遊戯王5D's とある異分子の物語   作:狂戦士

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うーん、人物紹介とかがざっくりな感じがして、ちょっと急に見える気がしてきた。
…うまく描写とかが書けなかったがために。


第5話 義親と猫と無口

 学生は学校が終わり、放課後になると様々な過ごし方をする。

 友人とどこかへ遊びに行ったり、学校に残って勉強などそれは多数だ。

 そんな数ある中で仭の過ごし方は、

 

(美味いな…)

 

『いいなぁクレープ』

 

 買い食いだった。それもスイーツの類の。

 彼はそれなりの甘党であり、金銭的に問題がなければ時たまこのように買い食いをしたり、店へと食べに行ったりする。

 

『食べたいなぁ』

 

 クレープを買い食いしてるのを羨ましげに見るエリアル。上目遣いで、お預けを食らった子犬のような表情をしていても、憑依させて食べさせるようなことはしない。高校生の財布の中身はそれなりに厳しいのだ。

 そして可哀想だという認識は一切ないが故に、仭はさっさと食べ終えてしまう。

 

「ふぅ…あの店にはまたいつか行こう」

 

『…こっちに目を向けることなく、普通に食べ終えてるし』

 

「そういうことは有機化合物になってから言え」

 

『いや、私は一応有機化合物ですけど? てか、その言い方は…』

 

「屁理屈を言うな」

 

『屁理屈じゃないって!』

 

 こっちに実体化できてないだけで、ちゃんと生身として生きている。仭はそれを当然理解しているのだから、ようするに実体化してから言えということだ。

 

「食べたかったら、とっとと実体化できるようになれって」

 

『たまにはいいじゃない。前は憑依させて食べさせてくれたのに』

 

「昔は昔。今は今」

 

『むぅー…』

 

 睨んでくるその姿を視界に収めると、仭は最近多くなるため息を吐いた。

 

(こいつは本当に実体化する気あるんだか)

 

 カードに宿る精霊が、人間世界に実体化するためには色々と方法はあるが、その1つは精霊自身が持つ力を使うことである。元々このエリアルは実体化できるほどの力を持っていたらしいのだが、その力が”とある事情”からかなり失ったらしく、現在それを取り戻すための修行とやらをしているらしい。

 とはいえ、エリアルとは数年の付き合いなため、未だ実体化できないというのはさすがにないんじゃないかと、近頃仭は思っているが。

 

『てか、毎回思うけど、よく1人でスイーツとか食べられるわね。スイーツ男子ってカテゴリが市民権を得ているにしても』

 

「屋台とかで売ってるからまだ良いんだがな。そっちじゃない方の店となると、さすがに入りにくい」

 

 仭の内心を知ってか知らずか、話を振ってくるエリアル。その返答にからかいのネタができたとばかりに、嬉しそうに彼女は笑みを浮かべた。

 

『へぇー、1人でチェーン店に躊躇なく入るボッチ君でも、さすがにカップルとかの憩いの場には入りにくいわけか』

 

「は? カップルが多いから? 全然違うぞ」

 

『えっ?』

 

 ボッチの方に突っ込んでくると思っていたが、来たのは若干呆れの入った声での否定だった。

 

『だって、1人で入るのは恥ずかしいんでしょ?』

 

「否定はしない」

 

『それってカップルが多いからじゃ?』

 

「それは違う」

 

 じゃあ、何だというのか。そんな表情をエリアルははっきりと浮かべていた。

 

「確かに入るのに恥ずかしいと思うのはあるが、ただそれだけなわけで、俺が1人で入りたくないのは盗撮されてツイッターとかに乗せられる可能性が高いからだ」

 

『あっ、そういうこと』

 

 これは実際に仭もチェーン店で、盗撮されたことがあるための危惧だ。

 なら、友人とかを誘えばいいのにと思うだろうが、そもそも仭がスイーツ店などを除けば、1人で食べるのに適したチェーン店ですら行くこと自体は稀である。スイーツ店については言わずもがな、連れを連れてくるのが難しい。

 

「野郎同士で行ってくれる奴はいるわけがないし、女子は簪以外は道中で偶々遭遇した時に誘わなきゃいけないし。あー、本当にままならない。1人用のスイーツ店とかできないものか」

