異常者の俺でも冒険者になれば王様になれますか?   作:端午

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第16話 なんやかんや言って

「ここがEランク迷宮かぁ。あんましFランク迷宮と変わらなそうだな」

「見た目はあんま変わんないよね。けど、罠とかあるからあんま前出ないで」

「ああ、作戦通り後ろから支援に徹してるぜ」

 

 颯太は初めてのEランク迷宮に気分が高揚しているようだ。それとは逆に青葉さんは冷静だ。

 歴の長さが顕著に表れる光景だ。

 

 俺たち3人はゴールデンウィークを利用し、Dランク迷宮では最大の全20階層の迷宮を攻略しに来た。

 これまで青葉さんと颯太それぞれと何度かともに迷宮攻略をしてきたが、元々は青葉さんと2人の予定の日に、颯太がちょうどよく声をかけてきたので連れてきた。

 これで召喚枠が4枠増え、戦力が増す。

 

 安全面を考慮し、一ツ星の颯太は後方へと下がり、青葉さんから借りたカードで支援役を務める。

 

 そして俺と青葉さんは交代で前衛をする。今日はまず青葉さんから始めだので、俺は殿を務めている。

 

「シュウ、最近あの方がいることが多くありませんか?願いは諦めたのですか?」

「これも必要だから」

「……そうですか」

 

 リリの言う通り先週末、先々週末も青葉さんとの攻略であり、春休みのような活動はできていない。

 

 けれども、人との縁を蔑ろにはできない。

 特に青葉さんは元四ツ星冒険者の妹であり、有用な情報を握っている可能性も高い。

 できれば上手く取り入っておきたい。

 

 それにリリは知らないだけで、平日の放課後はソロでFランク迷宮を攻略している。

 

 たいてい水虎の眷属召喚で圧勝するので、移動用に騎獣として一反木綿を召喚する。

 そうすると彼女の出る幕は無いのだ。

 

 適当なところで青葉さんと交代する。リリには籠手となってもらい、彼女越しに顕明連を握る。

 これは王子との戦い以来俺たちの迷宮攻略の定番となった。

 わざわざ顕明連をカード化したかいがあった。

 

「付喪神いいなぁ。俺も早く装備化のカードが欲しいな」

「いや、比嘉くんの真似は危険だからやめときな。リビングアーマーとか鎧系にした方がいいって」

「それもそうか」

 

 2人には人形のことは隠したまま、親から付喪神を譲り受けたと説明してある。

 

 うちの親はそんな支援してくれるわけないので、出くわせば露見するかもしれない。

 まあ、その時は適当に解釈してくれるだろう。

 

「100万円ガチャで出たりしないかな」

「それってギルドのパックのこと?やめときな。絶対ろくなの入ってないから」

「Bランクが出たって話も聞くし」

「いやいや──。」

 

 ギルドが作るカードパック、通称100万円ガチャ。ギルド側の目的は不良在庫の処理だろう。高ランクが出たという情報も見るが、その全てがマイナススキル持ちであったそうだ。買うべきではない。

 

「やめたほうがいい」

「秀羽もガチャが嫌いか?」

 

 そうじゃなくて。いや、たしかに嫌いではある、だからこそ言いたい。

 完全なる経験則だ。ガチャやくじで当たりが出たことなんてない。単に俺の運が良くないのだろうけども。外れる危険がある時点で、その選択はとるべきでない。

 

「運任せはよくない」

「まあ、そうか」

 

 

 

「安全地帯についたし、少し休憩しよ」

「了解。秀羽、この前の資料で聞きたいことあるんだけどさ」

「どこ?」

 

 ここで勉強する訳ないし、資料とは武術の方だろう。

 颯太は資料と照らし合わせながら体を動かす。確かにバランスが悪い動きをしている。

 

「もっと腰を落としたらいいんじゃねぇか?」

「なるほど」

「そこから開いた手を前に突き出す」

「めっちゃ力入るな!」

 

 水虎が口を挟み、張り手を教え始めた。

 目利きのスキルは罠だけでなく、動きの悪さも見抜けるようだ。

 指導には重宝するな。高速で相撲に逸れていくことを除けば水虎は指導者として素晴らしい。

 

「駅前にできた服屋がオシャレでね」

「そうなんですかぁ。マスター、買ってきてくださいよぉ」

 

 別の方に目を傾ければ、青葉さんと一反木綿が雑談をしていた。

 見た目が大きな紙でしかない一反木綿はどうオシャレできるんだ?軽く頼む割に難易度高くないか?

 

「シュウ、私もオシャレがしたいです!」

 

 手元にいたリリが口を出してくる。彼女はペット用の服がちょうどよく着れるだろう。

 いや、変化で姿が変わるので一応人間用の服も着れるのか。

 

 変化を考えるなら、籠手になる度にその場に服が落ちて、回収するというのは面倒だな。

 オシャレはなしの方向でいいか。

 

「ガウガウ!!」

「ワゥゥン!」

 

 青葉さんの大型獣たちが走り回っている。自由だなぁ。

 

 それとは対照的に、颯太のモンスター達は水虎の指導に加わっている。

 あの動きはどう見ても相撲だ。彼らは素手で戦う気なのだろうか。

 

 俺は手持ち無沙汰になったのでリリの頭を撫でていた。

 

 

 

 

 迷宮の外に出れば、完全に夜となっていた。

 ここまで暗くなってしまうなら、2日ではなく、3日に分けた方が良かったな。

 

「終わった!家に帰って寝たい。迷宮の中とか緊張して全然寝れん」

「東雲君は迷宮に泊まるのは初めてなんだっけ?また機会があるだろうし慣れないとやばいよ」

 

 そうでもないみたいだ。

 ちゃんと寝なければパフォーマンスは落ちる。今日は目立った影響はなかったが、何かあれば危険だ。

 

「取り分は全部売って3等分でいいよね?」

「俺は何にもしてないし遠慮しとくわ」

「いやいや、ちゃんと支援が役に立ってたから」

 

 そういえば、颯太にはこういった話はしてなかったな。

 

 大抵のチームは揉め事を避けるために一律人数等分らしい。

 

 禍根は残したくないので、大人しく受け取ってもらった。

 

「君らってゴールデンウィーク中にまだ迷宮攻略するの?」

「そのつもりだったけど、友達と遊ぶ予定が入っちゃったからなしになるな。青葉さんは?」

「私も予定でいっぱいだから無理かな」

 

 2人ともたまにしかない連休で迷宮攻略をしないらしい。

 

 青葉さんはわかっていたが、颯太もまたエンジョイ勢なようだ。

 

「秀羽は?」

「今から別の迷宮に行くつもり」

「休めよ」

「流石にそれはやばいでしょ」

「大丈夫」

「急に知性が消失した?!」

「戻って!普段の理性的な比嘉くんに戻って!」

 

 消失してないんだけど。理性的に問題ないと判断したからの発言だ。

 普段の行動から自身の限界は正しく把握しているし、現在の健康状態も変わりない。だから──

 

「大丈夫」

「ダメだ。ここに知性はない」

「迷宮の中に落としてきたの?」

「じゃあ拾いに行かなきゃ」

「「休め!」」

 

 

 2人に引き止められている間に終電の時間になってしまった。

 ギリギリ終電に乗り込み、帰路に着く。予定していた迷宮には始発で行くか。

 

 今日は一旦家へと帰ろう。

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