異常者の俺でも冒険者になれば王様になれますか?   作:端午

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第2話 仲裁しなよ

 他の場所よりも開けたそこにはモンスターはいなく、かわりに次の階層へと繋がる階段がある。

 俺たちは腰を下ろし、しばし休憩をとり始めた。

 

「少しお話を伺ってもよろしいですか?」

「うん、いいよ」

「では、マスターはなぜ危険を犯してまで、迷宮攻略なんてするのですか?」

 

 妖狐が尋ねてくる。これが先ほど言っていた『話』とやらだろう。

 この『話』は妖狐にとってどれだけの意味を持つのだろうか。

 俺に対して問う最初の質問、きっと重要なものに違いない。

 

「力が欲しいんだ」

「力?」

「この世全ては無理だとしても、それでも手の届く全てを思い通りにできるような強大な力。それが欲しいんだ」

「それは何故」

「僕は欲張りだからだよ」

 

 俺が迷宮に挑む理由。それは簡単なことだった。

 欲張りだから、人並み以上を求めてしまう。

 それを実現するための力を求めてしまう。

 ただそれだけ。

 

「決めました。貴方を主として正式に認めましょう。貴方とならば、私の宿願も果たせるはずです」

 

 急になにか言い出した。お前は何者だよ。

 それに主として認めるも何も、俺に逆らえないだろ。

 

 Dランクとはいえ、この臆病な運動音痴となら俺はいい勝負ができるはずだ。

 

 ただ、そんなことより聞くべきことは──

 

「君の宿願ってなに?」

「それは秘密です。貴方は知らないままで良いのですよ」

 

 ダメか。人には話させたくせに。

 

 ただ、前の言葉からして、その願いは俺の願いに相乗りするはず。

 ならば、野心の効果もプラスの方向に作用するだろう。

 

 俺の考えをよそに妖狐は続ける。

 

「マスター、私は貴方に忠誠を誓います。その代わりに名付けては貰えませんか」

 

 名付け。それをすれば、カードは初期化できなくなり、また、ロストしても同種族同性のカードを用いて復活させることができる。

 

 名付けをすることは何ら問題ない。ただ、そんな急に言われても困る。

 

 名前……ようこ、あやかし、きつね、あぶらあげ……ダメだ。

 

 オリジナリティ溢れるものを考えるのは諦めて、テレビで見た芸能人の名前から取っておこう。

 

「うん。君の名前は『リリ』だ」

「ありがとうございます。マスターのお名前も教えていただけますか」

「僕は比嘉秀羽」

「はい、シュウ。よろしくお願いします」

 

 顔を合わせて数時間、俺たちはやっと自己紹介を終えた。

 

 

「ところで、この階段下に繋がってますけれど、このまま攻略を続けるおつもりですか?」

「うん、今日でこの迷宮を踏破する」

 

 リリの顔が少し引き攣る。

 

 だが実現可能な提案のはずだ。迷宮は階層を下るほどモンスターが強くなるらしいが、この迷宮は5層しかなく、変化は微々たるものであろう。

 

 先程のような失態がなければ多少の余裕もあるはずだ。

 

「1戦目のようなのと、2戦目のようなの。どちらがいい?」

 

 1戦目では俺が前衛を務め、彼女は後方から援護をした。

 それに対し、2戦目では俺が彼女を抱えて敵の中を駆け回った。

 

「あの大立ち回りを見ると、抱えられた方が安全な気がしますね。2戦目の方でお願いします。」

 

 その選択は敵との距離が近づくものの、俺がそばで守ることができる分安全と言えるだろう。

 

 故に、その返答は予想通りであり、俺は荷物の中から抱っこ紐を取りだし装備した。

 これが俺の考えてきた最善の臆病、運動音痴対策であった。

 

「うわ、マジですか」

 

 リリには不評だが、実用性を重視したものであり、嫌なら代替案を提案して欲しいものだ。

 案は無いようなのでそのまま、2階層へと突入していく。

 

 階段を降りた先は、代わり映えのしない遺跡である。

 