 

 エリアルは馬鹿な発言に突っ込まないことにする。素にしろボケにしろ面倒になりそうだからだ。

 

「…って、そういえばさっきカップルの憩いの場とか言ってたが、さっきのはそれも違うと言う意味での否定だからな」

 

『えっ?』

 

 浮かべるはスイーツを食べながら、男女が楽しく会話をしている光景。――とても妬ましい光景だ。

 だが、仭はそれは違うと言う。

 

「ああいう光景は、店で初めて会っての会話なパターンもある。天野先輩曰くだが、男がスイーツ好きで恥ずかしがりながらも、店に1人で入るというポジションで、女を誘ってるらしい」

 

『……えー』

 

「俺が前に声かけられたことあるだろ? あれがおそらくそう」

 

 まさかスイーツ店が出会いの場と化しているとは。

 スイーツ店に男が1人でという姿もそれなりにいたが。それもてっきり1人でスイーツ店に入るのが、ある程度市民権を得ているからだと思っていた。

 

『最近じゃそうなってるのね』

 

「先輩曰くだがな。…って、もういい加減帰るか。()の事もあるし」

 

 ちなみに話の内容が一部あれなので、2人は帰り道の道中にあった林へと寄り道をし、そこで会話をしていた。

 

 

 

 そして家の前近く。

 

「おっ、メア」

 

 家の前まで来ると、キジ白猫の姿。当然仭が呼んだメアとは、この猫の事である。その声で仭に気付いたキジ白猫――メアは、此方へと歩いてきて足にすり寄ってくる。

 

「おーい、やめろって。制服に毛が付く」

 

「なぁーお」

 

「…ったく」

 

 そう言いながらも、仭はしゃがんでメアを撫で始める。エリアルに対してとはえらい違いである。

 

『……飼い主の方もこのぐらい可愛げがあるといいんだけど』

 

「じゃあ、()()()頑張れよ」

 

「んなぁー」

 

『…………』

 

 メアの頭から手を離し、最後にそう言うと仭はドアを開けて中に入っていく。エリアルの言葉や視線に関しては、諸事情もあるためやはりというかスルーする。

 

「ただいまーっと」

 

「いらっしゃ……何だお前か」

 

「一応カードを買いに来た客でもあるぞ俺は」

 

 仭の発言からある程度察せたかもしれないが、ここはカードショップであり、また仭の家でもある。そして今話しているのがここの店主かつ家の主であり、仭の親代わりの存在だ。

 

「…しかし、この時間帯で珍しく客が1人もいない」

 

「ああ、珍しくな。少し前までは少しはいたんだが」

 

「まっ、そんな日もあるだろう。”爺さん”よ」

 

 爺さんと呼ばれた店主の名は倉間玲(くらまれい)。風貌が渋い不良のような雰囲気の中年で、基本的に1人(+1匹)で店を開いている。

 ちなみに玲が爺さんと呼ばれているのは、呼ばれている本人の意向だったりする。

 

「客がさっぱりっつうわけで、ショーケースに入ってる方を買え」

 

「売り上げに貢献させてもらおうと思ってるけれども、生憎買うのはパックの方」

 

 パックの代金を玲の前に差し出しながらそう言う。それを分かっていたのであろう玲は代金を受け取ると、パックの方を指差す。代金分取っていけ、とそう告げていた。

 

「…おっ」

 

 そして代金分取ったパックを開封してカードを確認していると、イラストにホイル加工されているカードが1枚。

 スーパーレア。だが、これは既に持っている。必要というわけでもない。となれば当然――

 

「売るか」

 

「…おい、さっき言ったことをもういっぺん言ってみろ」

 

「記憶にございません」

 

『換金するって決めるのは早いわねー』

 

 だってレアカード当たるとは思ってもいなかったし。今日売らなくともどうせ後で売ることになるし。

 そう心の中でエリアルに返していると、来客を示すベルが鳴った。

 

「来た」

 

「いらっしゃい…って、恵か」

 

