異常者の俺でも冒険者になれば王様になれますか?   作:端午

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第4章
第40話 歪みの原因


『シュウは常に歪みに抱えているから』

 

 その歪みについて考える必要がある。そうでなければこのままイレギュラーエンカウントに襲われ続けることになる。

 

 人間には観測できない歪み。

 

 たとえば迷宮の入り口。本来繋がっていないはずの空間が繋がる。それは歪みと言えるだろう。

 だがそれは俺個人が抱えている問題ではない。

 

 

 俺個人の歪み、他者と違う部分。

 

『歪み……心の話かな』

 

 仮に俺の心が歪んでいるとして、華音や浅黄さんだって歪んでいるだろう。だが、華音に至ってはイレギュラーエンカウントに遭遇したことはないという。

 

 

 イレギュラーエンカウントである人魚姫はそれを認識していた。つまりはカードならば知覚することができるかもしれない。

 さらに言うならカードなら、それに干渉することができるかもしれない

 

 1つ心当たりがあった。

 

 

 

 深夜、俺は台所に向かう。食器棚の最上段、その奥を漁る。食器しかないので、次は戸棚を開ける。

 

 母は俺から物を取り上げた時、物理的に手の届かない高い場所へと隠すことが多かった。

 それもきっと高い場所に隠していることだろう。

 

 冷蔵庫の上に古びた菓子の缶がある。中身を確認し、俺はそれを持ち出して、迷宮へと出かけた。

 

 

 

 迷宮に入れば、俺は結菜を召喚して、臨戦態勢をとる。

 そして缶を開けると、中には10数枚のカードがある。ほとんどはE、Fランクの弱いカードたち。その中から目的のカードを見つけた。

 

 召喚されたのはグルりと文字が刻み込まれた黄金の指輪。結菜にはそれが何か心当たりがあるようだ。

 

「アンドヴァラナウト……?」

 

 それは北欧神話において所持者に富や権力をもたらす一方で災いを招く呪いの指輪。それにまつわる話にはロキも登場した。知っていて当然か。

 

 だがそれではまだ半分だ。

 

 目の前の指輪はユラユラと揺れ、宙に浮き始める。それは生きている。

 

 

【種族】付喪神

【戦闘力】520

【先天技能】

・物々交換

・食を喰らわば器物

・良工はまずその刀を利くす

【後天技能】

・零落せし存在

・静かな心

・気配察知

・料理

・武術

・精密動作

 

 

「謝る気にでもなったの?」

 

 白々しい。散々心を読んできておいて今更とぼけるか。

 心だけじゃない。この指輪は俺のここまでの行動を全て見ていた。カードの中から外を観測し、干渉する。

 

 こいつは呪いのカードだ。

 

 

 ところで、リリの中でロストした人魚姫は眠っている。イレギュラーエンカウントだろうとロスト中は活動できないようだ。

 

 

 俺は刀で指輪を地面へと押さえつける。結菜は何も聞かず魔法を指輪へと放ち続ける。

 

 指輪は倒れた。カードから色が抜け落ちロストが確認できる。

 

「それがマスターに憑いていたものかい?」

 

 俺はこの指輪、アヤカの干渉を受け続けてきた。幻聴のように声が頭に響いたり、体が無意識のうちに動かされたり、そして運が悪くなった。

 

 そしてこの指輪は付喪神。取り憑いたアンドヴァラナウトの性質を強化し使用する。

 

 俺の抱える歪みというのは、強化された災いを招く性質かもしれない。

 

 そうでなくとも不運でなくなれば御の字だ。呪いのカードといえどイレギュラーエンカウント同様にロスト中は活動できないだろう。

 

 結菜の問いにまだ答えていなかった。俺は勝手に動かなくなった口を意識的に動かす。

 

「ああ、そうだ。これで厄祓いだ」

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