遊戯王5D's とある異分子の物語   作:狂戦士

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すいません。進路関係やら展開やら、色々あってかなり遅れました。



第6話 揉め事にはデュエルを、悪にはヒーローを

 デュエルアカデミアも休日である今日(こんにち)

 その日に仭はバイトという名目で、家でもあるカードショップを手伝っていた。

 

「ふぅ…客の数も上々ってとこか」

 

 ため息を吐きながら、店はとりあえず繁盛していそうだと呟く。

 レジで立ちっぱなしなのは別段慣れてしまったことではあるが、どういうカードが売れてるか、このカードにはどんなカードが合っているかなど、色々と聞いてくる数が多いことから疲れてしまう。

 

「それもこれも客寄せパンダならぬ客寄せ猫のおかげでもあるか」

 

 外を見れば、入り口の横で客に戯れて貰っている(一応)看板猫であるメアの姿。

 屈んでいる客は水色の髪に、眼鏡を掛けていてまるで――

 

「…簪に似てるなぁ」

 

『いやいやいやいや、本人でしょうが』

 

「で、その隣の奴は十六夜、か」

 

 メアを堪能している簪の傍らには、一緒に来たのであろうアキが立っている。早く店内に入りたいのならば、普通に先に入ってしまえばいいのに、猫と戯れたいのだろうか。

 ――と、思っていたのだが、彼女はただ簪を待っていただけらしく、一緒に入って来た。しかしいつの間に交友関係を結んだのだろうか。

 

「いらっしゃい」

 

「いらっしゃったよ。愛しい君に会うために」

 

「…………」

 

「無視するんだね。あっ、もしかして放置プレイに突入する?」

 

 無表情で淡々と言ってくるのに遠い目をしつつも、このまま話が進んでしまうのもあれなので、否定の言葉を告げる。

 

「違う。ただどういう反応すればよいか分からなかっただけだ」

 

「そういう時はね。――そうか。俺も会いたかったよ。って、笑顔で反応すればいいんだよ」

 

「…じゃあ、次に言われた時に覚えていたらそう言うよ」

 

「それじゃあリトライ。いらっしゃったよ。愛しい君に会うために」

 

「…いつまで続けてるのよ」

 

 さすがに突っ込みが入った。まあ、それはそうだろう。

 

「ほら、仭。いらっしゃったよ。愛しい君に会うために」

 

「はぁ…また今度な」

 

「じゃあ、明日の朝言ってね」

 

「覚えてたらな。…で、どうした? 呆れたような表情して」

 

「…あなたが()と仲良いってのは、本人から聞いてたけどいつもこんな感じなの?」

 

「(簪、ね)まあ、こんな感じというか…平常運転というか…こいつの様子からそういうの分かってるだろ?」

 

「…そうね。あなたと同じで、案外愉快って感じだわ」

 

 よく言われる、と返しながら、苦笑を浮かべる仭。

 そしてようやく収まりがついたところで、2人に話しかける。

 

「さて、”友人”としての会話はここまで。ここからは”店員”としてだ。冷やかしに来たわけではなく、客としてきたんだろう。…明確に用があるのは十六夜(そっち)だけみたいだが」

 

「ええ、まあ」

 

「うん、私は付き添い。…でも、そうだね。最近の売れ筋を聞いてみたい」

 

「売れ筋か。…んー、カードプールが多少充実してきたからか、『ラヴァル』が最近売れてきてるな。後はやっぱりニューキングの使っていた『シンクロン』と、それを素材にしたシンクロモンスターが今のところ売れてきてる」

 

「ふーん」

 

「ただ、やっぱりステータス主義の風潮が未だあるのか、『シンクロン』はそれなりというところではあるが。対策取るんだったら、前者には闇のデッキ破壊ウイルス。後者には魔のデッキ破壊ウイルスを薦める」

 

 『ラヴァル』は魔法カードを封じられるのに弱く、『シンクロン』は攻撃力が低いのが多いことから、仭の薦めは間違っていないものの、生憎この2人のどちらのデッキにも合わない。

 

「シンクロンは今買った方がいいというのはあるの?」

 

「そうだなぁ。クイック・シンクロンと『シンクロン』を素材にしたシンクロモンスターは価格が上がるかもだし、買うのならばそうした方がいいかもな」

 