 銀髪でツインテールの髪の少女が――扉の前にいたメアを腕の中に収めながら、店の中に入って来た。

 彼女はレイン恵。それなりに交友はあるがあまり喋らず、また猫好き?であることぐらいしか分からないアカデミア女子学生だ。

 

「てか、何をナチュナルに(うち)の客寄せを中に連れて来てるんだ」

 

「んなぁーお」

 

「メアはごめん、と言っている」

 

「悪いと思ってるなら、まずその腕の中から抜け出そうか」

 

「…それは拒否する」

 

「お前がかよ」

 

『…相変わらず、ちょっと分からない子ね』

 

 その言葉に確かにと同意する仭。元々アカデミアでもあまり会わず、カードショップに来た時くらいにしか話さないと言うのもあるが、本当によく分からない。

 分かるとすれば――予想できることとすれば、ここに来たのはおそらくカードを買いに来たわけではないということだ。

 

「ところで、今日もそいつに会いに来ただけか?」

 

「そう」

 

「何か買う気は?」

 

「特にない」

 

「…………」

 

 予想通りだった。となれば、中へ入ってきたのも何となく考えが付く。

 

「で、外も寒かったし、そいつ連れて中に入ろうと思ったと?」

 

「そう」

 

「……何か言うことは?」

 

「…メアは暖かい」

 

 頭を抱えたくなる。

 どうしたものかと悩んでいると、今まで黙っていた玲が会話に入って来た。

 

「はぁ、お前ら外のデュエルスペースの方に行って、デュエルでもして来い」

 

「は?」

 

 いきなり何だと一瞬思うが、すぐに客寄せのためかと頭に思い浮かぶ。だが、

 

「客寄せになる…のか?」

 

 デュエルをしたところで、それを見てた野次馬がカードショップに行くことになるとは考えにくい。そう思っての問いだったが、

 

「知らん」

 

「あっ、やっぱり」

 

 やるだけやっておけという意味だったようだ。ちなみに恵はメアの喉を撫でながら、此方を見ている。

 

「話を聞いていたか?」

 

「聞いていた。問題ない」

 

「なら、行って来い」

 

 そういうわけで、半ば追い出されたような気がしながらも、仭は恵(+エリアルとメア)と共に近くの広場にあるデュエルスペースへと向かい、たどり着く。フィールドに立つ前に使ってやろうかと、エリアルに視線を送ってみたが、

 

『え、遠慮しとく』

 

 嫌そうなのをむき出しに断られた。別にアンデット化させて、その反応を楽しむとか、本気でこれっぽちも考えてはいないと言うのに。そうなったのを見ても、良い気分にはならないのだから。

 

「…準備はまだ?」

 

「おっ、悪い。ちとデッキをどうするか悩んでいてな。今決まった」

 

 エリアルに使うかどうか確認している間に、恵は既にデュエルフィールドへと立っていた。それに内心少し驚きながらも、恵と向かい合うようにデュエルフィールドに立つ。

 

「さて、始めるか」

 

「…勝敗を」

 

「「デュエル」」

 

仭:LP4000

恵:LP4000

 

「まずは…私…ドロー」

 

 先行は恵。

 

「発動する。手札から、通常魔法 おろかな埋葬。デッキからゾンビキャリアを墓地に」

 

(相変わらず何というか…)

 

 デュエルの進める際の、カードのプレイ宣言が独特だ。

 

「モンスターを伏せる。カードを1枚セット。…終了」

 

『挙動も薄いわよね。仭みたいに』

 

「(いや、確かに挙動というか、リアクションは薄めと自覚してはいるが…あそこまでじゃない筈だ)俺のターン、ドロー。通常魔法 撲滅の使徒を発動。セットされた魔法・罠カード1枚を選択して破壊し、ゲームから除外する。その伏せカードを破壊」

 

 破壊したカードは聖なるバリア -ミラーフォース-。定番の強力な攻撃反応型罠だ。

 

「破壊したのが罠カードなため、お互いのデッキを確認し、同名カードを全てゲームから除外する。…さて、デッキ交換して確認だ」

 

「承諾」

 

