異常者の俺でも冒険者になれば王様になれますか?   作:端午

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第43話 親子

 20階層の半ば、強敵と遭遇した。

 リリと結菜にはそれぞれ左右の篭手に変身してもらう。顕明連を握りつつ、天使たちに臨戦態勢をとらせる。

 

「その背負ってるのは……。また危険なことしてんのか」

 

 赤塚剣一、此処で会ったが百年目……と言いたいところだが、カードを召喚した状態では勝ち目は無い。公開されている情報だけでもBランク4枚と格上だ。

 緑川さんを呼びつければワンチャンあるか?いや、まだロストした戦力の補充は十分じゃないはず、難しいか。

 

「ほら『転移』のカードだ。あ、遺体は俺からギルドに届けた方が都合がいいよな。救助料は今度渡すからそっちの子も連絡先くれるか?」

 

 渡されたカードに細工はないようだ。俺は大人しく遺体を渡す。青葉玉音としてギルドで手続きをするわけにはいかないので従うほうがいいだろう。

 

 

 

 

 

 俺たちは無事に迷宮の外に出た。ここには監視カメラがある。互いに悪いことはできないはずだ。一安心といったところだろう。

 

「そうだ。来週から1ヶ月くらい迷宮に籠る予定だから、少し早いがカードとか返しときたいんだけど今週空いてる日あるか?」

「明後日なら空いてます」

 

 これで青葉玉音の姿を借りる必要はなくなる。つまり近隣の迷宮に堂々と入れるようになる。

 あとカードホルダーに入れっぱなしだった幸せの王子の指輪や殺生石も返してもらえる。

 

「そうか。あ、また救助する気なら一応持っとけ」

 

 俺たちは『転移』のカードを受け取り、帰路に着いた。そして俺は人目を避けて自身の姿を戻した。

 

 颯太を見ると1時間ほど歩いたことでもう普段と変わらない様子だ。

 

 俺は不治の怪我を負ったこと、それを人形の力で塞いでいたことを話した。

 

「それと他人のフリしてることは別件じゃないか?」

 

 痛いところをつかれた。だが別に誰かを害する訳でもない。問題ないだろう。華音の気分を害して刺されたりしたが、彼女は外れ値みたいなものだ。

 

 颯太自身だって救助の為にルールを破ろうとしたのだ。状況次第でルールを破るなんて普通のことじゃないか。

 

 というかアンゴルモアが起きてしまえば現在のルールなど意味をなさなくなる。次のそれがいつ起きるかもわからない現状で、ルールを守

 

「あら、秀羽。あんたも今帰り?」

 

 うわ、母さんだ。めんどくさいな。気づかなかったフリして逃げるか?いや、さすがに無理がある。

 こちらは自転車に乗っている。移動手段の違いは別行動の理由として十分。一言返してとっとと去ろう。

 

「どうも。秀羽のお母さんですかね?友達の東雲颯太です」

「まあ、いつも息子がお世話になってます。これからも仲良くしてやってね」

 

 颯太が停止してしまった。何をしているんだ。

 

「うちの子は暇さえあれば迷宮に出かけてばかりなのよ。良かったらそれ以外の場所に連れ出してやって」

「ええ、任せてください」

 

 俺の行動を決める権利は俺にある。というか冒険者が迷宮に出かけて何が悪いんだ。俺は昨年度150億稼いだけど?母さんの何倍だ?

 

(落ち着いてください。お義母様はいつもこうでしょう。ほら、シャットアウトも解けちゃってますよ)

 

 ……そうだな。母さんの発言にいちいち腹を立てていたらキリがない。そうだ。いつもそうだった。

 

「本当は冒険者なんて危険なことしてほしくないんだけどね。本人が頑固だからしかたなく許したのよ」

「でもアンゴルモアが来れば、頼りになるでしょうね」

「冒険者だけが人の役に立つ訳じゃないでしょう?モンスターを召喚するだけなんて誰にでもできることは意識の低い人達に任せてしまえばいいじゃない」

「……」

「替えのきかないことができるように今のうちにきちんと勉強しておいて貰いたいわ」

「……そうですね」

 

 話終わったか。さあ、解散しよう。俺は颯太の背を押し共にその場を離れていく。

 

 どうしてうちの母親はああも俺のやることなすこと否定してくるのか。こちらの話なんて聞き入れもしないのに会話してる気になって本当に面倒だ。

 

「秀羽って母親似だったんだな」

「心外すぎる」

「意志の強さとかとくにそっくり」

 

 一緒にしないで欲しい。俺は人の話ちゃんと聞けるんだけど。……少しの話で人となりを知るのは難しいからな。ちゃんと向き合えば俺とあれが違うこともわかるだろう。

 

 

 

 

 颯太とも分かれ、俺は自宅に着いた。玄関には既に母さんの靴がある。流石にバスの方が速かった。

 俺が自室に入ろうとすると呼び止められた。リビングに迎えば、両親が待ち構えている。

 

(お義父様がいるのは珍しいですね)

 

 ああ、父さんは医者で多忙だから、家にいても休んでいることが多い。わざわざ待ち構えることなど、去年のドン・キホーテから生還したとき以来か。

 

「冒険者になって1年だ。調子はどうだ?」

「順調だよ」

 

 両親には自粛の件は伝えていない。伝えれば冒険者を辞めさせる理由にされてしまうからな。

 そのせいでこの1年を全力で冒険者活動に打ち込んでいたと思われている。実際は色々制限されて全力とは言い難い。

 

「そんな感想には意味がない。具体的に数字で示しなさい。何をどれだけした。いくらの額を稼いだ。どれだけの命を救った」

「150億稼いだ」

「それは何に使うんだ?」

「戦力を増強し、よりリターンの多い迷宮に挑戦する」

 

 父さんはため息を着く。後ろで母さんも額に手を当てていた。

 

「事故にでもあったらどうする。貯蓄も必要だ。それだけじゃない、独学では直に行き詰まるだろうから、指導者をやとえ。他にも使い道は色々あるはずだ」

「……」

「視野を広く持て」

 

 両親には自粛の件は伝えていない。それだけじゃない。俺が冒険者として何をしてきたかなどまるで話していない。にも関わらずよく上から指図できるものだな。

 狭い視野でわかった気になっているのいったいどちらなんだろうな。

 

(まあまあ、お義父様も言い切った感だしてますし、お部屋に帰っちゃいましょう)

 

 あぁ、そうしよう。俺は自室へと帰った。

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