 それを聞いてきたのか、近くにいた客がクイック・シンクロンや『シンクロン』を素材にしたモンスターを買っていった。

 それを見ている簪が何故かにやりと笑っている。

 

「ありがとうございましたー」

 

「計画通り。じゃあこの店の売り上げに貢献させるという目的は終わったから、後はアキに任せる」

 

「本当に貢献させる気あるなら、パックの1枚だけでも買えよ。…で、十六夜はやっぱり植物族か?」

 

「ええ、何か適当なのをお願いするわ」

 

「そうだなぁ。…これとかどうだ?」

 

 これは長引きそうだと思いながらも、ひとまず横にあるパソコンを使い始め、カードの画像を見せ始めた。

 

 

 

「…うん、いい買い物だったわ」

 

「そりゃどうも」

 

 植物族と言っても明確に求めるカードがあったわけではなかったため、それなりに長引いてしまった。その間にも他の客へ対応したので疲れもある。

 

「ふぅ…」

 

「そういえば気になってたけど、店員はあなた1人なの?」

 

「…いや、一応店長が居間()の方で別の仕事中だ」

 

「…他に店員は?」

 

「バイト募集中」

 

 とはいえ、ずっと2人で店を切り盛りしていたわけではない。今までにいたのは既にやめていて、偶々バイトがいないだけである。

 

「そういえば最近はずっと他にバイトがいないよね」

 

「ああ、正直言うと今も何とかってとこだ。…何で入んないんだろうな。別に時給も悪くないんだが」

 

 人手不足なので、誰かバイトに入って欲しいのが最近の悩みだ。アカデミアに行ってる間の事を考えると、その間に働いてくれる人物が入って欲しいとは思うが。

 

「…大変そうね」

 

「そう思うならば、ここで働いて見ないか? 1回くらいバイトを経験するのも、悪くはないと思うが」

 

「…………」

 

 何とも言えない表情だった。己の世間からの認識を気にしていることから、冗談と取られたのだろう。

 が、仭の方としては別段冗談というわけではない。店長である玲もそう言うのは余り気にしない性分であるし、アキの人間性も交友がまだ多くはないとはいえ、それなりに知っている。故に本人がやりたいと言えば、現在人手不足というのも相まってほぼ通ると思う。

 とはいえ、彼女がやってきたこともやってきたことなので、それによって客が一時来なくなってしまうかもしれないが、この辺りは馴染みの客が多いし、彼女が危害を加える存在じゃないと徐々に知れ渡ると思っているために、その辺りは仭は気にしていない。――いや、仭の関するところではないため、玲にとっては気にすることであろうが。

 

「遠慮しておくわ」

 

「そうか。気が向いたらいつでも声をかけてくれ。多分通ると思うし」

 

 通る以前にバイトをやってくれることはおそらくないだろうが、と内心思いながら店内を何となく見渡すと、突如――周囲からしたら僅かにではあるが――顔をしかめた。

 

「……ちっ」

 

 そして小さく舌打ちを零す。それに気付いた2人が疑問に思っていると、そのすぐ後ろを13,4歳くらいの少年2人が通り、外へ出ようとした。

 だが、その前にレジから出た仭が少年2人の内の1人の腕を掴み、静止させる。

 

「はい、ちょっと待って」

 

「…何ですか?」

 

「鞄見せてみろ」

 

「はぁ? 何で…って、ちょっ!」

 

 腕を掴んだ相手の了承を取らずに仭は勝手に鞄の中を荒らす。その行動に思わずアキは声を掛けようとするが、その前にそんな事をした理由が分かった。

 

「…店の商品。金を払っていないのに、何で帰ろうとしてるんだ?」

 

「「…………」」

 

 

 

「はぁ…何でこういうことするかなまったく」

 

『店員が1,2人ってのもあるんでしょうね』

 

 壁に付いているフックに下げられていた、50枚入りのカードパックを盗られかけた。レアカード等はそんな入っているわけではないが、実用性のあるカードはそこそこ入っていたりする。

 

「それにしてもよく分かったわね。万引きするとこを目撃なんて」

 

「もう片方が実行したのを見えないような位置にいたから、不自然には思っていた。まあ、手の動きが若干見えていたから分かったわけだが」

 