 お互いに前に出て来て、自分のデッキを相手へと渡し、確認する。

 破壊し除外した罠カードが制限であろうが、デッキからの除外を合わせて3枚に達しようが、ルール上必ずお互いのデッキを確認しなければならない。噂によれば、この時自分も相手にデッキを見せなくてはいけないのが嫌で投入しない者が多いらしいが、そういうのを気にせず仭は情報アドバンテージを優先して入れている。――女子生徒相手に使ったら、何故か周囲からブーイングを受けるのが多いが。

 

(…馬頭鬼は1枚は手札にありそうだな。で、多分セットモンスターがゴブリンゾンビだろうし…面倒になりそうだ)

 

『……舐める様に見てないで、早く返しなさい』

 

 そしてエリアルにも何故か。

 そんなことはしていないと、内心突っ込みながらデッキを返し、自分のデッキも返してもらう。デッキをディスクにセットし、シャッフル。元の場所へと戻った。

 

「続ける。フレムベル・ヘルドッグを召喚」

 

フレムベル・ヘルドッグ

ATK:1900

 

 溶岩の様な身体をした犬。攻撃力は1900で効果も悪くなく、下級アタッカーとしては申し分ない。

 

「セットモンスターに攻撃」

 

「…セットモンスターはゴブリンゾンビ」

 

ゴブリンゾンビ

DEF:1050

 

 その名の通り、ゴブリンのゾンビ。ヘルドッグに噛み付かれ、破壊された。

 

「使用する。フィールドから墓地へ送られたゴブリンゾンビのモンスター効果。デッキからゾンビ・マスターを手札に加える」

 

「フレムベル・ヘルドッグが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、デッキからこのカード以外の守備力200以下の炎属性モンスター1体を特殊召喚できる。炎王獣 バロンを特殊召喚」

 

炎王獣 バロン

ATK:1800

 

「そのまま追撃」

 

「うぐぅっ……ダメージ、中」

 

恵:LP4000→2200

 

「カードを1枚伏せてターンエンド」

 

仭 LP4000

手札4

・モンスター

フレムベル・ヘルドッグ

炎王獣 バロン

・魔法・罠

伏せ1

 

恵 LP2200

手札4

・モンスター

なし

・魔法・罠

なし

 

「不利…私…ドロー」

 

 やはり機械的ともいうべき挙動。こんなだから色々とアカデミアで噂が立ってしまうのだ。

 

「出す。ゾンビ・マスター、攻撃表示」

 

ゾンビ・マスター

ATK:1800

 

 マントを身に着けた、不気味な青年らしき人物が現れる。

 

「これ。手札の馬頭鬼を墓地に送って、ゾンビマスターの効果。私の墓地からゾンビキャリアを特殊召喚」

 

ゾンビキャリア

ATK:400

 

 保菌者の名を持つアンデット族のチューナー。ゾンビキャリアを指定するシンクロモンスターが、ゾンビ化したリメイクモンスターであるのはその為なのだろうか。

 

「レベル4のゾンビ・マスターに、レベル2のゾンビキャリアをチューニング。シンクロ召喚、大地の騎士ガイアナイト」

 

大地の騎士ガイアナイト

ATK:2600

 

 馬の背中から騎士の上半身が生えたような形状のシンクロモンスター。効果は持たないものの、攻撃力は高めである。

 

「行って。大地の騎士ガイアナイトでフレムベル・ヘルドッグに攻撃」

 

仭:LP4000→3300

 

「発動する。手札から、通常魔法 一時休戦。お互いにカードを1枚ドロー。そして次の私のターンまでお互いに受けるダメージは0になる」

 

「一時休戦か…」

 

「終了」

 

 ターンが移る。

 

(手札6枚。手札も悪くはない。一時休戦がなかったら、攻めていたんだが)

 

 恵のデッキはおそらく【シンクロアンデット】であろう。

 ゾンビキャリアを利用し、シンクロモンスターを大量展開するのが主な戦術だ。下手をすればあっという間に1キルされる。

 

「(できるだけ壁を作って置かないとまずい。――やるだけやるか)自分フィールドに炎属性が存在するため、怨念の魂 業火を特殊召喚」

 

怨念の魂 業火

DEF:1900

 

