異常者の俺でも冒険者になれば王様になれますか?   作:端午

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第30話 厄払い

 狸たちとの話し合いの結果、秘匿迷宮の攻略と引き換えに、その間は元部下や追手から得たカードを貸出するとの事だ。

 

 言わずもがな、主に話しを進めたのは俺ではなく狸だ。

 当面は彼のことを味方として見ていいだろう。

 

 迷宮攻略にあたり、狸から正しい迷宮の情報をもらうことができた。

 

 メインフィールド効果は全ステータス割合増加バフ。

 サブフィールド効果は何らかのステータスに一定値増加バフがかかる。

 具体的な数値は分からないそうだ。

 

 ちゃんとした調査がなされていないが故の秘匿迷宮あるあるらしい。

 

 また、それ以外は事前情報通りらしい。

 

 迷宮に入る前に使えそうなカードを選別する。

 Cランク迷宮では8体まで召喚できる。それに対し、手持ちはCランクだけで10枚以上ある。

 

 使い慣れたリリはともかくとして、これらの性能次第ではロキはリストラまであるな。

 

 いや、出しっぱなしにした方が好感度稼ぎになるのか?どうなのだろうか。

 とりあえず出しとくか。

 

 

 迷宮に入ると同時にカードの召喚をする。

 安全地帯が消えたことで、迷宮内では気が休まることは無い。

 

 早速目の前に警戒すべきものが居た。

 

「ヒッ!昨日の!」

 

 追手のうちの一人だった青年だ。カードなしでよくここまで来たものだ。

 

「仲間はどこ?」

「俺は悪くない!アイツらが先に裏切ったんだ!」

 

 この様子では足の引っ張り合いをしながら彼だけでここまで来たのだろう。

 

 とりあえず首を落とす。そして、移動の邪魔にならないよう隅によけておく。

 

「……みんなを守るのではなかったのですか?」

「守るよ?」

 

 リリが恐る恐る問いかけてきた。

 

 だが、今の彼が迷宮から帰還すれば、支援が切られ、今後の活動に支障が出る。

 つまりは、さらにその先の未来で多くを守るためには彼が犠牲になる必要があった。

 

 それに、強い力がなければ、彼女の願いである玉座を用意することも叶わない。

 考えればわかることだろう。

 

 俺が戸惑っていると、珍しくロキが姿を現した。

 ついに心変わりでもしたのか?

 

「お兄さんはイカれてるね」

「力を貸す気になったの?」

「いいや、地味だし」

 

 それはそうだ。合理的に行動していれば、必然的に無駄が削られ、研ぎ澄まされる。

 その行動が派手になる訳などない。

 

「他の人間も見つけ次第始末して」

 

 俺はカードたちに指示を出して、迷宮攻略を始めた。

 

 

 

 

 1日目は元Dランク階層へと侵入する直前まで来た。

 安全地帯消失から1日ということもあり、ここまでは数体しかCランクには出会わなかった。

 ここからが正念場だろう。

 

 追手たちのカードの中には異空間系のものがあり、その中で休むことができた。

 異空間系カードは情報としては知っていたが、実際使ってみるとかなりいいな。

 戦闘に使われないのに値段が高いのには頷ける。

 

「おかわり!」

「こちらもお願いします」

 

 休めるだけでなく、美味しい料理を出すこともできるようで、リリとロキは先ほどから食事を楽しんでいる。

 

 リリって人間向けの料理を食べられるのか。

 では、今までのドッグフードには不満だったりしたのかもしれない。

 鞄の中の缶詰はゴミ箱行きだな。

 

 

 

 休息を取り、2日目となる。

 

 ここからCランクが何枚手に入るかが、今後の活動に大きな影響を与える。

 

 確率は0.1%であり、当たり前だがDランクよりも低い。

 

 だがしかし、今までと違い攻略前に神社まで行って厄払いをしてきた。

 参拝なんてしたのは小学校低学年以来だ。今回は行ける。

 

 カードたちを集め、意気揚々と建物から出る。

 

 目の前には実態のない黒いモヤがあった。

 

 これはBランクモンスター、厄病神。つまり、この迷宮の主だ。

 

「「イレギュラーエンカウントじゃない!」」

「喜びの水準低くない?」

 

 俺とリリはこの喜びを分かち合う。厄祓いにはちゃんと効果があったのだ。

 

 しょうもないことをしてる俺たちを他所に戦闘は始まった。

 

 聞いた話ではここの迷宮の主は数多の候補からランダムらしく、今まで同じものが2回でたことは無いらしい。

 

 厄病神が出るとは、こいつを倒してさらなる厄払いと行こう。

 

 と意気込みつつも、あまりできることはない。

 人間の俺やDランクのリリでは、Bランク相手にダメージを与えることは難しい。

 

 とりあえずはリリとロキ、それと前衛を下げ、魔法系のCランクを召喚し直す。

 実態のない厄病神には物理攻撃が効かないからだ。

 

 その上この階層は魔法攻撃の威力が上がるサブフィールド効果がある。

 

 カードたちは次々と疫病神へ魔法を打ちこんでいく。

 

 こんな時、俺も魔法を使えたら加勢できるのにな。

 

 俺単体だと実態のないモンスターには手も足も出ない。

 どうにか解決したい問題だ。

 

 だんだんと周囲にモンスターが寄ってくる。

 できることがないので、一旦引き付けておこう。

 俺はザコ敵群を連れながら辺りを回り、時間を稼ぐ。

 

 時間が経てば主を倒し終えたカードたちがこちらに合流し、ザコ敵も倒した。

 

 これで厄祓いは完全にできたに違いない。ここからの運勢はきっと好調だ。

 

 すると、カードから御札を渡された。

 

 これは疫病神からドロップするアイテムで、特に効果は無い。

 

 一応回収するが、呪いとかないよな?ないといいな。

 

 

 

 

 7日目には最下層まで来た。いや、2日目かもしれない。

 厄払いしたのに何もドロップしない5日間などあるはずがない。

 

 一旦外で休んでモンスターのリポップを待とう。

 そうしてからもう一度挑めば、次こそ何か手に入るはずだ。

 

「お疲れ様です。そろそろ戻ってくると思っていました」

 

 狸が出待ちしていた。

 

 彼は顔と名前だけから電話番号を特定してくるような相手だ。敵には回したくない。

 

 大人しく貸出されたカードを返した。

 

「浮かない様子ですが、何かありましたか?」

「何もなかったよ」

 

 そう、何もなかった。

 

 踏破してきたが、金になりそうなのは踏破報酬の魔石ぐらい。

 

 この秘匿迷宮の利点は理解したが、それでもなお、俺の戦力では攻略が難しい。

 

 この迷宮の情報が未来で役に立つのはわかるが、即物的なものが欲しかった。

 

「それは残念でしたね。ところで比嘉さんは今、冒険者活動を謹慎中と聞いたのですが、それが終わるまでうちで働いてみませんか?」

「給料は?」

「働きしだいですが、大抵の職種よりは高いことを保証します」

 

 現代社会なら大抵の職種とやらに冒険者も含まれていることだろう。

 戦力が少なく迷宮攻略が思うようにできない現状では、悪くない話だ。

 

 一体何をさせられるかは分からないが受けてしまおう。

 

「働くよ」

「詳しい話は事務所に着いてから話すとしましょう。こちらです」




そのうち付喪神出そうと思うんですけど、先天スキルってどこかで公開されてましたっけ?情報求む。
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