「客などへの対応の傍ら監視も行う。カードショップのバイトって大変なんだね」

 

「…自分で言うのもなんだが、俺が特殊なだけだからな? それに店内が広すぎるわけではないためにできることだし」

 

 そう言いながら仭はため息を吐いた。その表情は若干ではあるも、不機嫌そうに見える。

 

「仭、ちょっと機嫌悪くなってるね。そんなに反省の態度が見られないのがむかついた?」

 

「…『運が悪かった』って聞こえた方が、どちらかというと機嫌の悪い要因かな」

 

 あの少年2人の窃盗がばれた際の反応は、悪びれもせずに不貞腐れるという、反省が一切見られない態度であった。最近の未成年はどうしてそう犯罪を犯罪だと思わない傾向にあるのやら。

 そんなことを思っていると、外でセキュリティと少年2人の内の片方の保護者と話をしていた玲が中に入って来る。

 

「はぁ…おい仭」

 

「ん?」

 

 奥の方へ、と仕草をしながら呼ぶ玲に、仭は素直に応じて共に移動する。

 

「何?」

 

「…面倒な事になった」

 

「……その様子からして、”万引きしたのを通報したことに対して”のクレーム?」

 

「ああ」

 

 肯定の言葉にやはり、と思うと同時に何度目かのため息を吐いてしまう。

 子供の万引を通報された保護者が、逆に店に理不尽なクレームをつけるケースだ。

 

「『商品を子供が取れるような場所においてある方が悪い』とか言ってきたわけか」

 

「全くその通りだ」

 

「で、何を言っても親が引き下がらない」

 

「ずっと平行線だ。正直セキュリティも手を焼いている」

 

 偶にこの手の輩は現れるのだが、この店においてその手の輩は非常に面倒極まりない。

 

「…で、どうする気?」

 

 それ故”対応”は予想が付くが――というか、何度もその対応をしていたのだが、聞かずにはいられなかった。

 

「これ以上時間をかけるのも迷惑だ。デュエルの勝敗で決めるということで、双方に納得させた」

 

「…………」

 

 仭はいつものように呆れの目線を送りながら、こういう所がこの世界でのある意味”歪み”なのだろうと思う。

 

(どうしてこう拳で語るよろしく、デュエルで何でもかんでも決着を付けようとするのか。手っ取り早いと言う意味ではメリットかもしれないが)

 

 セキュリティ関係者と知り合いで、罪を揉み消されてしまうとかならば話としてはともかく、専門の学校や職業、オカルト的要素があるとはいえ、言ってしまえば”カードゲーム”であるデュエルモンスターズで決着を付けようとするのが未だ理解することができない。

 まあ、これは玲の方が面倒臭いと言う意味合いもあったとはいえ、妥協した結果と言えるのだが。

 

「お前の言いてぇことも分かるがな。こっちは暇がない」

 

「あぁ、分かってる」

 

 本来は真摯に対応するべきなのであろうが、此方も暇がないというのはどうしようもない事実だ。だからデュエルの結果に妙に律儀なのを利用させてもらうとする。

 こういう風に色んな事に妥協なりして大人へと変わっていくのだろう。――脳筋思考(デュエルで何もかも決める事)が妥協であるのは、色々と駄目な気もするが。

 

「じゃあ、俺がやってくるから、その間レジ立ち頼む。ちょっと息抜きしたかったし」

 

「そうか。…んじゃ任せた」

 

 デュエルの相手をバトンタッチして貰い、デュエルディスクとデッキを取りにレジ前へと戻る。すると当然と言うか、簪とアキが歩み寄って来た。

 

「何を話していたの?」

 

「万引きした奴らとデュエルすることになって、それでじ…店長からその相手を受け賜ったとこだ」

 

 その言葉だけで2人は察したようだ。さすがはデュエル万能論である。何も疑問に思われてない。

 仭はバイクに乗っての(ライディング)デュエルにどんな意味があるのか悩むのと、同じくらい疑問に思っているのに。

 

「…普通って本当に何なんだろうな」

 

「えっ?」

 

「何でもない。――さて、行くかな」

 

『ちょいちょいちょい。トラウマ植えつけるような展開しか浮かばないんだけど。さすがに今回は相手が若すぎるって』

 

