色々思うことあるでしょうが、うまく書けないがため、ご容赦お願いします。
「転入?」
「ああ」
仭は教室でクラスメイトと話をしていた。
その内容はこの教室に新たなアカデミア生が来ると言う話題だった。後、一月程もすれば冬期休業へと入る時期だというのに。
ちなみにアカデミアは三学期制で、今は二学期である。
「正確には復学だぞ」
近くにいた男子も寄って来て話に乗る。
「ふむ。高等部には休みがちな奴はいるが、そいつを除いて長期欠席してるのは聞かないな。中等部の時の奴か? それとも俺がいなかった頃の小等部の奴か?」
様子からして、誰が復学して来るかを知っているようなので聞いてみる。すると何とも言えない表情をしていたのが、さらに強まった。
「…
「十六夜アキ?」
「中等部の時にいただろ? サイコデュエリストの」
「それにほら、デュエル・オブ・フォーチュンカップでも」
「いや、どっちも覚えている。そうか。あいつ一応休学扱いだったわけなのか」
何せ今の高等部のアカデミア学生達――特に1年生にとっては忘れたくとも、忘れられないであろう人物だからだ。
サイコデュエリスト。主にカードに描かれたモンスターや、カード効果を実体化させる能力を持つデュエリストの事で、その力故に周囲からは忌み嫌われている。その存在である彼女は、自分達が中等部の頃にデュエル・アカデミアでその
故に十六夜アキがアカデミアにいたのを知るほとんどの者は、サイコデュエリストという存在を忌み嫌うだけでなく、人間と異なる存在とすら思っていたかもしれない。――中等部の頃、十六夜アキがアカデミアから姿を消した後の、数ヶ月の間は。
「今更何を戻ってきたんだろうな」
「さて、な」
何を想って、どうしてアカデミアに戻って来たのか、分かる筈もない。同期ではあったが、彼女は誰とも関わろうとせず、また関わってくる者も悉く拒絶していたのだ。
故に自分も他人事ということもあって、関わることはしなかった。
「だが、戻ってきたということは、つまりそういうことだろう」
「けどよ…」
「…………」
言いたいことは分かる。十六夜アキが恐ろしいのだろう。デュエル・オブ・フォーチュンカップで、起こしたことがまず影響している。あの大会を見ていないというのは、ほとんどいないだろうし、その時に起こったことを鮮明に記憶している筈だ。――特に大会の観客席でデュエルを生で見ていた者は。
それに仮面とフードで姿を隠し、巷で破壊を行っていたという『黒薔薇の魔女』が彼女であったというもあるだろう。
(テレビで見てたが、色々と酷くもあったしなぁ。余計に恐怖を覚えるのも仕方ないと言えるか)
その心情は彼女によるサイコパワーによる周囲の物理破壊などでもあるが、好き勝手ブーイングをしていた観客の――人の残酷さに対しても含まれていたりする。多人数でまた他人事であればああも平気で罵倒できるものなのかと思うと同時に、本人の行動もあるだろうがサイコデュエリストの風当たりは予想以上に強いと言うのを感じた。
(――と、こんな事を思ったところで、その残酷な奴は俺も含まれるんだろうがな。人である以上)
「そういや、フォーチュンカップ後からは、黒薔薇の魔女の噂って聞かなくなったよな?」
「あー、確かに聞かねぇな。仭は知らねぇか?」
「知らないな」
そんな風に教室で話してると、担任の教師が入って来た。そしてその後ろから、今の高等部のアカデミア生達にとって、忘れたくとも忘れられないであろう彼女が一緒に入って来た。
それでやはりというべきか、彼女が来てからの教室内の空気は重かった。
彼女がやってきたことがやってきたことなだけに、誰も近づこうとはしない。また何もされず、何も言われない。本人からしたら窮屈この上なかったであろう。
