異常者の俺でも冒険者になれば王様になれますか?   作:端午

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第35話 開戦

 俺は受付の案内に従って迷宮へと侵入する。その中には数十名もの人がひしめき合っている。ここが俺たちの出場する裏モンコロの会場だ。

 

 周囲はよく見えないが、所々にあかりがあるだけで薄暗く、足元は硬い石である。事前に聞いた通り石室型の迷宮だ。

 

 時間を潰すため召喚した妖狐と戯れていると、2人の男がやってきた。

 リストで見た顔、狸のお友達。一応味方という認識で良いのだろう。

 

「聞いてると思うが、俺たちはお前を信用していない。だからお前とはチームは組まない」

「それぞれで予定通りに動くとしよう」

 

 妥当な判断だ。初対面で連携など上手くいくはずもない。不要なリスクを避けるためにも別行動でいこう。

 

 挨拶を済ませた頃に、開始が近いのでライフを見える場所に付けろとアナウンスされた。

 

 俺はバッジ……ライフを肩につける。それは拳ほどの大きさのハート型で裏に留め具がついている。

 ライフには迷宮産の素材を使っているのか硬く、人の力では壊せそうにない。裏を返せばカードの力で無理やり取ろうとすれば壊れてしまいそうだ。

 

 程なくして主催者の挨拶を聞き流すと、ルールの説明が始まった。

 

『皆さんには先程付けていただいたライフを奪い合ってもらいます!

 各階層出口側安全地帯に設置されたポストに奪ったライフを投函することで次の階層へと進む権利が得られます!

 もちろん所持ライフが0となった参加者はその時点で敗退!

 それを繰り返し最終の第5階層を突破した参加者が優勝となります!

 

 また、大会運営の都合上、撮影用ドローンへと攻撃や、ポスト付近、つまりは安全地帯内での戦闘やライフのやり取りはお控えください!

 

 開始は30分後となります!皆さんお好きなように準備を進めてください!』

 

 

 参加者は思い思いに第1階層の中で散っていく。俺もまた安全地帯を離れ開始位置を選びにいく。

 

 乱戦となる都合、警戒する方向を減らせるよう壁沿いがいい。そしてライフ獲得後にすぐ戦闘禁止の安全地帯に突入できるように安全地帯付近を陣取りたい。

 

 俺は狸からリークされたマップ情報を元に進んでいく。同様の考えの者も多いようで列をなすように進んでいく。

 

 その列が辿り着くのは広く開けた部屋。その中心に次の階層へと続く階段と運営が設置したポストがある。

 ちなみにポストと読んではいるがライフが通る程度の穴が空いた箱でしかない。

 

 

 その部屋で俺は壁沿いに向かった。

 

 当然ながら振り返れば複数の参加者に囲まれている。Dランクの妖狐しか連れいない人がいればそれは狙うだろう。逆の立場なら俺もそうする。

 

 少し誤算があるとすれば、後光が指しているようなカードや視線だけで圧力を与えてくるようなカードなど明らかに格が高いカードが多い。

 

 狸はこれからライフを奪い取る想定でいたのか。過大な評価が痛みいるなぁ。

 

 

 その中から標的を決める。前めに陣取る前髪で両目が隠れた彼だ。この距離感なら間に眷属召喚する可能性は低い。おそらく2枚とも本体が直接戦闘するタイプだ。

 

 トロールのカードを取りだし、いつでも召喚できる構えをとる。

 

 

『それではまもなく開始となります。皆様用意はいいですかー!』

 

 閉ざされた迷宮故に入口からのアナウンスがよく響いている。

 アナウンスは続いて開始までのカウントダウンを始めた。10、9、8、7、6、5、4、

 俺は両手で耳を隠しながら耳栓をつけ、妖狐に目配せする。3、2、1

 

『スタート!』

 

 合図と同時に召喚したトロールが怒声をあげる。

 

 参加者は32人。それの対策として耳栓をつけているものもまた多いだろう。

 

 ただ、閉ざされた迷宮で複数のカードがそれを行ったとき、もはや耳栓で耐えれるようなレベルでは無い。

 狸のお友達との唯一の作戦だ。開始と同時に爆音を響かせる。

 

 対策を怠ったもの、足りなかったものが悶えるなか、うちのトロールは目の前にいた前髪の彼のカードに襲いかかる。

 

 それと同時に予め聴力を抑えていた妖狐は、前髪の彼のもう1枚に飛びかかる。そして近づくにつれ、妖狐は姿を変え、本来の結菜となる。さらに周囲に魔法で炎を吹き出し注意を引く。

 

 

 Fランク迷宮の召喚制限は2枚。眷属や特殊な例を抜きにすれば2対2の戦い。

 

 というのは間違い。

 

 俺は2対2の戦いの間を抜け、マスターへと襲いかかる。これは3対3の戦いだ。

 

 前髪の彼は咄嗟に胸につけたライフを庇おうと手をあげる。

 

「トロール」

 

 俺はトロールへと呼びかける。別に何も打ち合わせはしてない。

 それでも心を閉ざしたトロールは勝手に反発して再び怒声をあげる。

 

 前髪の彼の手はつい耳を塞ごうとと流れてしまう。俺はすかさずその胸からライフを奪い取った。その勢いのまま、前髪の彼の後方へと走り抜ける。

 

 背後で飛距離が足りず床に衝突していた運動音痴をカードに戻す。ユニコーンを召喚し、飛び乗った。

 無駄な被弾を避けるためトロールもカードに戻しながら、安全地帯まで駆け抜けた。

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