 トラウマを植え付けるとは失礼な。そりゃ万一にも負けないよう【炎王】や【リチュア】などとは違う無慈悲なガチデッキを使おうとはしているが。

 エリアルの言うことにも一理あるが、それでも曲がりなりにもデュエリストだし、付け上がらないようにする意味でも、心をへし折っても(全力で相手しても)いいだろうと半ば開き直り始めていると、簪に袖を引っ張られた。

 

「ん、何だ簪?」

 

「変わって」

 

「は?」

 

「私がやるから」

 

「いや、は?」

 

「というか、むしろやらせろ」

 

「その命令形はちょっとおかしいと思うんだが」

 

 そもそも何故にデュエルをやりたがるのか。そんなデュエル馬鹿ではないはずなのだが。

 

「けど、お前がやるって…俺が負けると思ってるわけか?」

 

「違うけどさ。ほら、私の方が仭の使おうとするデッキよりは、文句言われないだろうし」

 

(文句?)

 

「言い分は分かるがデュエルで決着って、言質取ってるしな」

 

「皆が皆、聞き分けが良いわけじゃないよ」

 

「俺も最初はそう思っていたが、意外と皆聞き分けが良かったぞ。…いや、聞き分けというより律儀であるってのが正しいか」

 

(…どんなデッキを使おうとしているの?)

 

 どういうデッキかは分からないが、会話からいつものデッキではないことが伺える。

 そして結局、何故か引かない簪に疑問を抱きながらも仭は彼女に任せることにした。理由は簪が言うように自分がやるよりは文句は言われにくいであろうことと、言わずもがなデュエルの実力からだ。

 

「それじゃ、俺はデュエルの結果を見届ける意味で行くが…十六夜はどうするんだ?」

 

「私も行くわ」

 

 

 

 外へ出た後、中学生2人らとデュエルスペースへ移動。

 そして色々話し合った末、デュエルのルールはバトルロイヤルとなり、ルールとしては以下である。

•手札は5で、ライフ4000

•ライフが0になった者から抜ける

•全員1ターン目は攻撃不可

•相手または相手と自分に影響を及ぼすカード(など)は発動時にプレイヤーを選択してそのプレイヤーのみ影響を受ける

•モンスターの永続効果、フィールド魔法、永続魔法、永続罠は基本全員が効果を受ける

•抜けたプレイヤーの墓地は干渉不可、コントロールを奪ったモンスターは元の持ち主が抜けてもそのまま使用可

•ターンをカウントするカードは発動者から一巡して1ターン

 

「意外だな。2対1だし、初期手札を10枚とか言うと思ったが」

 

「…いや、やりそうって気はしなくはないけど…ないでしょ」

 

(どうだか)

 

『簪ちゃんのデッキで初期手札10枚じゃ、1巡したらすぐにデュエル終わっちゃうわよ』

 

(確かに)

 

 心の中で2人にそれぞれ返答し、件の彼女へ視線を移してみる。

 

「やだなぁ。仭と違って私はそんながめつくないよ? リアリストな女じゃないよ?」

 

「はいはい。分かったから行ってこい。負けても怒らないから」

 

「じゃあ、わざと負けていい?」

 

「頭と顔面。アイアンクロー食らいたいのはどっちだ?」

 

 手を握ったり開いたりする動作を見せると、怒らないって言ったのに、と愚痴を零しながらデュエルスペースへ向かって行った。

 もしわざと負けたらきっと殴っていいと思う。嘘つきと言われようと女を殴るなど最低だと言われようと、間違っていない筈だ。

 

「ったく、碌な事を言わねぇ」

 

「…それ多分あなたも人の事言えない気がするけど」

 

「言うようになったなぁお前も。…と、始まるぞ」

 

 その言葉にアキも視線を移すと、3人はデュエルディスクを構えている。

 

「「「デュエル!」」」

 

 こうして仭にとって個人的に発端がくだらないと言わざるを得ないデュエルが始まった。

 しかし本当に何故簪はデュエルをやりたがったのだろうか。それを気にしながら仭はデュエルを見守る。

 

「先行は私。ドロー。カードを2枚伏せてターンエンド」

 

「早っ」

 

 僅か数秒でターンが終了した。

 続いて1人目の少年へとターンは移る。

 