そんな中でも時間は過ぎていき、仭は授業の終了後に教室から出ようとしていたところを、偶々授業担当していた担任から呼び止められた。そして次の実技の授業で彼女とデュエルをしてくれと言われて、それを彼は承諾。現在、いつも通りの
「サイコパワーはコントロールできたと聞く。危険でも何でもないだろう。だからデュエルを受けた。それがどうしてお人好しに繋がる」
『えー、だってそうやって頼まれてるのは、仭がお人好しって思われてるからじゃないの?』
「…いや、俺が恐怖とかそう言うのを顔に出さないって思われてるからだろう」
『照れ屋め』
スルーすることにする。
だが、実際頼まれたのはそれが主だと思われる。周囲の仭の表情に対しての反応が、『いつも仏頂面』だとか『神経質そうだ』であるからだ。挙句『重病を告げるに丁度いい顔だ』と言われたことがあったりする。
『でも、大丈夫かしら』
「一応何らかの感情の変化で、ダメージが実体化するかもしれないということは、頭に入れている」
サイコデュエリストは感情によって、サイコパワーを暴走させる傾向があるらしいので、心配する点と言えばその点だ。フォーチュンカップの件から、デュエル中にブーイングをされないかという心配が幾分かある。
『…そうじゃないんだけどなぁ』
「は?」
『あっちが迫害されないって事』
「…あー」
仭と同じ考えではあったものの、心配であったのは相手の方だった。だが、これも裏を返せばきっと大丈夫だと信用されているのだろう。それでも、大丈夫だと信用されているというのに喜べばいいのか、相手の方を考えてることに避難の目を向ければいいのか複雑だ。
「その時はその時だ。手を抜こうとしたら、喝を入れるまで」
『あれ、どうもしないんじゃないの?』
「普通ならな」
『…へぇ』
何故だろう。視線が冷たい。ただ彼女が暴走しないようにするためなのだが。
「唐突に話は変わるが…お前、
『…私達をあの子相手に使うって意味だよねそれ!? 嫌だからね!!』
「馬鹿だな。駄目だとか言われて、その逆のことをするのが人間だろうに」
『人が嫌がることをしないで!!』
「使えってことだな了解」
『ふざけんなぁ!!』
まあ、後の報復が怖いので、実際は使わないけれど。
「よろしく」
「…ええ、よろしく」
何はともあれ、デュエルフィールド。既に他のデュエルフィールドでは、生徒達がデュエルを始めている。
此方も始めようと思うのだが、相手は若干困惑している様子だった。おそらく、サイコパワーで相手を傷つけてしまったシチュエーションを思い出してしまっているのだろう。――こういう時はどういう言葉を掛けるべきなのだろうか。
(…下手に声をかけない方がいい…か?)
仭:LP4000
アキ:LP4000
結局見つからなかった。互いにデュエルディスクを構え、他のデュエルフィールドとは別に静かにデュエルが始まった。
「俺か。ドロー。マスマティシャンを召喚」
マスマティシャン
ATK:1500
学者のような魔法使いが現れる。
「召喚時効果により、デッキからレベル4以下のモンスターを墓地へと送る。レベル3のカーボネドンを墓地に。カードを1枚伏せてターンエンド」
初手の動き出しとしてはまあ、こんなところだろう。ちなみにデッキの相性上、厄介なことになりそうなので、今回は【炎王】ではない。
「私のターン、ドロー」
十六夜アキはフォーチュンカップではコントロール奪取やトークン生成、バーンなどの戦術も使う【植物族】だった。決勝まで勝ち残っていたのだから、その実力は高い。
「永続魔法 世界樹を発動。イービル・ソーンを召喚」
イービル・ソーン
ATK:100
緑色の蔦にピンク色の花と紫の棘だらけの実を垂れ下げた植物。
確かあれは相手にダメージを与え、同名カードを2体までリクルートするモンスター。
となると――
「イービル・ソーンの効果発動。このカードをリリースして、相手に300ポイントのダメージを与える。イービル・バースト!」