 焼かれている鐘の中から焼き殺されたであろう人物の魂。普段はアタッカーなりに使うのだが、今回は炎王モンスターの補助と壁の役割だ。

 

「この方法で特殊召喚した際、自分フィールド上の炎属性モンスター1体を破壊する。バロンを破壊。続いて炎王獣 ガルドニクスを召喚。カードを2枚伏せてターンエンド」

 

炎王獣 ガルドニクス

DEF:1700

 

『大きな動きがなくて、面白みがないわね』

 

(デッキがいつも【リチュア】みたいにぶん回るかってんだ)

 

仭 LP3300

手札2

・モンスター

怨念の魂 業火

炎王獣 ガルドニクス

・魔法・罠

伏せ3

 

恵 LP2200

手札3

・モンスター

大地の騎士ガイアナイト

・魔法・罠

なし

 

「このまま…私…ドロー。出す。マスマティシャン、攻撃表示」

 

マスマティシャン

ATK:1500

 

(墓地肥やし要因が来やがったか)

 

「モンスター効果。デッキから2体目の馬頭鬼を墓地に」

 

『…ちょっとやばくなるんじゃない?』

 

 ちょっとで済むレベルではおそらくない。

 

「発動する。墓地の馬頭鬼の効果。墓地に存在するこのカードをゲームから除外する事で、自分の墓地からアンデット族モンスター1体を特殊召喚する。墓地からゾンビ・マスターを特殊召喚」

 

ゾンビ・マスター

ATK:1800

 

「使用する。手札のピラミッド・タートルを墓地に送って、ゾンビマスターの効果。墓地からゴブリンゾンビを特殊召喚」

 

ゴブリンゾンビ

ATK:1100

 

「これ。手札から、通常魔法 生者の書-禁断の呪術-を発動。墓地からゾンビキャリアを特殊召喚。あなたの墓地の炎王獣 バロンを除外」

 

(あー、くそっ。サーチ効果が…)

 

ゾンビキャリア

ATK:400

 

 次のスタンバイフェイズ時に墓地に存在しなければ、効果は発動されない。墓地アドバンテージも潰すのが、生者の書-禁断の呪術-の利点である。

 

「レベル4のゴブリンゾンビに、レベル2のゾンビキャリアをチューニング。シンクロ召喚、獣神ヴァルカン」

 

獣神ヴァルカン

ATK:2000

 

 ハンマーを持つ虎の獣人。その効果は無慈悲な海竜族のように、バウンス効果である。

 

「発動する。獣神ヴァルカンがシンクロ召喚に成功した時、お互いのフィールドの表側表示のカードを手札に戻す。私のフィールドの獣神ヴァルカンと、あなたのフィールドの炎王獣 ガルドニクスを手札に」

 

「トラップ発動、ジェネレーション・チェンジ。ガルドニクスを破壊し、2体目を手札に加える。そして効果はヴァルカンのみに適応される」

 

 エクストラデッキへ戻っていくヴァルカン。ヴァルカンの効果は1ターンに1度しか発動できないため、2回目の登場を心配する必要はない。

 

「使用する。ゴブリンゾンビの効果。デッキから2体目のゾンビ・マスターを手札に」

 

「…………」

 

「発動する。墓地の馬頭鬼を除外して、墓地からゾンビキャリアを特殊召喚。レベル4のゾンビ・マスターに、レベル2のゾンビキャリアをチューニング。シンクロ召喚、蘇りし魔王 ハ・デス」

 

(…もう大雑把でもいいだろうに)

 

蘇りし魔王 ハ・デス

ATK:2450

 

 毎回毎回『発動する』『使用する』などと宣言して、面倒ではないのだろうか。いや、ある程度省略してる箇所はあるのだが、それでももっと省略しても良いと思える。機械的と言っても間違いではないであろう宣言を聞くのに、仭は少々疲れてきた。

 

『馬頭鬼は墓地にいなくなったけど、ゾンビキャリア自身の効果がまだねぇ』

 

「これ。手札を1枚デッキトップに戻して、ゾンビキャリアの効果。墓地から特殊召喚。レベル4のマスマティシャンに、レベル2のゾンビキャリアをチューニング。シンクロ召喚、天狼王 ブルー・セイリオス」

