異常者の俺でも冒険者になれば王様になれますか?   作:端午

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*作者はバスケをしたことがありません。深く考えずに読んでください。


幕間2

「行け!凛月!」

 

 仲間からのパスが手元へ来る。

 

 

 俺はバスケが好きだ。

 

 仲間と勝利をめざして一致団結する。

 

 敵と全力をぶつけあい高め合う。

 

 こうして人と繋がるのが好きだ。

 

 

 敵ゴールへと向き直れば、敵の7番と10番が目の前に立ち塞がっている。

 

 敵は一体何を考えているのだろう。

 

 俺はボールを仲間に返す。

 しかし、それでも2人は俺にマークを続けている。

 

 俺がコートの端へと動けばそのまま2人もついてくる。

 徹底的に俺を潰すつもりなようだ。

 

 コートの中央では他の選手たちが次々と点を取り合う。

 ただ、それは対等ではなく、一方的にうちのリードが伸びていく。

 

 当たり前だ。俺に2人当てれば、中央では人数差でうちが有利になる。

 

 敵も見てられなくなったようで10番が中央に合流する。

 

 これで対等。お互いの実力勝負となる。

 

 早速敵がゴールを決めた。

 

 そしてうちのカウンターで敵ゴールに向けて選手が走り出す。

 選手たちは次々と敵陣へと駆けつけた。

 

 けれども味方の持っていたボールは、敵陣から大きく下がりセンターラインよりも奥の自陣まで送られる。

 

 そこで待っていた俺がパスを受け取った。

 

 マークしていた7番は振り返り対応しようとするが間に合わない。

 

 俺はその場からシュートを打つ。

 

「くそっ!」

 

 通常のシュートよりも長距離を長時間で飛んでいく。

 

 それは敵の心を折るには十分だったようだ。

 

 シュートが決まる。歓声が響いている。

 

 そして敵のカウンターは始まる。

 

 けれども、その時にはうちは守備の用意はできている。

 

 すぐさま攻守が入れ替わった。

 

 ボールは宙を舞い、選手たちの頭上を飛んでいく。

 そして敵のゴールをくぐった。

 

 また敵の攻撃が始まった。

 

 何度でも繰り返す。お互いの全力をぶつけ合ってこそ試合には意味がある。

 

 

 

 

「よっっしゃぁぁぁ!!」

「ナイスシュートだった!」

「パスも良かった!」

 

 表彰式も終わり、俺たちは荷物置き場に集まって喜びを分かち合う。

 

 この勝利で県大会への出場権を獲得したのだ。

 

 うちのバスケ部が県大会にまで行くのは3年間で初めてだ。

 これを喜ばずにいられるだろうか。

 

「打ち上げどこ行く?」

「ちょっといいとこ行っちゃおうぜ」

 

 話は今日の打ち上げへと移っていく。みんな気が早いな。

 

「まだ県大会出場が決まっただけ。いいとこはもっと先に取っとこうぜ」

「それもそうか」

「凛月は意識高いなぁ」

 

 打ち上げは近所の店に決まり、荷物をまとめて会場を後にする。

 

「凛月先輩、鞄の御守り外れてません?」

「あ、ほんとだ。ちょっと探してくる。追いつくから先行ってて」

 

 その御守りは、両親が必勝祈願のために買ってきてくれたもの。

 どこの神様のものかは知らないが、無くしたとなればバチが当たりそうだ。

 

 朝までは鞄に付いていたわけだから、あの荷物置き場に落としたのだろう。

 

 俺は小走りで荷物置き場に向かう。

 

「さっきの3pの人じゃない?」

「あの3pシュートやばすぎでしょ」

「あんなん止めれねぇよ」

 

「3pの人以外も上手かったよな」

「そうだけど。そっちには僕たちだって負けてなかったよ」

 

 他の学校も解散したようで道中で、すれ違う中には観客と選手が混ざっている。

 

「あーあ、あんなのされたら萎えるよな」

「ほんとさ、無駄に時間かかるし魅せプも程々にしとけよな」

 

