデッキ作り直す際に苦労してるんだろうなぁと思われている男子と、知ってる人からすれば性格が違くないかと言うであろう女子の登場です。
ちなみに男子はオリキャラです。
しかしデュエルの方も長引いた。もう少し短くするつもりだったのに。デュエルが長引いちゃう理由は、自分が早く決着が付くようデュエルを書けないのもあるんだろうけど、何も知らずに攻撃とかができないからなんだよなぁ。できるとしても低ステータスもモンスターとかだし。
愚痴終わり。
遼介「今日の最強カード…順当にいけば霞の谷の巨神鳥なのだろうが、これでいいのだろうか? 効果を発動する機会が1回しかなかった気がするが」
仭「…別にいいんじゃないか? どうせ同一チェーン上では1回しか効果を発動できないモンスターだし。というか、俺もこれに参加するのな」
遼介「霞の谷の巨神鳥は1ターンに1度の制限が無く、ミスト・バレーのいる限り魔法・罠・効果モンスターの効果を無効にできる。自身も戻せるから最低1回は無効にできるな」
仭「…で、最上級モンスターだが、フィールドに展開する手段は今回のように変化の術を使うのもいいし、召喚制限もないから墓地蘇生でも良い。使いにくいと言うわけではないと思う」
遼介「後は仭が言ったように、同一チェーン上では1回しか効果を発動できない点と、スペルスピード3のカウンター罠には対応できない点か。この辺りは他でカバーするなりするしかないだろう」
仭「その辺でいいだろう」
遼介「そうか。ではまた次回に」