異常者の俺でも冒険者になれば王様になれますか?   作:端午

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第14話 真意

 戦闘が終わったのを確認し、浅黄さんに連絡を入れる。

 

 なんとか救助の出発前に連絡をすることができたようだ。

 

 救助の費用は馬鹿にならない。Fランク迷宮だと100万円であり、駆け出し冒険者に引退を勧めるには十分過ぎる額だろう。

 

 唐突に河童が消えて、彼は今怯えているかもしれない。早く合流するとしよう。

 

「リリ、あの冒険者を探して」

「それならもう来ますよ」

「おーい!」

 

 なんで?そう口にする前に声が聞こえてきた。

 何らかのスキルか魔道具でこちらの状況を知っているのだろうか。

 

「良かった。あいつは倒したんだな」

「うん」

「ありがとう。おかげで命拾いした」

「気にしないで」

「いやー、河童が消えたときはお前がやばいんじゃないかって焦ったぜ」

 

 なるほど。それでこちらに来たのか。

 

 確かに俺たちは互いに実力を知らない。そう判断するのも無理はないか。

 

 そんなことを考えていると、彼は申し訳なさそうに話し出した。

 

「……ギルドの依頼で来てくれたんだよな?その…代金のことなんだけどさ」

「ちがうよ」

「え?」

「ギルドを通さないで、個人で来たんだよ。代金はこの魔石でも貰えればいいよ」

「そうなのか。本当にありがとう!」

 

 この魔石100万円するから、救助代金と見れば妥当なんだけどさ。

 

 そんなことよりも確認したいのは指輪の所有者だ。

 

 幸せの王子の落とすアイテム、サファイアの指輪。

 その効果は使用者の負傷に応じ、味方の使用する魔道具の効果にプラス補正がかかる。

 

 丸1日逃げ切った彼か、トドメを指した俺か、所有権は使って見ればわかるか。

 

 先程の戦いで若干負傷した水虎に指輪を渡す。

 

「着けて」

「おう?」

「リリ、変化はある?」

「若干神通力が強くなったような?」

 

 若干か、怪我もそうだしな。

 とりあえず所有権は俺にあるということでいいだろう。

 

 さて、ここでの用事も済んだし、帰るとするか。

 

「あ、ちょっといいか?」

「なに?」

「いつかお礼がしたいんだけど。連絡先とか交換しないか?」

「うん、いいよ」

 

 連絡先を交換し、そのまま一緒にギルドまで行くことになった。

 

「俺は東雲颯太、高校1年生の一ツ星冒険者だ」

「僕は比嘉秀羽、高校1年の二ツ星」

「まじか、同い年で二ツ星かよ。やっぱすげぇヤツなんだな」

「そうでもないよ」

 

 すごいのは俺ではなくカードの力だ。

 

 俺はカードの力を借りているだけ。人間の限界はたかが知れてる。

 それを超える日はいつ来るのやら。

 

 

 

 東雲君と別れたあと、迷宮攻略に向かおうと思っていたら、浅黄さんから呼び出された。

 とりあえず、近所のギルドまで来て欲しいらしい。

 

 さて、覚悟を決めてギルドに入る。警戒を怠ってはいけない。

 

 なぜなら、彼は信用できないからだ。

 

 彼は元四ツ星冒険者であり、今もある程度の戦力を保有し続けているだろう。

 騎士との遭遇時は、それを使って救助に来てくれた。

 

 しかし、今回は違った。彼は動かった

 俺の実力を信用している可能性もあるが、たった一ヶ月の付き合いで、そうはならないだろう。

 

 俺と東雲君か、迷宮の場所か、はたまた仕事の都合だろうか。

 

 後ろの2つは違うか。

 

 イレギュラーエンカウントとの戦いは死や後遺症を伴う可能性がある。

 それに向かう異常者はこの2つなど顧みないだろう。

 

 彼が東雲君と接触していないことを考えれば……。

 

 彼は俺に対し何らかの因縁を持っている。

 

 そう考えれば、日頃の過保護な行動にも説明がつく。

 彼の真意を見極めなければ、今後の活動に支障が出るかもしれない。

 

「お待たせしました」

「それほど待ってませんよ。まずはご無事なようで何よりです」

「レンタルしたカードのおかげです」

「いえいえ、それを使いこなすのも、比嘉さんの実力によるものです」

「では、褒め言葉として受け取っておきます」

「……比嘉さんは何故イレギュラーエンカウントに挑んだのですか」

 

 社交辞令を済ませ、本題へと移行した。どうにかして彼の真意を聞き出したい。彼は続けて言う

 

「前回は偶然でも、今回は意図的に挑んだ。イレギュラーエンカウントの脅威は知っているはずなのに、なぜ貴方がそんなことをするのですか」

「人助けです」

 

 偶然気づいてしまったから、助けに行った。

 そういう意味では、今回も前回と同じく偶然と言えるだろう。

 

「貴方は他人のために自身の身を顧みないとそういうのですか」

「いいえ、他人は守る、自身も守る。俺は手の届く全てを守ります」

「それは何故ですか」

「僕は欲張りなので」

 

 彼の顔からは笑みがこぼれる。

 

 グッドコミュニケーションを取れたようだ。

 

 そして、彼の真意も見えてきた。なぜなら俺はそれを知っているからだ。

 

「では、ここら辺で失礼します」

「大した用もなくお呼び立てしてすみません」

「いえいえ、気にしないでください」

 

 知っているからこそ、俺は彼の期待には答えられない。

 けれども、今それが露見すれば、支援を断ち切られかねない。

 

 偽らなければ、隠し通さなければ、英雄であらねばならない。

 




【Tips】サファイアの指輪
 幸せの王子のドロップ品。サファイアとルビーと金箔で飾られた指輪。成金みたいで好まない人も多い見た目をしている。
 使用者の負傷に応じて味方の使用する魔道具の効果を増幅させる。負傷の具合にもよるが、低位の魔道具で高位のそれよりも大きい効果を出すこともある。
 また、真の効果は、魔道具の効果の増幅でなく、魔道具の本質を引き出すこととも言われている。

 ちなみにアンデッドに装備させると、もとから死んでいるため、一切の負傷判定が得られない。
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