イービル・ソーンに付いている実が爆発し、棘が飛び散る。周囲の一部からは僅かに悲鳴が上がるが、
「……ふむ」
仭:LP4000→3700
やはりというか、いつも通りのソリッドヴィジョンの衝撃。傷を負う程ではない。
(あちらの表情からして、サイコパワーを制御できていると示すのも、目的だったようだな)
「さらにデッキからイービル・ソーンを2体まで攻撃表示で特殊召喚する。2体のイービル・ソーンを特殊召喚。この効果で特殊召喚されたイービル・ソーンは効果を発動できない」
新たに2つ、イービル・ソーンが咲くも棘の生えた実はない。
「永続魔法 超栄養太陽を発動。自分の場のレベル2以下の植物族モンスターをリリースして、リリースしたモンスターのレベル+3以下のレベルを持つモンスターをデッキ、または手札から特殊召喚する。イービル・ソーンをリリースして、デッキからローンファイア・ブロッサムを特殊召喚!」
ローンファイア・ブロッサム
DEF:1400
太陽の光を浴び、イービル・ソーンが花の部分から火花を放つ赤い色をした植物へと姿を変える。
『面倒なのが来たわね』
(まったくだ)
「ローンファイア・ブロッサムの効果を発動。1ターンに1度、自分フィールド上の植物族モンスターを1体リリースすることで、デッキから植物族モンスターを特殊召喚する。イービル・ソーンをリリースして、デッキからフェニキシアン・シードを特殊召喚!」
フェニキシアン・シード
ATK:800
赤い花を萎らし、真ん中に目が出ている種。その姿は少々異様と言える。
『えっと…確かあれを墓地に送って、何か手札だからモンスター出してたような…』
そして何やらエリアルは数ヶ月前のフォーチュンカップの試合のことを、思いだそうとしているらしい。いや、別に思い出したところで、状況がどうにかなるわけは勿論ないのだが。
「フェニキシアン・シードの効果発動。このカードを墓地へ送って、手札からフェニキシアン・クラスター・アマリリスを特殊召喚!」
フェニキシアン・クラスター・アマリリス
ATK:2200
フェニキシアン・シードは、真っ赤な花を持つ彼岸花へと成長。
それを見て、はっとした顔をするエリアル。
『思い出した! 仭、気を付けて。あれ攻撃したら自壊するけど、破壊されて墓地へ送られたらダメージを与える効果に、自己再生効果を持ってるから』
(うん、ありがとう。知ってる)
その表情から思うに、親切心だった。まあ、戯けた奴なりにサポートした方だろう。
そう思ってると、睨んできた。まさか読心術まで使えるようになったのかこのチョロインは。
さらに睨んできた。表情には出してないつもりなのだが。
そんなことを考えていると、バトル、と告げられた。
「フェニキシアン・クラスター・アマリリスでマスマティシャンを攻撃! フレイム・ペタル!」
仭:LP3700→3000
無数の蔦を伸ばし、マスマティシャンをぐるぐる巻きにすると燃え上がらせてしまう。悲鳴を最後にマスマティシャンは破壊された。
「フェニキシアン・クラスター・アマリリスは、攻撃したダメージ計算後に破壊。そして相手に800ポイントのダメージを与える。スキャッター・フレイム!」
仭:LP3000→2200
攻撃を行ったフェニキシアン・クラスター・アマリリスが燃え上がり、爆発。その際の爆風によって仭のライフがさらに削られる。
「世界樹の効果も発動し、植物族モンスターが破壊されたことでフラワーカウンターを1つ乗せる」
世界樹
フラワーカウンター:0→1
「戦闘で破壊されたマスマティシャンの効果で、デッキからカードを1枚ドロー」
「カードを2枚伏せ、エンドフェイズ、墓地のフェニキシアン・クラスター・アマリリスの効果を発動。墓地の植物族モンスターを1体ゲームから除外することで、このモンスターを守備表示で特殊召喚する。イービル・ソーンを除外して蘇生」