 この迷宮は全5階層遺跡型であり、これといった問題も対策もない。

 事前に調べた情報と同じで安心する。そして、安全地帯を出る前に試しておく。

 

 出でよ。ワイルドウルフ。

 

 

 

【種族】ワイルドウルフ

【戦闘力】15

【先天スキル】

・野生の勘:敵の急所への命中率にプラス補正。

【後天スキル】

・奇襲:相手に気づかれていない攻撃にプラス補正。

 

 

 

「ワォン」

 

 問題なく召喚することができた。

 目の前に現れたワイルドウルフは、リリを一瞥したあと、こちらに軽く吠えてきた。彼なりの挨拶だろう。

 

「マスター、やはりこの装備は辞めましょう。今、絶対舐められてしまいましたよ」

「ワゥ?」

 

 確かにこの装備では舐められるだろう。

 しかし、臆病で運動音痴な時点で舐められることは避けられない。

 実用性で考えこのままにするべきだろう。

 

 リリの提案を却下し、迷宮の奥へと進む。

 

 

 

 次の戦闘は頭数が増えたことで、1階層の時よりも戦闘の効率が上がる。しかし、

 

「ワゥゥ?」

「はぁぁ?私の援護がなければ貴方ロストしてましよねぇ?」

 

 この獣たちは仲が悪すぎる。

 

 俺(リリを抱えている)に向けて飛びかかったゴブリンを、ワイルドウルフが横から突き飛ばした。

 そして狙いがワイルドウルフに移った所をリリが仕留めたのだ。

 

 その間、俺はゴブリンは見えていたし、ワイルドウルフもまた見えていたので、回避行動はとらなかった。

 狙って連携させたつもりだったのだが……。

 

 そもそもワイルドウルフは敵と同じFランクであり、1体1で戦えば、仮に倒せたとしても瀕死になってしまう。

 リリも1人では戦力にならない。

 

 故に連携して戦うよう仕組んではいるのだが、どうにもそれが気に入らないようだ。どうしたものか。

 

 

 

 

 

「シュウ、私はこの狼よりも敵を倒しましたよ!リストラしましょう!」

「ワォン!」

 

 どうにもできなかった。

 

 その調子のまま、2階層を越え3階層の安全地帯まで到達した俺たちは休息をとっていた。

 とりあえず、2体の頭を撫でておく。

 

 それにしても、なんでこんなに競い合っているんだよ。

 

 ただ、リリの私怨をよそにしても、他のカードの性能は見ておきたい。

 しかし、要求を鵜呑みにすれば、増長させてしまうかもしれない。

 

 気が進まないが、しかたない……。

 

 

 

 

 

 これはダメだ。タイムパフォーマンスもコストパフォーマンスも酷すぎる。楽な道なんてないのか。

 

 俺は今、スケルトンとゾンビを連れて、4階層へと到達した。

 

 アンデッドが多いこの迷宮は攻略しやすい一方で、手に入るカードもまたアンデッドばかり。

 知能の低い彼らはどうしても被弾が多くなってしまう。

 

 ここまでで数枚手に入ったが、3階層攻略でどれも怪我を負ってしまった。

 これでは今日の攻略には使い物にならないだろう。

 

 最短コースを進んだ事で、戦闘自体は少なかったがそれでも被弾は前2つの階層よりも多い。判断を誤ったようだ。

 

 やむを得ず、俺の持つ中では優秀な2体を再び呼び出す。仲良くしてくれると良いのだが、

 

「頭は冷えた?」

「私はずぅっと冷静でしたよ。この狼と違いまして」

「ワゥワァウ!!」

 

 ダメか。どうしよう。ワイルドウルフの方は別にいい。

 問題はリリの方だ。こいつはそのうち流れ弾をわざと当てかねない。そんな気がする。はぁ……。

 




【Tips】舞台設定
 時代は物語開始時点で2018年3月。(原作でマロが冒険者になったのが2019年)
 場所は都会とも田舎とも言えない中途半端に栄えた街で、首都圏のどこかくらいの大雑把さで書いてます。
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