「それだけか。俺のターン、ドロー! D.D.アサイラントを召喚! カードを3枚伏せてターンエンド!」

 

D.D.アサイラント

ATK:1700

 

「アサイラントかぁ」

 

「除外系かしら」

 

「現状じゃ何とも言えないな」

 

 あの伏せカードがマクロコスモスだったら、場合によってはまずいだろう。

 2人目の少年のターンとなる。

 

「俺のターン、ドロー! 俺は手札を1枚捨てて、THE トリッキーを特殊召喚!」

 

THE トリッキー

ATK:2000

 

 攻撃力は高くないものの、手札1枚から特殊召喚できる半上級モンスター。サイバー・ドラゴンには劣るも、フィールドの状況に左右されないのが利点でもある。

 

「墓地のレベル・スティーラーの効果発動! 自分フィールド上のレベル5以上のモンスター1体のレベルを1つ下げ、このカードを墓地から特殊召喚する!」

 

「ありゃ…」

 

THE トリッキー

レベル5→4

 

レベル・スティーラー

DEF:0

 

「そして俺はこのターン、通常召喚をまだ行っていない。レベル・スティーラーをリリースして、魔法剣士トランスをアドバンス召喚! そしてトランスのレベルを1つ下げて、再びレベル・スティーラーを守備表示で特殊召喚!」

 

魔法剣士トランス

ATK:2600

 

魔法剣士トランス

レベル6→5

 

 続いて異空間の旅から帰還した魔法剣士+レベルを盗んだことでその背中に星の模様が付いた虫。

 

「カードを2枚伏せてターン――」

 

「あっ、そのエンドフェイズ、永続罠 王宮のお触れを発動。これ以降罠の発動を無効にする」

 

「っ!?」

 

「その発動にチェーンしてトラップ発動、魔宮の賄賂! 魔法・罠カードの発動を無効にして破壊する!」

 

 エンドお触れ(サイク)の発動を無効にしようと、魔宮の賄賂を発動してくる。

 相手に1枚のドローをさせるデメリットがあるとはいえ、比較的手軽に扱えるカウンター罠である。

 

「だよね。それじゃあトラップ発動、神の宣告。ライフを半分払い、魔法・罠カードの発動、モンスターの召喚・反転召喚・特殊召喚のどれか1つを無効にし破壊する。無効にするのは当然魔宮の賄賂」

 

「同じくトラップ発動、神の宣告! ライフを半分払って、神の宣告を無効だ!」

 

「…………」

 

簪:LP4000→2000

 

少年1:LP4000→2000

 

 簪の発動した神の宣告は無効となり、魔宮の賄賂の効果は有効。王宮のお触れは無効となった。

 

「魔宮の賄賂のデメリット効果でドロー」

 

「…今度こそターンエンドだ」

 

簪 LP2000

手札5

・モンスター

なし

・魔法・罠

なし

 

少年1 LP2000

手札1

・モンスター

D.D.アサイラント

・魔法・罠

伏せ1

 

少年2 LP4000

手札0

・モンスター

THE トリッキー

魔法剣士トランス

レベル・スティーラー

・魔法・罠

伏せ2

 

(グッドスタッフと上級モンスターを召喚する軸ってところか? アサイラントの方は分からないが)

 

「大丈夫かしら簪。伏せカードが減ってるとはいえ、さすがに妨害がまだ厳しいだろうし」

 

「負けたら負けたでその時だ。アイアンクローを簪に食らわすことになる」

 

「えっ?」

 

『えっ?』

 

「ん? 怒らないとは言ったが、罰を与えないとは言ってないぞ」

 

『うわっ、最っ低』

 

 嘘は付いていない。だと言うのに2人の視線が厳しい。

 罰がアイアンクローというのがいけなかったのだろうか。

 

「まあ、でも大丈夫だと思うぞ。お前もあいつの実力知ってるだろ? 一応あの2人も弱いってわけじゃあないというのは確かではあるも…まだ相手が悪い。勝てるかどうかは伏せカード次第だろうな」

 

 別段モンスターを処理するのは、そう難しくないはずだ。故に伏せカード次第となる。

 

「私のターン、ドロー。通常魔法 ヒーローアライブ。ライフを半分払って、デッキからレベル4以下の『E・HERO』1体を特殊召喚する。デッキからレベル4のE・HERO シャドー・ミストを特殊召喚」