フェニキシアン・クラスター・アマリリス
DEF:0
「ターンエンド」
仭 LP2200
手札5
・モンスター
なし
・魔法・罠
伏せ1
アキ LP4000
手札1
・モンスター
フェニキシアン・クラスター・アマリリス
ローンファイア・ブロッサム
・魔法・罠
世界樹(フラワーカウンター1)
超栄養太陽
伏せ1
『ちょっと、大丈夫?』
「さて、ちと食らいすぎたかな」
種族として長けている部分や特徴もないと言われてたのが昔のようだ。いや、実際に過去の話になっているだろう。
やはり【リチュア】の方を使って、バウンスなどを狙えば良かっただろうか。気分が乗ってないエリアルの拒否を無視してでも。だが、悔いたところでそれも後の祭りだ。
「俺のターン、ドロー。墓地のカーボネドンの効果発動。このカードを除外することで、手札・デッキからレベル7以下のドラゴン族の通常モンスター1体を守備表示で特殊召喚する。デッキから
「レッドアイズ…」
真紅眼の黒竜
DEF:2000
その名の通り、真紅の眼を持つ黒き竜。一時はプレミア価格で数十万もするレアカードの扱いではあったが、現在は量産された関係で、ある程度価格は下がっている。
「次に同じような趣向を凝らすとしよう。黒竜の雛を召喚」
黒竜の雛
ATK:800
「そしてこのカードを墓地へ送り、手札から2体目のレッドアイズを特殊召喚」
真紅眼の黒竜
ATK:2400
卵の殻からその眼を覗かせている雛は、成長した姿へと変わる。
「通常魔法 七星の宝刀を発動。手札かフィールドのレベル7のモンスターをゲームから除外し、カードを2枚ドローする。俺は守備表示で存在するレッドアイズを除外」
ドローしたカードを見る。それ程悪くはない。
「バトル。レッドアイズでローンファイア・ブロッサムを攻撃。ダーク・メガ・フレア」
レッドアイズの攻撃により、太陽もろともローンファイア・ブロッサムは焼き尽くされた。
「カードを1枚伏せてターンエンド」
このターンはこれでいいが、フェニキシアン・クラスター・アマリリスをどうにかしなければ勝つのは難しいかもしれない。
「私のターン、ドロー。墓地のイービル・ソーンを除外して、装備魔法 薔薇の刻印を発動。このカードを装備した相手モンスター1体のコントロールを得る」
「そうはいかない。トラップ発動、王者の看破。自分フィールド上にレベル7以上の通常モンスターが存在する場合、魔法・罠カードの発動、モンスターの召喚・反転召喚・特殊召喚のいずれか1つを無効にし破壊する。レッドアイズがいるため、薔薇の刻印の発動を無効だ」
『あっぶない』
何とかかわせたが、状況は芳しいとは言えない。さて、手札1枚となった状況でどう来るか。
「トラップ発動、アイヴィ・シャックル。このカードがフィールド上に存在する限り、相手フィールド上に表側表示で存在する全てのモンスターは、自分のターンのみ植物族となる」
「むっ…」
レッドアイズに蔦が絡みついていく。この状況で植物族とさせたということは、当然植物族に関する効果を適用させるため。
「通常魔法 フレグランス・ストームを発動。フィールド上に表側表示で存在する植物族モンスター1体を破壊し、自分のデッキからカードを1枚ドローする」
「…あー、ノーコストの単体除去+ドローに化けたか」
「アイヴィ・シャックルの効果で、レッドアイズは植物族。レッドアイズを破壊! ――そしてドロー。また、世界樹にフラワーカウンターが1つ乗る」
世界樹
フラワーカウンター:1→2
「世界樹の2つ目の効果を発動。フラワーカウンターを2つ取り除いて、フィールド上に存在するカードを1枚破壊する。その伏せカードを破壊」
「残念だが、これはフリーチェーンだ。トラップ発動、威嚇する咆哮。このターン相手は、攻撃宣言をする事ができない」
何とか凌いだ。
