異常者の俺でも冒険者になれば王様になれますか?   作:端午

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第27話 理不尽

 週末になり、俺は都会へと出向く。

 

 人が多く集まる場所には、同様に悪い人も多く集まる。

 

 俺は適当な大人の姿に化けて、人気が少ない路地裏を通り、その奥の建物の中に入る。

 

「ロン!タンヤオドラ1!はい、俺の勝ち!」

「安い手で上がんじゃねぇよ!」

「勝ったらいいんだよ!」

 

 いくつかの卓で麻雀をしている。表向きはそれだけの施設だ。

 

「チッ!ほらよ」

「クソッ」

「ヘヘッ、夕食は寿司でも取ろうかな」

 

 次々に勝者に向けて札束が投げられる。

 

 ここはいわゆる賭け麻雀が行われる施設だ。

 ここで一発当てれば、迷宮攻略よりも儲けることができる。

 

 ちょうど席が1つ空いている場所があった。

 

「混ぜてもらえるかな?」

「ああ、いいとも」

「じゃあ、これは仕切り直しということで」

「ああ、仕方ねえな」

 

 男たちはニタリと笑いながらそう返してきた。

 おそらくグルになって、俺をカモにしようとしてるのだろう。

 

 それでいい。むしろその方が好都合だ。

 

「さあ、始めよう」

 

 

 

 

 おかしい。

 

 ここで使われている人力の雀卓では手元に欲しい牌寄せ放題だ。

 数局すれば全ての牌を把握し、他の参加者の仕込みもわかる。

 

 そのはずなのに、配牌以外で欲しい牌が俺の手元に来ない。

 

 山にあるのだが奇跡的に俺の番を避けている。

 

 むりやり役を作ろうにも安い手にしかならず、次の1局で取り返される。

 このままでは惨敗にしかならない。

 

 用意しておいた500万円が数十分で飛んで行った。

 

 これだから運ゲーは嫌いなんだ。

 

「お前弱すぎだろw」

「もうやめといた方がいいんじゃねえのw」

「持ち金ももうないだろw」

 

 確かに持ち金は使い切った。

 

 だが、そろそろのはずだ。

 予想通り、小太りの男性が声をかけてくる。

 

「お困りのようですね。よろしければお金を貸しますよ」

「あなたは?」

「私は綿貫潔、ただの金貸しですよ。ほら、これで取り返してください」

 

 この男性はここら辺の賭場を牛耳っている悪徳金融の社長だ。

 債務者に対しては酷い手口を使うことから狸親父と罵られているらしい。

 

 狸は俺の前に札束を置いていく。

 

 その額は500万円程だ。

 

 さて、これで続きを始めよう。

 

 

 

 

 

 俺が500万円を使い切ると、狸は部下に指示を出し、俺を連行させた。

 

 建物の裏口から出て、すぐ隣の建物の地下へと降りていき、牢屋のような部屋へと案内された。

 

「この部屋だ。とっとと入れ」

 

 言われる通りに部屋に入ると、中には9名の男性が居た。

 

 どの人も暗い表情をしている。

 それもそのはず、彼らは俺と同じく借金を抱えて連れてこられた債務者なのだ。

 

 その部屋で少し待っていると、狸が部屋へと入ってきて、マイクを片手に話し出した。

 

「皆さん、大変お待たせいたしました。人数が揃ったのでゲームを始めさせていただきます」

 

 周囲がざわめき始める。

 

 俺が来るまでに時間があり、債務者同士で友好を深めたのだろう。

 これから蹴落とし合うとも知らずに。

 

「まず、ゲームの目的を説明させていただきます。このゲームを通して──」

 

 要約すると、ここにいる全員が500万円の借金がある。

 その借金を1人に押し付けて、最強の債務者を作り、そいつからむりやり取り立てるそうだ。

 

 ゲーム開始時に500万円貸してもらい、返済できる分貯めた人から退場できるらしい。

 

 ゲームの内容は丁半で、親が伏せたお椀の中でサイコロを振り、子は掛け金を決め、その出目の合計が奇数か偶数か予想する。

 

 当てれば掛けた額と同額を親から奪い、外せば掛け金を親に支払う。

 親を債務者たちの中で回しながら最後の一人になるまで争う。

 

 

 

 

 実際にやってみると、地味だな。

 

 小さなお椀の中にあるさらに小さなサイコロに一喜一憂する債務者たち。

 

「クソが!」

「よし!ほら!俺はもう帰るぞ!」

「俺もだ!早く!」

 

 彼らは欲張りもせず、借金を返済できる額を貯めたら逃げるように抜けていく。

 

 人数が減っていき、残るは俺ともう1人。

 ここまで静かになれば聞こえてくるものもある。

 