 

天狼王 ブルー・セイリオス

ATK:2400

 

 シンクロモンスター計3体。

 

『うん、改めて見ると…ちょっとやばいね』

 

(レベル6シンクロ×4にも成り得たが、3体でも並の相手ならゲームエンドレベルだわな)

 

 とうとう攻撃してくるかと思っていたが、

 

「これ。手札から、速攻魔法 異次元からの埋葬。除外されている馬頭鬼2体とゾンビキャリアを墓地に戻す」

 

『容赦なさすぎでしょ!』

 

「(お前が言うな。いや、俺もか)…まさか異次元からの埋葬が手札にあるとはな」

 

 さらにシンクロ召喚を重ねてくるようだ。

 

「発動する。墓地の馬頭鬼を除外して、墓地からゾンビキャリアを特殊召喚」

 

「……何回ゾンビキャリアを行使する気だ」

 

 心なしかゾンビキャリアが疲れてる様に見える。ゾンビだけれど。

 

「レベル6のガイアナイトに、レベル2のゾンビキャリアをチューニング。シンクロ召喚、スクラップ・ドラゴン」

 

「今度はスクラップ・ドラゴンか」

 

スクラップ・ドラゴン

ATK:2800

 

「発動する。墓地の馬頭鬼を除外して、墓地からゴブリンゾンビを特殊召喚。使用する。スクラップ・ドラゴンの効果。私のフィールドのゴブリンゾンビと、あなたの後からセットしたカードを破壊」

 

「破壊される前に発動させてもらう。速攻魔法 炎王炎環。業火を破壊し、墓地のガルドニクスを蘇生する」

 

「…またかわされた」

 

 珍しく愚痴るように言う恵。だが、表情にあまり変化は見られない。

 

「使用する。ゴブリンゾンビの効果。デッキからゾンビ・マスターを手札に。…これ。手札をデッキトップに戻して、墓地からゾンビキャリアを特殊召喚。レベル8のスクラップ・ドラゴンに、レベル2のゾンビキャリアをチューニング。シンクロ召喚、神樹の守護獣-牙王」

 

神樹の守護獣-牙王

ATK:3100

 

 自身の効果で特殊召喚されたゾンビキャリアは再び除外される。シンクロ召喚の素材に使われた回数は、計6回。

 

(でまあ、シンクロモンスターは3体か。並の相手なら終わってるかもな。…並の相手なら)

 

「戦闘。蘇りし魔王 ハ・デスで炎王獣 ガルドニクスを攻撃」

 

「速攻魔法 禁じられた聖槍。ハ・デスの攻撃力を800ポイントダウンさせる」

 

蘇りし魔王 ハ・デス

ATK:2450→1650

 

 ハ・デスが光線を放つが、ガルドニクスに弾かれ、その際の僅かな余波が恵へと跳ね返る。

 

恵:LP2200→2150

 

「…天狼王 ブルー・セイリオスで炎王獣 ガルドニクスを攻撃」

 

「相手によって破壊されたガルドニクスの効果で、デッキから炎王獣 キリンを特殊召喚」

 

炎王獣 キリン

DEF:200

 

「…神樹の守護獣-牙王で炎王獣 キリンを攻撃」

 

「破壊され墓地へ送られたキリンの効果で、デッキから炎属性モンスターを墓地へ送る。炎王神獣 ガルドニクスを墓地に」

 

「…ターンエンド」

 

蘇りし魔王 ハ・デス

ATK:1650→2450

 

 凌いだ。恵のフィールドには3体のシンクロモンスターがいるが、炎王神獣 ガルドニクスを特殊召喚→破壊する手立てもあるため、逆転可能だ。

 

「(それに手札も伏せカードもない。次にあっちが引くのはゾンビ・マスターと分かっているし…これは行けるか?)俺のターン、ドロー。…って、これかよ」

 

『あっ、私が入れたらって進めたカードだ』

 

「……通常魔法 炎王の急襲を発動。デッキから炎王神獣 ガルドニクスを特殊召喚」

 

炎王神獣 ガルドニクス

ATK:2700

 

