異常者の俺でも冒険者になれば王様になれますか?   作:端午

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第28話 オークション

 街中を歩けば、聖なる夜に浮かれた人々が蔓延っている。

 

 今日はクリスマスだ。

 

 富者も貧者もこの日は大切なようで、恋人や、子供連れの家族なんかが多い。

 

 俺は人混みの中を通り、奥へと向かう。

 広く場所を取っているそこは小さなオークション会場だ。

 

 今日はクリスマスだからと浮かれた人々をターゲットに、いつもよりも高価なものが出品されるらしい。

 

 例年その高価なものにはBランクカードも含まれるらしい。

 今回の目的はそれだ。

 

 想定よりも人が多いな。

 

 競売人の声は聞こえるが、ものが見えない。

 今更どうにもならないし、このまま参加するか。

 

『まずはこちら!冒険者御用達のミドルポーション!その詰め合わせです!500万円から!』

 

 何個入りだろう。1つなら50万円程だ。値段からも予想がしづらいし、周囲の人達も戸惑っている。

 

「1000万!」

『1000万出ました!これ以上はいませんね!ミドルポーション25個入りを1000万で落札されました!』

「よし!」

 

 適正価格は1250万円ほどか。彼の儲けは250万円ほどだ。

 

 ギルドを介していないこのオークションでは、このように通常よりも安い価格で物を買うことができる。

 

 その分出所不明の怪しいものが紛れているらしい。

 

 それでも高価なものばかりだ。

 

 これは目的の品以外は手を出さない方がいいな。このまま少し待つことにしよう。

 

 

 

 

 時間が経つにつれ、場が盛り上がっていく。そろそろだろうか。

 

『続きまして、ついに今日の目玉!Bランクカード!最初の1枚はインド神話における戦いの神カーリー!1億から!』

 

 次々と入札されていき、あっという間に100億に昇った。それはもう普通に買った方が安いだろ。雰囲気に飲まれたのだな。哀れな人たちだ。

 

『2枚目は北欧神話のトリックスター、ロキ!性格には難がありますがBランク、1000万から!』

 

 前の方に座っている人達は動かない。おそらく、何らかのマイナススキルを持っているのだろう。

 

 それを察した後ろの人たちは少額ずつ入札する。

 ここしかないだろう。

 

「1億5000万!」

『入札1億5000万!他にいませんか!』

 

 今日はわざと子供の姿で来ている。

 

 俺の姿を見た大人たちは馬鹿にして笑っている。

 

 その空気がこれ以上の入札を防いでいた。

 

『では1億5000万で落札!』

 

 

 

 

 俺は裏手に回り、商品の購入を行う。

 

 アタッシュケースごと金を渡し、その枚数を数えて貰う。

 1億5000万円とは、俺の貯蓄のほとんどになるが後悔はない。

 

 マイナススキルは確認できていないが、Bランクなら最低限役に立つはずだ。

 

 支払いが終わり、ついに商品が渡された。

 

 

 

【種族】ロキ

【戦闘力】600

【先天スキル】

・トリックスター:物語を展開する者。自由行動に対する極めて強いプラス補正。変身、幻術、話術、飛翔を内包する。

・終わらせる者:自身の子供たちと共に神々を苦しめたロキの侵攻。フェンリル、ヨルムガンド、ヘルを召喚可能。それぞれ1日1回1体。

・高等魔法使い

【後天スキル】

・神のプライド

・乙女心

・運動音痴

 

 

 

 運動音痴か……。運用するにはリリと同様に護衛としてそばにいる必要があるな。

 

 戦闘スタイルの幅を増やしたかったが、これでは難しそうだ。

 ……Bランクを買えただけでも儲けものか。

 

 少し気を落とし帰ろうとすれば、お兄さん達が盛大なお見送りをしてくれるそうだ。

 

 返り討ちにした後、鳥となって空から帰った。

 

 

 

 

 

 クリスマスの翌日、俺は降り積もった雪を、掻き分けながら道を行く。

 

 この先には迷宮があるのだが、この雪の中近づく者はそうそういないだろう。

 

 やっとの思いで辿り着いた迷宮でリリを召喚する。

 

「仲間が増える。仲良くして」

「やっとですか!」

 

 彼女の喜びもそのはず、かれこれ半年も彼女だけだったからな。

 

 とりあえず、ロキを召喚する。

 

 その姿は乙女心による変化で女性のものとなっている。

 

「よろしく」

「え?ヤダ」

「わかった。さがってて」

 

 彼女をカードに戻し、リリと迷宮攻略を始め──

 

「いや、もうちょっと頑張りましょうよ」

「嫌がってたよ」

「誠心誠意頼み込めば変わるかもしれません」

 

 仕方ないので、もう一度召喚する。

 

「力を貸して」

「だからヤダ」

「理由をお聞きしてもよろしいですか」

「だってその人つまんなそうだもん」

 

 確かに俺は面白い人間ではない。

 そしてそれはすぐに治るものでもない。

 

 諦めよう。

 

「この人面白いことできるんです。それを見て審査してください」

 

 リリの指示に従い、パフォーマンスを始める。

 

「姿を自在に変えます!」

「ありきたり、不合格」

 

 変化、変身、人形。この場にいる全員にできることだ。

 

「罠の回避から解除まで1人でこなします!」

「映えない、不合格」

 

 罠を起動させないために最小限で動く。映えるわけがない。

 

「1人でモンスターを倒します!」

「弱い、不合格」

 

 Fランク程度には対応できるが、それ以上だと厳しくなる。

 モンスターに比べて弱いのは確かだ。

 

「ぐぬぬ……」

 

 一通り不合格を言い渡され、リリも諦めかけている。

 

 ロキは神のプライド持ちであり、眼鏡にかなうまで言うことは聞いてくれない。

 面白くなる方法を本格的に考える必要があるな。

 

 あ、階段が無くなった。

 

 長期休暇の度に遭遇しているな。確率おかしいだろ。

 

「またですか」

「まただね」

「……」

 

 そんな時、ロキの表情は少し動いた。

 

 それに彼女を攻略する糸口があるのかもしれない。

 




【Tips】トリックスター系神・悪魔

 高位の神や悪魔などにはプライド系スキルがあり、認めた相手の言うことしか聞かない。
 高位のカードは種ではなく、固有名詞なことも多く、性格が同じことも多い。
 それ故にそのカードに合わせて口説き方もある程度解明されている。

 しかし、トリックスターなどを持つ一部の自由なカードたちは気分で決めている疑惑が上がるレベルでよく分からない。認められた本人もよくわかっていないケースも多い。
 その上、持ち前の自由さにより、認めた相手の指示も無視したり、勝手な行動をとったりする。
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