 

E・HERO シャドー・ミスト

ATK:1000

 

簪:LP2000→1000

 

「特殊召喚に成功したシャドー・ミストの効果。デッキから『チェンジ』と名の付いた速攻魔法を手札に加える。速攻魔法 マスク・チェンジを手札に」

 

 マスク・チェンジ。『M・HERO』を特殊召喚するため必要なチェンジカードの1枚であり、速攻魔法故に追撃やサクリファイス・エスケープに利用することもできる強力なカードである。

 

「通常魔法 E-エマージェンシーコールを発動。デッキから『E・HERO』を手札に加える。E・HERO エアーマンを手札に加え、そのまま通常召喚」

 

E・HERO エアーマン

ATK:1800

 

「エアーマンの効果発動。召喚成功時、エアーマン以外の『E・HERO』の数だけ相手フィールド上の魔法・罠を破壊できる。…じゃあ、さっきは色々とやってくれた君の最後の伏せカードを破壊」

 

「っ! 次元幽閉が…」

 

「さて、行くよ。通常魔法 融合を発動。場のシャドー・ミストと手札のバブルマンを融合。来て、極寒を纏いしHERO。E・HERO アブソルートZero」

 

E・HERO アブソルートZero

ATK:2500

 

 Zeroの登場に相手2人は顔を歪ませた。

 裏側表示である時以外でフィールドを離れた際には、かの禁止カードであるサンダー・ボルトそのものと化すのだから、無理もないが。

 

「アサイラントの効果発動はダメージ計算後だから…仕方ないね。Zeroでトリッキーを攻撃。瞬間氷結(Freezing at moment)

 

「ぐっ…」

 

少年2:LP4000→3500

 

「マスク・チェンジを発動。自分フィールドの『E・HERO』を墓地に送り、エクストラデッキから同属性の『M・HERO』を特殊召喚する。Zeroを墓地に送ってM・HERO アシッドを()()召喚」

 

M・HERO アシッド

ATK:2600

 

 Zeroに代わって現れるは、仮面を被り銃を持つHERO。

 そのモンスターの登場に相手らだけでなく、仭も思わず表情が引き攣った。

 

「アシッドの効果発動。特殊召喚成功時、相手フィールド上の魔法・罠をすべて破壊し、相手フィールド上のモンスターの攻撃力を300ポイントダウンさせる。けどその前に、フィールドから離れたZeroの強制効果で、相手フィールド上のモンスターをすべて破壊する。Zeroの効果はそっちに。アシッドの効果はそっちに発動するよ」

 

魔法剣士トランス

ATK:2600→2300

 

レベル・スティーラー

ATK:800→500

 

 Zeroの効果によってアサイラントが。アシッドの効果によってもう片方の少年の魔法・罠が破壊され、モンスターの攻撃力が下がる。

 

「いつ見てもえげつないな」

 

「…あなたがそれを言える?」

 

「まあ、ガルドニクスと鳳凰神の効果両用とかで、相手に睨まれることはあったけど俺は全体破壊で、あっちは相手フィールドのみ全体破壊だし」

 

『私としてはどっちもどっちなんだけどね。簪ちゃんの方が鬼畜とか言ってるけど』

 

 2人の反応はどうも同じみたいだ。簪の方がそのコンボを成立させやすい分、鬼畜だと思うのだが。

 

「アシッドでダイレクトアタック。Acid bullet」

 

「ぐっ、くそぉぉぉぉっ!!」

 

少年1:LP2000→0

 

 1ショットキル。

 通常ならばここで終わるが、バトルロイヤルなためにまだ続く。

 

「もう片方1ショットキル行くか?」

 

「いや、さすがに…」

 

「速攻魔法 フォーム・チェンジ。自分フィールドの『HERO』融合モンスター1体をエクストラデッキに戻し、そのモンスターの元々のレベルと同じレベルでカード名が異なる『M・HERO』1体を、『マスク・チェンジ』による特殊召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する」

 

「何っ!?」

 

「あっ、多分やる気だあいつ」

 

『やる気ね』

 

「…えっ、本当に?」

 

「アシッドは融合モンスター。アシッドを戻して、M・HERO ダイアンを変身召喚」

 

M・HERO ダイアン

ATK:2800

 