「3pが上手いからって調子乗って連発しやがってよ」

「マジうぜぇよな」

 

 醜い意見も聞こえてくる。熱が冷めていくような感覚がある。

 

 けれども何を言われても気に止めはしない。俺はただ全力でバスケをしたいだけだから。

 

 荷物置き場に着いたが、当たりを探しても御守りは落ちていない。

 道中に落としてしまったのか……バチが当たらないといいな。

 

 俺は小走りで再び会場を後にする。仲間たちはバス停で談笑しながら待っていた。

 

「最後のキャプテンの顔まじ見ものだったよな」

「ほんと絶望って感じw」

「凛月もきついことするよなw」

 

 足が止まる。

 

「俺はあの顔を見るためだけにバスケをしてるよw」

「わざわざ凛月に回して、3pさせてるだけあるなw」

「真面目だから本人には言えないけどね」

 

 何を言っているんだ。3年間で一致団結してきただろう?

 それが敵の絶望を見るため?スポーツマンシップの欠片も無い。

 

 先程すれ違った彼らの意見を醜いと思った。

 けれども本当に醜いものはもっと近くに居た。

 

 俺の中の熱は完全に消えてしまった。

 

 

 

 

 

 放課後、俺は帰り道を歩いていた。

 

 部活を辞めたおかげで、まだ日も暮れておらず明るいままだ。

 

 もう中学3年生の俺は進路を考えなければならない。

 

 今まではバスケに打ち込んでいることを言い訳に先延ばしにしてきたが、そのおかげで選択肢を絞り込めた。

 

 つまりは学力が足りないのだ。

 

 それでも今から頑張れば間に合いそうな場所はいくつかある。

 

 どこにしようか。今までならとりあえずバスケ部の有無でさらに絞り込んだが、そんなことする気はもうない。

 

 決め手にかけるな。もう1番近いところでいいかもしれない。

 

『えーと…四ツ星冒険者の赤塚剣一です。この店には時々食べに来ていて、特に気に入っているのはオムライスです。ふわふわの卵と酸味の効いたケチャップライスがとてもマッチしています。ぜひ食べてみてください』

 

 たまたま個人経営の洋食店の前を通ったら、店内放送が聞こえてきた。

 

 四ツ星冒険者とか微妙なとこを突いてくるな。

 赤塚剣一という名前はギリギリ知っている。確か去年弟の学年にアンゴルモア対策を教えに来た人だったと思う。

 

 ただ聞き入ってしまった理由は別にある。

 出会ったことは無いはずなのに、この声どこかで聞いたことがあるような……?

 

 ……そうだ。前のアンゴルモアだ。

 

 

 

 

「もう大丈夫。心配いらない」

 

 彼は震えた声でその言葉を繰り返し俺たちにかけてくれた。

 俺達を鼓舞するように、自身に言い聞かせるように。

 

 このヒョロガリな青年はとても頼りない。けれども彼が連れているカードはとても強かった。

 

 刀を持って戦うみすぼらしい姿の少年型モンスター。おそらく貧乏神。

 

 貧乏神は他のカードをへと指示を出しながら、自身でも次々とモンスターを倒していた。

 とても頼もしかった。

 

 はっきり言えば青年がこの場にいる意味はない。召喚したあと安全な場所で待機していた方が良かったと思う。

 

 それなのに彼は来た。

 

 恐怖に怯えながらも俺たちにその言葉をかけるためだけにやってきた。

 

 彼は頼りなかった。けれども彼もまた強いと思った。

 

 

 

 

 弟から聞いた話では、あのヒョロガリの青年は今マッチョになっているらしい。

 彼はあれを機に変わったのだろう。

 

「……冒険者か」

 

 アンゴルモアという絶対的脅威を前に人は醜いものを見せやしないはずだ。

 

 冒険者になろう。

 

 一人でやるのはキツイよな。だったら近くに迷宮がある学校を選べば同士が集まるかもしれない。

 

 俺はもう一度だけ他人に期待をしてみることにした。

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