俺はユニコーンの背に乗り、平原を駆けている。とても速い。周囲にいるFランクモンスターでは決して追いつけない。
安全地帯へと戻り、ユニコーンの背から降りると、華音が呟いた。
「……乗れんだ」
……乗れんだ。俺も同じことを思った。嬉しいような。どうでもいいような。
無論今の俺は青葉玉音の姿である。
人形の力はそれほどに強いらしい。または作り込みに協力してくれた華音のおかげかもしれない。
ユニコーンは清き乙女に懐く反面、それを騙る者は殺してしまうという。ユニコーンの前では本来の姿に戻る訳にはいかないな。
だが、青葉玉音の姿のままで裏モンコロに出場するわけにもいかない。
俺は自身の姿を歪め、新たな姿を生成する。華音がアドバイスしてくるが、この姿のクオリティは別にどうでもいいんだけど。はい。従います。はい。
そうしてできあった新たな乙女がユニコーンに近づく、暴れることなく、大人しい。合格なようだ。
「このまま、大会まで貸してもらうね」
「うん、おっけー」
目を離した隙にロキがユニコーンに近づいてたが、様子の変化はない。
神話のロキはスレイプニルを産んでいたはずだが……?判定基準がわからないな。
さて、ユニコーンをカードに戻し、続いてトロールの様子を確認したい。
念の為、ロキを近くに待機させる。
そして、トロールのカードを手に取り、召喚を念じる。
目の前に巨体が現れると同時に怒声が響く。ウォークライによって増強されたそれは耳を引き裂くかのような大きな声だ。
対マスターとしてはかなり有用だ。接近された時に使えば離脱の隙を作れるだろう。
耐久面についても調査したいな。程々に痛めつける……?流石にまずいか。今後の関係のためにもやめておこう。
……前のマスターにもこんな扱いされたから閉ざされし心や狂化を獲得するに至ったんだろうな。
見つめていると、トロールは叫びながら安全地帯の外へと駆けていった。
後を追うと野良モンスターと戦っていた。
ゴブリンに噛まれた。噛み返した。ゴブリンが消えたあと、残っていた歯型は段々と薄くなっていく。
歯型も残るうちにさらなる獲物を探し、走り出した。
姿もよく見えなくなるまで走って行った。カードに引き戻す。
好戦的なのは高評価だ。再生能力については格上との戦闘中では気休めにしかならないが、安全地帯で少し休めば全快できるだろう。
簡単に確認できるポイントは見れたので、トロールを戻す。
次はロキだ。ロキは本来は男性の姿だが、うちのは女性の姿で活動する。
故に初見で正体がバレるリスクが低い。相手視点では何ができるのかわからない。
このアドバンテージは保ちたい。そのためにロキと呼ぶのは避ける方がいい。
「ロキに名前を付ける。希望ある?」
「急だね。まぁ、可愛いのがいいかな。あとは気持ちがこもってるやつがいいね」
可愛い……か。ロキの主観的なものだな。北欧の美的感覚なんて知らないんだけど。
気持ちがこもっているかはこちらの主観的なものなので気にしなくていいな。
「
「……結菜ね。いいでしょう」
間があったがロキ……結菜はそれを了承した。
北欧ではなく完全に日本の感覚で押し切る作戦は成功だ。
突発的であったリリの時を反省し、予め案を考えてきた甲斐があったものだ。残弾が尽きる前に決まってよかった。
「僕は終わりで、最後にリリちゃんでしょ」
肩に手を置きながらそう言っていきた。さては上機嫌か?いつもは指示を出さないと、近くに寄りもしないのに。
それはさておき、裏モンコロ対策会議最後の1枚、
リリを召喚する。呪いのカードであるリリは全て理解した様子で、迷うことなく俺たちと向かい合うように座った。
思い返せば、リリとは最初の迷宮攻略からともに歩んで来た。もう1年の付き合いというわけだ。
俺は彼女がいたからいくつもの死地を乗り越えられた。
とくに人魚姫のときは、動けない俺を庇いながら単身でフェイズ2を突破するなど未だに信じられない。
戦闘以外でも愛らしい姿やモフモフの毛並みにはいつも癒されている。よしよし、撫でてやろう。かわいいな。
まあ、愛玩動物に作戦などない。
というかおそらくこの大会において出番はない。
会議の終わりに勘付いたようで、華音がウィンチェスターハウスを召喚した。そして先に家の中へと入っていく。
俺はリリと結菜をカードに戻す。そして姿を青葉玉音へと変える。深呼吸をし、家の中へと入っていく。
ユニコーンに嫌われないといいなぁ。
帰路につき。1人歩いていると狸から電話がかかってきた。
他の参加者のリストが出来上がったから今度取りに来いとの事だ。グラディエーターとしての活動歴のあるものの使用したカードをまとめてるとか。
あとは狸のお友達とは戦闘を避けて欲しいそうだ。
大会までは残り1週間、ユニコーンとトロールの育成を頑張らなくては。