 アシッドが光に包まれると、現れるのは騎士の様なHERO。

 それを見てもう1度1ショットキルをやらかすかもしれないと、仭とエリアルは思った。

 

「ダイアンでトランスを攻撃。ディスバーション」

 

「うぐっ…!」

 

少年2:LP3500→3000

 

 ダイアンの攻撃により、攻撃力の下がったトランスが破壊される。そしてこの瞬間、と簪は呟いた。

 

「ダイアンが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、デッキからレベル4以下の『HERO』と名のついたモンスター1体を特殊召喚できる。デッキから2体目のシャドーミストを特殊召喚。シャドー・ミストでレベル・スティーラーに攻撃」

 

 守備表示なため、ダメージはないもこれでモンスターは0となった。

 

「エアーマンでダイレクトアタック」

 

「ぐあっ…!」

 

少年2:LP3000→1200

 

「くっ…まさか1ターンでフィールドが…」

 

「ああ、フェイズ移行してないから分かってると思うけど、まだバトルフェイズ終わってないからね?」

 

「はっ?」

 

「速攻魔法 瞬間融合。自分フィールドのモンスターで融合召喚する。エアーマンとシャドー・ミストを融合。来て、闇を纏いしHERO。E・HERO エクスダリオ」

 

E・HERO エクスダリオ

ATK:2500

 

 最後に現れるはその名に闇を意味するHERO。これには相手だけでなく、多くの周囲も呆然としていた。

 

「エクスダリオの攻撃力は墓地の『E・HERO』1体に付き、攻撃力が100ポイントアップする。ダーク コンセントレイション」

 

E・HERO エクスダリオ

ATK:2500→3000

 

「ダイレクトアタック。Dark(ダーク) diffusion(ディフュージョン)

 

少年2:LP1200→0

 

 1ショット2キルという形で決着。

 

「I win。かんかんかーん」

 

「…やりやがった」

 

「まさか本当にやるなんて」

 

『何か楽しそうねぇ』

 

 腕を掲げて勝ち名乗りを上げる簪の様子に、3人はそれぞれの反応をしていた。

 

 そしてこの後、保護者の方は一応渋々ながらではあるも律儀に引き下がった。

 簪の手札が良すぎたが、一応シャッフルしたのはデュエルディスクでなく相手だったので、クレームを付けるにも付けられないのもあるのだろう。

 

 

 

 

 

 また簪が何故デュエルをやりたがったかというと、

 

「勝ったからご褒美頂戴」

 

「デュエル前に言ったことを思い出せ」

 

「何て言ったんだろうね。そんな都合の悪いことは忘れたよ」

 

「都合の悪いこと言ったってのは、覚えてるじゃねぇか」

 

 (たか)るのが目的だった。

 

 

 

 

 




店側がデュエルに負けたら、万引きを無かったことにするってことになってるのは作中で上げられてる通り、万引きした子供の親の言い分に玲が妥協し、セキュリティを無理矢理抑えた形です。
変に店についての悪い噂を流されるのも困るから、デュエルの律義さを利用した結果です。

それと仭がデュエルで物事を決着付けるのに疑問を抱くのに対しては、1対1で対戦するスポーツなどに例えて貰えば多分分かる。


『おい、デュエルしろよ』
     ↓
『おい、柔道しろよ』


『ならばデュエルだ!』
     ↓
『ならば将棋だ!』

仭にとっての感覚は未だこんな感じ。



簪「仭がボイコットしたので、私1人で今日の最強カードをやります」

簪「今日の最強カードはE・HERO エクスダリオ。えっ? 何でそれ? だって他は今後できるだろうけど、エクスダリオは今回だけだろうし」

簪「それは最強カードって言えるのか? 最強カードは担当が言ったことが全てだよ」

簪「基本的に攻撃力を上げて殴るだけだね。でも、相手に『こいつ何考えてんだ?』って、思わせて動揺を誘えるよ」

仭(…不安になって戻ってきたが案の定か。ならねぇよ)

簪「他は【D-HERO】にも入れられるかもね。エアーマンとかシャドー・ミスト入れられるし…アドレイションとかはどうした?」

簪「……このカードを使うなら、相手モンスターを融合素材にできる融合カードがあればいいね」

仭(普通に他のを選べばいいのに)


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