「フェニキシアン・クラスター・アマリリスを攻撃表示に変更して、ターンエンド」
仭 LP2200
手札4
・モンスター
なし
・魔法・罠
なし
アキ LP4000
手札1
・モンスター
フェニキシアン・クラスター・アマリリス
・魔法・罠
世界樹(フラワーカウンター0)
アイヴィ・シャックル
「俺のターン、ドロー。通常魔法 思い出のブランコを発動。墓地の通常モンスターを蘇生する。レッドアイズを蘇生」
真紅眼の黒竜
ATK:2400
「さらに通常魔法 黒炎弾を発動。レッドアイズの攻撃をこのターン放棄することで、元々の攻撃力分のダメージを相手に与える」
「なっ!?」
「生憎、俺はMではないのでな。――やり返す。黒炎弾」
「くっ…!」
アキ:LP4000→1600
レッドアイズの口から放たれた黒い火球により、ライフを一気に減らす。ライフの差があっさりと翻った。
「融合呪印生物-闇を召喚」
融合呪印生物-闇
ATK:1000
「このカードは融合素材モンスター1体の代わりにする事が可能。また、フィールド上のこのカードを含む融合素材モンスターをリリースすることで、闇属性の融合モンスター1体を特殊召喚する。融合呪印生物-闇とレッドアイズをリリース。現れろ、ブラック・デーモンズ・ドラゴン」
ブラック・デーモンズ・ドラゴン
ATK:3200
融合呪印生物-闇がレッドアイズと共に闇に包みこまれていき、現れたのは悪魔竜。
「攻撃力3200」
「ブラック・デーモンズ・ドラゴンでフェニキシアン・クラスター・アマリリスを攻撃。メテオ・フレア」
「ぐっ…! フェニキシアン・クラスター・アマリリスが破壊されたことで、800ポイントのダメージを与えるわ」
アキ:LP1600→1000
仭:LP2200→1400
「カードを1枚伏せてターンエンドだ」
逆転したものの、そう安心はできない。一応伏せたカードはブラック・デーモンズ・ドラゴンに、耐性を付けるカードではあるものの、ライフは安心できる程のものではないからだ。
「私のターン、ドロー。――っ!」
「ん?」
ドローしたカードを見て、表情が僅かに歪んだのを仭は見逃さなかった。だが、それはキーカードを引けなかったという表情ではなく――そのカードを使うのを躊躇っているという感じだ。
『どうしたのかしら?』
一応思い当る節がある。なるほど、確かに”あれ”ならばこの状況は覆されるだろう。フォーチュンカップでも全てのデュエルに使用されていたから、効果は覚えている。だが、全てのデュエルにおいてそのサイコパワーとも相まって最も周囲に影響を及ぼしたモンスターでもある。
(周囲の反応を恐れて、か)
「私は…」
「どうした?」
「…………」
何も答えない。それに軽くため息を吐くと、アキへ問いかけ始めた。
「あんたは何のためにアカデミアに戻ってきた」
「!」
「別に答えなくていい。が、少なからず戻って来たんだったら、あんたは中等部の頃にしてきたことに、批判されることを覚悟の上で戻って来たんじゃないのか?」
「…………」
彼女がアカデミアで起こしたことは、アカデミア生の多くにとっては忘れることのできないであるのは間違いない。故にアカデミアに戻ってくる際に、その事を考慮していないというのはない筈だ。
「あんたが今やろうとしてることは予想が付くと同時に、躊躇っているのが分かる。だが、それで躊躇うのなら、おそらく他でも躊躇い続けることになるぞ」
「!」
言ったことに対して、彼女が何を想ったのかは定かではない。
しかし、その表情から何か吹っ切れたのではないかと思う。
「…チューナーモンスター
夜薔薇の騎士
ATK:1000
「このカードの召喚成功時に、手札からレベル4以下の植物族モンスターを特殊召喚できる。レベル4のロードポイズンを特殊召喚する!」
ロードポイズン
ATK:1500
(来るか)