「ガルドニクスでハ・デスを攻撃」

 

「うっ…ダメージ、小」

 

恵:LP2150→1900

 

「…カードを1枚伏せ、エンドフェイズ時、ガルドニクスは破壊される」

 

仭 LP2900

手札2

・モンスター

なし

・魔法・罠

伏せ1

 

恵 LP1900

手札0

・モンスター

神樹の守護獣-牙王

天狼王 ブルー・セイリオス

・魔法・罠

なし

 

「私のターン、ドロー」

 

「スタンバイフェイズ、ガルドニクスは蘇る」

 

炎王神獣 ガルドニクス

DEF:1700

 

「そしてガルドニクス以外を破壊。牙王はカード効果の対象にならないだけであり、当然例外ではない」

 

「けど、天狼王 ブルー・セイリオスの効果。炎王神獣 ガルドニクスの攻撃力は2400下がる」

 

 ガルドニクスによって身を焼かれながらも、その状態で跳び上がり、ただではやられぬとばかりに全身砲弾となって、ブルー・セイリオスはガルドニクスの身体を貫く。

 これで下がるのは攻撃力というのは、どうなのだろうか。どう見ても守備力の方も下がっていそうなのだが。

 

「知っている。で、守備表示であろうとゾンビマスターの攻撃力に敵わない。だから(非常に気に食わないが)これで決着をつける。トラップ発動、火霊術-「紅」」

 

「それは…」

 

「炎属性モンスターをリリースし、そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを与える。リリースするのは当然ガルドニクス」

 

「……負け」

 

恵:LP1900→0

 

 周囲を今更ながらに見ると、観客はあまり見られない。元々この周辺にあまり人がいなかったのだろう。

 

「あー、正直焦ったな」

 

『ふふーん、だから入れておけば、もしもの時に使えるって言ったでしょ?』

 

 はっきり言って、ビートダウン色が強いデッキである【炎王】では、火霊術-「紅」より炎王炎環の方が使い勝手が良いことが多い。それに全体除去もあるため、採用しなくとも良いと言ったのだが、しつこく押してくるので一応入れておいたのだ。

 

(とりあえず今後も使うかどうかは保留としておくか)

 

『これを機にキックファイアとかバックファイア入れたらいいんじゃない?』

 

(保留だな)

 

「なぁー」

 

「ん?」

 

 メアの鳴き声が聞こえたので、その方向を見ると恵へと歩み寄っていた。

 

「お前…飼い主よりそっちか」

 

『振られてやんの』

 

「もし俺が負けた時にもそっちに行ってたら泣くぞ」

 

「…なー」

 

「…それは絶対にない、と言っている。私も同意」

 

『ないない』

 

 2人と1匹に完全否定されてしまった。猫(あくまで恵が言っただけだが)にまでだ。

 

「こう見えてもナイーブなんだぞ俺は」

 

「「『…………』」」

 

「何か言えよ」

 

 エリアル以外にも呆れたような表情を向けられた気がした。あくまで気がしただけだが。

 

 

 

 




1話であった”運が良かった出来事”というのは、この人物と出会って養子にされたことです。
後、素性が明らかでないオリ主を引き取ったということから予想してる通り、店長はただのカードショップの店長じゃないです。



仭「はい、今回は5回連続で出てる奴が、1人で今日の最強カードを担当だ。えっ? デュエル相手だった恵に、いつも隔離しない限り傍にいる精霊(ストーカー)はどうしたって? 恵は今なお猫と戯れ、もう一方はその様子を羨ましげに眺めてるよ」

仭「今回は……結構効果使われていた馬頭鬼で良いか。そこ、選ぶの面倒臭がってるって言わないでくれ」

仭「自身を墓地コストとして除外して、アンデット族モンスターを蘇生する起動効果。ゾンビ・マスターとかと違って手札コストも不要で、ただ墓地にこいつと他のアンデット族がいればいいだけなのが、1つの強みだな」

仭「後はレベル制限がないってところか。アンデットワールド影響下では、多少蘇生の幅が広まるな」

仭「じゃ、また次回に。…いい加減俺を引っ込めてほしい」

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