異常者の俺でも冒険者になれば王様になれますか?   作:端午

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第45話 取引の結果

「なんか体重い〜」

 

 結菜がそういうので俺は結菜のカードを確認してみる。

 

 

【種族】ロキ(結菜)

【戦闘力】1020

【先天スキル】

・トリックスター

・終わらせる者

・高等魔法使い

【後天スキル】

・神のプライド

・乙女心

・魔力消費軽減

・詠唱短縮

・運動音痴(NEW!)

 

 

 やはり運動音痴を獲得したようだ。

 

 リリの臆病が恐怖心を失って一時的に消えていたように、スキルはそのカードのパーソナルと密接に関わっているようだ。

 

 つまり、1度獲得したスキルは容易に再獲得できる可能性が高い。その検証のため結菜は春休みのうちに人魚の取引で運動音痴をリリに押し付けておいたのだ。

 これを活かせば有用なスキルをコピーしていくことができる。

 

 

 一方で人魚の取引にはいくつかの制約があった。

 

 まずは交換できないスキルもあること。先天スキルのほか、零落せし存在は取引できないようだ。

 

 次に取引するものに応じて手数料として魔力を必要とする。運動音痴の移植にEランク魔石4つ必要であった。リリ曰く、これがないとスキルがランクダウンしてしまうらしい。

 

 最後にに取引を行う両者の同意が必要である。テキトーなカードから有用なスキルを奪いまくることはできない。

 

 リリが有用なスキルたちを手放すのを拒んだこと、マイナススキルの復活を考えれば、現状の使い道はなさそうだ。

 

「誰だって弱体化は嫌ですよ」

 

 別に責めてるわけじゃない。リリの場合、ほとんどの後天スキルが最近押し付けられたものでパーソナルに結びついているとは考えにくい。再習得できるかも怪しい。

 愛玩動物に逆戻りするくらいなら、現状のままでいてもらいたい。

 

「マスター!トロールがまた接敵しました!敵は少数!このまま戦闘を開始します!」

 

 トランペッターが遠くで叫んでいる。運動音痴じゃないのでトロールの見張り役として追いかけてくれるのがありがたい。

 そのうえ補助魔法が使えるので回復もしてくれる。もはや完全に別行動しても問題ない。

 

 トランペッターは枠共有系のスキルを持たないためCランク以上の迷宮でないと本領を発揮できないのが玉に瑕だが、今のように1体しか召喚できていなくとも弱くは無い。

 7枚で5000万したとはいえ良い買い物だろう。

 

 

 

 

 

 

 外では昼頃だろうか。俺たちは安全地帯で休憩取ることにした。

 

 俺は1枚のカードを取り出し召喚する。それはプレハブ住宅。冒険者向けに販売されていたもので、この家は500万円の比較的安い部類である。

 中にはシャワー、トイレ付きの大きめのワンルームである。それでも迷宮攻略中に休むだけなら十分だ。

 

 トロールが中に入ってこないな。警戒してるのか?予め用意したお肉で誘導……できないか。目を離す訳にも行かないのでトロールにはカードに戻ってもらう。

 

 家の中に目を向ければ、各々くつろいでいる。机を囲むように2人がけのソファが2つあるのだが、結菜が寝転び1つを独占しているため、俺の席がない。

 

 やむを得ずリリを持ち上げその下に座る。おそらく彼女は膝の上で文句ないだろう。……膝から机の上に飛び移ってしまった。

 

「そろそろお昼ご飯の時間ですよね。私の出番です」

 

 彼女はそういうと何かを念じ始めた。すると机の上に米や野菜、果物などの食材が現れた。スキル、稲荷の神使の効果だろう。

 それに加えて彼女の持つスキルは料理を内包している。さぞ美味しい料……なんか膝の上に帰ってきた。

 

 とするとこの食材はどうしようか。俺はリリに乗られて動けない。リリと結菜は立ち上がる様子もない。

 

 自然と視線はトランペッターへと向く。それに気がついたのか、彼女は腰を浮かし机に手を伸ばした。そしてバナナを手に取る。皮をむき、

 

「主よ、どうぞお召し上がりください」

 

 料理する気はないようだ。俺はありがたくそれを受け取る。うん、美味しいバナナだ。リリが見てるので食べさせやる。隣でトランペッターも果物を食べ始めた。

 

 結菜はそれを冷ややかな目で見たあと、芋を手に取った。芋……かじりつくのか?

 そんなわけもなく、他にもいくつかの食材を手に取り、キッチンに運ぶ。ガチャガチャとキッチンを漁り鍋を用意する。食材を切り、鍋で煮込み始めた。

 

 

 

しばらくすると、

 

「自堕落な皆、ご飯できたよ〜。感謝して召し上がれ」

「ありがとうございます」

 

 結菜は器によそられたスープを配る。野菜がゴロゴロとしたポトフだ。口にすると、野菜の甘みが感じられ、調味料はシンプルに塩コショウだ。

 今までは俺が持ち込んだ携帯食を皆で食べていたから知らなかったが、彼女は料理ができるようだ。

 

(評価が甘すぎます。しょっぱいし、じゃが芋は火が通ってないですよ)

 

 膝の上からリリが思念を送り付けてくる。食べれるし良くないか?隣を見るとトランペッターが覚悟を決めたかの様子で一気に飲み干していた。そこまでは酷くないだろ。

 

 失礼な奴らだ。作った本人が目の前に……今ティッシュになにか吐き出したな。じゃが芋か。ティッシュ越しでも存在感がある大きなサイズだ。

 ……結菜と視線があってしまった。

 

「夕ご飯は任せたよ」

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