「私はレベル4のロードポイズンに、レベル3の夜薔薇の騎士をチューニング!」
3つの光の輪がロードポイズンを包み込んでいくのを見て、周囲からまさか、などと声が上がり、ざわつき始める。
「冷たい炎が世界の全てを包み込む。漆黒の花よ、開け! シンクロ召喚! 現れよ、ブラック・ローズ・ドラゴン!」
ブラック・ローズ・ドラゴン
ATK:2400
現れるは黒薔薇――濃い赤色の薔薇の名を冠した竜。花びらを舞うように散らせる様に、周囲はさらに声を上げるばかりだ。やはりフォーチュンカップの件が尾を引いているのだろう。当然だが、それ以外に周囲への影響はない。
「…ブラック・ローズ・ドラゴンはシンクロ召喚時、フィールド上に存在する全てのカードを破壊する。ブラック・ローズ・ガイル!」
「…そう来るよな」
ブラック・ローズ・ドラゴンによって大量の花びらの竜巻が発生し、それはフィールド上の全てを飲み込んでいく。伏せていた安全地帯もフィールド上のカードを問わずの全体破壊では何の意味もない。
そしてフィールド上には何も残らない。が、
「エンドフェイズ、墓地のイービル・ソーンを除外してフェニキシアン・クラスター・アマリリスを蘇生」
フェニキシアン・クラスター・アマリリス
DEF:0
フェニックスから作られたであろうフェニキシアンの名の通り、蘇るモンスターが壁となる。
「ターンエンド」
状況はかなり厳しい。ひとまずカードを引こうとドローする。
「……ターンエンド」
「私のターン、ドロー。フェニキシアン・クラスター・アマリリスでダイレクトアタック! フレイム・ペタル!」
「負け、だな」
仭:LP1400→0
手札は召喚師のスキルに、龍の鏡。
(いやしかし、随分とキャラじゃないことを言ったものだ)
随分恥ずかしいことを言ったと思う。これもあの周囲からの反応を恐れる姿を、どこかの誰かと重ねたからだろうか。
自分が負けたかのように悔しがっているエリアルを横目に、そんなことを思っていると、礼儀のためか軽く頭を下げてきたので、此方も下げ返す。
「って、ん?」
互いにデュエルフィールドから下がると、アキの方に幾分か人が集まっていくのが視界に入る。本人はどうしたらいいか困ってる様子だ。
(お人好しとか純粋もそれなりにいるからなぁ、女性陣には)
デュエル万能論や、戻って来たからには何もしないだろうと考えているのもあるだろうが、それだけではなくアキがアカデミアから姿を消した後の事があるためだろうと思える。
空気が多少は軽くなったのを皆が感じながら、実技の時間は過ぎて行った。
十六夜アキ登場。彼女が周囲に悪いイメージで思われないようにさせていくのに、かなり頭を悩ませますが、頑張りたいと思います。
それと思いの外、最初の方で悪く言われてないのには、作中で表現されてたようにちょっとした理由があります。
アキ「今日の最強カード? えっ、これって…」
仭「もう俺4回連続…てか、知り合って間もない相手と一緒にさせるの間違ってる気が。…ふぅ、あんたが思う今日の最強カードを発表してくれ」
アキ「(投げやり…)えっと、じゃあブラック・ローズ・ドラゴンで」
アキ「フィールド上のカードを破壊する効果と、相手フィールド上の守備表示モンスターの表示形式を変更して、攻撃力を0にする効果を持つわ。後半の効果は守備表示にしか使えないけど、セットの状態でも使えるわね。【植物族】での存在意義は大きいと思うわ」
仭「あんたのその使い方を否定するわけでは勿論ないが、必ずしも【植物族】に使わなくても良いだろうな。前半の全体除去だけでも採用圏内になるし、後半の効果も汎用性の高いキラー・トマトとか【植物族】以外でも発動できる機会はあるにはある」
アキ「なるほど…言われてみればそうね」
仭「……ああ、カード説明するためにこうやって繰り出されてるわけか。何はともあれ今後ともよろしく」
アキ「どうも…。では、また」