「さあ!賭けろ!」

「丁に50万円」

「半だ!これは貰うぜ」

 

 振る前のサイコロの向きと振る最中の音で出目は全てわかる。

 

 故に狙って外すことだって可能だ。

 

 しかし、問題は相手の選択を誘導ができないことだ。

 時間をかけて相手が勝つまで待つしかない。

 

 

「丁か半か」

「半に100万円!」

「半」

「よし!」

 

 そのはずなんだけどな。

 

 なぜか相手が毎回当ててくる。

 

 人が多かった時でも、俺が親番に当たる人が多かった。

 

 もはやなんらかの仕込みを疑いたくなる。

 けれども、いくら調べても何も出てこない。

 

 

「どちらだ!」

「半に100万円」

「ハハッ!丁!俺の勝ち!額が貯まったから帰らせてもらうぞ!いいよな!」

「はい、どうぞ」

 

 最後の一人が帰っていく。

 

 借金を返済しただけでは意味がないだろうに。

 それは0にするだけでプラスにはならない。

 

 チャンスが目の前にあるのだから確実に利用するべきだろう。

 

「さて、いつまでそのサイコロで遊んでいるつもりですか。あなたは施設に移動し、そこで働くことになるんですよ」

 

 狸の言葉に対して、俺は自分自身の二ツ星の冒険者カードを差し出す。

 

 Eランク迷宮までしか入れないとはいえ、それを喉から手が出るほど求める人はいる。

 

 このゲームで増えた借金5500万円の返済には十分だ。

 

「少額の賭けは興味無い」

 

 俺は続けて顕明連のカードを見せる。

 

「君ならもっと出せるでしょう?」

「ええ、ではその誘いに乗りましょう。ただ、私はこんな汚い部屋の地べたには座りたくないのでこちらへ来てください」

 

 

 

 

 

 通された奥の部屋は、掃除が行き届いており、話の通り綺麗だ。

 

 部屋の中央には机と椅子があり、入口の両脇にはそれぞれ屈強な男が立っている。

 

 狸が椅子に座り、俺も向かい側に座る。

 机の上にはお椀と2つのサイコロがある。ゲームは変わらないようだ。

 

 狸の指示で後ろの男が金庫から金を取り出し机の上に並べる。

 俺は担保としてカードを机に置く。

 

「さあ、始めましょう。あなたの親からどうぞ」

「はい」

 

 俺はお椀の中でサイコロを振る。その音が止まる時、不自然に強く打ち付ける音がした。

 

 磁石か何かでイカサマしているな。

 

「半に100万円を賭けます」

「半」

「ではいただきます」

 

 このままだと、俺の親では勝つことはできない。

 

 ただそれは相手も同じ。

 

「丁に100万円」

「丁です。どうぞ」

 

「丁に200万円を賭けます」

「丁」

 

「半に200万円」

「半ですね」

 

「丁に300万円を」

「丁」

 

「丁に300万円」

「?丁です」

 

「丁に400万円」

「丁」

 

「丁に400万円」

「……丁です」

 

 一進一退の攻防が続く。

 

 狸の顔色は変わらない。

 けれども、相手もこの状況に気づいたようだ。

 

 頃合だな。

 

「続ける?」

「……いくら欲しいんですか?」

「10億」

「そんなには払えば、破産してしまいますよ。6000万円。それだけあれば借金を返済しても残るでしょう」

 

 話し合いは得意じゃない。

 

 これ以上話せば相手のペースに飲まれてしまうことだろう。

 

 俺は目の前のサイコロを指で弾いて打ち出した。

 サイコロは壁に勢いよく当たり、跳ね返ることなく壁にめり込んだ。

 

「「ッ!」」

 

 狸は顔色を変えない。

 

 けれども後ろの2人はそうもいかなかった。

 青ざめている彼らが最高戦力とは限らないが、大抵の人間は今の1発が当たれば体に穴が空くことは免れない。

 

 俺の力量を示すには十分だろう。

 

「わかりました。5000万円。借金は帳消し。これ以上は出せません」

「じゃあそれで」

 

 その話を聞いた後ろの男たちは大慌てでアタッシュケースに金を詰め始めた。

 その間に俺はカードを回収する。

 

「比嘉秀羽さん、あなたのことは忘れませんよ」

「光栄だよ」

「出禁てことですよ」

 

 予定通り出禁にされた。

 冒険者カードの名前を見られたが、それも予定の内だ。

 

 俺はアタッシュケースを受け取り、帰路に着く。

 

「綿貫さん、追いかけますか?」

「おい、やめろ。あいつはやばいって」

「そうです。けれども彼はわざと顔と名前を晒した。何かあれば頼りにするとしましょう」

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