「お前ら、反省はしたか?」
「「……はい」」
俺たちはギルドの一室を借りて説教を受けていた。
俺と浅黄さん、赤塚さんの他にギルドのお偉いさんが何名かいる。
この件については全て俺が悪いのだが、カードをレンタルしていた浅黄さんにも監督責任が問われていた。
何とも申し訳ない。
また、この件が明るみに出れば、当然俺は犯罪者となる。
しかし、何故か赤塚さんが弁明し、この件はこの場限りで握り潰すこととなった。
それにより、俺に対する処遇は浅黄さんへの接触禁止と壊れた機械類と腰袋、衣類の弁償。
そして1年間の冒険者活動の自粛及びモンスターカードの没収となった。
さらに、浅黄さんへの接触禁止には、このギルドの利用禁止や、レンタルしたカードの返却も含まれていた。
自業自得ではあるものの、困った状況だ。
次のアンゴルモアがいつ起きるかも分からないのに、戦力を失った上、1年もの間を棒に振るってしまうことになる。
こんなことなら、両親の意見を振り切って中学の頃から冒険者になっておけばよかった。
それも後の祭りでしかないか。
「何かしでかす前には、連絡しろよ」
別れ際に赤塚さんは連絡先の交換を要求してきた。
断れない雰囲気なので大人しく従っておこう。
家に帰り、自室で思案する。今回の件で多くのものを失った。
レンタルしていた水虎と一反木綿は浅黄さんへ返却した。
カードホルダーに入れていたカードや殺生石などの魔道具は没収され、今どこにあるかも分からない。
手元に残ったのはサンチョ人形、リリ、顕明連の3つくらいのものだ。
サンチョ人形は体内に隠したままで、リリと顕明連はカードホルダーにしまうフリをして、これまた体内に隠していた。
カードホルダーは所有者にしか開けられないため、このことが露見することはない。
真偽判定の魔道具を使われればバレてしまうが、あれはそう簡単に持ち出されるものではない。
さて、今の俺にできることはなんだ。まずは、迷宮外での自己研鑽だ。
去年まで同様に、筋トレや素振りなどが基本となる。
次に、冒険者カードを偽装して迷宮攻略をすることだ。
迷宮への入場は全て冒険者カードによって管理されている。
裏を返せばこれさえ偽装すれば自由に出入りできる。
しかし、冒険者カードは先端科学を駆使して作られた人工魔道具であり、その偽装は困難を極める。
とりあえず、ネットで調べてみる。インターネットには膨大な情報があり、数多くのアクセス者がいる。
その中には俺のように冒険者カードの仕組みを知りたがる者もいるはずだ。
キーンコーンカーンコーン。
朝のホームルームの開始を告げるチャイムと同時に入室する。
担任はまだ来ておらず遅刻にはならない。予定通りだ。
そしていつも通り凛月が話しかけてくる。
「ギリギリだな。寝坊か?」
「ちょっとフランス語の勉強してて」
「第2外国語?意識高いなぁ」
日本の冒険者カードの情報だけでは、分からないことが多かった。
そのため、海外の類似品についても情報を集めていた。
しかし、厄介なことに外国人は外国語でネットに書き込んでいる。
翻訳するためにその言語を習得する必要があった。
現在、第6外国語としてフランス語を履修中である。
「そういえば、この間の資料めっちゃ分かりやすくて評判だよ」
「それはよかった」
「あれコピーして仲間内で回してもいい?友達もやばいらしくてさ」
「いいよ」
別になんでもいい。情けは人の為ならずってやつだ。
恩を売った時点で目的は達成していて、その先彼が何をしようと興味は無い。
ふと思ったが、1年の謹慎が終わる頃には彼は冒険者となっているだろう。
今の俺の戦力を鑑みれば、その面でほぼ同じラインに立つことになるだろう。
彼らの向上心次第ではそちらに合流した方が効率的かもしれない。
いや、無理か。大人数での活動とか俺には無理だ。
「秀羽さえ良ければ、今度勉強会とかしない?」
「……」
「注目を浴びるのが苦手なのはわかってるけどさ。6人程度ならどう?」
「……頑張ってみる」
「そうか!じゃあいつ空いてる?」
いつ空いているか。
今までは迷宮攻略で予定が埋まっていたが、もうそれはなくなった。相手に合わせるとしよう。
「いつでもいいよ」
「了解。日時は後で連絡するよ」
「うん」
1週間も経てば、冒険者カードの仕組みを理解することは出来た。
しかし、それは人口魔道具と呼ばれるだけあり、中には魔石などの迷宮由来の材料が使われていた。
つまり、今の俺に材料を集めることはできない。
それ以外にも、利用できそうな情報は遠隔停止操作がある。
冒険者がそれを紛失した場合、悪用されるのを防ぐため、ギルドに問い合わせれば、遠隔で機能を停止できる。
これにより、盗取しての利用はできない。
ここまでができないことだ。
世の中には悪い人も多いようで、冒険者カードの偽造を望む人も多い。
俺一人ではできなくとも彼らと協力すれば、話は別だ。
今日は協力者との会合の日だ。
人形で適当な大人の姿へと変身する。この人形は所持禁止の変身魔道具の中でも悪質な、身に着けた衣服まで変えてしまうものだ。
これで足がつく心配は無い。
待ち合わせ場所で待機していると、いかつい男が5人ほどやってきた。
そして、先頭に立つ男が口を開く。
「はじめまして、Mrバード」
「はじめまして、五十嵐組の皆さん」
続いて、警察が来た。
「動くな!武器を捨て、両手を上げろ!」
尾行に気づかないような奴らなら、今後の付き合いは危険だろう。
足を切るとするか。
俺は自分の姿を烏に変え、その場を飛び去った。
その後も鼠、蜘蛛、老人、鳩、と様々な姿に化けて警察を撒いた。
先ほどの連中はダメだったが、念の為他にもいくつかのグループに声をかけてある。そちらに期待しよう。
全滅だった。
彼らは今までどうやって凌いできたのか。とんでもなく運が良くて、それがちょうど今日つきが回ってきたのか?
この策はもう辞めにしよう。やはり他人に頼るのは間違っていたのだ。
俺は山奥の崖下に来た。
この崖の上には魔のカーブと呼ばれる転落事故の多い道路がある。
夜間は明かりが少ない上、時期によっては霧で覆われ、視界が悪くなる。
しかし、今は快晴の昼間、上から車が降ってくることはないだろう。
安心して崖下を闊歩できる。
当たりを見渡せば予想通り転落した車が落ちている。
中を見れば死体が残されている。
今回用があるのは彼らではなく、彼らの持ち物の方だ。
遠隔停止機能はギルドに申請した場合のみ行われる。
遺族が申請する場合もあるが、それを避けるためにも、家族全員で乗っていた車を狙う。
ここで入手出来れば、死人の冒険者カードを利用することができる。
ちょうど良さそうな車を発見し、ドアを開けようと手をかける。
「いやぁぁぁ!!」
上から叫び声が聞こえる。見上げれば1台の車が宙を舞っていた。
やむを得ず、体の一部を鳥へと変え、空を飛び車へと近づいた。
ドアを壊し、中を覗けば、スマホを握りしめた女性が1人。
ながら運転なんかするなよ。
シートベルトを引きちぎり、運転席にいた女性を抱えて車から飛び出した。
翼を羽ばたかせ勢いを殺し、何とか無事に着地する。
咄嗟に動いたので、顔がそのままだ。覚えられる前に、その場を後にした。
【Tips】倫理観ランキング(既出メインキャラ一覧)
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